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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・やる事が一杯で目が回るかも?

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第71話 厄介が過ぎるよ。

【注:不謹慎有り】

 そうして学校は冬季休暇に入ったのだが、


「「「……」」」

「「「……」」」

「「「……」」」

「「……」」

「「……」」

「……」


 学校から呼び出された私達は本土の葬儀場にて学年主任の葬儀に参列した。

 こういう時「予定があって無理です」何て言うと、空気の読めない生徒となるので渋々参列した私達であった。校内にいじめは無いが、それに近しい空気になるから。

 葬儀中は厳かな雰囲気で誰もが沈黙したままだが念話では騒がしかった。


⦅おぅ。生徒会長達はボロボロだね⦆

⦅やっぱり外向きには良い先生だったのね⦆

⦅正直に言うと好きになれなかった先生だけどね。担任だから仕方ないけど⦆

⦅ですです。お節介というか、余計なお世話が大好きな先生でしたから……⦆


 真顔のまま変顔遺影を見つめる深愛(ミア)由良(ユラ)


(変顔遺影? ここは笑ってはいけない葬儀場なの? 噴き出している生徒が)


 遺族達から睨まれた。


(理不尽な!)


 それはともかく。


⦅あー、あちらの状況がとても気になるぅ!⦆

⦅一応、自動迎撃にしてますが、突破されたらどうなるか⦆


 今、この時も二人の頭の中は管理世界にある。

 大規模イベントの開催まで数時間を切っている。

 アップデートは来ていないが時間の問題であった。

 だが、即応しなければならない時に長時間の拘束。

 元担任だから余計に長く参列しないといけないのはやりきれないだろう。

 本校と分校の全校生徒、一人一人の焼香、その待ち時間は相当だった。


⦅ところで死因って結局なんだったの?⦆

⦅末期ガンよ。胃の裏側にあったの⦆

⦅胃ガンだったのね。ストレスのある仕事だもんな。主任職って⦆

⦅も、もしかして、私の焼き芋転送が原因なの?⦆

⦅神罰は間接的なものね。記憶では失恋のやけ食いが主因となるけど⦆

⦅ご、ごめんなさい!⦆

実依(マイ)が謝る必要は無いと思うけどね。贈収賄に荷担していたし⦆


 葬儀には死亡前に執刀した結凪(ユナ)も参列しており遺族から睨まれていた。

 死因は末期ガンなのに⦅医師である以上は受け入れるわよ⦆やりきれないね。

 遺族の思考を読むと「医療ミスで結凪(ユナ)を訴える」とあるが間違いだ。


⦅訴えるって何様なの?⦆

⦅怒り狂っている時はこちらが正しい事を言っても聞いてくれないわ⦆

⦅死亡診断書にも末期の胃ガンと書いたよね?⦆

⦅書いたけど誤診だとか言っているわね。裏にモグリが居るから仕方ないけど⦆

⦅⦅⦅モグリ?⦆⦆⦆


 モグリというと無免許医師って事になるのだけど?

 そんな輩の言葉を鵜呑みにする遺族の気が知れないよ。

 何て思ったら結凪(ユナ)から訂正が入った。


⦅大学の同期で元副院長だった女医よ。遠方に飛ばしても妨害してくるバカね⦆

⦅⦅⦅あらら⦆⦆⦆


 こういう事があるから人と関わる時は適度の距離感で居たいと思った私であった。

 結凪(ユナ)ですら大学の同期から多大な妨害を受けてしまっているからね。



 ◇ ◇ ◇



 学年主任の葬儀は数時間にもおよび、私達は焼香を済ませたのち港に急いだ。

 帰りは自由と言われていたから、思い思いに本土で過ごす生徒が多かったよ。

 故人を悼んだり思い出に浸ったり生徒会長のように骨になるまで待つ者も居た。

 そうして私達が港に着くと、


「定期便は……げっ」

「こんな時に限って時化てるしぃ」

「嘘でしょお!?」

「それこそ深愛(ミア)玲奈(レナ)の幸運値が悪さしてない?」

「「失礼な!」」

「でも、姉さん達の幸運値だしね?」

「悪さしてそうな気がする。この二人だし」

「「酷っ!?」」


 海が時化ており、定期便が全便欠航となっていた。

 突然の時化。島を見ると真っ黒い雲と豪雨で覆われていた。

 島からおよそ三キロは真っ黒。その外側は青空だった件。

 港側も青空で三キロを境に薄暗くなっていた。


「これってさ?」

「あー、うん」

「絡んでいるかもね」


 結依(ユイ)の言う通り、邪神の親玉が動いたとしか思えない。

 女神が揃って本土に向かう。長時間、島から離れる。

 死者を弔う葬儀。空気を読んで戻れないと踏んだか。

 途方に暮れた私はスマホを取り出してイベントを見ようとすると、


「ひゃ、百ギガ!?」

「「ふぁ?」」

「何それ?」

「「酷っ!」」


 アップデートが余りにも膨大で外出先でのアップデートが出来なかった。

 こんなの通信制限を喰らうんだけど?


「て、手酷い、嫌がらせだね」

「本当だよ。こうなったら」


 私は人々には見えない神聖力をスマホに纏わせ、通信網を逆流させて配信サーバを浄めてみた。浄めようとすると猛烈な反発が返ってくるね。これは大当たりかも?


「もしかすると配信サーバに宿ってる?」

「「えっ?」」

「き、機械的な代物に?」

「人ではなく機械ときたか」

「それかデータセンターに居座っているのかも」

「「そっちか!」」


 徹底的に浄めると百ギガあったデータが一ギガに戻った。

 本来はその量なのね。私にアップデートさせたくない思惑があったようだ。

 アップデートを終えて検証すると、


「あっ……」

「「何があったの?」」


 とんでもない大穴がある事を知った。


(更新していない渦が原因かぁ。不調が無いからと放置した結果がこれと……)


 大穴。母さんが意図的に開けている世界の穴。

 それは魂魄保管庫経由で各世界に転生させる機能を有する。

 私も母さんも問題が無かったとして放置していた代物だった。

 それが今回の大規模イベントの出発点になっているとはね。


(母さんへの念話は……ちっ。妨害されてるしぃ)


 念話も通じず。あの嵐は一種の妨害結界だろう。

 それを知った私は結依(ユイ)達に提案する。


「今から分社に行くよ!」

「「分社!?」」

「分社?」×7

「分社っていうと……」

「凄い山奥だったような?」

「一度だけ行ったことあるけど」


 腰をやった父さんの湯治を行うため、幼い頃に一度だけ全員で行ったよね。

 母さんだけは島から離れられないから分社の扉を開通させて待っていたが。

 私達は港から徒歩移動で最寄り駅まで向かい、


「「おっきい!」」

「何、ここ? 何をする場所なの?」

「こんな建物、見た事が無い!」

「「はわぁ」」

「あれは、てつ、どう?」

「ただの快速電車だけど?」

「快速電車?」×7

「この子達、浦島さんだったっけ?」

「浦島さんだったね。そういえば」


 山奥へと向かうバスの時刻表を眺めた。

 亜衣(アイ)達は別の意味で大騒ぎだったが。


「何か、微妙に、田舎者っぽいね?」

「この規模の駅ビルは初めて見ると思うし、今回は仕方ないかな」

「この六人が都心の大迷宮を見たら気絶するんじゃない?」

「「仁菜(ニナ)以外の六人が?」」

「うん」


 今回は急な島外移動になったもんね。

 私も突然の事が多すぎて頭が痛いよ。


(まさか、学年主任の死から、こんな事になろうとは)


 私達が山奥行きのバスを待っていると遺族っぽい人々が駅前に現れた。


「「「……」」」


 バスを待つ私達を睨むだけ睨んで駅ビルまで向かった。

 涙を流しながら睨みつけてきた年配女性は遺骨の入った骨壺を持っていた。

 背後の男性は変顔の遺影、もう一人の男性は位牌を持って人の波に消えた。


(というか、変顔写真しか無かったの? それを示しながら電車に乗るの?)


 死後の辱めを親族が怒り心頭のまま行うって酷な⦅話よね⦆うん。

 一応でも女性なのだから、着飾った写真を使ってあげればいいものを。


⦅私達を睨むのは筋違いだって⦆

⦅執刀医の親族だからでしょ?⦆

⦅こんなところで遊んでいるとか考えていたけど⦆

⦅娘が亡くなったのに我関せずが気に入らないとか⦆

⦅娘の贈収賄を明るみにしてあげようか?⦆

⦅書類送検になるから無意味だと思うよ?⦆

⦅書類送検?⦆×7


 しばらくするとバスが来た。

 バスの乗り方は一応教えていたからどうにか乗れた。


「「凄い凄い!」」

「こんな景色、見た事、無い……」

「やっぱり田舎者感が拭えないね?」

「仕方ないよ。行き先は更に田舎だけど」


 私達が向かう場所は終点だ。

 そうして駅前から数時間後、終点まで到着した。


「「お尻が痛い!」」

「長時間バスに乗るのは堪えるねぇ」

「早く免許取りたいね」

「「うんうん」」


 終点は本当にドが付く田舎だった。

 バスは早々に引き返し、バス停前へと私達を置いて駅まで戻った。


「さて、分社はあの階段を最後まで登った先にあるよ」

「「「はぁ!?」」」

「な、何段あるの?」

「あの階段を登った先?」

「「「「「……」」」」」


 愕然とするよね。

 過去に来た事のある若結(モユ)達は階段ではなく車移動で登ったけれど。


「姉さん? この際だから?」

「仕方ないか。周囲に人影は?」

「無いよ。一応、偽装結界で覆うけど」


 結依(ユイ)は私達の周囲へと偽装結界の魔術を展開した。

 私が今から行う事を周囲の村民に見られるととても困るしね。

 私は自身の〈空間収納〉より一枚の姿見を取り出した。

 何も無い道路から姿見が現れたら騒ぎになるからね。


「「「姿見?」」」

「「そうきたかぁ」」

「それなら最初から出せば良かったのに?」

「わざわざ遠くに来なくても良かったのでは?」

「「うんうん」」


 言いたいことは分かる。

 だが、


「分社の近くに来てようやくスキルが使えるようになっただけだよ?」

「はい?」×7


 最寄り駅の周辺と港の近辺では何故かスキル封じの結界が張られていたのだ。

 相互念話は出来たけど近距離のみ。これが長距離だと妨害されていた。

 念話以外は全て封じられ、使おうにも使えなかった。


「スキル封じの結界?」

「そんなものが?」

「どういう事なの」

「単純に邪神の親玉が出張ってきたからとしか」

「時空神の権能を元から持っている、ね」

「ふぁ?」×7


 至音(シオン)姉さんから権能を奪ったのは低位の邪神。

 それとは別に存在する邪神が、今回の問題行動を起こしたのだろう。


「とりあえず、分社に登って話そうか」

「「異議無し!」」

「「「姿見で?」」」

「……」×7


 厄介と思うだろうが、今回の敵は相当なまでに面倒だった。

 転移門を経由して無人の分社に到着し、社務所の鍵を開け中に入る。

 奥の鉄扉を開いて母さんの庭に入った。

 すると、


「あら? 分社から戻ったの?」


 あっけらかんとした母さんが畑で芋を掘っていた。


「邪神の親玉が周囲に妨害結界を張ってるの!」

「マ?」


 今日の母さん、ポンコツ過ぎ!




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