表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の待つ都  作者: 紫月 京
第二章 たどり着いた北の村

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/54

第十八話


五十鈴の背後で、駿河の殺気が膨れ上がる気配がした。

振り返った五十鈴の目に、見た事もないほど険しい表情をした駿河の顔が映る。

「何だよ、それ…!竜神様の御力を奪う?話を聞かれたこの坊主を閉じ込めた?

 ぶっ飛ばしてやる!」

両の拳をぶつけ、赤い瞳に闘志を燃やしている。火の気配が強くなる。

そんな駿河の腕に、楓がそっと手を添えた。

「落ち着いて、火の君。冷静さを失ってはダメよ」

村に入る直前、四人はお互いの呼び名を決めていた。何が起きているか掴むまで、他者に名を知られないようにするためだった。

「風の君の言う通りだな。殺気を引っ込めろ、火の君」

陽向も楓に同意し、五十鈴の後ろから少年に向き直る。

「それで、その役人と村長たちは村に戻って来ないんだな?どんな奴だった?髪の色や瞳の色、それから…」

陽向が話している最中、五十鈴は耐えきれなくなって頭を押さえて蹲った。

「……っ!」

「いす…白の君!?」

慌てた陽向の声が遠くに聞こえる。

痛い。頭が、割れるように……。


『…来たれ…』


水底から響くような、くぐもった声。

だが、幼い頃からずっと傍にあった、五十鈴に安心感を与えてくれる声。


『…我が巫女よ…疾く来たれ……』


胸がざわつく。

眩暈が酷くなる。

大切な声が遠くなる。

「…待って…行かないで…」


『…疾く来たりて…我を解放せよ……』


それきり、声は聞こえなくなった。

地に膝をつき、きつく目を閉じる。

心の臓が体中を巡っているようにドクドクと、早くなった鼓動が己の耳に響く。

息を荒くする五十鈴の体を、陽向が抱え上げた。

「坊主、すまん。こいつを休ませたい。俺たちをまだ信じられんかもしれんが、頼む。どこでもいい。体を横にならせてやりたい」

必死の頼みに、少年はしばらく考え、村の奥を指さした。

「村長の屋敷。いくつか部屋もあるし、あんたらが休むくらいはできる」

「恩に着る」

「信用した訳じゃない。でも、苦しんでる奴を放っておくほど、【結ノ里】の者は薄情じゃない」

淡々と告げる少年に頷き、陽向は抱え込んだ五十鈴の体をできるだけ揺らさないように、先導する少年の後を追い始めた。



陽向の背中を見送り、駿河と楓は他に人の気配がしないか、周囲に視線を走らせた。

何故か五十鈴が倒れ込んだ今、あの少年以外にこちらに敵意を持った人間がいては厄介だ。

「…白の君、大丈夫かしら…」

「旅の疲れ、って感じでもなかったな。誰かに話しかけてたようにも、見えた」

「そうね。…とにかく私たちも行きましょう。水の君には白の君の護衛に集中してもらわないと。今後の事は、また後で話し合いましょう」

二人は頷き合い、陽向の後を追うために駆け出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ