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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第二章・今度は別の世界を管理するの?

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第53話 地底世界を満喫した。

 Side:実依(マイ)


 魔王国での設置を終えた私と姉さん達は、


「このまま真っ直ぐ帰るのはもったいないよね」

「「もったいない?」」

「今から気晴らししようか」


 姉さんの発案で近隣にある砂浜に移動した。


「「「海だぁ!」」」


 私達は良くある宣言を海辺で行いつつ水着に着替えて海に飛び込んだ。

 夏季休暇はゴタゴタがあった所為で泳ぎに行く事すら出来ず忙殺されたからね。

 姉さんの言う気晴らしは私達にとって必要な事でもあった。

 私達の容姿は魔族からエロフに戻したけど疑われる事はまず無かった。


「「気持ちいい〜!」」

「姉さん、海中に人魚が居た!」

「無闇に捕まえたらダメだよ〜」

「はーい!」


 姉さん達はデッキチェアに寝転んで日焼けしていた。

 綺麗な素肌を晒して燦々と照りつける日差しを浴びているよ。


「のどかだねぇ」

「そうだね。姉さん」

実依(マイ)の用意したジュースが美味いね」

「うん。でも、その実依(マイ)は人魚族を追っかけているけどね」

「地の身体能力で海中に強い人魚族に追いつけるから驚かれているよ」

「まさか餌とか思っていないかな?」

「さぁ? どうなんだろう」


 思ってないよ! じゃれているだけじゃん。

 もうね、久方ぶりのバカンスで羽根が伸びたと思うよ。

 これが終われば元の世界に戻らないとダメなんだけど。


「なんで俺達に追いつけるんだ?」

「本当にエルフ族か? この子?」


 ちなみに、私達が分割体と統合するまで元世界と管理世界の時間はある意味で同期していたが、統合後から同期を止め管理世界の時間が元世界よりも加速しているの。

 こちらは四十八時間で一日が経過するが、あちらでは二時間が経過しただけだ。


⦅なんですって!?⦆


 夏音(カノン)姉さんも加速にはびっくりだ。

 こちらの半日(二十四時間)が元世界の一時間に相当するとんでも加速。

 私達が持つ腕時計の時刻は元世界の十九時。

 こちらの半日が過ぎ去ったくらいかな?


(それも元々は私達が管理し易くするため、なんだよね。学生の身、社会人の身で時間を作るには、それしか手が無かった訳だし……)


 当初は分割体のド忘れで日付指定が無かった世界。

 夏音(カノン)姉さんが水晶スマホを用意した頃合いに設定され、両世界の時間のズレが徐々に同期するよう変化した。詳しい事は私達も調査していないので分からないのだけど異世界時間で一年以上が経過した頃合いに元世界との同期が完了した。

 同期完了は私達が統合を行う日の前日だ。

 母さんもそれを目処にしていたと思われる。

 夏音(カノン)姉さんから提案を受けた話では世界の時間加速が行われる直前なのではと思えてならない。そこから先は同期が切れ、こちらの世界が元世界よりも速くなってしまうから急いだのかもね、きっと⦅そうよ⦆大当たりだった件。


(それがあるから私達もこちらでバカンスが出来るのだけど。亜衣(アイ)達がぐぬぬと唸ってそうな気がする……あっ! 大波が来た!)


 亜衣(アイ)の怒りの大波が私を襲うもサーフボードを創ったのち、波に乗って陸地に向かった私であった⦅姉さん達だけズルい!⦆仕方ないよぉ。

 時間創って海で泳いだら? それが出来たら苦労はないか。

 日々のゴミ掃除も監視と並行して行っているのだもの。


「あ、実依(マイ)がサーフィンしてる」

「してるね。魔族達が興味深げに見ているよ」

「そういう乗り物もあるのかって感じかな?」

「そうかもね」


 これはこれで一種の遊びなので魔族間で流行りそうな気がした。

 姉さん達の言う通り近づいてきた魔族がどうやれば海上で立てるのか聞いてきたからね。なのでお試しで数本のサーフボードを用意して教えてあげた私であった。


⦅のちに魔族の間でサーフィン大会が開かれ始めるのであった。きっかけを与えたマイというエロフを象ったトロフィーを用意して……⦆


 以上、由良(ユラ)の語りでした!


(って、なんで私のトロフィーやねん!)


 由良(ユラ)が面白がって創ってそうな気がしたけど受け流す事にした。

 一通りのバカンスを楽しんだあと、


「海を渡って人族領にでも向かおうか」

「人族領? どうしてまた?」

「時間があるからいいけど。歩いて渡るの?」

「そこは舟を用いるに決まってるじゃん」

「「姉さんの非常識が表沙汰になるのね」」

「何でよ!? 普通のカヌーだよ!」

「「本当だ。明日は嵐かな?」」

「妹達が酷い!」


 姉さんの提案で対岸にある人族領を目指した。

 もちろん容姿は上陸直前で人族の格好に戻したけどね。

 私達の憑依体は元々人族だから。

 では、何故渡る事になったのか?

 単純に夏音(カノン)姉さんの片付け跡を確認するためと地底世界で必要な身分証を得るためでもあった。地底世界では探索者ギルドなる互助組織があるらしいから。

 冒険者ギルドのギルドカードは浮遊大陸と各魔王国でしか使えないそうだ。

 カードが無駄に増えるのどうにかならないの?⦅無茶言わないで⦆無理か。


「到着した途端に兵士に囲まれると」

「これは分かっていたことだよね?」

「〈隠形〉も無しに海を渡ってくればね」


 兵士達の言葉は現地人の言葉なのか私達には通じなかった。

 本来なら自動翻訳を用いるのだけど兵士の思惑とか考えとか知っても無意味なので用いていないのだ。面倒だしね。

 無視しても捕縛されてしまうので、思考だけは読み取って翻訳するしかなかった。


「異国の容姿だから間諜か何かと勘違いしているっぽいよ?」

「まぁ姉さんはそうだよね。袴だし」

「私は魔導士っぽいから通用するけど」

「私も闘士っぽいから問題は無いね」

「剣士でも通用すると思う。抜刀しなければ喧嘩を売るなんて真似にはならないし」

「でもさ? 喧嘩を売らなくても売ってくるのがこの世界の人族では?」

「ま、そうなんだけどね」


 私達が困惑している間に兵士が槍を結依(ユイ)に向けて突き刺してきた。

 この中で無手だから倒すならそちらと思ったのかもね、意味は無いけども。

 穂先は結依(ユイ)の脇腹に触れた。


「表層の積層結界で穂先が折れたし」


 折れて愕然としている。

 これは何故だって感じかな。

 気狂いを起こした兵士共が挙って結依(ユイ)に向かって襲いかかる。

 結依(ユイ)は喧嘩を売られたも同然なので三本の槍を避け、飛び上がりながら本気の蹴りを兵士共の首へと見舞ったのだった。

 兵士共は鈍い音と共に海へと飛んでいった。

 ポンポンポーンと飛び石のように着水した。


「たーまやーぁ!」

「「それ違うって」」

「別にいいじゃん。飛んで爆ぜたし」


 飛んでいった兵士を見て青ざめた責任者っぽい士官。

 大声で怒鳴りつけながら増援を呼ぼうとした。

 しかし、私達が遮音結界等で覆っているから増援は無かった。

 当然だけど人払いと周囲の記憶改ざんも同時に行ったよ。

 ここから先は私達の行う蹂躙戦だからね。


「顔を覚えられても困るしね」


 久方ぶりに本気が出せるかな?

 人の身で行う本気だから限度はあるけど。

 姉さんは抜刀したのち軽い調子で剣や槍を切り裂いていく。

 それは怯える兵士の鎧をも一瞬で切り刻む。

 爽快感溢れる戦闘シーンだった。


「これから登録って時に要らぬ面倒はね」


 結依(ユイ)は蹴り上げた時と同じく拳で兵士達の頭をポンポンと爆ぜさせる。

 返り血を浴びないよう爆ぜる直前で離れる様は凄まじい⦅これほどなの?⦆うん。


「見た者は消す。これは常識だよね」

「「暗殺者の常套句だけど!」」

「私達は暗殺者じゃないもん!」


 私は私で逃げようとする兵士達をその場に固定していった。

 より正確に言えば砂浜に埋めていっただけだね。ズボッと埋まる兵士多数。

 鎧の重量を極限まで重くして自重で落としていったのだ。

 あとはスイカ割りの要領で杖に仕込んだ刀を出してスパスパと割っていった。

 事前に兵士の身体の中身をスイカに置き換えているから流血沙汰にはなっていないけどね。最後に意識を保った士官の魂魄と頭を残して記憶を探り、全てカボチャに置換しておいた。あとは近隣の住民が拾って帰るでしょ?

 形状が人の頭部で頭骨が内側に残るけど。


⦅な、何ていうか、迷宮神が一番恐ろしいわね⦆


 何か言われているけど気にしないもん!

 戦闘後は遺体とスイカ等を魔力還元で消し去って何も存在しない砂浜へと戻した。

 但し、間諜と疑った士官カボチャは除く。

 私は後始末を終えつつ姉さん達に問う。


「人族ってさ。自分達は平然と他国を侵略するのに自国だと無駄に騒ぎ立てるの、何なの?」

「それは自分勝手だからでしょ?」

「大概、人族とはそういう者だよ」


 姉さんの言葉は妙にしっくりくるよね。


「伊達に三千年以上は生きていないか」

「ちょ! 私だけじゃなく実依(マイ)達だってそうでしょ!?」

「「そうだっけ?」」


 本当は三千年以降の年を数えるのを止めただけなんだけどね。

 実年齢は言わずともいいよね?


⦅本当に私の妹かしら? 私が妹では?⦆

⦅カノちゃんがお姉ちゃんで合っているわよ⦆

⦅そうなの? 母さん⦆

⦅カノちゃんは眠っていた年数だけ加齢が止まっていただけだもの。仕方ないわよ⦆

⦅ああ、それで⦆


 母さんと夏音(カノン)姉さんが念話中だけど、私は聞かなかった事にした。

 私達は徒歩移動で近隣の港街に移動する。

 そこから先は乗合馬車に乗って、探索者ギルド本部がある国までのんびりとした歩みで向かった。支部もいいけど、どうせ見るなら本部が一番だもんね?

 本部の周辺には様々な痕跡もあるし。


「ところで入国税の貨幣はどうするの?」

「共通だから手持ちでどうにかなるでしょ」

「それで手持ちっていくらなの?」

「えっとねぇ。大白」


 姉さんが気にしない素振りで取り出そうとしたのは世界の最高額を有する大白貨。

 私と結依(ユイ)は驚きのあまり、


「「!!?」」


 一瞬で周囲に偽装結界を張って姉さんの手許を二人で隠した。

 額が額だけに危険だよぉ!


「姉さん。それを今出したらダメ!」

「そうそう。一番大きな貨幣を出すと」

「要らぬ面倒を呼び込むから!」

「そうだったね。忘れていたよ」

「「そんなあっけらかんと」」


 姉さんの所持金は各五万枚。

 とんでもない物量の貨幣が存在していたよ。


「さ、流石に貯め込み過ぎでは?」

「使う機会が無かっただけだもん」

「「もんって」」




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