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竜の待つ都  作者: 紫月 京
第二章 たどり着いた北の村

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第十六話


北家の始祖が若くして隠居し、子に跡を譲ったのち、移り住んだのが仙北山麓の村と言い伝えられている。

元来他者との関わりが薄く、神楽族の中でも孤立していた北家の初代当主が、竜神に祈りを捧げるために興した村が、【結ノ里】の始まりである。

つまりは、この仙北山麓の村は、神楽族北家の管轄地であった。



北家の特徴が色濃く現れている目の前の少年は、キッと五十鈴たちを睨みつける。

「お前ら、何者だ!?先月のあいつらの仲間か!?」

少年特有の高い声で、詰問する彼の体はしかし、震えているようだった。

「石を投げたのはお前か?先月のあいつらとは何のことだ?」

陽向の言葉に、五十鈴は痛む頭を押さえながら足元に目を向ける。

乾いた地面に、先の尖った石が転がっていた。先ほどの風を切る音は、この石が投げられたものだったらしい。陽向が手を引いてくれなければ、当たって負傷していたかもしれない。

頼もしい護衛の背中に庇われ、五十鈴は村の少年に視線を戻した。

日焼け知らずの肌、黒い髪と黒い瞳。どこか懐かしさを感じさせる、その容姿。幼い頃に見ていたような、奇妙な既視感があった。

一歩、陽向の背から足を踏み出す。

「…っ、待て!」

「大丈夫よ」

陽向の制止を手で止め、五十鈴は少年に近づいた。

背後で、駿河と楓が警戒を解かない気配を感じながら、少年に向けて穏やかな声を出す。

「私たちは、都から来たの。貴方は、この村の人?」

「…都から…やっぱりお前ら…っ!」

「貴方の言う、先月のあいつらというのが何のことか、私たちにはわからない。だから、教えて?この村で何が起きているのか。

 私たちは貴方に攻撃しない。…二人とも、武器を下ろして?」

最後は駿河と楓に振り返り、小さく頷いてみせる。

二人は顔を見合わせ、陽向にも目をやった後、不承不承といった表情で武器を下ろした。

だが、警戒した瞳のまま、少年とのやり取りを見つめている。

「ね、攻撃しないわ。だから貴方も、少し落ち着いて。何があったのか話して」

五十鈴の穏やかな口調に、少年も少しだけ表情を緩めた。

「…竜神様の御力を…奪いに来たやつらかと、思って…」

「「「!!」」」

五十鈴の後ろで三人が息を呑む気配がした。五十鈴自身も、少年の言葉には驚愕していた。

竜神様の御力を、奪う……?そんな事、只人にできるのだろうか……。

もう一歩、少年に近づいた。彼が体の横で握りしめた拳が震えている。

この【結ノ里】で、一体何が起きているのか。

「詳しく教えてもらえないかしら。私たちは、おそらく貴方の敵ではないわ。都から来たのは本当だけれど、竜神様の御力を奪うだなんて、そんな事、できるわけもするつもりもない」

優しく諭すような五十鈴の言葉に、少年は恐る恐る、といった表情で、五十鈴と後ろの三人を交互に見やる。

彼の中でどのような葛藤があったのか。やがて、ポツリと、少年が呟いた。

「先月、都から役人が来た。竜神様の御力が必要だと言って、村長たち村の大人を連れて、御山を登っていった…誰も、還ってこない…」



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