ベランダを魔改造してみたら
ガーデニングって憧れるじゃないですか。私も趣味でやってみたいなと常々思っていたのよね。
立派なお庭ってわけには行かなくて、マンションのベランダ。お隣さんにはもちろん迷惑のかからないようにする。
物価も上がって、お野菜だって高くなる一方。だから‥‥ちょとした家庭菜園は作っていたの。
でも少し寂しいのよね。節約と食欲を満たすためだけに⋯⋯私だけのこの空間が浪費されるだけなんて。
家の中は片付いている。殆ど旦那と子供のものであふれていた。それはそれで幸せ。でも、自分の世界に浸りたい時ってあるでしょう。
ベランダは私の聖域。入るにはお洗濯を手伝う必要よ。苦笑いしながら、私をそっとしてくれる家族。手伝う気はないようだ。
さて、実用一辺倒な家庭菜園を癒しのガーデニングへとランクアップするとしますか。
リサイクルショップでお外用の、白い木製のテーブルセットが売っていたの。新古品らしくて状態は悪くない。
夏の暑さ対策に物干し竿を使った日よけ、ソーラーパネルで扇風機を回して、洗濯のすすぎ水をベランダの排熱に利用。冬はビニールハウスのように冷たい風を遮る。クリスマスにはソーラーを利用してイルミネーションも楽しむ。
そうやって色々と工夫を重ねてベランダを魔改造していった。
春先になると、私のお気に入りの椅子に何かいた。座っていた。
「御機嫌よう奥様。素敵なベランダね」
蜂だ。蜂の姫だ。とりあえず窓の側のスプレーを噴射する。
プシューーー!!
「やめて! 私は兵隊と違ってか弱いの。それにそれはゴキ用じゃない」
「⋯⋯」
しぶとさはゴキ並みだ。蜂蜜百%茶を入れてあげると喜んだよ。人なら過剰摂取で腹痛とか起きる量。蜂のコスプレした危ない隣人でもないらしい。
「私はハニトラ国の女王なの。大規模都市開発で国が滅茶苦茶にされて行く所がないの‥‥」
私達人間のせいだとチラチラあざと見てくる。
「大変ね。次は森林保護区域にでも移住なさいな」
人として悪いとは思う。でもこのベランダは私の国。私が女王だ。
「住まわせてくれたら、蜂蜜取り放題よ」
「狭いし、そのサイズでは無理よ?」
「元の姿に戻るわよ」
蜂の女王と、ベランダの女王は手を取り合った。
キャッホ〜蜂蜜取り放題よ、そう思っていた。蜂の女王が住み着いて働き蜂が飛び回るようになって、マンション管理組合から怒られた。
優雅にガーデニングを楽しむはずが、マンションの屋上で養蜂家デビューする事になったのだった。
※ 作中のイラストは、コロン様よりいただいたFAです。何度見ても可愛い。ハートが刺さりますよ。
イラストだけなら文字数オーバーしないようなので、作中へと掲載させていただきました。
改めてお読みいただきありがとうございます。
蜂の女王が出てくるためヒューマンドラマではなくて、ローファンにしました。
コロン様から、可愛らしい蜂の女王様のFAをいただいたのですが、このキュートな蜂に、初見でゴキ退治スプレーをかける主人公よ‥‥。
可愛いイラストをありがとうございました。
※ 掲載されているイラストの著作権は作者さまにあります。自作発言やSNS無断転載・無許可掲載は禁止です。