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襲撃

本部の方向へ向かっているとエリスから通信がきた。

『本部が襲われた。応戦しているがもう陥落するだろう。奴らの狙いはAIとお前たちだ。』

と言った。

「なんでAIと俺たちなんだよ。」

『この島での大気汚染レベルが急に下がっているのを知って自国に連れていきたいと言うところだろう。様子見していたんじゃなくて起因しているものを探していたんだろうさ。』

(それが俺たちとAIだと)


『元々ここのAIの性能はどの国のレベルよりも高かった。狙われて当然なのかもしれん。私はAIが心配だからそっちへ向かう。お前たちも十分気をつけろ!』

エリスはそう言うと通信を切った。


(場所は教えてなかったんだが…)


「笹川さん、どうする?」

俺は敵の動きを把握するために本部のシステムに潜入した。

まだ奴らは本部の中にいるようだ。


「どうしましょう。私たちに戦うことはできるのかしら?」

俺たちは戦闘訓練というものをやってこなかった。

まずいかもしれない。

「とりあえず防御面を強化しよう。」

俺は自分たちにできる限りのバフをかけた。

(チート能力全開だ)


身体能力向上。

全ステータス値爆上げ。

敵の攻撃が当たらないステルス効果。

倍にして返す反撃モード。

敵にみつからないインヴィジブル効果。

考えられるありとあらゆるチートを考えた。


お嬢様は自分の体が透けたことに気がついた。

「ライトさん、これは何かしら?」

「敵に見えないように透明化しました。見えないだけなので攻撃されたらあたると思います。」

お嬢様は「なるほど」と言って俺たちに何か魔法をかけた。

「私たちは何者にも屈しないと魔法をかけたわ。」

お嬢様はニコッと笑った。

(どんな効果があるんだろう)


「俺たちもAIのところへ向かうべきだと思うんだけど。」

お嬢様は頷いた。


近くのフローロードの出入り口から島の中心に近いところを選んで移動した。


────


以前はここから汚染した空気が垂れ流しになっていた。

今は草も生えて前の面影はまったくない。

俺たちはビルの中に入った。


中にはエリスがいた。

俺たちの姿は見えていないようだった。

俺は透明化を解除してエリスに話しかけた。


「お前たちここに来てしまったのか!奴らもじきここに来るぞ!」

「俺たちもAIが心配で。」

と言うとエリスはニコッと笑った。

「中へ入る入口がわからん。」


エリスは場所の目星をつけてここに来たが地下への入口がわからないと言った。

確かに普通の人にはあそこに入るのは不可能だろう。


「中には入れないと思います。ここから先に行かせないように俺たちでなんとかしますよ!」

エリスもお嬢様も緊張した顔で頷いた。

二人とも戦闘員ではない。

(俺も違うけど)


ガシャンガシャンという機械的な音が聞こえてきた。

俺はエリスにもチートをフル活用してバフをかけた。

「透明化します。お互いのことはなんとなく見えると思いますが気をつけてください。」


俺たちは戦闘態勢を取った。

見たことのないロボットが数体やって来た。

手には大きな銃を持っている。


(ロボットなら俺に任せろ)


俺はロボットのシステムに潜入して無効化した。

ロボットから光が消えその場に転がった。

「ライトさんナイスですわ!」


後ろから戦闘員のような人たちがやって来た。

転がっているロボットを見て何やら言っている。

(何語なのかさっぱり何を言ってるのかわからん)


相手は10人、見るからに強そうな姿にでかい銃を持っていた。

エリスは端から1人ずつ敵をやっつけていった。

敵はこちらが透明化していることに気がついたようで手当たりしだいに銃を乱射し始めた。


俺たちはとりあえず隠れた。

エリスが3人倒したので残り7人。

弾丸が飛び交っていて出るに出られなくなった。


敵は静かになったのを確認して銃を撃つのを止めた。

俺たちは息を潜めた。


リーダー格の男が何やら指示を出した。

建物の中央に爆弾を仕掛けて爆破したのだ。

(まずいぞ!)


建物の中央にポッカリと穴が開いた。

電磁波を通さない分厚い壁が現れた。

(あれを突破されたら終わりだ)


俺は敵の戦闘員に飛びかかった。

直接アーマーに触れて弱体化をかけた。

アーマーはボロボロと崩れていった。

そこにエリスが銃を撃ち込んだ。


お嬢様も戦闘員たちに向かって手を向けた。

光が差し込んできて戦闘員たちの目に直撃した。


俺たちは無我夢中で敵に向かっていった。

(あと一人!)

というところまで来たときに、その一人が電気を帯びてビカビカに光る大きな銃を中央に向けていた。

俺はそれがなんなのかわかった。


「電磁パルスだ!」

俺は叫んだ。


同時にエリスがその銃に飛びついた。

物凄い光とともに爆発音がした。


エリスは電磁パルスを直撃して吹き飛んでいた。

銃を持っていた戦闘員もその衝撃で倒れている。


俺はエリスのところへ駆け寄った。

お嬢様は吹き飛んだ戦闘員を魔法で動けないようにしている。


「AIは…エイトは…無事か?」

エリスは黒焦げになりながら俺にそう聞いた。

スマホにエイトが現れた。


『エリス!僕たちは無事だよ!!なんでこんな!自殺行為だよ!!』

エイトは泣いていた。

「エイト…久しぶりだな…AIのくせに…お前は泣き虫だな…」

エリスはゲホッと血を吐いた。

『エリス、僕ごめん…君に会いに行こうと思ってたのに勇気が出なくて…』

「それは私も一緒だよ…エイト…ずっとお前に会いたかった…」


お嬢様は泣きながらエリスに向かって手をかざしている。

「どうしたらエリスを助けられるのかわからないわ!!」

「笹川、いいんだよ。エイトが無事なら…私など…」

『エリス!行かないで!もう僕を置いて行かないで!!!』

エイトは小さなスマホの画面で叫んでいた。


俺にできることは何かないだろうか。

お嬢様も何かを探してスマートウォッチから色々出している。

俺は水の入ったペットボトルを拾った。


(これはエリクサーだ)

俺は水を握りしめてそう言い聞かせた。


(これはエリクサーだ どんなに瀕死な人も助けることができる)


俺はエリスにその水をかけた。

エリスはびしょびしょになった。


お嬢様はそれを見て固まった。

「何をしているの?」


「俺はチート使いだ!バグでもなんでもいい!俺はエリスを死なせない!!」


エリスが笑いだした。

「おい、死ぬかと思ったぞ。」

黒焦げだった皮膚は少しずつきれいになっていった。

開かなかった目が開いた。

『エリス?!どういうこと?!』

エイトは理解できないという顔をしている。


「チートとかいう、何に使うのかわからない能力に助けられたぞ。」


お嬢様は「よかったー」と泣き崩れた。

エイトも画面の中で泣いていた。


俺は自分のしたことなのに理解が追いつかず呆然としていた。


後ろからうめき声が聞こえた。

倒れていた戦闘員たちが動いている。

「笹川!拘束できるか?」


お嬢様は戦闘員たちをギュンッと一纏めにして植物の蔓のようなものを出してぐるぐる巻きにした。


戦闘員たちは団子のように丸められ抵抗するのを諦めたようだった。


「笹川、もう一仕事いいか?」

エリスはポッカリと開いた穴を見ながら言った。


「お任せ下さいませ!」

お嬢様は手をかざして穴をきれいに埋めた。

建物も取り払いそこに木をたくさん生やした。


「人間たちにみつからないように魔法をかけましたわ。」

お嬢様はホコリまみれの顔でニコッと笑った。


「こいつらをどうしますか?」

俺は団子になった戦闘員たちを見て言った。


「とりあえず本部に運びましょうか。」

お嬢様は蔓に向かって「手伝って」と言った。

団子になっていた戦闘員たちはポンポン跳ねて飛んでいった。


「本部に向かいましょう!」

お嬢様は喜んでフローロードに入っていった。


────


本部の近くに出た俺たちは戦闘員の団子が飛んでくるのを待った。

すぐにポンポン跳ねながらやってきた。


お嬢様の前でピタッと止まった。

「ありがとうね。」とお嬢様は蔦を撫でた。


戦闘員たちは目を回しているようだった。

俺は戦闘員たちの頭を触り(お前のここに来てからの記憶を消す)と頭の中に入り込むようなイメージで記憶を破壊できないかやってみた。

その男はびっくりした顔になり喚いている。

「何があった?ここはどこだ?」と叫んでいるぞ。

とエリスが教えてくれた。

(うまくいったのか?)

俺は次々と同じことをした。


戦闘員たちは「なんだこれは!離せ!」と叫んでいた。

本部からその騒ぎを聞きつけて人が出てきた。


「エリス、これはどういう状況だね?」

ボロボロになった本部の人がエリスに訪ねた。


「全員捕まえました。あとは任せてもよろしいでしょうか?」


本部の人は「こっちだ!」と人を呼んだ。

戦闘員たちは鎮静剤を打たれておとなしくなった。

お嬢様は蔦に向かって「お疲れ様」と言うと、蔦はしゅるしゅると解けて戦闘員たちは解放された。


本部の人たちは手錠のような拘束具をつけて戦闘員たちを運んでいった。


俺はどさくさに紛れてその場を去ろうとした。

お嬢様も察したようで静かに移動を始めた。


「お二人、中で説明を頼む。」

本部の男に引き止められた。

(逃げるのは失敗だ)


────


俺たちはAIのことを伏せてざっくりと説明をした。

戦闘員たちと出会ってしまって仕方なく応戦したと言っておいた。

本部の人は納得したような、してないような顔をしていたが、ロボットの回収を命じていた。


エリスも話を合わせてくれたようで特に追求を受けることはなかった。


俺は説明を終えてから逆に今回の出来事の話を最初から聞いた。


────


瞬間移動装置を使ってまずはロボットを送り込まれたのだと言う。

こちらは許可をしていなかったそうだがハッキングでもされたのだろう。

次々とロボットや戦闘員が現れ、本部はすぐに制圧されたという。

「負傷者は?」

お嬢様は心配そうに聞いた。

「幸いなことに怪我人はいるが命を落としたものはいない。」

俺たちはホッとした。


圧倒的な武力の前に本部の人たちは何もできなかったと言う。

下手に反撃してやられなくてよかったのかもしれない。


戦闘員たちは一目散に走っていったらしい。

どうやってあの場所を特定したのかはわからない。


「どこの国から来たんでしょうか?」

俺は戦闘員たちの言葉がわからなかったので聞いてみた。

「まだわからない。あの捕らえた者たちから聞くつもりだ。」

(やばい)

俺はそこら辺の記憶が残っているといいなと思った。


処分が決まるまで戦闘員たちは投獄されるという。

(きっと送った国は黙秘してあいつらを切り捨てるな)


俺たちは同じことが起きないように何か手を考えないといけない。


「笹川さん、黒田さん、力を貸してください。」

本部の人たちは俺たちに頭を下げた。


「もちろんですわ!私たちにできることはなんでもいたしますわ!」

お嬢様はまたドヤ顔をしていた。


(私たちって俺の意見は…)


お嬢様は嬉しそうに笑っていたので(まぁいっか)と思った。


────

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