表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・変化が無い事が一番楽だよね?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/108

第97話 バランスが大事。

「そっち行ったよ!」

「わわわわわぁ! えいっ!」

「あー、惜しい! 左三センチ、外側だった!」

「お、惜しいの? 命中したのに惜しいの?!」

「命中はしていますが、気絶していませんからね。よっと」

「あっ……そういう」


 その後の私はティルの鍛錬と並行して仁菜(ニナ)と魔物狩りに勤しんだ。

 確保した魔物は即座に気絶させ、私達の〈空間収納〉に保管していく。

 この魔物達も管理世界へ戻り次第、魔物保管庫に収めて各迷宮核へと登録する。

 登録後は迷宮内で過ごす魔物となり、倒されたら複製したお肉として現れる。

 この複製肉は初期に登録した、姉さんと深愛(ミア)が確保したお肉だけども。


「今回の狩りは確保が名目だからね」

「絶命させたらダメなんですよ」

「それで気絶させていると」


 とんでもない効果を持つお肉の情報が得られたもの。

 それもとても美味しい魔物肉なら当然確保するでしょ?

 ただね、確保しようと思っている魔物の内、配置して良いのか迷う魔物も居る。


「問題は……オーガ、だよね?」

「確保はしますが、迷宮内に配置して良いものか悩みどころです」

「オーガ? 何で? オーガ? 普通に配置すれば良いのでは?」

「そこがティルと私達の価値観の相違だよね」

「価値観の相違?」

「ですね。元々の世界が異なるので、仕方ない部分でもありますが」


 この世界の美味しい魔物の筆頭である脳筋魔物のオーガ。

 私達の管理世界では種族として存在し、地表も地底も魔族として生活している。

 そんな魔族のオーガと、魔物のオーガ。違いは非食用か食用の違いだけだろう。


「魔物達からすれば魔族のオーガも食用扱いだけどさ」

「ま、魔族のオーガ?」

「うん。私達の世界の魔族……魔王も含めて、種族枠に居るからね」

「邪神とは無関係の種族でして、扱い次第では信仰心が揺らぎそうで」

「信仰心が揺らぐ? 同じじゃないの? オーガはオーガでしょ?」


 やっぱり価値観の相違か。

 私と仁菜(ニナ)は顔を見合わせ困惑してしまった。


「「これはどう説明したらいいのだろう?」」

「どゆこと?」


 魔物のオーガと魔族のオーガ。

 ティルは同一視しているけど、同一視が出来ないんだなぁ……これが。


「えっと、ね。先ほども教えたけど、種族として存在している以上、魔物との同一視はとっても危険なのよ。信仰心的に」

「信仰心的に?」

「オーガ族は妹達の信者だから」

「私にとっては姉達ですが」

「オ、オーガ族が信者? 脳筋なのに?」

「脳筋でも、だよ。地表は芽依(メイ)吹有(フウ)結凪(ユナ)果菜(カナ)の信者なの」

「地底は由良(ユラ)だけですね」

「ここで私達が自分達の思惑だけで、オーガ族から不信感を持たれる魔物を置くと」

「最悪、姉達から叱責されてしまいますので。それも鬱陶しいくらい何度も」

「ど、どういう意味で?」

「「信仰心的な意味で!」」

「ふぁ?」


 本当にポンコツなんだから!


(姉さん達と同じ知神とは思えないよ)


 それと仁菜(ニナ)の言う「何度も」とは、私と仁菜(ニナ)の記憶にある分割体のやらかしだ。

 その時は有翼族の魔物を迷宮内へと置いて酷い目に遭ったのだ。

 自分の事ではないのに自分の事として覚えている不思議。

 あれだけは⦅二度と御免です⦆だね。


「先ず基本的な事だけど、信者からの信仰心が少しでも削がれると私達の神力。その出力に必要な経路が狭まる事は知っているよね? 祈願用の神力増幅経路だけど」

「それは、知っているけど」


 知っているけど実感が無いって感じかな?

 世界神は叔母さんでティルはお手伝い要員の下位神だから仕方ないけど。

 これは世界神である私達にとっての死活問題だ。


「私達が自分達の意思で神力を使う分には、経路の狭さは問題にならないけどね?」


 あくまで自分の意思で使う場合は、だけど。

 現在行っている魔物狩りとか、創造欲に負けてあれこれ創る時とか。

 嫌悪のまま邪神を滅する時とか、十全に神力を振るう事が可能だ。

 だがここで、誰かの願いが絡むと途端に出力が制限されてしまう。


「誰かに願われて神力を使う場合、信仰心の強弱次第で出力制限されてしまうの」

「出力制限?」

「願いは信者に限らず叶えられますが、限度があります」

「そうなの?」


 その例となると先の結依(ユイ)ちゃん達かな?

 淫乱エロフの願いを聞けども、淫乱エロフは夏音(カノン)姉さんの眷属で直接的な信者ではない。願いを聞いた以上叶えようとするけど、運命に干渉出来るのは母さんのみ。

 辞令が覆らないのは母さんが許していないから。

 それに信者では無いから神力も一割しか使えず所持金を母さんに吸い上げられただけで終わった。結果的に妹達を巻き込んで体裁を整えただけで終わったのだ。

 母さんが用意した別邸へ。


結依(ユイ)ちゃんの幸運値、本当に低いよね)


 それはともかく。


「一般的には、金持ちになりたいとか、彼女が欲しいとか。そんな俗物な願いでも」

「叶える事は可能です。但し、願われた神が持つ神力増幅経路次第で叶えられない場合もあるのです。叶える力が一、願いの規模が十。そうなると一しか叶えられない」

「残りの九は不可能って扱いになるの。叶わなかった分だけ信仰心も下落する」


 ここで下落するかどうかは願った者の信心次第になるけども。

 一つでも叶えば嬉しいとする者はともかく、全て叶えて欲しいとする欲望過多なら即座に急落するだろう。神にも力の強弱があるのだから、お願いは程々に、だよね?


「最終的に本来の信者達の願いを叶える力を振るえなくなるのです」

「これは極端な話だけどね。本当はもっと細かいから」

「完全に経路が消え去る事は稀ですね」


 その信仰心が結依(ユイ)ちゃんの持つジレンマなんだよね。

 勇者召喚を願われて叶える。信仰心は増す。叶える増すの繰り返し。

 現状は叶え過ぎて、信者共から言いように使われているという。

 神託を発しても明後日の方向に解釈して勝手に動くしね。

 ここで突っぱねて逃げたとすると激減して地表で力が振るえなくなる。

 信仰心のバランスを均一にしたい結依(ユイ)ちゃんだけど、今は逃げに徹しているかな。

 姉さんのおっぱいを揉むという逃げにね……姉さん、ドンマイ。

 姉さんの場合は無駄に増えた聖騎士という狂信者共に頭を抱えているけれど。


「なる、ほど?」

「叔母さんはそういった事を経験から学ばせるつもりだったのかもね」

「でしょうね。でも、今のままですと経験なんて数万年先では?」

「数億年先かもね。超ドSという名の放任主義だし。叔母さん」


 私達の場合は姉妹で協力して意見を出し合って理解したけどね。

 知神の姉達が情報を紐解いて教えてくれた事も要因だろうけど。


「先の消え去った年寄り達の場合、世界管理が行えない愚物だったから量は多くとも邪神相手に一しか振るえなかったって事よね? 誰の願いを聞いたのか知らんけど」

「で、同行したのは世界神となっていた中位神。増幅が叶う者達でしたが、敗走と」


 ここで神力の質も関係したから必然的に敗走したのだろう。

 増幅されたとしても神力の質が悪ければ邪神共への毒にはなり得ない。

 最終的に麻痺毒程度となり邪神共から逃げる手段になった。


「ルゥちゃんの小声の愚痴にあった話だね」

「ええ。どうにか聞き取れましたけど」

「そうなの?」


 だから一部の神達は信仰心を得ようと躍起になる。

 ルゥちゃんの「扉街道の延伸」についての苦言はそんな神達への皮肉だね。


『扉街道を延伸して信仰心が直ぐに集まるなら、苦労は無い』


 増やしたとしても長い年月をかけて信仰心を得なければ、神力増幅経路の増強や補強など夢のまた夢だから。一見さんから得られた信仰心なんて直ぐに消え去るしね。

 邪神共はそういった善神達の懐事情を把握して妨害し、弱体化を進めようとする。

 願いを叶える力を奪えば、世界を好き放題に出来ると思っている、アホ共だけど。

 先ほど私が言った通り、私達が自分の意思で使う分には、経路の狭さは関係無い。

 自分の意思で潰しにかかってくる神に喧嘩を売る。それだけは止めた方がいいよ。

 ここから脱線した話を元に戻すけど。


「私や仁菜(ニナ)の場合、一人でも多く迷宮へ訪れてくれるだけで賄えるけど」

「他の姉妹はそういう訳にはいきませんからね。人族と魔族から個々に信仰心を得ないといけないので」


 信者だから、その信者達から不信感を持たれる魔物を置く事に躊躇するのだ。


夏音(カノン)姉さんに伏せたのも眷属にオーガ族が居るから、なんだよね)


 仮にだけど「私、眷属を食したの?」と勘違いされると申し訳ない気分になる。

 これは食材として見られるかどうかが鍵だが、母さんからも止められていたしね。

 変な勘違いは避けるべきとしたのかもね。母さんからすれば、だけど。

 但し、夏音(カノン)姉さん達にとっての邪神共は甘味料扱いだが。


「私達が危惧するのはオーガを配置して発覚して、その後の探索者達の動きかな?」

「ですね。地底でも地表と似たような動きになる可能性が高いですし」

「う、動きって?」

「人族共が『魔族が迷宮内に居ると騒ぐ』と聖騎士が出張って倒そうと躍起になる」

「魔族達が『同族が迷宮内に居ると騒ぐ』とオーガが出張って救出しようと以下略」

「い、以下略って?」

「「躍起になるって事で」」


 これが露見すると地表では姉さんと妹達が頭を抱える事態に発展する。

 地底なら神殿騎士が聖騎士の立場にあるから同じ事態が起きるだろう。

 魔族が迷宮内に居る。攻められていると勘違いして大軍で押し寄せる。

 由良(ユラ)達が「魔族と違う」と発しても止められるかどうか微妙だしね。

 結依(ユイ)ちゃんは特に無理だと思う。絶対に明後日の方向へ進むから。


「私的には力の増幅に繋がるからいいけど、姉妹から白い目で見られるしね」

「何事もバランスなんですよ。片方だけ良しとするのは喧嘩の元ですし」

「た、大変なのね」


 姉妹で管理すると楽ではあるけど信心のバランスを意識しないといけないからね。


「この際だから名称をあえて変更して別の種族とする?」

「そうですね。外見が完全にオーガ族ですので、知能の無いオーガ族で」

「アホーガ族でいいか。アホウドリっぽいけど」


 話し合った結果、安直だけどアホーガ族の名で登録した私達だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ