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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第二章・今度は別の世界を管理するの?

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第43話 後始末が大変だ。

 Side:実依(マイ)


 本来なら魔王国に降りて冒険者登録するはずが完全中止となってしまった件。


「それで私達まで駆り出されてしまったと」


 私は横たわるクラスメイトと教師。

 近所のおじさんとかおばさんの面倒を見ている。


「仕方ないじゃない。終われば」

「終わるの、これ? 九十二人だよ?」


 流石に子供達は居ないけど。


「同時進行で行えばなんとかなると思う」

「指先一本で一度に十人の計算か」

「兼用変換陣は多重展開しているし。自動化しているから大丈夫だと思う」


 今は相応の人数が所狭しと草原へと横たわっている。

 中身は夏音(カノン)姉さんが一括で引っこ抜き、姉さんが与えた管理神器に移していた。

 それを眺めて恍惚とした表情に変わる様は見ていて恐ろしいと思ったが。


「あれは一体、どういう?」

「傍から見て、お酒を嗜む母さんみたいな?」

「どうも邪神の眷属に憑依されていたみたい」

「「憑依!?」」


 憑依というとあれだよね?

 本人の意識を眠らせて身体を乗っ取る。

 私達は影響外だけど。


「ま、まさか亜空間の中にも潜んでいたと?」

「調査結果が出る前に封じが必要になったか」


 これは吹有(フウ)達に⦅現在封印中⦆いつの間にか動いていたよ。


「姉さん達の創造物も一切合切還元コースに突入してしまったと?」

「汚染されているからね。コロニーはこちらと繋がった段階で排除したけども」


 排除というと消滅コースかな?

 姉さんが逃がすとは到底思えないし。


「なら、コロニーにも汚染が出ていたと?」

「転移門周りでね。この宇宙ステーションは擬似精霊界と神素結晶で構成されているから完璧に弾かれるけど、下にあるコロニーは既存金属と神結晶だけだから」


 それで気づかぬ内に汚染されていたと。

 神結晶は意外と不純物が多いもんね。

 神素結晶のように神素単体の結晶なら問題無いけども。

 夏音(カノン)姉さんって意外と⦅ポンコツ⦆母さんが言うと自分もポンコツだって⦅じゃ⦆逃げた。


「お陰で亜空間を経由する諸々が断絶して大騒ぎになっていそうな気がするよ」

「「断絶!?」」

「亜空間封印は空間消滅と同じだから」

「ああ、それはなんというか」

「姉さんが積み上げてきた苦労が水泡と?」


 帰すかな?

 夏音(カノン)姉さんは商会もやっている。

 そうなると信用問題に発展しそうな気がする。


「今は深愛(ミア)由良(ユラ)が神託を降ろしているから大丈夫だと思う」

「あ、そうか。予告無しでは行えないもんね」

「その分、邪神共にも勘づかれるけど」

「ああ、憑依者が隠れているからかぁ」

「面倒な!」


 マジで面倒だよ。

 亜空間が封じられたら次はどの方法で対応すればいいか悩まないといけないから。

 世界中から澱みを消し去りたいね。


「封印……後は別の手段を構築しないとね」


 ん? 今、間があったね。

 夏音(カノン)姉さんが邪神の眷属を滅したかどうか確認したと。

 眷属に聞かれたら困るから、か。


「数にして、半分が汚染ありだったわ」

「エロフの女王までも真っ黒だったね」

「マキナの眷属は全員だったけど」

「ゆ、油断が招いた結果かな?」

「先の帝国戦の後、でしょうね。きっと」

「あの時かぁ。亜空間で乱痴気騒ぎした」


 一体、何があったのやら?

 ちなみに、憑依体は魂魄不在のまま果てていた。

 疑似魂魄が果てるほどの刺激って凄まじいね?


「ところで姉さん。後始末はどうするの?」

「「放置一択で」」

結依(ユイ)ちゃんまで?」

「男の体液には触れたくないもの」

「それを言われると私もイヤかも」


 あ、数人がビクッと跳ねた。

 イヤって言葉に反応したの?

 気持ち悪っ!


「エロフの女王……称号持ちはこの子?」

「うん。結凪(ユナ)の部下だね」

「名実ともにエロフと化したか」

「この様子を見るに〈淫乱エロフ〉よね」

「新称号が付いたよ結依(ユイ)ちゃん」

「ど、どんまいって事で」


 今は疑似魂魄。仮に本人達が宿っても同じ事が起きるだろう。

 私達が片付けた矢先に乱れたら目も当てられない。


(女の子達、ごめんね)


 姉さんは淡々と兼用変換を済ませていく。

 私と結依(ユイ)は女の子達へとオムツを穿かせるだけにした。

 男の子は無視一択で!


「残り二人で……完了っと!」

「「姉さん、お疲れ様」」

「乱れる前に退散しないと!」

「「そうだった!」」


 私達が退散した後、草原から大多数の嬌声が響いてきたのは言うまでもない。



 ◇ ◇ ◇



 撤退後の私達は宇宙ステーションの先端へと訪れた。

 そこは姉さんが事前確保していた何も存在しない空間だった。


結依(ユイ)ちゃんは上端から順に空間を区切って。必要数は九十九。広さは中心までの均等分割で! 余りは姉さん用で!」

「り!」

実依(マイ)は私と下端空間にトンネルを掘るよ」

「トンネル?」

「地下鉄操車場にある複数の穴ね」

「あー、あれね。りょうかい!」


 何でもここが亜空間の代替となるべき場所でもあるらしい。

 パッと見は広さが感じられない白い空間だけども。

 父さんの世界で言うところの私達が過ごしていた神殿奥。

 家屋のある、だだっ広い空間と同じだった。

 私は姉さんとトンネルを掘りつつ念話した。


⦅ところで彼女達の亜空間庫の中身は?⦆

⦅消えているでしょ。あれも亜空間だし⦆

⦅⦅あ、そういえば⦆⦆


 結依(ユイ)も区切りつつ参加したね。


⦅なら向こうの肉体も?⦆


 その肉体とは亜衣(アイ)達の世界で使っていた大変思い出深い肉体だ。

 すると姉さんはあっけらかんと応じた。


⦅そうかもね。ま、兼用変換したし⦆


 魔素吸引が必要なら自動稼働、不要なら自動で停止する肉体機能の事だ。


⦅ああ、そうか。不要になったから?⦆

⦅あっても意味が無いと⦆

⦅そういうこと。肉体に思い入れのある子にとっては可哀想だけど、現実だからね⦆


 冷たいようだけど。

 姉さんはそう言って念話を止めた。

 亜空間封印に至った原因は邪神にある。

 保管していた品々が知らぬうちに汚染されていた場合、憑依の危険性が高くなる。

 それならばってことで兼用話になったのかも。

 そういえば、色々と準備が良すぎたような?


⦅姉さん。未来視使ったでしょ?⦆

⦅ギクッ⦆

⦅私が兼用の事を発するの知ってて?⦆

⦅さ〜て、地底が見えてきたかなぁ?⦆


 これは知ってて用意したようだ。

 妹に明かさず行うから始末が悪い。


⦅姉さんは後ほどガーベラ刑ね♪⦆

⦅ひぃ!⦆


 それも肉体ではなく神体の方で。

 肉体だと結凪(ユナ)に怒られるから。


⦅何億本、活けられるかな♪⦆

⦅そ、それだけはやめてぇ!⦆

⦅うそうそ。一輪挿しだから⦆

⦅それでも止めてほしいです⦆

⦅は?⦆

⦅黙っててごめんなさい!⦆


 素直に謝ればいいのにね?

 いつも何故か隠したがるから。

 トンネルは魔王国と浮遊大陸間だけ繋げた。


「他の国家は後日ってことで」

「優先順位もあるしね」


 だが、その中継地点があの空間になるのだが、


「ぎゃん!」


 低次の者がトンネルへと向かおうとすると見えない壁に激突する仕様が発覚した。


「トンネルが開いた途端に突撃してきたし」

「あのオーガ族の女性って脳筋?」

「明らかに脳筋だね」


 私達の姿が人族だから侵入者と思って突撃してきたのかも。

 亜人族に化けるのを忘れてたよ。


「オーガ族の突撃で判明するって微妙だけど」

「だね。どうしたものか?」

「姉さんの知識に解決策は無いの?」

「無いわけではないけど。無人限定になるよ」

「人の行き来は不可能になると?」


 邪神の眷属が低次だから、それを弾く結界がトンネル開通の問題となろうとは。

 転移門は直通だから問題は無いがトンネルは別だった。

 これは困ったね。


「既存の汽車は無理っぽいね。これ」

「線路と思ったけどリニア向きかも」

「それって首都圏にある……あれ?」

「航空機かってほど厳重な審査がある、ね」

「航空機かぁ。久しく海外に行ってないね」

「行ってないね。果菜(カナ)以外」


 私はそこで気になった事を姉さんに問うた。


「例えばさ? 空間隔離での行き来とか出来ないかな?」

「空間隔離か。多分、出来るかも。流石に実験は必要だけど」

「実験かぁ。なら」


 私は目前で伸びているオーガ族を浮かせて周囲に空間隔離の結界を張り巡らせる。

 パッと見は吸血鬼の棺になったけど致し方ないよね?


「これを神素結晶の筒状容器に収めて」

「これで通るか実験と」

「通らなければオーガ族は圧死だけど」

「突撃の末の名誉の戦死かぁ」


 そんな冗談を言いつつも重力魔法で浮かせた筒をトンネルに向けて近づけてみる。


「引っかかりはある?」

「ちょっと待ってね」


 姉さんは筒を前後に押したり引いたりした。


「どう?」

「問題なく素通り出来るかも」


 スムーズにトンネルに入ってくる筒。

 神素結晶の筒だと受け入れが可能らしい。


「神素結晶だから邪神も毛嫌いするしね」

「眷属であろうと触れたら、先ごろの吸血鬼と同じで炭化するからね。その代わり」

「積み荷の入れ替えは上では出来ないね」

「人員も含めてね」


 あの空間は純粋に人が出入り出来ない場所。

 私達は例外だが亜神達も夏音(カノン)姉さんの繋がりが無ければ原則不可だ。


「ダイヤグラムも含めてシステム構築が必須になったね。姉さん」

「積み荷の荷札毎に行き先を指定する必要も出てきそうだ」

「それと、何ていうか……」

「これってエレベーターだよね」

「人を含めて移動させるなら、だけど」


 私達は筒の中身が気になったので、浮かせた状態でトンネル内を通り抜け、宇宙ステーションを経由して浮遊大陸へと向かった。

 当然、亜人に変装した状態でね。


「喫茶店のオーナーの祖国に到着っと」

「中身がグチャグチャでなければ成功か」

「ちょっと緊張するね。姉さん?」

「死んでいても蘇生させるけど」


 筒の蓋を開け空間隔離の結界を除去する。


「流血は……無いね?」

「筋骨隆々かつエロい肉体を確認したよ」

「死亡していないと。ほっ」

「気絶したままだけどね?」


 生物輸送は叶ったがリニア的な乗り物を作る事になったのは変わらないだろう。


「管理神器の拡張枠に追加するか」

「それだけで済むんだ」

「基本システムは開発するよ」

「それはそれで行うのね」

「管理者不要の自動管理だけど」

「決まった時間に出発する的な?」

「うん。遅延は絶対に許されないってね」




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