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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・やる事が一杯で目が回るかも?

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第65話 穴に巣くう思惑。

 Side:芽依(メイ)


 結依(ユイ)の機転により世界の穴の正体が判明した。

 穴は夏音(カノン)姉さんから分裂した至音(シオン)姉さんの中に存在していた。


「死滅陣が良い感じで隠れ蓑になっていたと」

「私も死滅陣さえ有れば問題は無いと思っていたけど死滅陣が隙になっていたのね」


 最近までは夏音(カノン)姉さんと共に体内へと存在していた本体。

 魂魄の宿る部位に死滅陣なるとんでもな機能を有していたため、母さんと姉さんを除く神族は、誰もが触れる事叶わずだったのだ。父さんは当然ながら触れないが。


「誰であれ触れるだけで死を招く代物かぁ」

「私と本来の実菜(ミナ)でしか対処が出来なかったのよね。持ち主の夏音(カノン)達も外側を触れるだけなら可能よ。死滅陣の完全除去は出来なかったけど」

「それって姉さんの分割体では無理だったの?」

「神聖力の出力制限があったもの。今の実菜(ミナ)を百とすると分割体では十しか出せていなかったわ。それだけの力の差がある状態で分割体が触れたら消えていたでしょうね」

「「ああ」」

「これは深愛(ミア)の分割体でも同じ事が言えるわね。分割体達には触れないようにって言い聞かせていたから」

「それが結果的に付けいる隙になったと」

「皮肉な事にね。相変わらずドス黒いわ」


 実菜(ミナ)が死滅陣に触れる事が可能なのは神体内から発する神聖力のお陰ね。

 私達も力の差はあれど神聖力を有しているが自身を構成する属性を主とする以上、実菜(ミナ)深愛(ミア)との力の差は歴然だった。


「今回は姉さんと深愛(ミア)のお陰で私達は影響していなかったと」

「一時的に両者の力を封じ込めていても、微量な力の放出は起きていたしね。その放出でもって至音(シオン)以外の神核には影響が出ていなかったようね」


 私は結依(ユイ)と話し合う母さんを一瞥しつつ濾過中の魂魄を眺めて問いかける。


「ところで行方不明だった頃の神核ってどうなっていたの?」

「力が失われた状態とでも言えばいいかしら」

「失われた? 半透明だったって事か」


 力が失われた状態。

 その状態ならば邪神が宿る事は可能だろう。

 死属性そのものが無効化されたも同然で、死滅陣自体も不活性となり思い通りに動く人形に成り果てたと。


「味噌っ滓だった事も要因かもね」

「分割体の記憶にもあるね。姪っ子の暴露で斧で生きたまま分裂させられたとか」


 確かにあるわね。

 あれだけは気の毒というかなんというか。

 不死でも痛みがあるから怒り心頭となって殲滅しても不思議ではない。

 仮に私達姉妹が同じ目に遭ったら、怒り狂った実菜(ミナ)達が空間圧縮で加害者共の魂魄そのものを消していたでしょうね、きっと。


「お陰で本来なら一つの権能だった物が生と死に分裂して、生は夏音(カノン)に死は至音(シオン)に委ねられたのよ」

「それで権能の比率はどうだったの?」

「生が九割、死は一割ね」


 その比率だから味噌っ滓。

 権能が半々だったなら宿られる事も無かったかもしれないわね。


「私で言う、闇九・聖一みたいなものかな?」

実菜(ミナ)で言う、聖九・闇一とか?」


 これが実依(マイ)なら風八に対して闇一聖一になるけどね。

 私は水九に聖一だけど。


「あの子達は人族をより多く救う事を主としていたからね。どうしても生が多くなるのは仕方ない話なのよ」

「「善神だものね」」


 それは私達も同じだけれど。


「紆余曲折を経て次元の狭間に一人だけ落ちて化石同然で発掘された、か」

「当時の夏音(カノン)幹菜(マキナ)と街中を歩いている最中の出来事だったそうよ。振り返ったら居なかったって」


 一人だけストンと落ちるって何なのだろう。

 私はそれが急に気になって母さんに問うた。


「ところで母さん」

「どうかした?」

「過去視、使っていい?」

「え?」


 私には未来視以外に過去視も使える。

 美加(ミカ)も使おうと思えば使える。

 だが、母さんの世界の事象を見るために使うには母さんの許可が必要だった。


「母さんも調査済みだとは思うけど、ちょっと引っかかってね」

芽依(メイ)も何か違和感を持ったの?」

「ええ。結依(ユイ)が感じたように何か、気になってね」

「私が感じた……邪神が裏に居る?」


 結依(ユイ)は真面目な表情で思案する。

 その視線の先には未だに黒い塊がある。

 黒い塊、探索の女神と名付けられた邪神。

 これが本体かどうかは不明だが、そのままにするのは良くない気がした私だった。

 消すのは簡単だが、由来を知らねば消せないのよね。

 すると母さんが微笑みつつ私達を見つめた。


「それぞれの力の比率は実菜(ミナ)を基準に分けていても、妹よね」

「「妹ですが、何か?」」


 何を今更、そんな事を言うのか?

 母さんは意を決し、私を見つめて呟いた。


「いいわよ。使っても」

「ありがとう。母さん」


 許可が得られた私は意識を集中して視界に聖属性神力を纏わせ黒い塊を注視する。

 直で見ると邪神の影響を受けるから聖属性は必須なのよね。

 黒い塊へと変化する頃合いを時系列で遡る。

 視界端に元世界の年号を意識して表記した。


「分裂前まで遡って」

「一つだった頃は問題無い?」

「問題は無いわね」


 一定時間が過ぎると引き裂かれるように魂魄が分裂した。

 夏音(カノン)姉さんの絶叫は聞こえないが酷い状態なのは分かる。


「エ、エグいわね……」

芽依(メイ)が吐きそうな顔してる」

「そりゃあ、吐きたくなるような光景だもの」

「復活直後は千切られた跡があったわね」

「だから母さんが神核を新規で創ったと」

「そうしないと至音(シオン)が消えかけていたもの。死の権能だけ永久消滅よ」

「それは放置出来ないね」


 幸い、その時点で夏音(カノン)姉さんの娘。

 幹菜(マキナ)ちゃんが生まれていたので権能は受け継がれたようなものだった。

 だがそれも、力を使い熟さねば意味がないため夏音(カノン)姉さんが付きっきりで教えていたようだ。死の権能は分裂した至音(シオン)姉さんが教えていた。

 私は早送りの要領で時間を進ませる。


「あっ」

「「あ?」」


 それは至音(シオン)姉さんが財布を落として地面に意識を割いた瞬間だった。

 至音(シオン)姉さんの足許に黒い目玉と狡猾な口が大きく開いた。

 至音(シオン)姉さんは権能の大半を失っているため視認出来ていなかった。


「澱みに食われてしまったのね」


 だから突然消えてしまったと。

 それが次元の狭間の正体だった。


「よ、澱みに食われた? 至音(シオン)が?」

「落ちたのは次元の狭間ではなかったの?」

「空間に漂う澱み。低位の邪神に食われたみたい。元々持っていた時空神の権能の一部を先に食われて力を失った……ようね」

「だから神核が半透明に変化したのね」

「時空神の権能があるから銀だもんね」


 それならば母さんの調査でも判明しないだろう。

 時空の裂け目かと思えば澱みだったのだから。


「失った後、死の権能も食われて探索の女神として書き換えられたわね。宝物を欲する願いが澱みの中に存在していたみたい。ただ、記憶だけは残しておかないと不都合が生じるから残していたようね。無駄に知恵がまわる低位だわ。こいつ」

「そうなると、至音(シオン)姉さんの心は?」

「既に無いわ。全ての権能が食われているならね」

「だから魂魄操作も使えると」


 その後、時空神の権能を使って多くの眷属を創り、至音(シオン)姉さんの心を元に人格までも創った。至音(シオン)姉さんを模倣すれば私達を騙せるからね。

 で、実菜(ミナ)が拵える世界の亜空間に転移し時が訪れるのを静かに待った。


「度し難いわね」

「本当にそう思うよ。ところで邪神の元は?」

「元? そうね。少し待って」


 私は結依(ユイ)に願われた通り邪神の元を探ってみる。

 過去視ならばそれが何か判明するからね。

 ただ、相手が邪神だけに神聖力の量を無駄に増やす必要があるけれど。


「そうきたか」

「「はい?」」


 いや、もうね。どう言えばいいのか。


「こいつの根源は分裂させた張本人」

「「ふぁ?」」

夏音(カノン)姉さんを犯そうとした貴族家当主。その引き千切られた魂魄の成れの果て。手前勝手な憎悪だけが時を超えて生き延びたみたい」


 皮肉な事に滅したのが至音(シオン)姉さんだった。

 それが何かしらの縁で繋がったようである。

 原因が判明したと感じた私は過去視を止め、瞳を属性変換した神聖力で浄めた。


「邪神の直視はくるわね。最大で変換して」

「私も手伝おうか?」

「お願い出来る?」

「り」


 私は結依(ユイ)に手伝ってもらいながら怒り心頭気味の母さんに問いかけた。


「そうなると、これを処す権利は?」

「私と思ったけど、今回は夏音(カノン)の役目ね。分裂を促した者でもあるし」


 話し合っていると複数本の神力糸が伸びてきて黒い塊に向かって突き刺した。


「あら?」

「早速、召し上がると?」

「弔い合戦のつもりかしら?」

「おそらく、そうかもね」


 濾過神器をすり抜ける銀の神力糸。

 黒い塊は怯えたように震えるだけだった。


『大切な妹に何してくれるのよ!』

「お怒りだぁ」

「〈遠視〉していたのね。あの子も」

「そ、そうみたいね」


 しばらくすると黒い塊は消え去った。

 濾過神器には何も残っておらず、


「母さん、どうなったの?」

「そうね。神核を見ましょうか」


 母さんが取り出した神核を見ると夏音(カノン)姉さんの神核が兄さんの神核と同様の輝きを放っていた。


「分裂していた権能が統合されたみたいね」

「「これが本来の輝きと」」


 つまり夏音(カノン)姉さんが本来の力を取り戻したと。

 すると母さんは何を思ったのか、


「よいしょっと!」

「「母さん!?」」


 夏音(カノン)姉さんの神核を権能でもって二つに割った。

 それは私達の生まれる前にも用いた権能だ。


「次は生死の権能の比率を弄って」

「あらら。母親自らが分裂後に戻してる」

「こ、これも必要なこと、なのかもね?」


 至音(シオン)姉さんが世界から消えたら地底の眷属が大騒ぎになるから?


『ちょ、母さん! か、感じるから、やめて!』

「やめろと言われて、やめる訳がないでしょ?」

「精神を直接弄られるから感じるのね」

「恐ろしい権能だわ。本当に」


 そうして一時的に消え去っていた人格が、


『あら? 私は一体?』

『シオンが、シオンが蘇ったぁ!』


 夏音(カノン)姉さんの記憶を元に再構成されたのだった。


『とっても強烈な性感を我慢して良かったぁ』

『せい、かん?』


 確か、ドSだから逆に弄られるのは弱かったんだっけ?


「弱いのは私と一緒ね」

「「い、一緒って……」」


 娘として母さんの性事情とか正直言って聞きたくないのだけど?




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