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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第二章・今度は別の世界を管理するの?

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第50話 ゴミ掃除が捗る。

 Side:実菜(ミナ)


 結依(ユイ)達を連れた私は飴玉を舐めつつ喫茶店のオーナーが祖国へと足を踏み入れた。


「常夜が消えた影響は皆無……かな?」

「これも眷属化した影響かもね」

「だろうね。とはいえ目立つね」

「ああ、エロフはどうあっても目立つか」


 当初は魔族に〈変装〉して向かおうと思ったのだが、


「吸血鬼の国だもの。仕方ないよ」


 よく考えると夏音(カノン)姉さんの眷属達も素の状態で街中へと出歩いていたので〈変装〉は不要と思えた。あくまで思えただけで実際は必要だったのでは? と思えてならないが、ともあれ。

 異世界なのに日本語で会話するから余計に視線を集めている気がする。

 何処の言葉だ? 的な感じだ。


「肝心の発着場まであとどれくらい?」

「徒歩で三十分って感じかな」

「でも、出入りなんて出来るの?」

「一応、由良(ユラ)から入場許可証を貰ってきたけどね。ほら、コレ」


 それは神素結晶で出来た虹色の金属だった。

 虹色の白金属が正しいのだが、有るのと無いのとでは扱いが異なるのだ。


「魔神の許可ありと」

「魔神様が何か言ってる?」

「はいはい。姉さん、ちょっとそれ貸して」

「大事にしてね?」

「当たり前でしょ」


 すると結依(ユイ)が目を細めつつ許可証に魔力をあてがう。

 そこに浮かび上がったのはこの世界の『魔神が許す』との文言だった。


「姉さん。分割体の神名になっているけど?」


 結依(ユイ)は魔神の部分に触れ、現れた名を見て首を傾げた。

 そこにあったのは語尾に〈ンス〉の付く分割体を示す名前だった。


「それでいいんだよ」

「「どういうこと?」」


 今でこそ私達の名前が神名扱いになっているが、分割体の間はそちらの呼称が使われてきたのだ。一応、本当の神名もあるにはあるが、人の口では発音が難しい言葉のため、現在は自分達の名が神名扱いとなっている。夏音(カノン)姉さんで言うところの真名ってやつだね⦅貴女達にもあるのね?⦆あるに決まっているでしょ!

 私はきょとんとする二人に対しあっけらかんと教えた。


「どうもね? 由良(ユラ)達は私達みたいに即改善って訳にはいかないみたい」

「「はい?」」


 私達の世界では三人一組、四人一組で神の名を有す。

 個々の名は示されず、役職めいた名前で呼ばれている。

 魔神とか、知神とかね。


「例えるなら、一柱につき一つの宗派と言えば理解は容易いと思う」

「「あっ!」」

「分かったでしょ。安易に名称を改修しようものなら混乱を招く恐れがあるんだよ。仮初めから本物が降誕したといっても直ぐに普及させるのは不可能に近い。それこそ聖典等を全て書き換えないといけない手間も出てくる」


 そこで改修しようものなら邪神が入り込む隙を与えかねない。

 だから、外向きには分割体の神名を用いる⦅面倒だけどねぇ⦆事になったのだ。

 女神の本音はそうでも、人々の信仰心を維持するには仕方ない話だった。


「一応、神託時は定型文形式で〈ンス〉の文字が名前の後に付くよう指定済みだよ」

「それはなんというか」

「めっちゃ面倒だねぇ」

「面倒だと思うよ。巫女と直接会話するときに反応が遅れる場合もあるからね。誰の名前的な反応で遅れてポンコツを示したり」

「「めっちゃ、やりそう!」」

「特に深愛(ミア)がね」

「お股も緩ければ」

「頭も緩そうだもんね」

「そうそう」


 今⦅何でよ!⦆ってツッコミが念話で届いた。

 これが地底世界なら頭が弾け飛んだ玲奈(レナ)がポカミスしてしまいそうな気がした⦅言い返せない⦆自覚があって何よりだよ。

 三十分ほど街道を歩き、目的地となっている発着場に到着した。

 そこでは吸血鬼の衛兵が出入口に待機していて、


「ここだけ手作業なんだね」


 出入りする業者達の許可証の所持・不所持を確認していた。

 私達は業者達の長蛇の列に並び、今か今かと待った。

 待ち時間が長すぎて暇過ぎるけど。


「どうせ自動改札的なゲートは信頼出来ないとか思っているんじゃないの?」

「でも、それってさ? 衛兵達を買収すれば意味を成さない気がするのだけど」

「傍目に見たらそうでも、当人達は絶対に有り得ないと思って行動しているんじゃないの?」


 知らんけどの語尾が付いたけど。


「「おかしなところで性善説」」


 まぁ二人の言い分も分かるよ。

 それくらい自国の兵士を信頼しているって事だろうね、きっと⦅眷属の挙動は分かるけど⦆夏音(カノン)姉さんの監視下でも穴がありそうで恐い。


「ま、それはともかく私達の番だよ」

「次の者達、前へ!」


 先ずは私がギルドカードと許可証を示しつつ何の目的で訪れたか説明した。

 そう、説明したのだが、衛兵達から訝しげな視線を向けられるだけだった。


「復旧だと? その(なり)でか?」

「そうですが?」


 その形っていうか一応、作業着には着替えているよ?

 青色のツナギって言えばいいのかな?

 汚れても良い格好で歩いてきたからね。


「嘘を言うな。お前達は間諜だろ?」

「何故、間諜だと決めつけるので?」

「魔神様の許可証がここにあるのに?」

「こんな物はどうとでも捏造出来るわ!」

「「「捏造って」」」


 神素結晶で出来た許可証を、どうやって捏造するというのか?

 その製法が他にもあるなら逆に知りたいよ⦅有り得ないでしょ⦆だよね?


「お前達は間諜の疑い有りだ。よって直ちに拘束する!」


 直後、周囲に複数の衛兵が姿を現した。

 私は焦る振りをしつつ結依(ユイ)達と目配せする。

 裏では念話して意思疎通を図る。


「そんな横暴な!」


 私の叫びに応じたのは応援で現れた衛兵の一人だった。


「横暴もクソもあるか! そうでなくても破壊工作を行う輩が後を絶たないんだ! お前達が安全というなら証拠を示してみろ」

「証拠を示したとして拘束は解かれるので?」

「それは知らぬ! 上の司法部と相談しろ」


 衛兵の横暴もここまで来るとイラッとする。

 私は結依(ユイ)と共に自身の周囲に積層結界を張り巡らせる。

 そちらがそのつもりならこちらもそのつもりで行かせて貰うよ。

 積層結界は一種の手加減⦅手加減!?⦆殺さない的な手加減。

 護りだけではないのだよ。

 

「じゃ、仕方ないかな」


 私達は騒ぎ立てた衛兵達に近づき、その身体に触れる。

 ここで衛兵達を弾け飛ばすのは簡単だけど、それだけでは意味が無い。


「「偽装無効」」

「からの時間封印っと」


 私達が触れた瞬間、衛兵達に施されていた偽装魔法が無効化された。種族偽装か。

 次いで実依(マイ)が時を止める封印を施して無効化された衛兵達は硬直した。


「で、証拠を示しましたけど?」

「なっ!?」

「恐ろしいですね。味方のはずの衛兵に人族の兵士が紛れ込んでいたなんて。間諜の疑いをかけられましたけど、この人達が間諜だったと」


 私がそう言うと衛兵達は疑心暗鬼となり互いに疑い始めた。

 ここに居る衛兵は大丈夫だよ。

 出入口に控えていた衛兵達が間諜だから。


(私達を疑っていた人物が間諜って何なの?)


 私は無効後に魔法陣を回収した結依(ユイ)に問う。


「それでどうなった?」


 こういう時に魔神が味方で助けるよね。

 結依(ユイ)は魔導書で解析を進め誰が創ってどのような効果があるのか洗っていく。


「人族が新たに開発した魔法だね。これ」

「もしかして新種が出来ていたと?」

「うん。特徴は吸血鬼族に特化した魔法ね」

「一時期、属国だったことが開発に結びついたとか?」

「それもあり得る。いや、そうみたい」

「なるほどね」


 それを用いて吸血鬼族に紛れていたと。

 複数の破壊工作も彼等が招いた者達が行っていたと。

 ここで復旧作業をされたら困るから私達を捕縛しようと動いても不思議ではない。


「しかもこれ、親すらも誤魔化す魔法だよ」

「あらら、とんでもな魔法が出来たもんだ」


 つまり夏音(カノン)姉さんの目を⦅何ですって!⦆誤魔化す仕組みを有している魔法だったと。例えるなら眷属偽装とでも言えばいいかな?

 こうなると密かに捕まっている眷属が居るかもしれないね⦅直ぐに調査して!⦆大慌てだ。


「禁書だね。複数の禁書を掛け合わせて創った魔法。これは永久破棄でいいよね?」

「そうだね。超絶危険過ぎるもの」


 この永久破棄とは由良(ユラ)を介さずとも行使可能な魔神の特権だ。

 直後、これに類する魔法陣が世界から消え去った。

 この魔法を一生懸命創った創作者は絶望するだろうが女神の知ったことではない。

 研究に使ったとされる資料諸共消え、詠唱呪文も意味を成さない。

 仮に唱えても禁止扱いとなるので魔法として成立しなくなるのだ。


「で、業者の中から複数の人族がご開帳と」

「結構な人数が紛れ込んでいるね。どうする?」

「衛兵達では対処が出来ないから片付けようか」


 疑心暗鬼になって動きが緩慢だしね。

 私達は大規模な神力陣を展開させる。

 ここで魔法陣だと気取られるからね。


「「「多重陣展開、からの一括照準」」」


 そして該当人物の足許に陣を移動させる。

 この時点で間諜共は時間停止で硬直した。


「転移先はどうする?」

「空の上でいいでしょ」

至音(シオン)姉さんが絶叫しそうだけど」

「「ドMな方の?」」

「そうそう。ドMな方の」


 落下による死者が多数。


⦅あの子達も意外とドSね。感じちゃう⦆


 至音(シオン)姉さんが何か言ってる。

 硬直は海水に落ちる数秒前で解除される。

 あとはドボンと落ちて終焉を迎えると。

 途中でゴミ共の船にぶつかる可能性もあるので炎を纏わせながら落とすのも有りかもね。簡単には消えない炎で集中砲火するのも有りだろう⦅有りよりの有り!⦆深愛(ミア)が賛同を示したので私はそうする事にした。


「粘焼陣を追加して」

「あ、燃えだした!」

「とりあえず周囲だけね。解除したら当人が絶叫死するだろうけど」

「お陰で外の片付けには丁度良いでしょ?」

「そうだね。内と外のゴミ掃除で一石二鳥と」

「別の意味で海を汚しそうだけどね」

「落ちたら魔力還元しておこうか?」


 ポカーンとなる衛兵達の前で消えていく間諜達。

 転移から出現した場所はゴミ共の船の直上だった。

 深愛(ミア)が途中で干渉したのかもね。

 船は一瞬で燃え上がり間諜諸共火の海に消えたのだった。


⦅なんか保管庫が大きくなってるぅ!?⦆


 あ、保管庫が拡張した事を伝え忘れてた。

 てへぺろ!




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