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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・変化が無い事が一番楽だよね?

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第99話 公然の秘密だった。

 ここは魔法の使えない王宮内。

 先ほどの議長の反応について思案した私はきびすを返し、


「ちょ! 実依(マイ)さん? どうしたので?」

「おーい! 実依(マイ)ちゃん、何処行くの?」

「ん? 衛兵ゴーレムに感知されない場所!」

「「はぁ……? 感知されない場所!?」」


 親族だけが知るとっても綺麗な中庭へと足を運んだ。


「ん? 今、実依(マイ)と聞こえた? 感知されない……なるほど」


 伯父にも感づかれたけど気にしては居られなかった。



 ◇ ◇ ◇



 中庭に到着した私は本当に超微量の神力だけ練ってステータスを開いた。


「え? ステータスを開いてる? 大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫。ここだけは警備範囲外だから」

「警備範囲外って。何で実依(マイ)が知っているのよ?」

「当然、母さんから聞いたのよ……えっと〈神核保護〉は……あった」

「あー、伯母さんが情報源だったか。って、〈神核保護〉って?」


 私が選択した〈神核保護〉とは複製神核の全てを破壊不能とする完全防御のアクティブスキルだ。これは母さんが足したスキル群の中にあった物だけど、今回の事を見越して用意していたのかもね⦅そうよ!⦆私が王宮に居る事すら気づいているしぃ。


「それって例の追加されていたスキルですか」

「え? 仁菜(ニナ)も知っているの?」

「私達姉妹は全員所持していますね。神核に何かされるとは到底思えませんが」


 私も同じように思っていたけど議長の不可解な挙動を見ると不安になったからね。


(私の言動が不敬だと判断して罰しようと進言したみたいだけど……でも、反議長派しか居ない場所で、どうやって伝わったの? あっ、もしかすると例の下位神かな? 一人だけ挙動が他と違ったし。ずっと、訝しげな表情で私の事を見ていたし……)


 いや、ルゥちゃんが議長に教え⦅身内を売る真似はしないわよ!⦆ごめんなさい!

 こ、この王宮は私達の複製神核を預けている重要な場所だ。仁菜(ニナ)も本拠地にある事までは知っていたが王宮内にあるとは知らなかった⦅びっくりです⦆ね。

 一応、母さんの元にも予備はあるが、


「これは名前の通り、神核を破壊不能化して護るスキルだよ。私達の神核は神素結晶で出来た球体だけど、上位者の神力が相手だと負けてしまう事が稀にあるの。一種の身を護る術なのだけど、今回の議長の動きを母さんが察知していたみたいでさ……」


 何かの拍子に破壊されるのは正直気分の良い状況ではない。

 破壊されても痛みは無いが記憶の欠落が起きてしまうので正直避けたいんだよね。

 複製神核の大元、本体は私の中にあるけど残しておきたい記憶は複製にあるのだ。

 この複製神核とは一種の記憶保管庫の役割も持っているからね。

 なので過去の記憶を護りたいと思っても不思議ではないと思う。


「それで〈神核保護〉が追加されていたと。私も不安なので有効化しておきます」

「それがいいよ。同一色が二つある。どちらが私か分からない可能性もあるから」

「そうですね。早急に有効化しないと!」


 仁菜(ニナ)も大急ぎで〈神核保護〉を有効化した。

 ただね? 私達の今回の挙動が何故か姉妹達にまで波及していたようで、


⦅あっ?! 実依(マイ)仁菜(ニナ)が〈神核保護〉を使った!⦆

⦅これは不味い! 直ぐに護らないとぉ! 夏音(カノン)姉さん達にも!⦆

⦅今、伝えたわ。兄さんにも! 父さんと母さんは、別に良いかぁ……⦆

⦅良いかではありません! 芽依(メイ)ちゃんのおっぱい捥ぐわよ!⦆

⦅それはやめてぇ!? 巫女服から着替えている最中に両胸を捥がないでぇ⦆

⦅この親子は……しかし、複製神核の破壊を試みるバカが居るなんてね?⦆

⦅最近の本拠地は物騒ね。一体、何が起きているのやら? 亜衣(アイ)達にも⦆

⦅うん。今、伝えた。玲奈(レナ)の琥珀を破壊した後にだけど!⦆

果菜(カナ)さん酷い! 綺麗だったのに。また創ってやるぅ!⦆

⦅はいはい。それよりも妹達に念話して!⦆

⦅あ、はい。深愛(ミア)由良(ユラ)は気絶中か。二人は遠隔で⦆

⦅ところで、私達の三バカ娘はどうするの、芽依(メイ)?⦆

夏音(カノン)姉さんに伝えて貰うようお願いしたわ。有効化したわね⦆

⦅父さんも有効化したぞ⦆

⦅俺も有効化したよ!⦆

⦅⦅無視か⦆⦆

⦅⦅ひぅ!⦆⦆


 一部は大騒ぎだったが深愛(ミア)由良(ユラ)は聞かなかった事にした。

 よく見るとステータス欄に親族の有効・無効状況が記載されていた。


「なるほど。これで把握したのですね」

「姉さんが司令塔だからかな? 真っ先に通知が届くみたい」

「妙に騒がしい念話だったけど、本当に大家族ね。貴女達の家って」

「「昨日、全員が集まっていたでしょうに?」」

「それはそうだけどさ」


 有効化した後はステータスを閉じて本来の目的地へと向かった私達だった。


「でも、本当に衛兵ゴーレムが訪れませんでしたね?」

「王宮内にあんな抜け穴があったのね」

「秘密の場所だけどね。そもそも、あの中庭は親族しか入れないから」

「「はい?」」

「王家の一族しか入れない場所と言えば理解は容易いと思う」

「お、王家の一族ですか?」

「でも、私達は入れたよ?」

「それで合ってるよ?」

「「はい?」」

「だって、母さん達の実家だし。ここ」

「「あっ!」」


 その時点で気づくよね?


「私達も立場的には王家だよ。降嫁したとはいえ元王女達の娘だもの」

「「そうだったのぉ!?」」

「表沙汰にしていないだけでね? 経歴を知っているのは一部の上位神だけだよ」

「「それで」」

「宰相の伯父は王宮に残っている王太子ね。王太子妃は父さんの姉だけど」

「!? 王太子妃の方が驚きですよ!」

「「仁菜(ニナ)の驚きはそっちなの?」」


 なお、肝心の議長の年齢は父さんよりも⦅父さんも若いぞ?⦆年下だ。

 出自は末端の下位神で⦅無視か⦆誰が親なのか知っている者は母さんだけだろう。

 そんな下位神がどんな手練手管を使ったのか知らないが、誰よりも早く四番扉の世界を立ち上げ、誰よりも早く破壊されてしまった可哀想な世界神として有名だった。


⦅愛娘に無視された父さんも可哀想だと思わないのか?⦆

⦅父さんは黙ってて!⦆

⦅うっ、すまん⦆


 一番から三番は王家の練習世界なので、実質四番扉からが管理世界の始まりだ。

 ただね、一番から三番もいつの間にか封印措置となってしまっているのがねぇ?


(この百年の間に何が起きたの? 母さん教えてぇ……時期が来たら? そんなぁ)


 吹有(フウ)ではないけど、最近の本拠地は本当に物騒で仕方ないね。


「何か、お父さん、可哀想ね?」

「そうですか?」「気にするだけ損だよ」

「まぁウチの父さんも似たり寄ったりだしな」

「「愛娘への可愛がりは何処も一緒って事で」」


 ウチの場合は余所よりも大所帯ってだけだしね。

 そんな他愛ない話題を行いながら目的としている執務室へと到着した。

 そこは伯父の執務室の隣にある、こぢんまりとした個室だった。


「こぢんまりで悪かったわね」

「思考を読まないでよ」


 室内に居たのは書類決裁中のルゥちゃんであった。

 決裁しながら私に意識を割くとはやりますな?


「王家の者なら魔法使用はいつでも可能だもの。実依(マイ)は知っていて使っていなかったけど」

「「か、可能だったのぉ!」」

「い、一応、外には漏らせない立場だからね?」

「出自不明な議長はともかく、王宮勤務者は全員知っているわよ」

「そうだったの?」

「そうでなければ、誰の誰何もなく執務棟までの出入りは出来ないでしょ」


 そうだったの?

 無人なのかと思った⦅全員空気を読んで〈隠形〉中⦆それで?


「継承権の無い家の娘達だとしても、その身に宿す潜在能力だけは匹敵するからね」

「「ひ、匹敵?」」

「私達の御爺様……陛下と言えば理解は容易いと思うけど?」

「「……」」

「「沈黙するか」」


 単純に処理が出来なくて硬直しているだけだと思う。

 それはともかく。私は応接椅子に座って伝えるべき事だけ伝えようとした。


「そうそう。明覚華(アザカ)叔母さんの世界だけど、邪神は居なかったよ」

「は?」


 目を丸くしている表情のルゥちゃんとか珍しい⦅珍しい!⦆ね?


「数日前かな? そこのポンコツ娘のやらかしが原因で、姉さんと深愛(ミア)がお出かけしちゃってさ?」

「ちょ! 実依(マイ)?! それを言ったら」

「ああ、ポンコツ娘の件なら知っているけど?」

「し、知ってるのぉ!?」

「今、決裁中の書類に、ほら? 始末書だけど」

「のー!?」


 つか、ティルうるさい。

 扉脇に立ったまま騒がないでよね。

 ちょっと、仁菜(ニナ)? 黙らせて⦅承知しました⦆。

 仁菜(ニナ)の魔法で口の周りだけ遮音結界が張られた。


「うーうー」

「「黙らせても唸るか」」

「書類にあるとおり、その年齢で制御が出来ないってポンコツどころではないわね」

「!?」

「研修と称して制御鍛錬に向かわせる理由は分かるかも」


 なるほど。そちらが本命だったのね。

 今は三バカ娘達の制御鍛錬を行っているから一緒に行わせようと依頼したのかも。

 帰ったら夏音(カノン)姉さんの鍛錬に連行かな⦅そんなぁ!⦆泣かないの!


「これのやらかしで、結果的に姉さん達が全て処していたの」

「なるほどね。実菜(ミナ)深愛(ミア)……劇薬共が出張ったと」


 劇薬だって⦅自覚あるからいいもん!⦆深愛(ミア)の反応は無いか。


「ある意味で王家の切り札だものね。あの子達……そこのポンコツも潜在能力は高いけど経験不足が災いしているし」

「そうなんだよね。性質的には知神なのに知識を使い熟せていないしね?」

「放任主義の弊害ね。やっぱり叔母さんは子育てが不向きかもしれないわね」

「そうかもしれない」


 蝶よ花よと育てられた⦅あの子、いつも放置だったけど?⦆そうなの?

 そうなるとネグレクトを喰らっただけなのね。末っ子で甘やかし無しか。


「同じように育てられたから同じように育てると」

「果てがガチのポンコツ女神か」

「何とも言えませんね?」


 何はともあれ、研修中にティルを鍛える事が決定しただけいいか。

 将来的には一人で世界を管理しないとだし⦅マ?⦆当たり前でしょ。

 報告を終えた私は応接椅子から立ち上がり、


「さてと。そろそろ帰るよ」


 仁菜(ニナ)に目配せして退出しようとした。

 だが!? え? マジで?


「「……」」

「どうかしたの? 急に立ち止まって?」

「宝物庫に侵入者有り、衛兵ゴーレムを向かわせて!」

「何ですって!?」


 防衛中は動けないのね。




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