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大気汚染

お嬢様の部屋は最初の真っ白な部屋の面影がほぼなくなっていた。

ベッドや椅子は気に入っているようなのでそのまま使っているが、家具が増えていた。

大きな鏡や本棚などなかったものも増えている。

クローゼットには色とりどりの洋服がかかっていて、見たことのある絵画が飾ってあった。

(あれって有名な美術館にあるやつだよな)


俺はお嬢様にもらったジャージを愛用している。

パジャマにすると言うと色違いでもう1つ出してくれた。

(俺よりもチート級な特殊能力じゃないか)


俺たちは今日も訓練室にいた。

お嬢様はものを出すのに飽きてきたようで魔法の練習を始めた。

創生というのは新しく作り出せるということらしく、好き勝手にできるようだ。

お嬢様は今、訓練室に花を咲かせることに夢中のようだ。

(楽しそうだからそっとしておこう)


俺は俺にできることを考えていた。

チートと言えば不正アクセスじゃないか。

とりあえずここのネットワークに入り込んでみたいと思った。

俺はスマホを取り出した。

建物内はWiFiのようなもので無線で繋がっているようだった。

スマホを繋げてみよう。

すぐにここのネットワークに入り込むことができたようだ。

俺はスマホでここの管理システムを見てみた。

難しいことはわからないがAIの軍勢が入り込めないようなソフトが入っているらしい。

かつ、他の仲間たちとやり取りができるようになっている。

AIたちの軍勢だと判断して遮断するなんてかなり考え込まれ作り込まれたシステムだろう。

(開発した人すごいな)

そこら辺はいじらないように気をつけないと。


まずはインターネットと言うものが今でも存在しているかどうかを確かめたい。

検索サイトは…なくなっている。

広告収入など見込めなくなって維持できなくなったのかもしれない。

しかし簡単な検索エンジンは存在しているようだ。

見たことのない検索エンジンだったが使ってみることにした。


│大気汚染レベル


検索してみると空気質指数と言うのが出てきた。

現在地を調べると999と出た。

(よくわからないが多分すごく汚染されているな)


『危険レベル 誰もが深刻な健康被害を受ける可能性があります』

と書いていた。

やはり外は危険だ。


(お嬢様にお願いして毒ガスマスクを作ってもらおう)


とりあえずスマホはネットワークに繋がったのでここの情報はいつでも見ることができそうだ。


AIたちが召喚したものたちについての情報はまとめられていなかった。

もっと深いところまで入り込まないとダメなのだろう。

こちらの情報を抜かれないように相手の情報だけを抜き取ってくる。

(もう少しチートの能力を把握してからにしようか)


俺はそれ以上潜り込むのをやめた。


俺はお嬢様にわかったことだけでも報告することにした。 


────


お嬢様は白い空間をカラフルにしていた。

いつの間にか素敵なお花畑になっていたのである。


「笹川さん…」

振り向いたお嬢様はお花畑とマッチしてとても美しかった。

「あら、ライトさんおかえりなさい。」


俺は外の空気の話をお嬢様にしてみた。

「敵に建物を壊されたらひとたまりもないですわね。」

お嬢様は少し考えて、

「宇宙服のような装備を作るわ。」

と言った。

重力あるし動きにくいんじゃないかなと思ったが言わなかった。


外でも動ける装備は今一番必要なものかもしれない。


「笹川さん、宇宙服…装備作るの俺も手伝っていいかな?」


ハムスターとお花畑で笑っていたお嬢様の顔が真剣になった。

「もちろんですわ。」


────


「車や飛行機がないこの世界でこれほどにひどい大気汚染レベルなのが腑に落ちないんだよね。」

俺とお嬢様は作戦会議をしていた。


「何か汚染する原因があるってことですわね?」


俺はお嬢様のスマホもこの世界のネットワークに組み込んだ。

「マップで怪しい施設を探そう。」

二人でこの世界の現状を調べ始めた。


「排気ガスの他にダイオキシンとかかしら?環境問題についてもっと勉強しておくのでしたわ。」


「このでかい施設怪しくない?」

俺は街の中心にあたる場所にある『総合エネルギー開発ビル』というものが気になった。


「開発ってついているだけでなんだか怪しいですわ!」

(それは偏見かな)


「ここのシステムに入れないか試してみるよ。」

俺はチート能力でセキュリティを突破できるか試してみた。

すぐに潜入することができた。

(この施設の正体はなんだろうか)


表向きは次世代代替エネルギーの開発と運用のようだった。

ビルの地下には怪しい炉のようなものがあり、黒い煙をもくもくと出している。

それを換気口のようなものが吸い取っている。

(この後どんな処理をしているんだろうか)

俺はその先も調べた。

フィルターを何層か通している。

大きな塵や埃はここで落ちるだろう。

しかしフィルターを通しているだけで煙に対する科学的な処理は一切していなかった。

そのまま地上に排気口があり、黒かった煙は色を変えて目立たない形で外に垂れ流されていた。


そこの空気質指数を調べると測定不能と出た。

(悪い予感しかしないな)


お嬢様は俺が探りを入れている間、宇宙服のデザインを考えていた。

あまり絵は得意ではないようだった。


「この施設、多分真っ黒だ。」

俺がそう言うと、

「汚染の根本的な対処ができればそれが一番ですわ。」


「この施設で働く人たちは防護服を着ていたよ。」

俺は施設から防護服について書かれた説明書や設計図をみつけてスマホから閲覧できるようにした。


「聞いたことのない素材を使ってますわね。」

お嬢様は科学も得意ではないようだ。


「同じものを作れそう?」

俺が聞くとお嬢様は首を横に振った。


「こんな可愛らしくないもの、作りたくありませんわ!もっと美しいデザインに作り変えますわ!」

お嬢様はやる気満々にそう答えた。

(見た目より性能が重要なんですが)


お嬢様が楽しそうにデッサンを描いていたので言うのをやめた。

何事も楽しくやるのはいいことだ。


「ライトさん、有害物質の化学構造とか図にできるかしら?」

俺は代表的な有害物質の構造式を書いてみせた。


「ありがとうございます!イメージするときに具体的なほど魔法は性能が上がるらしいのですわ。」


お嬢様は両手を前に出して神経を集中させた。

キラキラと光りながらさっき調べた防護服のようなものが出てきた。


「すごい!完璧に再現されてる!」

俺は手に取り広げてみた。

「それだけではなくてよ。ライトさんジャージの上から着てみてくださるかしら?」

俺は言われるまま、その防護服を着てみた。


フルフェイスの白い防護服でエアーフィルターがついている。

この世界の酸素ボンベは小型化されていて腰のベルトにつけても邪魔にならない。


「すごいよ笹川さん!」

お嬢様はニコニコしながら、

「腕についてる腕時計のようなものをみてくださる?」


俺は腕時計のような形の液晶がついているのを見つけた。

「これってスマートウォッチみたいだね。」

「そこで汚染レベルがわかるわ。そしてオンとオフがあるでしょう?オフにしてみてくださるかしら。」


俺は言われたとおりに操作してみる。

防護服はシュッという音と共に消え去った。

腕にはスマートウォッチのような腕時計が残った。

見た目はデジタルの時計にしか見えない。


「これってどういうこと?収納できたってこと?」


「いいえ、見えないだけで防護服の効果はあるはずですわ。あんな見た目の服を着て街中をウロウロするなんて考えられませんもの!」

そう言ってお嬢様はニコリと笑った。


俺たちは性能を確かめるために3階の窓に向かった。


「こんな場所があったのですね。」

「ここから外に出て防護服の効果を確かめてくるよ。」

「こちらからは出られないように見えますが…」

「そこは俺のチートで。」


俺は防護服をオンにしてすり抜けバグのように外へ出てみた。

この前のような息苦しさはまったくない。

「すごいよ!笹川さん!完璧だよ!」

俺は大声でそう言ったがお嬢様は首を傾げている。


「聞こえませんわね…会話ができるような機能を追加しましょうか。」

お嬢様が何かを言っているが俺には聞こえなかった。

お嬢様は俺に指を向けている。


「ライトさん聞こえますか?通話のようなシステムを追加しましたわ。」

「すぐ近くにいるみたいに聞こえるよ!ありがとう!」

お嬢様はドヤ顔をしていた。

(これはこれでかわいいな)


「ライトさん、ぜひ防護服をオフにしてみてください!」

お嬢様はニコニコとこちらを見ている。


(本当に大丈夫なのかな)

俺は戸惑ったが、何かあっても窓からすぐに中に戻れるし。

意を決してオフに切り替えてみた。


息ができる。

動きもこちらのほうが楽だ。

「笹川さん!完璧だよ!!」

お嬢様は満足気だった。


俺はそのまますり抜けて中に戻った。

「チートって便利ですわね。」

お嬢様は羨ましそうに言った。

(あなたの方がチートだよ)


「笹川さんありがとう。念のため常に着ていることにするよ。」

「そうですわね、私もそうしますわ。」


外に出ることが可能になった。

あとは出てからどうなるのかを予測してみないといけない。


(ゴリラに出会ったらそこで試合終了になりうる)



────

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