食欲
「君って、本当に食いしん坊なの?」
ティアナは満面の笑みで頷いた。
「この世界には美味しいものがいっぱい。もしルーくんが料理をできるようになったら、二人で旅をしようよ!旅をして、見つけた素材で挑戦してみたい料理を一緒に作るの!」
その言葉にルシアンは考え込んだ。食べることで幸せを得るティアナから、彼も何かを学べるかもしれない。彼女の無邪気さは、彼自身を覚醒させるカギなるかもと。
「君が私に何かを教えてくれるなら、その料理を一緒に考えてみようか。」
「本当に?やったー!」
歓喜の声を上げるティアナの姿に、ルシアンの心は少しだけ柔らかくなった。彼女と共に過ごす日々は、彼の孤独を少しばかり埋めるかもしれない。
ティアナはすぐにモンスター肉や野菜、奇妙な果物の情報を集め始め、ルシアンは彼女を見守りながら少しずつ自分の魔法スキルも活かせるポイントを探っていた。
「ねえ、ルーくん。まずは何からしよう?」
「まずは旅に必要な物を揃えないと。君はもう持ってるだろうから私の準備を少し待っててくれるかな」
彼女の期待に応えるべく、彼の言葉には新たな意義が見え始めた。彼らの冒険と共に、料理の試行錯誤、そして互いを知る旅に出る準備が整った。
ティアナは、五感を全開にして周囲の食材を感知していた。彼女の食欲は、人間のそれを超越しており、ただの食事では満足できない。彼女の目が輝くのは、ただの肉や野菜ではなく、未知なる味を秘めた特別な食材に出会った時だった。
「ルーくん、これ見て!このユニークな果物、どう思う?」
ティアナは、図鑑のなかの青紫色の果実を指さし、まるで宝物を見つけた子供のように目を輝かせた。ルシアンはそれをじっと見つめたが、その果物は知らないものだった。
「見たことがないな…まずはこれを探しに行こうか。」
ルシアンの言葉に、ティアナは顔を輝かせた。
「うん!ルーくん、はやく!」
「わかったよ、君のその情熱には少々感心する。」
ルシアンは少し微笑んだ。
だが、ティアナには食材の種類を見極め、食べるリスクを理解することが必要だと感じた。
「見つけたら私が魔法で調べてみよう。危険な成分があるかチェックしてみないと。」
ティアナは首を傾げた。
「私も出来るよ?」
「……今日はもう暗くなるから明日出発することにして、とりあえず君のスキルを調べさせてくれないかな。」
ティアナはしばし考える顔を見せた。
「んー……スキルを知ってもびっくりしないでね」