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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・やる事が一杯で目が回るかも?

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第89話 価値観の相違かな。

 翌朝。

 私は気持ち良さげに寝転ぶ深愛(ミア)へと着せておいた毛布を片付け、


「もう食べられなーい」

「何て夢を見ているんだか。おーい、朝だよ!」


 実依(マイ)手製の魔法で用意した朝食の白パンをガボッと放り込んだ。


「ふがっ」

「早く起きないと危ないよ!」

「ほ、ほはほう? ほひひい……へは、ほうほっほ、はひな起こし方は無いわけ?」

「食べながら喋らないの!」

「仕方ないでしょ!」


 こういう起こし方が出来るのは私達が人外だからなんだけど。

 普通に行ったら窒息死すると思う。入れる際に鼻も塞いだし。

 私は簡易テーブルを地面に置き、用意した朝食を食べつつ深愛(ミア)に教えた。


「そうそう。パンツ、新しくしておいたよ。古いパンツも補修したし」

「あ、ありがとう。あら? 肌触りが良くなった?」

「綿パンのままじゃね。デザインは一緒だけど、シルクをイメージしてみた」

「なるほどね。それで、古いパンツは?」

「本日は少し歩くしね。生地で擦れて、白い肌が赤くなるよりはいいかなって」

「配慮は分かるけど、古いパンツは?」

「え? 返さないとダメ?」

「当たり前でしょ!」


 深愛(ミア)のパンツはともかく。

 この二日間、森に居座って情報収集していたが、ようやく終えた。

 というか得られる情報は言うほど無く、邪神の眷属も居なかった。

 無駄に脳筋なエロフが多かっただけね。

 深愛(ミア)にパンツを返して共に朝食をいただく。


「え? もう、終わったの?」

「あちらさんの動きもあるからね。早々に離脱して次の国へ向かおうと思って」

「なるほどね。それで動きって?」

「長老会議で捕縛と追放案が出てて、捕縛の方で決定したから」


 あれは深愛(ミア)が眠ってパンツを穿かせて直ぐかな?

 火精霊達にスモアを作って与えている間に決定した。

 決定後、エロフ軍が森へと出張ってきて私も積層結界の範囲を縮小した。


「捕縛って?」

「捕まえて殺せ……だって」

「何それ?」

「無駄に血の気の多いエロフなんでしょ。滅ぼすのは簡単だけど必要以上に干渉するのも良くないからね。早々に離脱しようと思って」

「それなら早々に片付けて……って?」


 深愛(ミア)は片付けてと言った矢先、周囲を見てポカンとなった。

 

「ちょ! 何よこれぇ!?」


 私達の周囲には裸のまま転がった脳筋エロフ達が居た。

 男達は見たくないので木筒で隠しておいたが、女性達は目の保養となった。

 結依(ユイ)が居たら絶対にお持ち帰りしたであろうつるりんも目の前に。

 私は撮影するだけに留めたけどね、うん。


「そいつらは夜中に捕縛で動いたエロフ軍の残骸ね」

「よ、夜中ぁ!?」

「森の中なのに炎弾を撃ってきてさ。積層結界で弾かれて自滅した的な」

「アホなの? アホしか居ないの?」


 深愛(ミア)の言いたい事は分かる。

 自滅して衣類だけ焼いて裸のままチーンだから。

 女性に当たった時なんて男性を半殺しにしていたしね。

 この世界の女性は相当、強いらしい。

 世界神が最凶だから仕方ないけども。


「アホなんだろうね。この脳筋エロフだけは特殊なのか精霊が見えていなかったし」

「え? 精霊が見えないエルフって、エルフではないでしょ? 普通は見えるもの」

「だから、脳筋エロフ。だよ」

「脳筋エロフ?」


 私の周囲には結構な数の精霊達が居た。

 火精霊だけズルイ的な感じで集まっていただけだが。

 その精霊達が見えず、敬いもせず、魔法を放ってきた。


「エルフとして大事な機能が退化した結果だろうね」

「それはもうエルフ族ではないのでは?」


 うん。こいつらはエルフ族の範疇には含まれないね。


「それもあって脳筋エロフと呼称したら叔母さんに認められたっぽい」

「あらら。脳筋エロフ族という新種族になったのね。だから情報が得られないと?」

「うん。精霊が見ているなら世界の真理に近いはずなんだけど、一番遠い場所に居るからね。人族と大差無い種族だったよ。夜中に訪れる時点でお察しだけど……」


 私も精霊が見える者の前提でエルフ族を探して情報収集したが無意味に終わった。

 この国家のエルフ族は人族の血が入りまくった、成れの果て、なのかもしれない。

 それもあって不寝の番でも暇になる事は無かったね。

 目の保養として訪れてきたエロフ達が居るのだもの。


「それで肉体組成の方は調べたの?」

「それはまだだよ。二匹だけ捕まえてみようか?」

「それがいいわね。異常箇所が分かるかもだし」

「更新時に種族情報を記録する際に必要だもんね」


 私は深愛(ミア)の言う通り、近場に転がる全裸エロフを積層結界内へと転移魔法で取り寄せた。深愛(ミア)はテーブル等を〈空間収納〉へ片付けていたが。

 何かの拍子に目覚めて壊されないようにするためだろう。

 無駄に感じて暴れるなんて事もあり得るから。

 先ずは身体を隅々まで観察して記録していく。


「地味に胸とお尻がデカいね……ここは未開通か」

「お腹も腹筋が割れて……顔はブスだけど」

「うん。体型はともかく、この顔は無いな」

「美形の多いエルフ族で、ここまで崩れているのは珍しいかも」

「周囲の女性も似たような感じだし、そういう種族なのかもね」


 次は木筒で隠した男性も取り寄せて記録していく。


「あら。可愛い」

「それが言えるのは実菜(ミナ)だけじゃない?」

結依(ユイ)達も同じ事、言うと思う」

「この姉妹は」


 こればかりは見慣れているかどうかだよ。

 深愛(ミア)の場合は⦅要らん事、考えないで!⦆へいへい。


「どちらも鑑定した限り、人族の血が混じっているね」

「ということはハーフの集落ってこと?」

「クォーターも居るから混血種ってことかもね。人族とエルフ族の」

「だから脳筋エロフか。美形が居ないのも、混血の影響と」


 そうとしか考えられないよね。

 私は使用許可が出されていると思いつつエロフ達に過去視を使ってみた。


「系統を見る限り途中までは近親婚だよ」

「それがどうして混血になるのよ?」

「どうも人族から要らぬ情報を得て近親婚は危険と見做されて混ざったみたい」

「はぁ? エルフ族は精霊に近しいから、近親婚でも影響しないでしょうに」

「無駄な価値観を押し付けたがる人族の商人と交易した弊害かもね、きっと」

「人族の商人が元凶か」


 私は過去視を止め、確保したエロフ達を元の場所へ戻した。

 ぐへって声音が各所から響いてきたが気にしても仕方ない。


「これ以上の情報は得られないから、そろそろ向かおうか」

「そうね。増援が訪れても面倒だし」


 こうして私達はその場の片付けだけ行って森の端まで転移で移動した。

 そこから先は歩きだったが、森から出ればエロフ達も追撃してくる事は無かった。



 ◇ ◇ ◇



 Side:結依(ユイ)


 ティルと合流した私は自分の世界へ戻る前にティルの世界の神界へ降りた。


「何ここ、殺風景が過ぎる」

「それは言わないで。ウチの母さん、無駄を嫌うから」

「無駄、ねぇ? ああ、だから娘が一人しか居ないのね」

「……」

「相当、ポンコツだけど!」

「返す言葉も御座いません」


 神界から叔母さんが居るであろう管理室へと顔を出した。

 だが、叔母さんは管理室には居なかった。


「あら? 留守?」

「おそらく、今は降りているのかと」

「降りている? ああ、普段は下に居るのね」


 挨拶してから帰ろうと思ったのにね。

 降りているならどうしようもないか。


「自身を祀る教会で教皇として仕事をしてるから」

「何それ?」


 この動きは想定外だよ。

 私達でも上から見て指示を出すだけなのに。

 指示してもまともに通じないけども。


「世界神自らが教皇? 直接干渉しているって事?」

「うん」


 それなら挨拶は難しいかな。

 そうなると一筆認めてから去るしか無いか。


「姉さんに伝言を頼もうと思ったのだけど」

「それならこちらから伝えたら?」

「いや、穴がある神器を使うのはちょっと、恐いかなって」

「あ、穴?」

「これって相当古い奴でね。父の世界でもボロボロだったのよ」

「そうだったの?」


 そうなのよ。あちらはとっても危うかったけども。


「で、ティルが再研修となる主な理由はこの神器にあるかな?」

「え? 今回の再研修って始末書の事が原因じゃ?」

「それもあるけど、一番の原因は神器の更新にあるね」

「神器の更新?」


 叔母さんも詳しく説明していないようだし、伝えないとダメかな?

 そうしないと再研修してまで学ぶのかって、疑問視するだろうから。


「え? 更新するの? これを? 最新版に?」

「うん。姉さん作なんだけど、穴を完全に潰しているからね」

「ミ、実菜(ミナ)と、私との、力の差を感じるわ」

「それはそうでしょ? 三千年以上も経験差があるのだし」


 千年未満の女神が私達と同列だったら逆に恐いわ!


「今回の再研修は姉さんが更新した後、神器を使い熟せるようにするため、かな。私達の世界は全てそれだから、慣熟するまで研修は続くかもね? 超の付くドSだし」

「そ、それで再研修……」


 叔母さんの意図に気づいたティル。

 顔面蒼白なのは慣熟出来なかった時の事を想定して怯えているのかも?

 ティルってドMではないから普通に恐怖するもんね。


「神器は使えないけど、こちらはいけるかな?」

「ねぇ? そ、その板は何なの?」

「通信神器ね。似た世界だから魔力場もあるし、どうにか繋がると思うけど」


 私はメッセージを開き、姉さんへと上の状況を伝えておく。

 叔母さんの下での動きも含めて打ち込んで送信した。


「反応は……まだ既読が付かないか。送れたとは思うけど」

「……」

「そんな近くで凝視しなくても」

「これだけで連絡が取れるの?」

「多分? 私達の世界だと使えるからね。普通に」


 半信半疑なティル。

 しばらくすると、ピコンと音が鳴った。


「既読が付いて、了解って返ってきたね」

「す、凄い!」

「ん? 実依(マイ)達に、お土産……魔物肉? 私の〈空間収納〉に?」


 返信が届いて私の〈空間収納〉にも大量の生肉が届いた。


「お? オーガ肉? オーガって食べられるの?」

「この世界では普通ですね」

「そうなのね。美味ってあるけど」

「貴重なお肉ですよ。現状は狩れる者が少ないので各地で大量発生していますが」

「大量発生。なら、追加で狩ってもらうよう……送信っと」


 魔物肉。

 私達の世界だと実依(マイ)がたまに狩っているだけだからな。

 というかオーガは食い物ではなかったはず?




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