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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・やる事が一杯で目が回るかも?

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第67話 有害を飛ばした。

 Side:実依(マイ)


 夕方からは夕食に戻った結依(ユイ)達に代わって私と結凪(ユナ)が監視に入った。

 監視するとしても大忙しの地底と違って地表は欠伸する程度に暇なんだよね。

 なので私達の話題は昼間の大騒ぎが中心となった。


「母さんと芽依(メイ)から事情を聞いたけど、地底世界はとんでもない事になっていたみたいだね。姉さん達が神力の全解放で煌びやかになっていた件とも合致するとか」

「らしいわね。吸血鬼族が邪神の影響を受けて、生きるゾンビに成り果てたとか」


 私と結凪(ユナ)は中央に残る大忙しの由良(ユラ)を一瞥しつつ昼間の騒ぎを話し合った。

 あとで差し入れしようかな?


夏音(カノン)姉さんが経路を伝って総ざらいして邪神の力を根こそぎ奪ったと」


 奪ったあとに能力制限を取っ払い、きょとんの吸血鬼族があちこちに勢揃いしたらしい。これは由良(ユラ)からの念話を受け取った深愛(ミア)談だね。

 由良(ユラ)は残り香の可能性を考慮して夕食に訪れず管理室にて様子見中だ。


「中にはお風呂中に狂化して、恥ずかしい思いをしていた貴族令嬢も居たみたいよ」

「素っ裸で街中に出て、意識を取り戻してキャーだったなら酷としか言えないわね」


 その姿に由良(ユラ)が気づいて管理室から直でバスタオルを転送したそうだ。

 これがかつての芽依(メイ)みたく平面族なら⦅平面言うな!⦆良かったが、出るところが出ている令嬢だった所為で周囲で裸を拝んでいた平民共が居たのだとか。


「見られたのが有象無象の平民だった事が幸いかな?」

「それを幸いと取るかどうかは本人次第よね」

「結局、貴族令嬢の貞操観念次第と」


 これが私達なら有象無象と捉えて受け流すけどね。

 仮に私達の裸体が夜のオカズになっているなら全記憶を抹消する事も厭わないが。


「とはいえ、今回の件で他の騒ぎが起きなければいいけど」

「他の騒ぎって? 何か危惧する事があるの?」

「吸血鬼族が親を疑う。何て事は無いと思うけど、元を辿れば至音(シオン)姉さんが邪神に侵されていた事が要因じゃない? そうなると種族改変を望む者達が」

「そういった騒ぎか」

「親のお陰で羞恥に塗れた子達なんて、死してでも吸血鬼である事を拒みそうだし」

「羞恥か。それを言われると願う者達が溢れそうね。除去方法があるなら、だけど」


 そう、私が危惧したのは吸血鬼で居る事の不安だ。

 夏音(カノン)姉さんと直で繋がる眷属は影響していないが、至音(シオン)姉さんの因子を持った者達は影響を受けていた。

 生まれ直し、或いは因子除去を願う者達が出てきても不思議ではない。


「今でこそ、完全統合して母さんの手で分割された至音(シオン)姉さんだけど、同じ事が起きないとも限らないとか思われていそうだし」

「ある意味で信用を失ったわね」

「本人にとっては『何で!?』な事態だけど」


 一応、母さんが直前の記憶を消した後に蘇らせ夏音(カノン)姉さんが事情を説明したそうだ。処置後であっても本当に大丈夫なのか不安がる眷属達も居るだろう。


「で、結局……文化祭は二週間の延期と」

「確か、吐いた子達の隣に居たんだっけ?」

「丁度、試食中だったから。私の作った試作品が悪い物とか決めつけられて、営業中止になってしまったの」


 それを聞いた結凪(ユナ)は盛大に頬を引きつらせ、


「そ、それは、何ていうか……」


 私と視線を合わせまいと由良(ユラ)のお尻を眺めた⦅何で!?⦆さぁ?

 食品とか素材に関して妥協しない私の事を知っているからね。

 結凪(ユナ)は私の憤りを理解したうえで言葉に出来ないだけだから。


「何を言いたいのか分かるよ」

「分かるなら言わなくていいわね」


 私が用意した料理に吐くような代物が入っているわけ無いじゃん。

 私も同じように食べていたのにピンピンしているのがその証拠だし。

 結果的に喫茶店も営業中止となったから私の文化祭は見て回る事だけになった。


「状態が状態なら仕方ないわね。医師として見ても今回は仕方ないと思うしかないわ。実依(マイ)の気持ちも分かるけど」


 こういう時、第三者視点で言えるのは医師である結凪(ユナ)だけだと思う。

 その場に居た担任と学年主任には憤りしかないが、吐いた子が居たら仕方ない。


「で、実依(マイ)も検査対象?」

「面倒だけど対象になってる。結果次第では学食も殺菌する必要があるみたい」

「原因が原因だけに何とも言えないわね」

「ホント、そう思うよ」


 現在は養生のため当事者達を一週間だけ休ませる事になった。

 文化祭が二週間後に延期したのは手痛いがこれは仕方ない話だった。

 私も検査対象になった所為で一週間もお休みだしね。

 しばらくの間は監視の任に就くしかないかぁ。


「でもま、それだけで済んで良かったとも取れるか」

「うん。母さんと姉さんの機転に救われたね」


 一つは眷属核へと魂魄を移した事。

 一つは神魔族と同じ肉体を彼等にも与えた事にある。

 これも種族毎に肉体を作り替える手間こそあったが、その手間があっただけ救われたよね。そうでないと暴れていただろうし。

 残り一つは担任の前に居て冷静に判断して対応に出た事だろうか。

 光輝く姉さんの背後に大神官母子が平伏していたが、あれは救われた事への感謝と思うしかないだろう⦅狂信者感が凄まじかったけど⦆ナギサ臭、恐るべしだね。


「神魔体の抗体で発熱と倦怠感で事なきを得た、か。従来の憑依体のままなら?」

「学校が血みどろの戦場になっていたと思う」

「そうなると、私も駆り出されていたわね」

「校外の眷属も暴れ回っていただろうしね」

「あとは島内の駐在が県警に応援を呼んで」

「暴れ回る者達を捕縛あるいは殺傷すると」

「最悪は未知の伝染病と見做されて」

「島が封鎖。私達も島外へと追い出されるね」


 そうなれば本土に置いた分社にて暮らす羽目になる。

 母さんの庭は何処からでも開く事が可能なので島外に移ったとしても問題は無い。

 問題があるとすれば、邪神に島を明け渡す事になり、島内の各所に封じた母さん作の問題神器が外部に流出する⦅この親子は⦆本物の親子だもの。

 私達の行動はどうあっても親とそっくりになるよ。


「追い出されて各所の封印が解かれたら最後、この世界はどうなることやら?」

「もし、それも踏まえて動いていたなら?」

「今回の邪神は相当なまでに手練れだったんだろうね」

「本気で私達を島外に追い出す事まで企てていたなら、か」


 あれも夏音(カノン)姉さんを生きたまま分割した張本人だから始末が悪い。

 それが至音(シオン)姉さんに宿って探索の女神なる邪神になっていたしね。

 その探索は私達の世界だけではなく島内の問題神器にまで及んでいたとすると頭が痛くなる行動力と思うしかない。


「本命は神月(カヅキ)島に封じられた宝目当て、か」

「宝とは名ばかりの危険物なんだけどねぇ」

「母さんも消すに消せないから封印したと」

「別の管理世界に封じてもいいけど、嗅ぎつけてくるだろうしね。現に父さんの世界に一つだけ封印していたら嗅ぎつけてきて解放したし」

「あ、あれってそれが原因だったの?」

「解放したのは主軸から侵入した邪神の傀儡勇者だね。そのまま低層の主に吹き飛ばされて問題神器が惑星の崩壊を誘発したってワケ」

「そ、それで崩壊に繋がったと?」

「神器はある種のエネルギー塊だったから」

「それはどうあっても崩壊するわ」

「邪神はそういった問題神器を欲するから厄介極まりないよね、マジで」


 それが父さんの世界の崩壊に至った真実だ。

 結依(ユイ)は知らないけど、あの件だけは私も関わっていたからね。


「ホント、犬のような嗅覚よね。邪神共って」

「結果的に母さんの背格好の世界に化けたね」

「化けて問題が起きて結依(ユイ)が最も嫌う行いに手を染めたと」


 そう、結依(ユイ)が最も嫌う行い。

 それは他世界からの誘拐、勇者召喚である。

 私達も本音では自力でどうにかしろと言いたくなるが、私達の世界では事象改変する魔術や魔法が存在するため、神に出来ない事は無いと民草に証明する必要がある。

 そうしないと民草の信仰心が乖離するから。

 証明で他世界からの誘拐こと勇者召喚が願われれば本音では嫌でも行うしかない。

 召喚を願われた時は元世界で有害な人物を選択して寄越すようにしていたりする。

 但し、夏音(カノン)姉さん達に関しては分割体の選択ミスに依るものが大きいので、何処までが有害だったかは私達でも⦅蜥蜴兄妹かしら?⦆あ、それが居たか。

 というところで……、


「また召喚依頼を出してる」

「また? あれから何年経っていると」


 問題の国家から新しい召喚依頼が届いた。

 いつもなら結依(ユイ)の行う事なのだが今は居ないので代理で行う私である。


「元世界で不要かつ有害な人物。あとは邪神と眷属に染められていない者……っと」

「どう? 居る?」


 召喚とは術者が願った瞬間から数秒間のタイムラグが発生する。

 こちらでは依頼を受け、要件確認を終え、召喚対象者を選択する。

 私達が選択を終えて実行すると時間を遡って強制的に異世界へと転移させる。

 術者の元へ向かう前に白い部屋で音声だけの事情説明と魔力付与等が行われる。

 勇者召喚は母さんも了承済みの案件である。


「海外勢だけどいいよね?」

「いいんじゃない。戦争が大好きみたいだし」

「じゃあ、戦争の総責任者を二名。裏で暗躍する他国の要人を四名。邪神に染められた者達は武器商人だけだから、それは引き続き放置で」

「年寄り五名と若手が一名か。勇者なら若い方がいいわね。それでも五十代だけど」

「それがいいだろうね。年寄りは直ぐ死ぬし」


 全ての選択を終えた私は召喚を実行した。

 直後、元世界の数カ所へと不可解な魔術陣が展開され、強制召喚が行われた。

 白い部屋に連れ去られた直後は大騒ぎとなるが勢いのある説明後、教会へ飛んだ。

 召喚の苦情は術者に行えばいいよ。


「航空機で飛んでる最中に異世界へ飛んだね」

「不可解な神隠しもあったものね」

「あ、同じ便に果菜(カナ)が居る」

「何があったのか理解してポカーンだわ」

「ま、寝たふりに戻ったし」

「気にするだけ損かもね?」


 それから数時間後、帰国した果菜(カナ)が⦅あれはどういう事よ?⦆と念話してきて、果菜(カナ)と同じビジネスクラスに座っていた人物が元世界にとって最も有害な人物だと説明して納得されたのだった。


⦅なーんだ。飛ばされるべき阿呆と⦆




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