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竜の待つ都  作者: 紫月 京
第一章 都の異変、そして旅立ち

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第一話


【神楽京】の中心部、白い塀に囲まれた堅牢な屋敷が建っている。

竜を祀る一族、神楽族の本家である。

屋敷の奥まった一室に、五人の老人と一人の少女が集まっていた。神楽族の四人の長老と彼らを統べる大老、そして神楽本家の一人娘、五十鈴である。

「…だから、竜神様の住処には私が行く。他の者が行ったところで、きっと意味はない」

腰まで伸ばした白銀の髪を無造作に一つに束ね、赤い瞳に勝ち気そうな色を乗せて、五十鈴は長老たちに向かって言い放つ。

「だが、五十鈴よ。其方(そなた)はまだ年若い。修練も始めたばかり。その身に危険が降りかかるやもしれぬ中、一人で仙北山に向かわせるわけにはいかぬ」

長老の一人の言葉に五十鈴は唇を噛む。

先月、やっと十六になったばかりの五十鈴は、一族のなかで最も幼く、心身を鍛えるための修練も始めてまだ一月余り。長老の言うことも理解はしている。

自分に力が足りないことは、自分が一番よくわかっている。

「だが、誰かが行かねばならぬことは確か。時間もおそらくそれほどない。そこで…」

長老が閉ざされたままの部屋の入口に目を向ける。と、音もなくその扉が開かれた。

「護衛をつける」

長老の言葉とともに部屋に入ってきた青年の姿を目にし、五十鈴は息を呑む。

「…陽向(ひなた)

「と、言うことだ、五十鈴。俺がお前の護衛を仰せつかった。よろしくな」

黒い髪を肩で切り揃え、青い瞳を細めて微笑む青年は、五十鈴に向かって軽く声を掛けた。



神楽族には始まりの巫女の直系の血筋を守る本家と、それを守護する四方の家門が存在する。

本家の屋敷を囲むように東西南北に家を興し、それぞれの家門から代表者を出し、一族を統治している。

その代表者が四人の長老であり、それとは別に最も神通力が強い者が大老を務めていた。

遥か千年の昔より、竜神の血を受け継ぐ一族である神楽族の人間には神通力が備わっていた。

大自然に寄り添い、この世を漂っているとされる精霊に語りかけ、不思議な術を扱い人々を守るための力。

しかし、千年という長い時の間に血は薄まり、その力も年々弱くなっている。

直系の血を守ろうと、無茶な婚姻で血を繋げてきた歴史もある。

とうとう、五十鈴が本家最後の一人となった現在、長老たちはなんとかその血を次代に繋ごうと躍起になっている。

本家の次に血が濃く神通力も強い東家(とうけ)の次男、年齢も五十鈴と近く家を受け継ぐ嫡男でもない陽向は、長老たちからすれば五十鈴の婿候補筆頭であった。



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