第83話 ドSの基準は何だろう。
※ 時系列の齟齬を発見しましたので部分改稿しました。
Side:結依
まさかそんな真相だったとは。
「元生徒会長も大変だったのね」
「真冬の海に落として放置なんて酷い男子も居たものだ」
「しかもカナヅチとか。助けなかった男の子達は何を考えているの?」
「それこそ親の顔が見てみたいわね? 保護者会で見た人達かしら?」
「俺が居ない間に島の民度、下がったな」
まぁ兄さんが島に居ない間にあれこれ増えたからね。
それらは全て過去改変の影響で増えた住民なんだけど。
兄さんの脱線はともかく、姉さんの予定を聞いた私は、
「それで姉さんはそいつらをこの後?」
改めて問いかけてみた。
「うん。深愛と一緒に罰してくるつもりだよ」
「許せる訳が無いもの。助けるならともかく、逃げたからね」
冷静な姉さんはともかく深愛は相当、お怒りのようだ。正義感が強いものね……この子。
お股は緩いけど⦅緩くない!⦆そう?
すると芽依と吹有が大人としてやり過ぎないよう注意した。
「でも、人殺しして苦しんでいる子なら情状酌量はしなさいね?」
「逃げたように見えて大人を呼びに行っている可能性もあるから」
それは姉さんが〈遠視〉で知った一面だけだから。
背後関係とか詳しく調査せずに罰することは出来ない。
実依のやらかしで思い知ったしね? 私も。
「その辺は結依と同じように過去視で判断するよ」
「でしょうね。碌でもなかったら好きなだけ罰すればいいけど」
「でも、碌でなしの加害者達にも親が居る。それだけは忘れないようにね?」
「「はーい」」
碌でなしの加害者達にも親が居る。
つまり⦅ユーカ先生の毒親みたいに絡んでくると⦆言いたいのかもね。
大人達の意見を素直に聞いた姉さんは外に出られないフウコを私に預けた。
「じゃ、これから処してくるよ!」
「行ってきまーす!」
処した後にフウコ達の戸籍を用意するそうだから。
今は戸籍が無いから〈隠形〉しないと出られないけどね。
すると姉さんが振り返りつつとんでもない事を口走った。
「そうそう。フウコに私達の素性を教えておいて」
「え? まだ、明かしていないの?」
「「うん」」
ちょ! 私達に説明を丸投げ?!
そこでふと、フウコの容姿が姉さん達に似ていたので、私は疑問気に問いかけた。
「お、教えるのはいいけど……丸投げにする理由は何なの?」
「「同類だから!」」
「同類? 同類……はっ!」
その一言で理解した。
「ちょ、ちょっと、それ、辛くない?」
「ですです。それこそ姉さん達が行った方が?」
理解したのは私と由良だけだ。
姉達の特徴をよーく知っているからだけど。
「ちょっと、どういう意味よ?」
「教えるくらいならやるけど?」
ああ、知らないのは妹達だけか。
いや、知ってはいるけど忘却の彼方にあるだけね。
兄さんは訳知り顔で家へと戻っていった。
「説明は任せる。俺はバイクのメンテしてくるから」
兄さんも駐輪場にバイクを置くのね。
あちこちで走ったからボロボロなんだろうな。
(というかあちらの家の家具なんかも私達が用意しないとダメだよね?)
今は母さんを祀る神棚と一部の建具しか存在しないから。
淫乱エロフが寝泊まりする事も考慮すると家具等の用意は必要だった。
買ってきてもいいけど。兄さん……車⦅メンテ後ならいいぞ⦆ありがとう!
そうなると説明は? 任せるか⦅ですね!⦆大人達に丸投げだ!
「説明したいなら芽依達にお願いするよ。家具を用意しないとだし」
「私も手伝います!」
「ちょっと。急にどうしたのよ?」
「実菜から任せられたのに、私達に説明を投げるの?」
「いや『教えるくらいならやるけど?』って、言っていたし」
「はい。言質、取りました」
「うぐっ」
言ったのは芽依ではなく吹有だけど。
「誰が説明しても内容は同じだから任せるよ。マンション内で行ってもいいし」
「そうね。ここで立ったまま説明すると疲れるだろうし……」
「「疲れる?」」
転移門前から戻ってきた深愛は芽依に鍵を渡し、
「はい、家の鍵」
「「鍵?」」
姉さんと共に芋畑へと出ていった。
「鍵って。鍵束じゃないの、これ? 二十四本?」
「どの部屋で説明してもいいって事かしら?」
「まぁ、あのマンションの造り。気になっていたし……構わないわね?」
「そうね」
芽依達は頷きあって、きょとんとしたままのフウコを連れ、マンションに向かったのだった。これから始まる質問タイムに疲弊するのかな⦅あっ!⦆乙!
というか、あのマンションの形状、見覚えあるよ?
「あれってもしかして?」
「結依さんは知っているので?」
「全室ではないけど、三階の角部屋なら暮らしていたし」
「暮らしていた?」
「私学の女子寮、なんだよね」
「女子寮? それって、夏音姉さんが日光浴をしていたとかいう?」
「棟は違うけどそうだと思う」
吸血姫が日光浴というのもおかしな話だけども。
◇ ◇ ◇
本土の家に戻った私は兄さんがメンテするバイクの隣に自分のバイクを置いた。
「結依のバイクもボロボロだな」
「海沿いに置いているからどうしてもね」
「海風か」
オイル交換こそ行ったけどね。
「私のバイクのレストアは時間が取れた時に行うよ。多分、姉さんもだし」
「そうか。それなら俺の工具、好きに使っていいぞ。終わったら置いておくから」
「ありがとう。兄さん、助かるよ」
バイク用の工具もバカに出来ないほど高いからね。
創ってもいいけど硬度面でバイク部品が負けるというね。
それなら買った方が安上がりだったりする。
駐輪場から家の中に入り、キッチンから順に各種道具を用意していく。
「まな板は材木の残りを使おうかな?」
「おや? もしかして、それが創造空間ですか?」
「そうだよ。一人に一つ。大きさは自由自在。木くずが出ても周囲が汚れないの」
「へぇ〜。便利そうですね?」
「まぁ便利ではあるけど、人前では見せられないんだよね」
「見せられない?」
「反対側から見たら分かるよ」
私があっけらかんと言うと由良は私の対面に移動してげっそりした。
「うわぁ……断面図」
「空間に腕を入れるからね。私達がお尻を取り合う時に見える白い膜が無い状態と言えばいいかな?」
「あれですか。これは外では示せませんね。お尻なんて入れたら?」
「色々見えるよ。地上で助けられた何処かの誰かさんみたいに」
「危うく流血沙汰になりかけた、あれですか」
それがあるから人前ではあまり使えないのだ。
普段は〈空間収納〉内で創ることが多いのもそれがあったりする。
今みたいに採寸込みで創る際にはこの方法を採るしかないけども。
「まな板、完成!」
「おぉ! 綺麗ですね」
「父さんの世界の神界産だしね。簡単にはボロボロにならないよ」
「なるほど」
こういった道具はどうにかなるんだよね。
電化製品等は追々買い集めないとね。
魔道具を置くと違和感が仕事するから。
キッチンの後は各部屋を巡回して寝具を中心に用意していった。
私達の個室として使えそうな部屋には姿見を置いた。
「この姿見って?」
「一種の転移門だよ」
「社務所に有った?」
「そうそう。例えるなら芽依が忘れ物をした時に使えるように」
「それで設置したと」
置いたのは神棚の部屋の近く。
奥にある部屋は女神達の部屋ってことで。
兄さんの部屋は入口側にあるけどね。
出かけることが多いのと迎撃用途で。
「兄さんで思い出したけど、夏音姉さんの部屋も要るかな?」
「あー、置かなかったら、置かなかったで、文句が出そうですね?」
「出るよね? 滅多に本土には出張らない人だけど」
「淫乱エロフと話し合いするスペースは必要でしょうね」
「幹菜ちゃんの部屋は当然用意するけども」
「姪っ子の部屋ですからね」
母親の対応はどうしようかとなるのに娘は決定事項。普通に怒られる対応だよね、これ?
部屋の用意を終えた私はスマホを取り出して淫乱エロフに電話した。
まだ校内に居れば安心なんだけど?
「先生、今大丈夫ですか?」
『大丈夫よ。何か用?』
「家が見つかって用意が出来たので、帰り道でいいので寄って下さい」
『もう用意が出来たのぉ!?』
「ええ。まだ家電周りは少ないですが」
『それでも、もう? 分かったわ。帰りに寄ってみる。場所は?』
「裏門の……正面です」
『ふぁ?』
ホント。近いと思ったら近すぎ事案だよね?
こうなると免許持ちの申請しておかないとな。
校則違反になるよりはマシだと思う。
そうしないと外で乗れないし。
『残業しても直ぐに帰れる……頑張ろう』
そう言って淫乱エロフは電話を切った。
この家のお陰で本校勤務となる眷属達が現れても影響は出ないだろう。
早々、辞令が下るとは思えないけど⦅フラグ⦆母さん!?
◇ ◇ ◇
兄さんのバイクメンテ後、芽依の会社の車を出してもらって大物を中心に買ってきた。時刻は相当遅くなったけど、本校の方はまだ灯が点っていた。
「こんな時間まで仕事?」
「教員の仕事は大変そうだな。幹菜は大丈夫なのか?」
「本校に比べて分校は学生数が少ないから大丈夫だと思う」
「そうか。無理しなければいいが」
車から大物を降ろして部屋へ持ち込む際に〈空間収納〉を利用した。
持ち運んでもいいけど家のあちこちに傷が付くからね。
「運び込み完了っと」
「結構な分量を買ったがあっという間だな」
「それだけこの家が大きいって事だろうね」
ちなみに、由良は管理世界からの呼び出しでこちらには居ない。
『えー!? また侵攻!! 自動迎撃では賄いきれない? うそぉん!』
その時だけは素の由良が出ていた。
大急ぎで帰って、家に残った私は途方に暮れた。
これから買い物だって時に邪魔されたからね。
しばらくするとフラフラ状態の淫乱エロフが裏門から出てきた。
「疲れた。ああ、ここか」
「お疲れ様です」
「お疲れさまぁ」
私達は家の前で車を返す段取りをしていたけどね。
「この子が姉さんの?」
「そうだよ」
「こちらの方は?」
「いつも姉がご迷惑をお掛けします」
「姉?」
疲れていた淫乱エロフ。
姉と聞いてポカンとなり顔立ちから把握した。
「夏音さんの弟!?」
「そうそう」
「もう一人の姉も迷惑を掛けていると思うけど、そちらは放置でいいからね」
「何気にドS!」
「そうか?」「そうかな?」




