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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第二章・今度は別の世界を管理するの?

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第41話 他人のそら似かな。

 Side:実依(マイ)


 その後、コロニーからの直通扉を宇宙ステーションに設置した。

 これは夏音(カノン)姉さんからの要望で住人達の娯楽を用意しただけね。


「「「広ーい!?」」」

「まるでSFのようだ」

「いや、これSFだろ」

「SFだな」

「カノンさんが好きなのはSM」

「今、何か言った?」

「何でもないです!」


 住人は地表で探索していた眷属達だ。

 コロニーは休息を入れる空間だけで憩いはどうあっても得られないそうだ。


⦅コロニーは中継地点でしかないもんね⦆

⦅憑依体を入れ替える場所でもあるって⦆

⦅私達みたいな兼用は与えていないんだね?⦆

夏音(カノン)姉さん達だけはね。姪っ子の物は結凪(ユナ)が拵えたからガチで兼用だったけど⦆

⦅何それ聞いてない!?⦆

⦅あっ。ごめんなさい!⦆


 兄さんに出くわした時の話かな、これ?


⦅それなら私も兼用化してよ!⦆

⦅強烈な刺激で身悶えるけど?⦆

⦅ぐぅ……か、構わないわ⦆

⦅わ、分かったよ⦆

⦅逃げたらガーベラ千本を活けるからね⦆

⦅わ、わっかりました!⦆


 この兼用とは魔素吸引が自動停止する憑依体だ。

 私達が普段から使う憑依体もそれね。

 元世界や地表では魔素が不要だから。


⦅な、なんか管理が煩雑になりそうだね?⦆

⦅なると思うよ。だからここを求めたのかも⦆

⦅転移門前の入管結界で弾かれるもんね。宿っている身体が違いますって⦆

⦅なるほど、それで⦆

⦅今後の行き来はこちら経由になるだろうね⦆

⦅ところで姉さんは兼用変換に出張るの?⦆

⦅出張らないと私のお尻が大きな花瓶になっちゃうよ⦆

⦅⦅あらら⦆⦆


 それはともかく!

 姉さんが用意したこの空間は森と湖と田園。

 畑もあれば街もある。

 街の住人は疑似的に創った精霊達が人の姿を模して対応してくれる。

 貨幣は異世界と元世界のどれでも使える。

 但し、元世界の場合は金庫にあるだけの紙幣と貨幣しか扱えないので、電子マネーを模したスマホ決済でしか対応していないのが現状だ。


「訓練場もあるから好きに使っていいそうよ。魔法も撃ち放題だって言っていたわ」

「そ、それ、大丈夫なので?」

「強度を心配しているなら無用だって」

「「「「ふぁ?」」」」

「空間に匹敵する強度の金属で構成されているとか言っていたわね。それを魔力場と無効結界で覆っているから壊れる心配は無いそうよ」

「それなんてチート?」

「女神の存在そのものがチートだったからね」

「いや、カノンだってチートじゃん!」

「私なんてまだまだよ。妹達の方が異常と呼べるくらいチートだったし」

「い、妹さん達がチート?」

「学校ではそうは見えなかったけど?」

「あの子達は管理者で制限下に居るからね。怒らせると恐いのは三女だから注意しなさいね」


 酷い言われようだ。


⦅私より結依(ユイ)ちゃんだよね⦆

⦅普通に結依(ユイ)ちゃんだよね⦆

⦅言い返せない。これは言い返せない⦆


 現在の私達は〈隠形〉した状態で案内している。

 夏音(カノン)姉さんには見えているが眷属達からは見えていない。

 学校で出くわしても困るから。

 この中には私のクラスメイト達も居るしね。

 姉さんと結依(ユイ)のクラスメイトも居るから安易な自己紹介も出来ない。


「で、でも、ど、どうして?」

「レベルの上限値が無かったのよ」

「「「「「「「はい?」」」」」」」

「経験値を数値化出来ないくらい所持していたの。どれだけ吸おうが底が見えない有様でね」

「「「「「「「!!?」」」」」」」


 今の夏音(カノン)姉さんも同じだと思う。

 それを言うと怯えさせるから黙っててと言われたもんね。

 それは私達に対してね。


「妹なのに実年齢が母さんに匹敵していたし」

「「「「「「「えっ?」」」」」」」


 そ、それは言わないでよぉ!?

 わ、私達に年齢の概念なんて必要ないけど。

 誕生日なんて十六才以降祝っていないし。


⦅なんか言い訳に聞こえる⦆

⦅うっ……だ、だってぇ⦆

⦅はいはい。お団子食べて元気出そう?⦆

⦅うん。あ、美味しい⦆


 姉さんは街を案内する間にお団子を買ってくれていた。

 地味に美味しいけど誰が作ったの?


⦅お団子の精霊かな?⦆

⦅⦅お団子の精霊?⦆⦆


 姉さんはそう言うと店先に立つお団子頭の可愛らしい幼女を指さした。


(何あれ、可愛い)


 果菜(カナ)を彷彿させるような容姿だよ。


⦅この街の疑似精霊は一種の付喪神なんだ⦆

⦅⦅付喪神っていうと……あの?⦆⦆

⦅そう、あれね。その精霊達は私が最初に与えた命令通りに街を運営しているの⦆


 そうだったんだ。

 姉さんが手当たり次第作っただけかと思っていたけど、考えて作っていたんだね。


⦅それにここは一種の箱庭だから⦆

⦅何らかの保全のためにあると?⦆

⦅ここは迷宮維持に必要不可欠なんだよ⦆

⦅あっ。ま、まさか、私の?⦆

⦅うん。一つは素材保管庫ね⦆


 ここは私のためだったんだ。

 正確に言えば仁菜(ニナ)と共同だけど。


⦅迷宮の制限が無くなったのは倉庫を移設したからなんだよ。空間を別にしたから⦆

⦅それでなんだ。おかしいと思ったよ⦆


 やたらと田園地帯やら畑があるのはそれで。

 森とか湖も魔物の飼育に使えるもんね。

 よく見れば草原も奥の方に存在していた。

 権能で作るだけでは一切育たない魔物達。

 倉庫内で育てては放出しているのが現状だ。

 それをこの地で育てて迷宮で放出すれば倉庫の圧迫が減るもんね。

 先ほどの大ボスも?


⦅あの大ボスももしかして?⦆

⦅倒したあとに本来居るべき場所に戻ったよ⦆

⦅⦅居るべき場所?⦆⦆

⦅魔物保管庫だよ⦆


 え? でも、あれは以前からあるよね?

 それとボスに関してはボス部屋に隠れて。


⦅従来は迷宮に戻るけど隠れて待機させるとリソース維持が凄まじくてさ。それをゲームの要領で数秒後に出現させるよう変更したの⦆

⦅じゃ、じゃあ、ボス達も保管庫行きなの?⦆

⦅そうだよ。但し、一部の守護者は除くけど⦆


 守護者。地下神殿のある迷宮の事ね。

 そちらには専用のリソースが割り当てられていると……なるほど。

 これは凄い助かるかも。

 というか、夏音(カノン)姉さん達とはぐれた件。

 私達は〈隠形〉を解いて困惑した。


「わ、私達が迷子になってる?」

「迷子……迷子かな?」

「どうだろう? あ、他の眷属を呼びに向かったみたい」

「一時的に離脱したのね。安心したよ」

「あと、数人が合流したみたいね」

「「合流? 何処?」」


 姉さんの指の先。

 そこでは頭に角の生えた男女が騒いでいた。


「これ、めっちゃウマ!」

「ど、どうやってこの味を?」

「これは再現出来るか?」

「まず、無理ね」

「風味をここまで引き出せるって凄いな」

「うん。目指すべきゴールよね」


 あれは近所の定食屋の?

 確か、今日は、仕入れ日のはず。

 何で、この場所に?


「あの人達ってオーガだったんだ」

「食べているのって精霊が作った」

実依(マイ)印の鯛焼きだね」

「私印? あ、中身が焼き芋だぁ」

「姉さん? もしかして?」

「離れの芋を全放出したよ」


 姉さんは堆く積もった焼き芋をこちらに持ち込んでいたと。

 母さんのマッサージチェアの件で芋が消えていたから何事かと思ったよ。


「「やっぱりぃ!」」

「でも実依(マイ)としては嬉しいでしょ?」

「それはまぁ。そうかも?」

「放置よりも消費した方がいいよね」

「食材に感謝出来るもんね?」

「うん!」


 ただ、素材が完成されているから精霊が風味を引き出した風に思い込んでいる件については少し複雑な心境になった。


「母さんが作った完成品を料理と思ってる」

「気づけない内は料理人としてはまだまだだね。もう少し下で修業してきなさいな」

「ああ、姉さんは焼き芋を試金石にしたと?」

「そんな意図は無かったけどね。結果的に認識させる事には成功したかな?」

「加工したら鑑定できないもんね、あの芋」

「未加工ならとんでも素材に見えるもんね」

「なら、未加工品を手渡しってみようか?」


 私はそう言いつつ彼等の足許にスキル芋を一つ転がした。

 姉さん達は苦笑しているけどね。


「ん? 芋?」

「何故ここに芋が?」

「さっきまであったか?」

「無かったと思……う!?」

「どうした?」

「こ、こ、こ、これ、か、か、神の」

「神の、なんだ?」


 神食材的な扱いになっているのかな?

 ああ、鑑定結果がそうなっているのね。


⦅焼き芋にすると極上味に。神化後はスキルを得られるまで追記したよ。但し、亜神は除く⦆


 というか魔神が私の隣でポチポチと鑑定結果を弄っていたよ。

 私が鑑定していると言った通りの文字列が目前に流れてきたもんね。


結依(ユイ)ちゃん⦆

⦅なら追記で魔力総量の増加も入れておいて⦆

⦅りょーかい!⦆

⦅姉さんまで⦆


 私達の気まぐれに翻弄される夏音(カノン)姉さんの眷属達。

 スキル芋を拾ったままどうするかと思案気だった。

 売り物には出来ないよ、それ?

 持っている間に焼き上がるから。


「うぉ!? あっちっ!」

「えぇ……中身が焼けてる?」

「どういう仕組みだ、これ?」

「さぁ?」


 あのスキル芋とは魔力に反応する芋だった。


「彼女達の魔力に反応して焼けてしまったね」

「これが姪っ子みたいに神力を十全に扱えたら結果は違ったかもだけど」

「生芋として扱いたいなら神力は必須だよね」

「へぇ〜。神力が使えるかどうか反応で分かるのね」

「そうそう。実依(マイ)が焼いた時も瞬間的に魔力をあてがっていたんだよ。母さんは魔道具で焼いているけど……って、姉さん!?」

「ところで、あの芋って何処で手に入るの?」

「えっと。母さんの庭の畑かな?」

「なら、あとで種芋を貰おうかしら?」


 一体、いつから居たのだろうか?

 背後には姪っ子と微妙な表情の女性も居た。


「あんたら印象が変わりすぎでしょ! 口数が少なかったのにどういう変化よ!?」

「「「はい?」」」


 誰だっけ? 見覚えはあるんだけど。


「どうしてきょとんなのよ?」

「えっと、どちらさまですか?」

「姉さんに似てるけど」

「誰だっけ?」


 それが私達の第一印象だ。


「はぁ?」

「ふふっ。忘れ去られたシオン乙」

「ぐっ」


 というか今、名前を聞いて顔と名前が一致したよ。

 統合前に不要記憶になっていたのかも。


「ああ、ドMな方の姉さんでしたか」

「そういう覚えられ方って……」




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