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竜の待つ都  作者: 紫月 京
第二章 たどり着いた北の村

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第十七話


【神楽京】の水不足が深刻になっていく中、統治院がその原因を探るべく、仙北山へと人を差し向けたのは、確かに先月の事であった。

守り神である竜神の身に異変が起きていないか、その調査が主な目的だったはずだ。

調査団は少数精鋭だったと聞いている。あまり大掛かりな人数を率いて北へ向かっては、閉鎖的な【結ノ里】の住民を刺激するかもしれないという、統治院なりの配慮であった。

そして、誰一人帰還しないまま、一月以上という時間が経った。

統治院が取った次の手が、神楽族から人を送るというものだったのだ。

当初五十鈴を行かせるつもりのなかった長老たちも、仙北山山頂から火の手が上がっているという報告を受けて、渋々本家の巫女である五十鈴を出立させた。



たどり着いた【結ノ里】では大人たちの影は見当たらず、五十鈴たちを迎えたのはボロボロの衣服を纏ったきついまなざしの少年一人。

都から来た役人が、村の大人たちを連れて仙北山へ登ったと彼は言う。

調査のために来た役人ならば、それほど警戒する相手であるはずはない。だが、少年は『竜神様の御力を奪いに』と言った。そのような振る舞いを役人がしたのか。あるいは、村の大人たちか。

五十鈴は、酷くなる頭痛をこらえ、少年に続きを促す。

「…先月の初めだった。都から、偉そうな態度の役人が来て、村長の屋敷に入っていった。村の外から人が来る事なんて珍しいから、面白そうだと思って、窓の外から覗きに行ったんだ」

少年の瞳が、村の奥に向けられる。

他の家々よりも一回り大きな建物が建っている。村長の屋敷だろう。

「役人は村長に、都では水が枯れてて、もうほとんど残ってない。竜神様の御身に何事か起きているかもしれないから、調べに来た、と話した」

少年は語る。都から来た役人の話を、一言一句思い出すように。


『【神楽京】では、民の生活を脅かすほどの深刻な水不足が起きております。

 竜神様の加護により、水が枯れる事などあるはずがなかったのです。

 これは、仙北山に棲まわれる竜神様の御身に何事か、よくない事が起こっている証。

 我らはその原因を調べに参りました。

 村長どのにも、この村の住民たちにも、協力をお願いしたい』


そう言って、村長に向かって深く頭を下げたと言う。

どこにもおかしなところはない。

首を傾げる五十鈴たちに、少年は表情を厳しくした。

「村長が協力すると約束した後、一晩この村に泊まってから、御山に登ると話がついた。それで、村長の屋敷に大人たちが集まって支度をしてる間、俺が役人を案内して村を回る事になったんだ」

ぐっと拳を握りしめ、少年は五十鈴を見据える。

「あいつ、俺には聞こえないだろうと思って、小さな声で言ったんだ。これで、竜の力が手に入る、って!」

「!!!」

思わず目を見開いた五十鈴に、少年は悔しそうな表情を浮かべた。

「すぐに大人たちに話そうと思った。でも、俺が聞いてた事に気づいたのか、あの役人は俺を家に戻して、出られないように外から閂をかけて閉じ込めたんだっ。お前は一晩ここにいろ、って…!

 何度も、何度も、何度も扉に体をぶつけて、なんとか壊して外に出た時には、村長たちはもう、出発してた…」

泣き出しそうな少年の声に、五十鈴は何と言葉を掛けていいのかわからなかった……。



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