第93話 問題は先送りとなる。
一先ず、地底世界のゴミはまだ残っているが徹底的に潰したのでしばらくの間は静かになるだろう。問題は前線基地潰しの際に判明した各地の製油所だろうか?
上空から見た限りだけど、かなりの規模で製油していた事が判明したからね。
惑星核には石油に類する資源は無かったはずなのだが何処から手に入れたのか?
「現状の惑星核資源の有無は亜衣達の管理室に行かないと判断出来ないけど、今は行きたくないな」
「深愛だけ特別扱いするからだよ。ほら? 来い来いって手招きしてるよ」
「い、今は、行きたくないかな?」
五人揃って管理室の窓際から私を手招きしている。
今、あちらに行ったら何が起きるか定かではない。
なーんて、思っていたら背後からも要望が飛んだ。
「私も欲しいです!」
「ここにも対象者が居たし」
「それは居るでしょ。一人だけ優遇しているのだもの」
結依ちゃんまで呆れなくても。
すると深愛が妹を諭すように由良を羽交い締めした。
「こらこら。我が儘を言わないの!」
「姉さん!? も、元はと言えば、姉さんだけ」
「はいはい。おっぱい、揉み揉みしましょうね」
「ちょ!? ど、何処に手を!」
羽交い締めした両手をグワッと由良のおっぱいに重ねた。
「私も育ったけど感触が違うのよね……どうしてかしら?」
「深愛と違って由良は筋肉があるからじゃない?」
「それでかぁ。この感触の正体は筋肉にあったのね?」
「か、か、感じるから、やめてぇ!?」
やばっ。色っぽい由良……その破壊力は凄まじかった。
「あふっ……おふっ……や、やめ、やめてぇ……おっ」
普段は魅せない姿だからこそ、妙な雰囲気にあてられそうになるよ。
「ユ、結依ちゃん。そろそろ帰ろうか? 年末の準備もあるし」
「そうだね。油断すると私も姉さんのおっぱいを揉みたくなってくるし」
「も、揉むのは昼ね? 神社の仕事に差し障りが出るし」
「言質、取ったよ? 徹底して揉むから覚悟してね?」
「うっ……うん。これは仕方ないかな。覚悟するよ」
その後、由良から深愛に対する反撃が行われ、揃って見るも無惨な状態に変化したという⦅⦅やり過ぎたぁ!⦆⦆それは亜衣から報告された妹達の黒歴史となるのであった。
私達は戻って直ぐに年越しそばを食べ、禊ぎを行い、巫女服に着替えて準備した。
その準備の間も亜衣からの要望が続いたけどね。
「それで、私達にも追加してくれるのですよね?」
「追加するよ。但し、年始でいいかな? 今は忙しいし」
「それで構いません」
「なら亜衣達に対するお年玉は属性付与ね。深愛は従来通り」
「お、お年玉?」
ま、亜衣達の場合は金銭を与えても貯金しそうだしね。
丁度良いお年玉になったからいいか⦅お年玉とは?⦆母さんに聞いて。
「姉さん。属性付与をお年玉の代わりにしてしまったか」
「でも、欲する物を与えるのだから、一番無難だよね?」
「確かに」
永続的に使える物になるしね。消える物でも無いから喜ぶと思う。
夏音姉さん達については、三女神の認証後って事で。
「それはそうと」
お札を準備していた私は気になった事を実依に問いかけた。
「例のお肉判明した?」
「あー、うん。結構な分量が有ったけど、判明したよ」
「「ホント!?」」
やはり実依達に委ねて正解だったね。
「えっとね。牛型の魔物だったよ。それも部位によって変わるみたいで」
「部位によって? あー、胸肉とお尻的な?」
「そうそう」
「牛型の魔物……」
それを聞いた私は由良からヒーヒー、言わせられた後の深愛を一瞥しつつ声をかけた。深愛はお守り売り場で準備中だったが。
「そういえば牛型の魔物を調理したのって深愛だよね?」
「はぁ? 調理と言わず狩ったと言ってよ。調理は実菜が行ったでしょ」
「そうなのだけど、私は解体後しか知らないしさ。何か、特徴とか無かった?」
「特徴……雌だったわね。それも発情期の雌牛だったわ」
「「「発情期の雌牛?」」」
深愛の思い出しに私と結依と由良はきょとんとした。
それが主な原因かな?
その肉を喰らって影響を受けたのかも。
「確か、その時は……牛乳も使っていたかな?」
「使っていたわね。クリームシチューとか言って、じっくり煮込んでいたし」
「それが私達の豊胸と豊尻に繋がったと?」
「「多分?」」
「そこだけ聞くと検証が必要そうだよね。貧乳勢って居たかな?」
「元々デカいティルは除くとして、他世界の中位神に提供してみる?」
「いいね。チラッと挨拶した、あの子とあの子、あの子に話してみる」
それが誰なのか分からないけど、結依から見て薄い神って事なのかも。
一方、実依と仁菜は迷宮の未来について語り合っていた。
「発情期の雌牛か……仮に狩ってくるとして何処の階層に配置しようか」
「それなら草原エリアが無難ではないですか? 雄牛も一緒に連れてくれば……」
「そうだね。少しでも繁殖してくれたら助かるかも。胸が育つ迷宮になるかもだし」
胸が育つ迷宮……貧乳勢が押し寄せそうな迷宮になりそうだ。
肝心の効果は女神達が揃って育ったと言えば情報の信頼性も高まるだろう。
「そこだけは豊胸階層と名付けましょうか。ボスまで成長すれば幸いですが」
「そうだね。年明けに800番に行って狩ってこよう! ティルを連れて!!」
「ええ。ティルさんを連れて行かないと世界に入れませんしね」
人族が恐いで実家へと引き籠もったティル。
母親の世界に戻る時期は早いが地上を巡って色々と経験するといいよ。
「な、何か、私の知らないところで話が進んでいるような?」
「「ドンマイとだけ言っておく」」
「はぁ?」
そして年越し……島にある寺から除夜の鐘が鳴り響いた。
こちらはこちらで島内外から初詣を行うために訪れた者達でごった返していた。
「恋愛成就のお守りください」
「はいはい、ただいま」
「家内安全のお守りくれ!」
「少々お待ちを!」
「結婚して下さい!」
「忙しいのでお帰り下さい」
「なっ」
おかしな参拝客が深愛の列に居たが、深夜四時を過ぎる頃には落ち着いた。
「「甘酒美味しい」」
「「お汁粉うまぁ」」
「あったまるぅ……亜衣の周囲は」
「ちょっと、玲奈! 私をストーブの代わりにしないで!」
「「こういう時こそ、亜衣の体温よね」」
「だから!? 優羽も一緒になって……もう!」
亜衣を筆頭とした妹達は奥の控え室で休憩中と。
私と結依と実依は絶賛、演舞中である。
「「おー!」」
母さんに奉納する舞。これは毎年の事なので自然と身体が動く。
感激の声音を上げたのはナギサ母子だったけど。
一方、社会人組は境内にある屋台で商売していたよ。
「クジ引きいがか?」
「これを引けば今年の運勢が決まるかも!」
「今なら、一人三百円よ?」
芽依が未来視したうえで用意された空クジ無しのクジ。
それはお金を払った客。誰に何が当たるか、それも含めて用意したという。
準備が良すぎると思うが、これも神社を維持していくためには必要な事と。
結凪だけは一人、母さんの隣で父さんの手伝いをしているが。
⦅毎年、祝詞を唱えられる神が、神主の手伝いをしているとは思えないわよね⦆
⦅うるさいわね。神事に集中しなさい。あ、幹菜ちゃんが見てる⦆
⦅か、母さんこそ集中したら?⦆
⦅私はいいのよ⦆
⦅理不尽な……⦆
昨年末に事態が変化し、今月中には退陣する事が決まった結凪。
結依から受け取った問題の人形を大学に寄贈した後、妙にすっきりしていたらしい。私と深愛が居なかった一週間の間に起きた事案だったけど。
そうして全ての神事を終えた朝の五時過ぎ。
演舞を行った私達はボートに乗って、
「今年は海上で御来光か……眩しいね? 結依ちゃん」
「そうだね。今年一年、平穏無事に過ごせますように」
「「女神が祈ってるし」」
「別にいいでしょ?」
海上にて初日の出を拝んだ。
他の姉妹達とティルは島の東側……埠頭に並んで拝んでいるが。
「実菜さん。ボートなんて持っていたんだね」
「そうみたいね。戦闘機まで持っていたのは驚いたけど」
「あれ、乗りたかったよ」
「今の私達では乗れないそうよ。色々制限があるみたい」
「そうなんだ。いいなぁ」
そこは新神の三女神に期待してください⦅⦅⦅私達?⦆⦆⦆以外に居ないでしょ?
「今年から十属性か。楽しみね」
「ええ。どのような効果が出せるのかしら?」
「確か、落雷とか?」
「氷も直で出せるみたいですよ」
「鉱物も。必要な時に用意出来るとか」
「何それ? 便利過ぎない?」
「便利だけと、理解して認識するまで大変だけどね」
「「「「「「そうなの?」」」」」」
「油断すると既存の属性で発してしまうから。雷は風、氷は水、鉱は土、ね?」
「「「「「「あー」」」」」」
そうそう。深愛の言う通り、別物と認識しないと使えないってね。
「一度でも慣れるとそうでもないけど、最初は苦労すると思う」
「なるほどね。経験者は語る、か……」
「そう考えると人柱は必要だったのかも?」
「人柱とか言わないでよ!?」
「でも、理解している者が一人でも居ると」
「ええ。助かりますね」
「「ですです」」
与えられて直ぐに使えるなら苦労は無い。
「私達もあの子達が生まれて直ぐは大変だったもんね?」
「だね。座敷童が鉱石の中で固まったり。琥珀かってツッコミ付きで」
「芽依が凍結して、結凪に助けられたり」
「吹有がバリバリに髪を逆立てたり、ね」
「私はスムーズに使えたけど? 最初は引っかかったけど」
「そこは姉さんのお陰だよね? 知識で補填してくれたし」
「そうだね。実依を含む自然属性持ちは普通に大変だったと思うよ」
「あー、姉さんと結依ちゃんは自然属性ではないから?」
「「割とスムーズだったかも?」」
それもあって深愛と同様に由良なら直ぐに使い熟すだろう。
他の妹達は時間が掛かると思うけど⦅がーん!⦆×5
「その理屈だと夏音姉さん達も?」
「時空神の権能は置いておくけど直ぐに使い熟すと思う」
「「兄さんのように?」」
「兄さんのように。弟が使い熟せているから、姉の矜持でもって」
「あー、直ぐに使い熟すかもね、きっと」
何はともあれ、御来光を眺め終えた私達は島へと戻って行った。




