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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第二章・今度は別の世界を管理するの?

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第44話 スキルの悪用はダメ。

 Side:結依(ユイ)


 私達が宇宙ステーションの最下層で下準備をしている頃、


「えー!? 亜空間庫が焼失したぁ!?」

「焼失ではなくて消失よ。消え去ったの」


 夏音(カノン)姉さん達が過ごす草原では乱痴気騒ぎが起きていた。

 それは亜空間封印に伴う大騒ぎだったようだ。

 何か、ごめんね?


「ど、ど、ど、どうすんの!? 私のエロフ」

「あら? エロフって自覚が出てきたの?」

「あれが私のエロフたる所以でしょう!?」

「見た目はそうだろうけど、本質もエロフよ」

「ほ、本質もエロフ……マジで?」

「その証拠に魔神からの新称号が得られたでしょう? 〈淫乱エロフ〉って」

「ふぁ? あ、あ、あれって、魔神様からの」

「そうそう」


 いや、本当にごめんなさい。

 あまりに気持ち良さげで横たわっていたから、つい口走って出てしまった。

 これは私達女神が神力を伴った言動を発すると称号になってしまう事故を忘れていた所為でもある。私は擬似精霊界の空間を割りつつ彼女に対してちょっとした加護を与えることにした。


「ふぁ? か、加護? 何これ?」

「あら? 魔神から加護を頂いたのね」

「加護って何なの?」


 加護とは力を補填するとか見えない物が見えたりするとか。

 気まぐれな女神が様々な力を与える事を⦅自分で言う?⦆うっさいな。


「例えるなら浮遊大陸の女神が私に与えたスキルがそれね。私も女神だけど」


 夏音(カノン)姉さんに与えた加護は深愛(ミア)の〈魔導書(アーカイヴス)〉。

 由良(ユラ)の与えた〈空間跳躍(くうかんちょうやく)〉だったりする。

 それらは分割体発の加護だが、加護に変わりなく特定の人物しか使えない代物だ。


「でもスキル一覧には出てないよ?」


 最近だと姉さんが魔王君達に与えた魔眼もこの範疇に含まれる。

 私が与えた加護はスキルではなく姉さんが行うような魔眼付与だ。

 それは医師でもある彼女にとって重要な物。

 ある意味で結凪(ユナ)の権能を借り受けたような⦅アレを授けたのね⦆結凪(ユナ)の説教は後で受けるよ⦅怒っていないわ⦆そう?

 むしろ良くやったって言われたよ。


「魔神と医術神の念話を聞く限りだけど、人体の透視が可能な魔眼を得たみたいね」

「じ、人体の透視? 魔眼って?」

「体内を意識して集中して見るとレントゲンより鮮明に内臓などが見えるみたいよ」

「え? そ、それって?」

「あちらでも使える代物よ。医術神はそれを用いて難解な手術を成功させているわ」

「ふぁ?」

「割と身近なところに居るからね。医術神」

「そ、そうなの?」


 そうなんだよね。

 こればかりは彼女が神族にならない限り教える事はない⦅当たり前よ⦆けれど。


「試しに私を見てみたら?」

「だ、大丈夫なの? 本体が危険なんじゃ」

「その機能は取っ払ったわ。私の本体は母さんの元にある。マキナ達もそうだけど」

「そ、そうなの?」

「見たら分かるから見なさいな」

「う、うん」


 危険な死滅機能は姉さんが取っ払ったね。

 夏音(カノン)姉さんの神核が安全地帯に移ったから。

 次女はそれを取っ払う過程で悶えたけども。


「本当だ……見える、内臓やら何やらが」

「でしょ? 自分の胸でも見えるはずよ」

「えっと……ん? な、何これぇ!?」

「ふふっ。ようやく気がついたみたいね」


 ついに気がついたね。

 彼女のおっぱい。エロフのエロフたる所以が存在している事に。

 通常は偽装状態で空間の隙間に隠れている。亜空間以外の空間だけど。

 魔眼で空間を見通すと脂肪塊が見えるのだ。


「肩こりが、いつもの肩こりの原因って」

「それが正体ね。淫乱エロフさん」

「そんなぁ」

「だから本質もエロフなのよ」

「……」


 ちなみに、同じような偽装は他種族の子達でも同じだ。

 猫獣人なら耳と尻尾が空間の隙間に隠れているので、空間の隙間に手を伸ばすと感じてしまう……こんな感じで。


「ひゃうん!」

「あっ? カナブンが跳びはねた?」

「良く見なさい。お尻の付け根を」

「あ! 尻尾があるぅ!?」


 私から握られて尻尾を放した後、周囲をキョロキョロする猫獣人。

 尻尾は無いはずなのに尻尾が立つ場所をジッーと見つめるだけだった。

 意識すれば左右に振る事も出来るけどね。


「男子は見ない方がいいわよ」

「分かってる。ユウキ以外は見るつもり無いし。患者ならともかくね」

「それならそれでいいわ」


 一方、亜空間庫消失で騒ぐ者達は他にも居た。


「どうすんだよ! 俺達の秘蔵コレクション」

「も、元に、元に戻らないのか? なぁ?」

「無茶を言わないで。空間圧縮で消えたんだし」

「「くそぉ! 女神のバカ! 貧乳!」」


 カチーン! こいつらには実依(マイ)が与える罰を一年間与えてあげるよ。

 消しゴム味を反省するまで味わってなさい!


「あーあ。言ってはならん事を。知らないよ」

「女神の所為で大事な物が無くなったんだ!」

「これくらい言っても罰は当たらないはずだ」

「本当に知らないからね? 泣いて詫びても許されないと思いなさいよ」

「「やれるものならやってみろ!」」

「私も女神なんだけど?」

「「マキナちゃんは別!」」

「なんでやねん」


 すると私だけでなく全員が罰を与えた。

 姉さんは女性が男性に見える眼を与えた。

 実依(マイ)は魔力視を剥奪した。

 あちらに居る芽依(メイ)は重要な場面で語尾にワンが付く罰を。


(じ、地味に酷い……)


 結凪(ユナ)は嗅覚を封じた。

 吹有(フウ)は念話禁止の罰を。

 果菜(カナ)は老化促進の罰を。


「うぉ……なんだ、か、身体がおかし、い」

「お、俺も、だ。い、一体、何が!?」


 幹菜(マキナ)ちゃんが男性に見えたか。


「ここは女神の住まう場所だよ。見ていない聞いていないと思ったら大間違いだよ」

「「なんだとぉ!?」」

「やれるものならって叫んだから即実行したんだね。言っておくけど本来の女神はお母様以上のレベル持ちだから、勝てると思ったら大間違いだよ?」

「「!!?」」


 亜衣(アイ)は不死属性を封じた。

 優羽(ユウ)は生殖機能を封じた。

 玲奈(レナ)は全耐性を剥奪した。

 深愛(ミア)は全スキルを剥奪した。

 由良(ユラ)は空間移動の権限剥奪。

 仁菜(ニナ)はデバフでレベル1に。

 美加(ミカ)は全魔力を剥奪した。

 妹達の罰だけは通知されるから反省したところでもう遅い。

 私も無期限に変えておこうか。


「やっちまったぁ」

「どうすんだよ、これぇ」

「自業自得ってことで」


 直後、上空から雷が二人に落ちた。


「「ぎゃー!?」」


 カチンと凍結して固まった。

 最後は鉱物と化し憑依体が剥奪された。


「え? 一体、何が? 雷雲、無いよね?」


 えっと……若結(モユ)達も罰したのね。

 手加減知らずだから吹有(フウ)が結界を張ったうえで罰したか。


⦅あいつらの秘蔵品、私達のパンチラだった⦆

⦅スキルの悪用許すまじ! 退学ものだよ!⦆

⦅退学は流石に無理だからしばらく停学で!⦆


 これは私達も擁護出来ない。



 ◇ ◇ ◇



 精霊庫の割り当てを終えた私は代表として姪っ子の隣に転移した。

 容姿は女神の体でね。


「彼等は末の女神達の怒りを買ったのよ」

「あ、貴女は……確か?」

「この姿では初めてね。どうも魔神です」

「あ、ああ! あの!?」


 口調を改めいつものお気楽さを排除した。

 見本は苛烈な芽依(メイ)ね⦅苛烈って⦆本当の事じゃん。


「末の女神達は世界に居ないけど力は何処でも到達するからね。逃走は原則不可よ」

「そう、なのですね」


 私は気絶したまま浮かぶ亜神体共を封印球と称した水晶球に吸引した。

 今のままあちらの世界に戻ると邪神共の餌食になってしまうから。

 というか由良(ユラ)の権限剥奪でステーションからは出られないけれど。


「彼等は無期限罰を喰らったも同然だから本気で反省するまでは、この中で過ごしてもらうことになるわ」

「これは?」

「封印球。元は邪神を封じるための魔道具」

「邪神!?」

「彼等は邪神の眷属が憑依時に集めた品。それを惜しいと嘆いた。それが彼らの罪」


 パンチラって他には?⦅結依(ユイ)の⦆私もかぁ、許せん!


「そしてこれはあちらには持ち込めないから」


 私は魔導書を取り出して封印球以外の眷属達を照準し、精霊庫の権限を付与した。

 姉さん達や姪っ子は有効化した段階で使えるが、眷属達は新規で個別付与が必要だったのだ。本来なら由良(ユラ)の仕事だけどね⦅助かりました⦆いえいえ。


「今……有効化した精霊庫に収めておく事をおすすめするわ」

「せ、精霊庫?」

「亜空間庫の代替品よ」

「代替品!? はぁ? よ、容量が底なし?」

「低次物ならね。高次物となると貴女の住まう家が丸々収まる程度になるかしら?」


 私達の実家でもあるけれど。


「あれでも相当なのに収まるって?」

「今後は自動整理されるから探しやすくなると思うわよ。紛失知らずよ」

「そうなんだ」


 私の説明は〈魔導書(アーカイヴス)〉にも記されている。

 というか姉さんが自動蒐集してリアルタイムで記載しているだけだけど。


「ねぇ。カノン? あの人は?」

「あれが例の魔神よ」

「あの人が魔神様。何処かで見たような?」

「それはそうでしょう。分校の生徒だもの」

「え?」


 気の所為かな?

 ネタバレされている気が⦅されてるよ⦆マジで?


「容姿は今と少し違うけど、三つ子の次女と言えば理解は容易いと思うわ」

「み、三つ子……二組居るけど、どちら?」

「あー、どちらも女神だけど」

「え? どちらも?」

「どちらも女神よ」

「どうしよう。昼間に叱ったよ?」

「それってどちらの?」

「確か、ハーフアップが次女の三姉妹」


 すみません。それ、私達です!

 というより⦅姉さんだよね⦆男子達の股間を蹴り上げたから。

 それはもう思いっきり。蹴り上げ過ぎて⦅天井に刺さった⦆頭が。

 不能になるじゃないって叱られたっけ。

 蹴られたのは⦅罰した男子達⦆あいつらか。


「分かったわ。上の三つ子ね。叱ったのは」

「じゃ、じゃあ……あの時のハーフアップは」

「そこの魔神ってことよ」

「マジで?」

「マジで」


 バレたしぃ!? どうしよう。

 普段の容姿を変える? もう無理かぁ。

 諦めるしかないね、うん。

 私は女神の姿から普段の姿に戻る。


「その姿は……先ほどの?」

「身バレしたからね。戻ったの」

「身バレ?」

「貴女のお母様がバラしたからね」

「それで」


 本当は明かすつもりなんて無かったのにぃ。


「あ、本当だ。あの子だ」

「ちなみに診療所の所長が医術神よ」

「え?」


 何か、バラして楽しんでない?

 絶対に楽しんでいるよね?

 ホント、恐い者知らずだね?




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