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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第一章・召喚に応じたつもりはないよ?

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第29話 妹の教育は念入りに。

 Side:実菜(ミナ)


 急遽、私の対である妹へと教育を施す事になった。

 事の発端は七姉妹の常識の無さを芽依(メイ)が危惧したからだ。

 私の良く知る分割体こと七女神もある意味で異世界の常識が皆無だったね。


「あちらの深愛(ミア)は特にそうだったっけ」

「どういう事よ?」


 コレ何? アレ何って感じで色々問われて大変だった。

 かくいう私も色々とやらかしているのだけど、


「ここだけの話だよ」


 隣に居る深愛(ミア)の方がマシだと思いたい……願望。


「意味わかんない」


 この深愛(ミア)には伝えていないしね。

 意味わかんないとなるのは仕方ない。


「さて、時間加速結界で覆って」

「ふぁ?」

「お勉強会を開こうか」

「ちょ、ちょっと。その魔法知らない!」

「ああ、兄さんから聞いていないのね」

「うん」


 兄さんも時空神だから使えて当たり前だけど、この子達の前では時間干渉系の結界術を使っていなかったようだ。

 私の姉妹は頻繁に利用して時間削減していたけどね。

 時間だけは流石の私達も有限だと認識していたから。

 遡行したり先に進んだりしていても、今この時の主観時間だけは変えようのない物だから。


「それは追々って事で」

「追々」

「まず、物理法則から覚えようか」

「法則?」


 最初は世界の根幹を中心に数学とか諸々を真っ先に覚えさせる予定だ。

 基礎も大事だけど私達の権能は言葉で伝えても大体理解したで、本当に理解する。

 応用から覚えさせても、基礎が自然と身につく不可思議な権能。

 高校の授業では流石に封印して真面目に受けていたけど、あまりにも簡単過ぎて寝ていた事が大半だったね、私は。


「はわわわわ。兄さんの銃撃ってそういう仕組みだったんだ」

「兄さんは火薬代わりに神力を利用していたけどね。お陰で応用のしがいがあるよ」

「確かに」

「次に時間干渉の仕組みに移るよ」

「待ってましたぁ!」

「はいはい。おっぱいを揺らさないでね」

「はぁ? 揺らしていないけど?」

「よく見て。高速で揺れているでしょ?」

「ふぁ? ふぁぁぁぁぁ!?」


 深愛(ミア)のおっぱいは私が直で揺らしている。

 深愛(ミア)の胸に干渉して部分的にプルプルさせてみたのだ。

 バイブレーションかと思うほど揺れているよね。感じてそうだ。


「ゆ、揺れてるぅ!?」

「これが応用ね」

「え?」

「極一部の空間に部分干渉したの」

「そ、そんなことまで……あ、そういう」

「触れて理解したね。次は停止」

「あ。止まった」

「そこから動けないでしょ」

「そ、そういえば」


 胸を基準に時間固定した。

 前にも動けず後ろにも動けない。

 腰と腕は動くけど胸だけが止まったままだ。


「こんなことまで出来るんだ」

「無属性を担う吹有(フウ)には負けるけどね。深愛(ミア)の場合は優羽(ユウ)が相手になるかな?」

「それを言われるとそうかも」

「あとは……こういう事も可能になるよ」

「ふぁ?」


 私は深愛(ミア)の胸と腰の空間を切り取って自身の手許まで移動させた。


「胸はモチモチだね。お尻も柔らかいね」

「ちょ、ちょっと、何処に手を!?」

「持ち出されているのに感じる不思議?」

「あっ。そういえば」


 私に触られているのに意識が興味の方に傾いたね。

 深愛(ミア)のお尻から股座に手が伸びても反応は起きない。

 胸の先に伸びてもね。


「って。そこに手をあてがわないで!」

「感じてはいたのね?」

「か、感じるに、決まっているでしょ!」

「男を知った女の子が相手だから、どれだけかと思ったけど、意外と標準的なのね」

「そ、そ、それを思い出させないでぇ!?」


 思い出させないでって言われてもね?

 かくいう私もこの世界に降りた時に何回か経験がある。

 だが、大概良いものではなかった。

 深愛(ミア)と同様に興味本位で行って後悔したのは懐かしい思い出だ。

 結依(ユイ)実依(マイ)も同じく経験済みだしね。

 子を産み育てる経験なくして種族を産む事は出来ないから。

 深愛(ミア)に関しては完全な黒歴史となってしまったけど。


「さて、魔法講義はここまで。次は常識ね」

「常識?」

「常識ね。ここに私達の住まう世界のお金があります」

「お金? ピラピラした紙じゃない」

「見た目はね」


 このお札は私の財布から出した代物だ。

 在学中に頑張ったアルバイトの稼ぎね。


「この紙幣一枚で何が買えるでしょう?」

「ふぁ? い、一枚で?」

「ここに数着の服があります。こっちは下着」

「見た事のない洋服が沢山あるぅ!?」

「およそ十六年の間の流行を模してみた」

「こんなに変遷していたなんて……」

「これらにはおおよその値段を割り当てているけど、これ一枚で何着買える?」

「何着? えっと……」


 これ一枚を稼ぐのに費やした時間は相当だと思う。

 バイト先の店舗ではそれ以上に儲けを出しているのに、バイトには微々たる稼ぎしか与えていなかったから、ついつい経営破綻という神罰を与えてしまったけれど。


「三、いえ四着かしら?」

「残念。正解は一着でした」

「ふぁ?」

「それぞれの価値は同等なんだよね。それでも買えるのは一着だけ。仮にお釣りが出ても一円かそこらなんだよね。汗水垂らして稼いでも得られる物は一着だけって世知辛いよね」

「足りないなら作ったらどうなの?」

「それは神であっても許されないんだよ」

「え? そうなの?」


 母さんですら自給自足しつつも芋を売りに出しているからね。

 金は人族が作り出す物で、神が用意する物ではないと何度も説教されたよ。

 流石にどうにもならないときは神力で用意するけど、それは金塊とか貨幣換算出来る素材だけだ。貨幣や紙幣だけは人々のルールに則って生活しているからね。


「人々の定めたルールがあるから」

「ルール?」

「私達で言うところの世界の根幹にあたる基準だよ。それは人の身で過ごす私達にも適用される代物なの。神の身では適用外になるけどね」

「そうなんだ」


 それをどれだけ遵守出来るかが鍵だけど。

 深愛(ミア)は善神だから悪い事はしないと思う。


「これからの深愛(ミア)達は人族の世界に紛れて暮らす事が決まっているの」

「それはこの世界のことよね? 父さんがそう言っていたし」


 父さんの世界で暮らすよう言われていたのね。

 でもここには残り数日しか居られないけどね。

 精々暇潰しとか欲求不満を解消する際にあれこれ創りに戻るかもしれないけれど。

 上の神界にはミサイルとか色々と隠している代物が所狭しとあるわけで。

 それらは私が欲求不満を解消するためだけに創った代物だった。

 表沙汰には出来ない代物の山だけど。


「ううん。違うよ。母さんの庭。より正確に言えば」

「ごくり」

「生唾ゴックンって。まぁいいか」


 私は居住まいを正して深愛(ミア)に教える。


深愛(ミア)達が今後過ごすのは母さんが用意した島の中、私達の実家で生活してもらう予定だよ」

「え? それだけなの?」

「それ以外だと学校に通ってもらうことになるかな。流石に容姿は個々に変えてもらうけど」

「学校?」

「大勢の同年代の子供を集めて教育を施す場とでも言えばいいかな。勉学が主で交流とか諸々も時々行われるの。中には恋愛に現を抜かすバカな男共も居るけどね」

「男共はともかく、何か楽しそうね?」

「本能に忠実になれば楽しめると思う」

「それって姉さんの経験談?」

「そうともいう」


 色々と面白い話も聞けるしね。


「クラスカーストとかいう教室内だけのローカルルールだけは無視してもいいけど」

「そんなルールもあるんだ」

「あるんだよ。誰が上で誰が下かって安易に決めたがる人が成す面倒な性質だね」

「そんなものまであるのね」


 あんなの単なるマウントの取り合いだよ。

 私も学校では大人しくしていたからカーストでは底辺で彷徨いていた。

 成績は抑えめにして二位だったけど。

 逆に結依(ユイ)実依(マイ)は社交性があったから上に居た。

 二人も好きで上に居た訳ではないけどね。

 周囲に祭り上げられた的な話だし。

 その後は基礎をサラッと流し、常識を中心に教えていった。

 時々結依(ユイ)芽依(メイ)と念話してどの程度まで教えるか相談した。

 貨幣だけは念入りに教えていったが。


「学校に行くまでの間に深愛(ミア)も完全統合するから覚悟しておいてね」

「ふぁ? と、統合って?」

「別世界を管理する神として分割体が活動中なの。今、この時も別世界で監視中ね」

「え? そ、それ、知らないよ?」

「母さんが極秘に動いていたからね。父さんも知っていたけど教えていないみたい」

「うそぉん!」

「そういう訳で一緒に記憶の混乱、しようか?」

「ね、姉さんも?」

「途中までは私自身で関わっていたけど、在学中は分割体が活動していたからね」


 本音を言えば嫌だなぁって感じだ。

 分割体は私と違って理性が乏しい。

 それもあって想定出来ない事案をやっていそうで、お尻の芯から寒くなる。

 実依(マイ)からガーベラを挿し込まれる事案が起きてそうでそら恐ろしいし。


「あちらの深愛(ミア)にも黒歴史を植え付けたとか母さんが言っていたけどね」

「おぅ。それはなんというか、ごめんなさい」


 それはもう一人の深愛(ミア)に対してなのか?

 はたまた未来の自分の対してなのか?


「統合予定日は一週間後。それまでは女神としての格を引き上げておかないとね」

「格……かぁ。まだ自覚が持てそうにないよ」

「それは私の姉妹でも同じだよ。直接管理する経験だけは私達にも無いからね」

「そうなの?」

「この世界でも間接的に関わっていただけだし。母さんの背格好の前からだけど」


 私はそう言いつつ結界を解除した。


(時刻は丁度……夕刻かな?)


 とりあえず、この世界で何らかの異変が起きた時に動けば問題は無さそうだね。

 そういえば、統合後に魔王も連れて行かないと。


(強者などいない世界だものね、ここは)




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