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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・やる事が一杯で目が回るかも?

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第77話 脱線したから元に戻す。

 私がお試しで繋げた場所は女神の庭と呼称している空間だ。

 扉を開けた瞬間はとんでもなく明るかったが慣れてくると普通に白い空間だった。


「こ、ここが庭? 何も存在しない白い空間ですが?」


 入った瞬間の由良(ユラ)は目を瞑っていたが、慣れてくるときょとんとしたのち、キョロキョロと内部を見回していた。


「白い空間だけど、姉さん達の置き土産はこれでもかと存在している場所だよ」

「お、置き土産……あっ! 神聖力?」

「そうそう」

「先ほどの明るさは姉さん達が発した神聖力の閃光だったのですね」


 私の姉さんと由良(ユラ)の姉である深愛(ミア)が発する輝き。

 その神聖力がこの空間には圧縮された状態で常に満たされている。

 世界に産まれてから力が発現し、制御するために一人で放り込まれた姉さん。

 制御して外へと出てきた時には、この空間はとても神聖な場所へと変じていた。

 扉を開け放っていても漏れ出る神聖力。どれだけ時が流れようとも内部の力が枯れるなんて事が無いと思える程、強烈な力で満たされているのが空間の特徴であった。


「実はここ、私達の世界だと召喚者が最初に訪れる空間と同じ場所なんだよね」

「えっ! か、母さんの世界にも白い空間が存在していたので?!」

「当然、存在するよ。送り出す側の召喚機能は使っているけど、受け取る側の召喚機能は使わないから、娘達の練習空間で再利用しているだけでね」

「はわぁ……再利用ですかぁ」

「確か、深愛(ミア)が産まれた直後にも放り込んだとか、母さんが言っていた気がするけど、聞いたことない?」

「姉さんが放り込まれ……あっ! 自我が目覚めたら白い空間に居たとか言って?」

「その件だね。私達姉妹は数時間で制御出来たから、そこまで利用していないけど」

「ではここは、姉さん達にとって、思い出深い場所でもあると?」

「自我の無かった深愛(ミア)はともかく、姉さんにとってはそうかもね?」


 身体の内側から溢れ出る神聖力をどうにかして制御していった場所でもあるから。

 ちなみに、由良(ユラ)達姉妹は深愛(ミア)だけが白い空間に放り込まれたとの事だ。深愛(ミア)以外は兄さんに付いていって、実戦で力の使い方を覚えていったそうだ⦅懐かしいですね⦆姉妹では深愛(ミア)だけが特別なのだろう。


「あの神聖力ですからね。直視すると目が潰れる」

「力を発揮する時はサングラスが必須なんだよね」


 なので力を解放する時は一言告げて欲しいと妹達と嘆願した事もあったね。

 私だけはサングラスを常備しているけども。


「この空間も母さんの庭に通じていてさ。丁度、床が光っている場所に」

「ああ。転移門があるのですね?」

「そうだよ。転移門の出入口は芋畑のど真ん中なんだけどね」

「それって、大きな噴水がある?」

「そうそう。水やり用の大噴水ね」


 何故そのような所に大きな噴水があるのか疑問視した事も多々あるが、母さんの気まぐれで置かれた品だと、庭で芋を焼く父さんから聞いた事がある私であった。

 本当に気まぐれだからね⦅何よ?⦆何でもないですよ?

 実際に転移門を潜ると畑の奥に母さんのお尻がデデーンと見えた。


「ここに出ると……収穫中?」

「かもね。というか少々色が違うから新種かもしれない」

「新種。新種の芋ですか」


 再度、転移門を潜って船室へ戻った私と由良(ユラ)は潜る前の話題に戻った。


「母さんの新種はともかく、あの経路を通ればいつでも行き来が出来るでしょ?」

「ですね。神聖力で満たされている以上、邪神は忌避して寄りつかないでしょうし」

「仮に寄りつこうにも即座に浄められる弊害があるからね」


 今までで一番安全な通り道となるだろう。


「ただね……内部が無駄に殺風景だから、慣れていないと発狂すると思うのよ」


 全体が真っ白だしね。影は出来るが、それだけだ。

 それこそ姉さん達に相談すれば⦅思い出の場所にマンション建てるよ!⦆マジで?


(姉さんがそれでいいなら……)


 もしかすると眷属達が白い空間に引っ越ししてしまうかも?

 いや、それは無いかな。


「それと出入り時の目隠しも必要ですね。神力が見える者に限りますけど」

「例えるならナギサとか?」

「ナギサ母子ですね。油断ならないのは」


 当面の利用者は淫乱エロフと兄さんくらいだろうから、見える者となると兄さんに配慮する必要はあるかな? とんでもなく眩しい空間だしね。


「物理的にはサングラスを配るかな?」

「魔術的には?」

「出入口付近に偏光結界を付け足すくらいかもね。目が慣れたらそうでもないけど」


 結局、慣れないと通り抜け出来ないのだけどね。


「サングラスが最適解だろうね。こちらでの魔術はあまり使いたくないし」

「そういえば芽依(メイ)さんから口止めされた事がありましたね。何故です?」

「対魔術で飯を食う面倒な連中が居るからね。嗅ぎつけられたら堪らないから」

「それで、ですか」


 奴らに気づかれたら折角買った家ごと破壊されてしまうだろう。

 兄さんが応戦したら更に戦火が拡がって目も当てられなくなるし。

 それだけは困るから物理手段が安全で安心かもね。


「それに淫乱エロフは見える者ではないし」

「そうですね。サングラスが無難と言えば無難か」


 なお、扉は魔術要素の無い神秘で構成しているから壁しか見えない。

 扉の出入りを目撃されないよう注意は必要だけどね。


「どのような家を買うかまだ分からないから、扉の設置場所は追々相談かもね」

「ですね。決まってからという事で」


 淫乱エロフの願いを叶える。

 その件については一先ず保留だな。

 家が決まらないと話にならないし。

 三等船室にて寛ぐ淫乱エロフは置いといて。


「本日の本題を話し合おうか。到着時間は大丈夫そう?」

「そうですね。到着まで一時間ですから」

「一時間なら、どうにかなるかな?」


 私と由良(ユラ)は用事としていた本題を話し合う。

 それは結凪(ユナ)から受け取った情報の精査と問題医師の処遇であった。


「外科医としての腕はあると。結凪(ユナ)と比べると、月とすっぽんだけど」

「医術神とタメを張る技量を持つ者は少ないのでは?」

「そうなんだけど、ね。稀に神の手を持つ者も居るけど、その人達くらいかな?」

「腕はともかく、問題となるのは診断力の方ですよね」

「だね。誤診だもんな……何処を見間違えたら胃潰瘍になるんだろう?」

「手紙には早期の場合は見間違えるとありますけど。末期ですもんね?」

実依(マイ)から聞いたけど、先生……胃カメラも飲んでいないらしいよ」

「え? そ、それでどうやって?」

「単純に血液検査かな?」

「それだけ?」


 結局は血液検査の結果を見ることなく胃潰瘍と診断した。

 経緯は医師である結凪(ユナ)が調査するから私達は結果を待つしかない訳で。


「ここに美加(ミカ)が居たら過去視を使ってもらうところなんだけど」

「今日は当番ですからね。芽依(メイ)さんは?」

芽依(メイ)は年末商戦に向けて忙しいからね。年始の福袋の用意もあるし」

「福袋? それは一体?」

「お菓子が色々入っているお纏め品かな。一袋千円で買うような商品だよ」

「そのような品があるのですね。それを聞くと姉さんが興味本位で突撃しそうです」

「それで散財しそうだよね? 最後は食べられない物量になって姉妹に分け合うと」

「姉妹に分け合う? 経験があるので?」

「姉さんがやらかしたからね。結局、実依(マイ)が一人で食べちゃったけど」


 おっと、福袋で話が脱線したよ。


「今回に限っては美加(ミカ)芽依(メイ)も関われないから、私がヤブ医者を視認して過去視で見るしかないと」

「え? 見えるので?」

「姉さんが以前教えたと思うけど、使おうと思わないと使えない権能なのよ」

「そういえば?」

「聞いた事があるでしょ? 私達の場合、母さんの許可を取らずとも行えるのよ。力の範囲が狭いからっていう理由もあるのだけど」


 美加(ミカ)芽依(メイ)だと母さんの許可が必要になるが。


「そうなのですね」

「その代わり、当人を直接見る必要があるから出張ると」


 肝心のヤブ医者が何処に居るのか?

 それだけは分からないから、到着後は結凪(ユナ)の病院を訪ねる予定だ。


「では? 過去視の結果次第で罰すると」

「だね。行うとしたらどんな罰がいいか? 結凪(ユナ)が既にハゲにしていると言っていたから、頭髪以外で罰するしかないかな?」

「え? 既にハゲていると?」

「ハゲているみたい。先の食中毒事案で関わってきたらしいから」

「ああ、あの時ですかぁ」


 それは診療所を通さず保健所の職員を呼んだ案件だ。

 女医と共に役場の女性職員もハゲになり、今はウィッグを着けているという。

 ハラハラと頭髪が落ちる様は髪を労る女性にとって最悪の一言に尽きるよね。


「ところで神罰での処刑は行わないので?」

「それは極悪人だけになるかな? 神といえど無闇に人は殺せないから」

「そうなのですね。いえ、夏音(カノン)姉さんが結構滅しているので」

「あの人は特別だよ。それは兄さんと姪っ子もだけど」


 あの姉弟と姪っ子は生死を(つかさど)っているしね。


「若い頃の姉さんも頻繁に滅している事が多かったけど、基本は殺せないからね」

「わ、若い頃? 今も若いのでは?」

「それは由良(ユラ)達が生まれる前の話だから」

「わ、若い頃になりますね。そこだけ聞くと」

「内緒だけどね。母さんと同じで若いからってツッコミが」


 飛んでくると言おうとして頭上に何かが落ちてきた。


「痛っ!」

「え? 芋?」

「これは母さんかな? 姉さんなら芋ではなくスパナが落ちてくるから」

「それはそれで凶器では?」

「凶器だけど無事だからね」


 基本、積層結界で護られているから。

 緩和された衝撃は貫通してくるけど。

 緩和するから痛いだけで済んでいるけれど。


「焼かれてない芋か。鑑定したら新種だよ〈変化芋〉だって」

「〈変化芋〉? どのような芋なので?」

「姿を変える事が出来るみたい。夏音(カノン)姉さん達のスキルと同じみたい」

「あー。あれですか」


 淫乱エロフが人族に化けているのと同じだね。

 効果は一日だけだが、魔力を与えて焼いた者の想像した代物に変身するという。

 それは人族が食べても変身するそうだ。


「用途不明だから〈空間収納〉に入れておくよ」

「それがいいですね」


 流石にこの芋を使う機会は訪れないと思うし。


(でも母さんが未来視して? それは無いか?)




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