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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第二章・今度は別の世界を管理するの?

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第36話 強欲は油断出来ない。

 Side:実依(マイ)


 不法渡航者達がどうやって、この世界へと訪れているのか?

 分割体の片付けを終えた私達は地底の管理室に集まって話し合った。

 先ずは姉さんが思案気にホワイトボードへと記していく。

 世界の惑星図とスマホゲームの図式を描いたうえでね?

 何気に絵心があるよね、姉さん。


「一つは模倣と時空干渉かな?」


 姉さんは空白部分に色違いの惑星図を描く。

 それをスマホと繋げて邪神権能と記した。


「確か、類似世界を完全模倣して?」

「類似世界の概念を曖昧にする話ね」

「各世界は個々の概念があるもんね」

「母さんの世界と父さんの世界。部分的に同じ概念だけど内面は別概念だもんね?」

「技術的には魔法と魔術の差だね」


 そういった惑星毎の概念を仮想的に同一化して類似世界の概念を曖昧にしたと。

 神の権能無きままなら、こういった事にはならないんだよね。

 フィクションで片付ける事が可能だから。

 だが、今回は神の権能が関わっていて。


「模倣後、概念が曖昧になった瞬間に穴を穿って」

「サービス開始と同時に多数の先兵を送り込んだと」

「この場合は課金した者だけが対象かしら?」

「課金勢が相手でしょうね。初っ端から送り込むには各自の練度が違い過ぎるし」


 初心者にいきなり戦えとはならないよね。

 それこそ全てのシナリオを熟してないと意味が無い気がするんだよね。

 話を聞く限りだと。


「課金して強制的にレベル上げして」

「シナリオも課金で読みふけると」

「洗脳めいた暗示を加えつつね?」

「リアルをゲームと誤認する、か」

「課金で儲けて先兵を設けるってとんでもね」

「今回の邪神は頭脳派かもしれないね」

「そうだね。毎回毎回違う邪神が現れるけど」


 あれらも世界の澱みから発生する神ではない何かでね?

 力の根源は母さんや私達が使う権能の余剰分。

 世界を書き換える力が無秩序に拡散した代物と澱みで構成されているんだよね。


「澱みの大半は人々の恨みや妬み」

「主に人族の負の感情が発生源で」

「人々が強欲になればなるほど」

「消えるものではない厄介物だよね」


 低位なら人格なき代物で私達の浄化で消し去る事が出来る。

 中位とか高位になると人格とか知恵が付くから厄介だった。

 兄さんは邪神を追って取り憑かれた者達を始末して回っている。

 時の首相も傀儡そのもので兄さんが浄化して正常に戻ったらしい。

 相手が名のある者なら浄化で済むけど裏社会の人物なら滅殺なんだよね。

 大半が必要悪に取り憑くから毎回悩みどころらしい。

 世界を回していくうえで必要な悪。

 善意の執行者に必要な敵対者だね。

 そんな会議の最中、


「あ、呼び出しだわ」


 深愛(ミア)がスマホを覗き見て頬を引き攣らせていた。


「どうしよう。夏音(カノン)姉さんから要望が出てる」

「「「「「「要望?」」」」」」


 夏音(カノン)姉さん。

 実は上の姉さんだと呼びにくいから今回からそう呼称する事にしたのだ。

 本人の前だと今まで通り、姉上で通すけどね。


「書き換えたOS。自分達にも譲ってだって」

結依(ユイ)ちゃん?」

「魔導書でいいなら送るって返して」

「りょ」


 要望が何事かと思ったらスマホの基本ソフトの事ね。

 タイムラグが存在して穴だらけよりも堅牢がいいと。

 結依(ユイ)は二冊の魔導書を用意して思案気に呟いた。


「これからは時間との勝負だからかな?」

「私達の世界に移動するんだっけ?」

「そういう事になっているね」


 私達の世界に移動して滅殺を再開すると。


「私の空間でコロニーを創っていますから、それも関係するかと」

「それでか。試験用の魔導書も要るね」

「要るかもね。宇宙空間に置くならね」


 結依(ユイ)は追加で別の魔導書も用意した。

 それは精密検査を行う魔導書だね。


「しかしまぁ宇宙空間に拠点を置くとは」


 すると芽依(メイ)が苦笑しつつ姉さんを見る。


「そうなると、あれじゃない?」

「あれ? 何よ、芽依(メイ)?」

実菜(ミナ)の子供。魔王君が元気になるんじゃない? 過去最強の強者でしょう? ただ、幼女ではないから反応は微妙だけど」

「あー、仮に幼女を欲したら果菜(カナ)を寄越せばいいでしょ」

「何で!?」

「「幼女だし」」

「そこは童女って言って! 自分で言ってて凄く悲しい……」

「「おいおい」」


 そういえば会議の前に魔界でスカウトして、


『ここで魔王になってよ』


 そう、命じていたね。

 魔眼も差し上げて頑張ってねって側近諸共魔王国に放置してきた。


「今回は新魔王が誕生した訳ではなく、人族の女神が寄越したから大騒ぎだったね」

「だね。どういうことだって言われていたよ」

「やっぱりあれって私達の所為よね?」

「多分ね。顔出ししていたようなものだし」


 神殿に座って貢ぎ物を頂いていたとかね。

 崇められるだけの存在と化していたと。

 芽依(メイ)は魔族の容姿で。

 結凪(ユナ)は魔人の容姿で。

 姉さんは人族だったから丸わかりだった。


「「但し、ぐーたら童女と年上女房は除く」」

「「うっ」」


 これらも是正していくから神殿に女神が現れないって事が多くなるよね、きっと。

 話は脱線したが会議はその後も続いた。


「当分の間は由良(ユラ)の継続監視で」

「ですね。姉さんの行動を逐一監視します」

深愛(ミア)はダイエットを」

「しないわよ!? そもそも肥らないし」

「ではなくて」

「そこで冗談を含めないでよ」

「ごめんて、芽依(メイ)

深愛(ミア)は私が用意した外周にあるステーションに移動してね。管理神器からは見えない代物だから各自の連絡はスマホ経由で」

「「「「「「「ふぁ?」」」」」」」


 おや? これは姉さんが何かやらかした?

 私達も何の事なのかきょとんだよ。


「そこは夏音(カノン)姉さんのコロニーを外側から監視する設備と思えばいいよ。有事の際にはそちらから援護するってことで」

「そういう名目の……いつの間に用意したのよ?」


 そう、それが気になったかも。

 姉さんはきょとんとしつつ口走る。


「父さんの世界で暇だったから創った」

「ああ、いつものストレス解消かぁ」


 ストレス解消で宇宙ステーションを創る姉さんってなんなのだろうか?

 まぁ、この世界に別口の拠点が出来たと思えばいいのかな?

 あとで私も連れて行ってもらおうかな。


「魔王国からの戻りで打ち上げたのよ」

「あ、あの一瞬で?」

「転移で飛ばしたと言えば早いかな?」

「ああ、それで」


 夏音(カノン)姉さんがロケットで打ち上げようとしている矢先、姉さんは転移で宇宙空間に送り込んだと。これも世界神だから出来る事かもね。

 流石に私には無理な話だけどね。

 すると深愛(ミア)が不安気に物申す。


「で、でも、大丈夫なの?」

「大丈夫って何が?」

「素人が創った物で」

「はぁ? 私を誰だと思っているの?」

「あっ」


 知神で世界神だよね。

 世界の知識を集約する者。

 深愛(ミア)も同種だけど程度が違う。

 姉さんは機嫌が悪くなりつつも咳払いする。


「ステーションの用途は、それ自体が魔力場の維持に必要不可欠な代物なの。それなりに重量がある未知なる魔道具が試験も無しに打ち上げられるとなれば、魔力場はどうなるの?」

「あっ」

「どれだけの規模で魔力を吸収するか分からないでしょ?」

「そういえば、そうかも?」

「薄く張った魔力場が消える可能性もある」

「……」

「そうなったら最後、巨大建造物が空から落ちてくるなんて事もあり得るでしょ?」


 確かにそうだ。

 姉さんは試験を重ねて創っているはずだから信頼性はそちらが高い。

 時間加速中に幾度も失敗して改良しているはずだし。


「魔力場を保全する目的で今回は打ち上げたんだよ。それを動かす動力は私達が交代で注ぐ神力。これは深愛(ミア)に与えていなかった例の罰でもあるからね?」

「あっ」


 ああ、そうか。

 神素不足のきっかけは深愛(ミア)だね。

 蓋を開けて転生したというとんでも事案だ。


「しばらくの間は発電機として活動(ダイエット)してね」

「はい。わかりました」


 神力を注ぐ。魔力に変換する。

 それを魔力場として放出する。

 高速で均等展開して保護する。

 隕石なども魔力場で弾くもんね。

 大質量の建造物と複数の隕石が落ちてきたら最後、信仰心も揺らいでしまうし。

 すると姉さんは溜息を吐きつつ呟く。


「と、いうのは建前で」

「た、建前?」

「単純に管理室を移したかっただけね」

「「「「「「「ふぁ?」」」」」」」

「誰が好き好んで住宅神殿で世界を監視するのよ。それも地上にある無人島の中で。いつ何時、侵入者が訪れるか分からない場所だよ。母さんの二の舞は流石に踏みたくないよね?」

「それを言われると、そうかも?」


 この場所は赤道上にある偽装した無人島。

 今はまだ人族達から認識されていないが近い将来発見されてしまうだろう。

 欲望のまま新大陸と言って神の住まう地であろうとも侵略してくる可能性もある。

 過去改変する前の母さんの島でも同じ事があったばかりだ。

 姉さんはそれを危惧したと。


「だから自動応答とか、言っていたの?」

「世界を一度止めて転移で持っていくよ」


 だから灯りを消して自動応答だけにしたと。

 行うとすれば人々が寝静まった間かな?


「そういうことで引っ越しの準備を始めるよ」

「「「「「「「はーい」」」」」」」

「あらら。唐突に引っ越しが始まったわ」

「まぁ、危険性を思えば納得よね」

「分割体の挙動を考慮すると何をしているか不明だし。神託とか無視していないし」

「気づかぬ内に明かしてそうだよね」


 すると沈黙していた吹有(フウ)と、


「ね、ねぇ? 何て言うか……」

「島の外周に船団が居るんだけど?」


 果菜(カナ)が困り顔で話しかけてきた。

 私はそれを聞き、外を〈遠視〉してみた。


「し、島が見つかってる?」

「国旗が問題国家じゃないの」

結依(ユイ)にとっての問題国家?」

「もしかすると神託で教えたんじゃない?」

「そうかも。聖騎士が船首に居るし」


 疲弊した結依(ユイ)の大ポカで神の管理地が教会の強欲共の目に触れてしまったか。聖騎士は剣を高々と上げて宣言していた。


「神の地を我らが物に? とか言ってる?」

「姉さん、凄い不味いよ。これ?」

「そ、それなら早急に離脱するよ!」


 引っ越しも最終段階だった。

 姉さんの号令で世界を一時停止した私達は大急ぎで宇宙ステーションに上がった。

 かつての神殿を魔力還元したうえでね。




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