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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・やる事が一杯で目が回るかも?

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第75話 間一髪だった。

 Side:芽依(メイ)


 クリスマスとなった深夜0時。

 社務所のインターホンが鳴らされて受話器を取ると駐在が画面に映った。


(はぁ? このタイミングで? 何用かしら?)


 つい先ほど管理世界から戻ってきた実菜(ミナ)結依(ユイ)から事情を聞いた私は、裏の祠について判明した事を伝えたのだけど、渦の本体が収められている祠へと細工したとされる駐在が神社へと突然現れて不審に思った。

 噂をすれば影がさすと良く聞くが間が悪すぎるでしょうに。


「ご用件は?」

『年末年始の警邏についてご相談をと』

「警邏? それは深夜警邏の話ですか?」

『ええ。最近、何かと物騒ですので……』


 物騒って貴方の存在が私達にとって物騒なんだけど?


「そういった話は……昼間に行うべきでは? 深夜に訪れるのは非常識でしょう?」

『あー、はい。非常識なのは存じていますが。昼間は留守でしたので』


 留守って母さんが居たでしょうに。

 普段からどうあっても母さんと顔を合わせようとしない駐在。

 この駐在と相対するのは私と結凪(ユナ)、娘達だけだ。

 吹有(フウ)が出た時は用事が出来たとして颯爽と逃げるしね。


「留守ですか。いえ……確か今日は母が居たはずですが?」

『そうでしたか? なら、気づかなかったのでしょうね。何度も鳴らしたのですが』

「鳴らした? ああ、昼間は鳴らしても無意味ですよ」

『無意味? ですか?』

「本殿の方に居ますからね。そちらの扉をノックすれば出たかもしれません」

『そうでしたか。以後、気をつけます』


 気をつけて近寄らないようにするつもりでしょ?


(今日はやたらと粘るわね? いつもなら適度に流して帰るのに?)


 これは何らかの思惑があって訪れたとしか思えないわね?

 昼間の妨害結界といい島外から念話が出来なかったのはこいつの所為だから。


『ですので、今から外に出てきていただけませんか?』


 私が思案する間も大事な話とか何とか言って引っ張り出そうとする駐在だった。


「明朝、訪れてください」

『そこを何とか?』

「これ以上、非常識な行いをするなら、県警に苦情を入れますよ?」

『うっ』


 大体、深夜に女だらけの神社へ訪問とか、非常識が過ぎる⦅父さんの存在無視?⦆父さんは黙ってて!⦅は、はい⦆全く、もう!


『ですが、渡さなければならない物もありまして』


 今度はそうきたか。

 私は溜息を吐いたのち、受話器を戻す。

 外の映像はそのまま残して実菜(ミナ)達に言付けした。


「少し出てくるわね」

「「うん」」


 不安そうな実菜(ミナ)結依(ユイ)

 私は神聖力を伴った積層結界を全身に張り巡らせ社務所まで向かったのだった。


「今回は今までと違い過ぎるわね? 今の内に夏音(カノン)姉さんにも協力を仰ぐか……」


 私はそう呟いて社務所へ向かう前に裏のアパートへ立ち寄った。

 アパートに住まうのは一部の眷属達と夏音(カノン)姉さんの親子だけだから。


「「めーん!」」

「ラーメン?」

「「違うって」」

「あ。芽依(メイ)さんだ!」

「「「こんばんは!」」」

「はい。こんばんは」


 アパート前にはサンタクロースを待っているのか知らないが幼子達が遊んでいた。

 この子達は外の世界に出すと危険だから昼間以外は庭の中で遊ばせているのよね。

 この子達の種族は有翼族(ハーピー)

 子供達は人族に変身出来ないから普段はステーションで遊んで、夜は庭の中で過ごしている。親が仕事で居ない時は至音(シオン)姉さんが有翼族(ハーピー)に変身して面倒を見ているのだ。大変だけどやり甲斐はあるでしょうね。


(男の子一人に女の子二人。男の子は少しバカっぽいわね。異母兄妹だったかしら)


 それはともかく。駐在を外に待たせているので私は目的とする部屋の扉を叩く。


『はーい!』


 声の主は幹菜(マキナ)ちゃんね。

 ドタバタと足音を響かせて玄関に向かってきている。

 玄関扉が開くと、


「あ。こんばんは。芽依(メイ)さん」

「こんばんは」


 大変可愛らしい幹菜(マキナ)ちゃんが出てきた。


(こちらが本来の容姿なのね?)


 実年齢が十二才と聞いていたから驚きでしかないわね。

 私達の実年齢を聞いた時の夏音(カノン)姉さんと同じ心境かしら?


「お母様、居る?」

「あ、はい。呼びましょうか?」

「お願い出来る? 正直に言うと急ぎなんだけどね」

「急ぎ、ですか?」

「ええ。邪神関係と伝えてくれたら助かるわ」

「!? わ、分かりました!」


 私がそう伝えると大急ぎで室内に入っていった。

 このアパート内の内部空間は驚くほど広いのよね。

 実菜(ミナ)が創った時よりも拡張されているみたいでアパートの中にログハウスが出来ている。家の中の家、勝手知ったる建物の方が安心なのでしょうね。

 しばらく待つと寝間着姿の姉がニコニコ笑顔で顔を出した。


「ネ、ネグリジェ?」

「悪い?」

「いや、似合い過ぎているから」

「褒め言葉として受け取っておくわ」


 大きな両胸が晒されて薄手のパンツが母さん譲りのお尻を覆っている。

 お尻の大きさで言えば私達の方が四センチ大きいのだけど色気かしら?


「あ、あまりじろじろ見られるのはちょっと」

「ごめんなさいね?」


 そうして私は外で待ち構えている駐在について教えてあげた。


「ほぅ。時空神の権能持ち? あの駐在がねぇ?」

「こんな深夜に訪れたから不安じゃない?」

「確かにそうね? 非常識が過ぎるわね。いくら警察でも訪れる時間は考えないと」


 すると夏音(カノン)姉さんは右手人差し指から一本の神力糸を放出して透明化を行ったのち社務所に向かって伸ばしていく。私も〈遠視〉で社務所外を視認した。

 苛つきながら私を待つ駐在の正面、糸目に向かって分裂した神力糸が突き刺さる。


『ぐわぁ!』


 突然の劇痛。両目を押さえてゴロゴロと暴れ回る駐在。

 手で覆っても触れること叶わずの神力糸。権能を持っていても触れられないか。


「これまた。とんでもない美味ね」

「そ、そうなのね」

「例えるなら砂糖たっぷりのクリスマスケーキね。とっても甘いわ」

「そ、そうなのね」


 そう、答えるしかないわよね?

 甘いって事は悪意有りだったのね。

 相手は邪神だから当然なんだけど。

 しばらくすると駐在は動かなくなった。

 ピクピクと痙攣しているけどね。


「魂魄の濾過も済んだから、これで正義感溢れる駐在に戻ったでしょ」

「それは助かるわぁ。母さんも困っていた人物だしね」

「でしょうね。しかし、島の危険物狙いとか。粗方、場所を把握していたみたいね」

「はぁ? そ、それって封印場所?」

「全封印の基点は神社の庭だから押し入ってでも解除するつもりで居たみたい」

「それは何ていうか……間一髪?」

「そうかもね」


 本当に今回は危なかったのね。

 この世界の危機⦅マ?⦆未来を見る私の本能が回避に向かわせたと。


「そうそう。母さんに伝えておいて。いい加減、危険物は処分するようにって」

「ええ。伝えておくわ」

「それと創造に偏るけど母さんに似すぎている実菜(ミナ)にも言っておいてね」

「そうね。伝えておくわ」


 危険物を拵える事に定評があるのは母さんだけではないからね。

 実菜(ミナ)も結構な頻度で危険物を拵え⦅⦅失礼な!⦆⦆本当の事でしょ?


「それと今回の甘味。ありがとうね」

「いえいえ。私達も助かったし。あ! そうだったわ」


 私は感謝を伝えつつ、あることを思い出した。

 それは本日あった葬儀、その関係者についての話だ。


「ナギサ先生に伝言頼める?」

「伝言? ええ。構わないけど?」

「実は昨日の葬儀。主役とすると不謹慎だけど……」


 結凪(ユナ)曰く変顔遺影が目立っていた女性の事だが、


「管理世界の地表へ転生していた事が確認されて実依(マイ)が助けたのよ」


 今後の教育担当で雇う事を伝えようとした私である。

 だが、ナギサ先生と同じ教員の幹菜(マキナ)ちゃんが先に反応を示した。


「はい?」

「それってマキナの知っている人?」

「うん。私も参列したし。それで査石(シライシ)先生が転生していたの?」

「ええ。寒村に産まれて、父親の手で口減らしとして迷宮へ捨てられたけどね」

「おぅ」

「とんでもない事をするのね?」


 口減らしについては仕方ないかなって思える部分もあるけどね。

 寒村だったら普通に起こり得る話だから。

 捨てた父親はただの外道だったけど。


「まぁね。実依(マイ)が罰したからいいけど」

「「ああ、既に罰したと」」


 そこで残念そうな表情にならなくても。


「で、外で遊ぶあの子達の教育係で雇うからナギサ先生にね?」

「なるほどね。既に顔見知りなら、上手くやってくれると思うわ」

「顔合わせはナギサ先生の都合のいい時期を伝えてくれると助かるわ」

「分かったわ。その旨、伝えておくわね」


 とりあえず、伝えられる事は伝えたわね。

 すると幹菜(マキナ)ちゃんが怖ず怖ずと質問してきた。


「ところで査石(シライシ)先生の新しい名前は?」

「新しい名前? ええ。分かるわよ」

「どのような名前に?」

「安直だけど前世の名前を少しだけ変えたとか言っていたわ。保健医と被ると厄介だからとか言っていたけど」

「やっぱりぃ!」

「もしかしてユウカと同じ名なの?」

「うん。薄い方のユウカとか、老けた方のユウカって呼ばれていたね。男子達から」


 へぇ〜。その男子達、懲らしめてあげたいわね?

 私が動くと実菜(ミナ)達に迷惑がかかるから動かないけど。


「名前はユーカ。平民だから姓は無しよ。間延びする名前だけどね」

「あらら。ほぼ変化無しかぁ」

「呼ばれ慣れている名前の方が本人も困惑しないからね?」

「なるほど」


 それは実依(マイ)の言なんだけど。


「ユウカとユーカね」

「人族の姿だから見た目的に間違う事は無いわ」


 与えられた属性と主属性は言わずともいいだろう。

 属性だけは時期が訪れないと説明が難しいからね。

 出前の配達員達が早々にやらかしているけども。


「それならユウカとも会わせた方がいいわね?」

「そうだね。葬儀にも参列していたから再会したら驚くと思う」


 驚かない者は居ないでしょうね。

 こうして駐在の処理と伝言を済ませた私は社務所ではなく実家に戻った。


(外に寝転がる駐在は放置でいいか。結凪(ユナ)が居たら救いそうだけど)


 医師だから「風邪引くわよ!」と、叱って診療所に連れ去るだろう。

 今は本土の病院に詰めているから連れ去る事はないけれど。


⦅先ほど〈遠視〉して転移魔術でベッドへと放り込んだわ⦆


 あらら。既に連れ去っていたのね?

 まぁ真冬の社務所前で凍死されても困るものね。




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