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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・やる事が一杯で目が回るかも?

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第64話 気づけない穴。

 Side:結依(ユイ)


 あれから一ヶ月の間、私は学業と並行しつつ世界監視を続けた。

 時には社会人組も顔を出して、焼き芋を頬張りながら世界情勢に耳を傾けてきた。

 主に巫女または聖女と呼ばれる者達の言葉に耳を傾けてね。

 大半は自分勝手に解釈して想定外の行動に出る者が多かったが。

 そして本日も今代聖女の問いかけに対して面倒と思いながら応対する私であった。


『目的の人物はこの世に居りません。彼の弟子達は人里から離れた地にて人目を忍んで生活しております。願わくばそっとしておくように』

「分かりましたって言いながら背後では捜索せよって言っているけど?」

「本当に自分勝手な宗教組織なんだからぁ」


 私の言っている意味、本当に理解してる?

 理解していないから、おかしな挙動に出るのだけど。

 こんな奴等に崇められたくないよ。


「苦労しているのね。結依(ユイ)も」

「本当よ。あ、この芋大福美味しい」

「それは我が社の新作よ」

「芋餡が良い味を出しているね」


 魔王討伐が叶った後、例の女の子を追う者が後を絶たず。

 彼女と一緒に居たであろう弟子達も行方不明となり、何処に居るのか問うてくる。

 弟子達の居場所は判明しているが素直に答えると挙って彼等の元に向かうので空気を読んで行動せよと言いたくなるね。

 喪に服す感情が無い宗教団体って何なのって思うよ、マジで。


「こんなものかな。しばらくは自動応答で」


 私は芋大福を口に含みつつストレッチした。

 本日の担当は私と芽依(メイ)だけだった。

 連日のように問い合わせが届いていて正直参っていたのよね。

 この芋大福がストレス解消になりそうだと改めて思うよ。暴食ではないけど。

 すると芽依(メイ)がお茶を淹れながら、


「ところで結依(ユイ)はいいの?」

「何が?」

「授業に出なくて」

「問題は無いよ」

「問題は無いってどういう?」

「前の高校と同じだよ。今学期で取れる単位は全部取ったから」

「い、いつの間に?」

「学校が文化祭準備一色になる前に教頭先生にお願いして特別に試験を受けたのよ」


 そう、中間と期末試験を前倒しで受けさせてもらったのだ。

 体育は姉さんと実依(マイ)がやらかしたお陰か事実上不問となったし。


「そ、それで単位取得が叶ったと?」

「そういう事。姉さんと実依(マイ)は文化祭が待ち遠しくて特別試験を受けず、従来通りアオハルするとか言っているけどね」


 それは芽依(メイ)達の娘達も含む。


「妹達の中では由良(ユラ)だけが同じ試験を受けていたよ」

「あらら。魔神が揃って監視に勤しむかぁ」

「監視と防衛が主になっているみたいだけど」


 由良(ユラ)も中央の管理室にて引き続き対応に追われている。

 亜衣(アイ)達の方は自動応答で賄えるので不在となっているが。


「侵入者の目的地が浮遊大陸にあるからだろうけど一向に減らないんだよね、アレ」

夏音(カノン)姉さんと姪っ子の魂魄置換が終わった後も島外の侵入者が爆発的に増えているものね」

「減るどころか増える一方だから、お前等はネズミか何かかって直接文句を付けたくなるよ」

「ネズミ算式に増える侵入者かぁ」


 例のゲームもCMを引っ切り無しで映すから利用者が減るどころか増える一方だ。

 多くのゲーマーからクソゲー認定を受けているにも関わらず、無駄に人気が出ているのは何かしらの暗示に依るものが大きいだろうね。

 暗示も、姉さんが試しにCMを検査して有る時と無い時がある事実に気がついた。

 有る時はキャラが自由自在に動いている時。

 無い時はキャラの生音声と静止画だけの時。


「空飛ぶ船に乗っている黒い女神が映る時が」

「直に暗示を発している、か。黒い女神って」

「体よく邪神を模したものだと分かるよ」

「探索者共が奉る神。探索の女神だっけ」


 そんな女神はこの世界にも地底世界にも居ない。

 居ないのに侵入者の欲望が原因で神格化されてしまい、何処かしらのタイミングで顕現しそうなんだよね。顕現したら最後、私達の権限で消滅まで誘導するけれど。


「まるで実依(マイ)仁菜(ニナ)に喧嘩を売っているみたいね。お前等の迷宮は全踏破してやるぞって感じで」

「まさにそれだよね。無制限になったから何処まで踏破出来るか楽しみだって、あの二人も張り切っているけどね。それでも当面は文化祭一つに時間を割くから……」

「そのしわ寄せが結依(ユイ)由良(ユラ)にくると」

「仕方ないよ。学生で居られる期間は短いしね。夏音(カノン)姉さんみたいに記憶を消して居続ける事も出来るけど、青春って一度きりだから」

「妙に達観しているわね?」

「無駄に年だけは取ってないよ」

「そういえばそうね」


 今の年齢で女子高校生をしている方が異常だしね。

 背格好が女子高校生で通っても中身はオバハンだ。

 自分で言ってて悲しいけれど。


「神託はともかく、それ以外は変化無しっと」

「そういえば夏音(カノン)姉さんの捜索も山場かしら」

「どうだろう? 粗方片付いてもねぇ?」


 私は魂魄保管庫の履歴を開いて芽依(メイ)に示す。


「ああ、そうか。次のゴミが転生するから」

「どうしても抜けは出てしまうからね」

「罪状から自動で称号を与えるだけと」


 どうも至音(シオン)姉さんがヒステリックな状態になっている時に限って自動承認となってしまい、そのタイミングですり抜ける魂魄が後を絶たないのだ。

 そのどれもが邪神の影響を受けた者達。

 新たに寄越された勘違いの魂魄である。


「ドMも万全ではないと」

「ドMだからわざとやってそうな気がする」

「ドMだもんね。むしろ穴ってドMとか?」

「どうかしら? 身内を疑うようで悪いけど」


 芽依(メイ)はそう言うがドMは化石同然で分割体達に拾われた私達の姉だ。

 夏音(カノン)姉さん達は憑依体と神核を強引に引き千切られて、今の二人に分裂したと聞く。その後は調整無きまま数千年の時を生きてきて時空の裂け目に至音(シオン)姉さんが落ち……今に至っている。


「一度、神核を調査させてもらえないかな?」

「母さんが許すとは到底思えないわよ?」

「いや、今なら死滅が無いじゃない」

「それはまぁ、そうだけどね」


 姉さんが新しい憑依体を用意した段階で中身は神核に移されている。

 そこには私達の神核も当然あるのだが、どうも穴がそこにあるような気がしてならないのだ。今の肉体は神魔体になっているけどね。


「身内だから調べない。邪神もそう思ってそうじゃない? どれだけ空間の穴を塞いでもすり抜けて侵入してくるのだし」

「それを言われると……あっ」


 というタイミングで母さんが姿を現した。


結依(ユイ)ちゃんの考えも一理あるわ」

「「母さん!?」」

「私もね、娘を調べる必要は無いと思っていたけど結依(ユイ)ちゃんからそれを聞かされてから気になったのよね。神器を更新したのに、引き続き繋がりが出来ているから」


 それは誰もが疑問に思う穴の所在だ。

 埋めたはずなのに通り道が残っているから。

 私は母さんが取り出した神器を見つめる。

 そこにあるのは私達姉妹の神核と夏音(カノン)姉さんや兄さんの神核だ。

 しかも神界のバックアップも含めて全ての神核が勢揃いしていた。


「改めて見るとアレよね。不思議な気分だわ」

「そうだね。それも姉さんのと同じ形状だし」


 私達の神核は神素結晶で出来た球体だ。

 色合いはそれぞれの属性が表に出ている。

 隣には母さん達の神核もあるが年季が入った強烈な神力を発しているのが分かる。

 兄さんと私達も同様の神力を発している。

 夏音(カノン)姉さんは比較的大人しいけどね。


「貴女達は実菜(ミナ)亜衣(アイ)から分割したようなものでしょ」

「「それはそうなんだけどね」」


 これが私達を構成する神核。

 心の核なのだから不思議な気分になるのは仕方ないだろう。

 私はその中から銀色の神核へと紫色の神力を纏わせて調査を開始した⦅何々? 何なの⦆本人が反応して念話を発してきたが無視である。

 当然、性質を姉さん寄りに変換しつつね。

 神聖力は姉さんだけの専売特許ではない。

 私達姉妹は揃って変換が可能なのだから。


「そういえば力の発現が私達より弱いよね」

「元々は一つだったんだよね? 母さん?」

「そうね。人々の欲望の末に分裂したから」

「姪っ子も元々は複製体。今は個別と」

「個性が出来上がればね」


 夏音(カノン)姉さんは⦅心地良いわね⦆問題無い。

 幹菜(マキナ)ちゃんも⦅疲れが飛んだ⦆問題無い。

 夏南(カナン)兄さんも⦅集中力が増した?⦆問題無い。

 だが、至音(シオン)姉さんの神核から妙な反発が起きた。


「あ。居た!」

「「居た?」」

「今から捕獲するから母さんは神器を片付けて!」

「え、ええ。分かったわ。至音(シオン)以外を片付けましょうか。実菜(ミナ)達の神聖力が強烈だから邪神の影響を受けなくてもね」

「私達は姉さんが居たから助かったと」

「今は深愛(ミア)も居るから相乗効果ね」

「聖属性の有り難みが凄まじいわ」


 私は捕獲陣を多重展開して至音(シオン)姉さんと反発者を引っ張り出した。

 至音(シオン)姉さんの各神核は浄化されつつ消えていった。


「これはまた」

「大きな黒い塊だこと」

至音(シオン)姉さんの魂魄と同化してるし」


 これは濾過するにしても相当手間だと思う。


「この分だと至音(シオン)は作り直しね」

「そうなるとこの中身を濾過してから?」

至音(シオン)の心が残れば、だけどね」


 ヒステリックになるタイミングでスルーしていた理由もこれが原因かもしれない。


芽依(メイ)?」

「早速、濾過しましょうか」


 私と芽依(メイ)は即座に神素結晶製の濾過装置をその場へと用意する。

 芽依(メイ)は未来視を併用して抜け穴が出来ないよう検査を繰り返す。

 私は聖属性の濾過魔術を新規で創造した。

 その魔術を濾過装置へと多重付与して捕獲した大きな黒い塊を封印した。


「後は時間との勝負か」

「ところで母さん? 穴はどうなった?」

「そうね……完全に塞がったわね。流出は無し」

「やっぱり身内のドMが穴だったかぁ」

「私達が気づけぬ穴。痛い所を突くわね」

「地底の眷属は夏音(カノン)姉さんと共同管理だから助かったけど。まさかこんな事になるなんて誰も思わないわよね。夏音(カノン)姉さんの反応はどうなの?」

夏音(カノン)の驚きは想像以上よ」

至音(シオン)が倒れたから何かと思えば?』

「あらら。ステーション内に居たのね」


 一方の私は封印状態の塊を鑑定してみた。

 結果は驚くべき者の名前が現れたよね。


「メ、芽依(メイ)。こいつ……」

「どうかしたの? 結依(ユイ)

「こいつが例の探索の女神みたい」

「「ふぁ?」」




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