第24話 想定外の出来事が多発。
【注:残酷描写有り】
Side:果菜
〈異世界時間:七月二十三日・午後十四時〉
なんか座敷童って言われた気がした。
「気がしたっていうか結依が呟いたのね。何度も違うって言っても呼ぶのだから困りものだよ。ホント」
髪型と背格好が似ているからって何度も座敷童と言われている私。
今の容姿は結依と同じなんだけどね?
それこそ怠けてあの姿を選んだのは間違いだったのかもしれない。
それはともかく!
(私の対は何処に居るのかな?)
芽依に叱られて渋々、対となっている妹の迎えにきた私は姉さんの家から〈遠視〉した場所……火山の入口付近で彷徨いた。
(母さんのお尻の頂上……ではなくて。何処に居るのやら? あれからそんなに時間は経っていないはずだから、適当な場所に居てもいいはずなんだけど?)
彷徨いて周囲を見回すも、人っ子一人居やしない。
大変静かな景色を眺めるだけになった。
しばらく進むと火山の火口付近に槍の穂先のような棒が複数本見えた。
「槍のようなっ……ていうか、槍?」
槍の周囲には動物に引きちぎられたような生々しい肉片が大量に落ちていた。
骨とか神経的な白い何かもちらほら見える。
異臭もしているから動物の死骸だと分かる。
「えっと……これは?」
私は転がっている肉片の一つを拾い上げる。
見た感じ、動物とも魔物とも言い難い臓物だと分かった。
あ、頭骨……はっけん!
「魔物に食い散らかされたかな?」
そんな魔物がこの付近に出るとは聞いていない。
私が訪れる前に居なくなったのか?
或いは満足して自分の巣に帰ったのかも?
「つか、これ……人の亡骸だったかぁ」
両手に付着した血液を浄化魔法で浄めた私はアンデッド化しないよう肉片と骨を土に還す事にした。ボロボロでも骨だけになればスケルトンの魔物に変貌するからね。
魂魄も近くで彷徨いているから骨に宿り直して動き始める事も予測出来たし。
「とりあえず、こんなものかな」
火山地帯にふかふかの土壌が現れた。
薬草でも植えたら大量に育ちそうだ。
「薬草を植えるのは実依に丸投げしておこうかな。やるかどうかは別にして」
私は立ち上がって周囲を見回す。
すると火口の反対側に小柄の女の子が転がっている事に気が付いた。
私は誰なのか分からないが近づいてみる。
少しでも反応があれば救うつもりでね。
だが、
「あ、死んでる」
ひと目見て即死している事が分かった。
だって頭の中身が外へと出ているもの。
目玉がポロリとしていて頭骨も砕けていた。
「頭以外……まだイケる。イケるって何よ」
小ぶりな胸もお腹も無事。
それなりに大きなお尻も無事だった。
頭だけが潰されているだけの遺体。
「こちらも無事っと。ノーパンなのはいただけないけど」
一先ずの私は潰れた頭を照準して時間の巻き戻しを行った。
彼女が私の目的とする人物かどうか調べるためにね。
鑑定は肉片には通用しないから顔立ちから判断するしかないのよね。
ここで中身が近くに居れば話は変わるけど。
「戻す様子はあまり見たくないね」
うねうねと肉が勝手に動いて形状が戻る。
モザイクものだから目も伏せたかった。
伏せたらそこで止まるから出来ないけど。
しばらくすると元の形状に戻った。
「あー。やっぱりかぁ……」
そこで転がっていたのは私の対だった。
「神月玲奈、享年何才?」
ではなくて、ドワーフの王女が魔物に襲われて死去。
とんでもない事態になっているよ。
対を見つけたと思ったら死亡だもの。
「そうなると中身は……普通なら地中よね。でも」
周囲を見回すと死者の魂魄が彷徨いている。
「循環機能も死亡しているのかな?」
もしそれが本当ならアンデッドが大量発生しかねないね。
迷宮はともかくそれ以外でアンデッドが発生するとか先ず以て有り得ないから。
その有り得ないが起きているから、
「さっさと見つけて連れ帰らないと」
大陸核の復旧が急務に思えてならなかった。
◇ ◇ ◇
Side:明日華
〈八月六日・午前八時〉
あらら。やはりフラグが立っていた。
死亡フラグを回収したのはあの子だったかぁ。
「栄一さんの死亡フラグが確定したわ」
「な、なんだと? わ、私の死亡フラグ?」
「違うわ。死んだのは玲奈よ」
「はぁ?」
果菜が急遽捜索に向かって玲奈こと、レーナ・ラ・ビ・ノーラ第三王女を見つけたまでは良かった。
だが、果菜の動きが緩慢だったお陰か不明だが、ほんの些細な時間差で瞬殺されていた事が判明した。相手は迷宮内に生息する魔物、吹有が狩っていたブラッドベアの特殊個体だった。
「果菜が現れる前に」
「ああ、透明化スキル持ちが居たか」
「ええ。本当の意味での特殊個体ね。背後から付いてきて護衛達の隙を突いたのね」
監視時間を少しだけ巻き戻して見れば、その様子がありありと分かる。
背後から迫って真っ二つにしたり強力な打撃だけで頭を潰したり。
遙か遠くに飛んでいったレーナに興味を無くした魔物は護衛達をボリボリと貪っていた。
「瞬殺か」
「それだけではないみたいね」
「どういうことだ?」
「循環機能も死亡しているわ」
「あっ」
死者の魂魄が地中に流れず彷徨う。
魔物に食われている様を見せつけられて絶叫し恐怖のままあちらこちらへと飛んでいく。それでも死した場所から離れられないのか魔物が居なくなった頃合いに魂魄が戻ってきた。
「本来であれば戻ることなどないのだけど」
「ここまでの状態になっているとは……」
「本当の意味で崩壊間近ね。循環せず死者が溢れ、恐怖が恐怖を呼んで世界は混沌と化す」
「……」
私も過去に経験があるから嫌でも分かるわ。
今の世界だって何度目の世界か……こほん!
その後、果菜が転移で現れて居なくなってしまった玲奈の行方に途方に暮れていた。
「他の者達なら戻ってくるけど」
「玲奈だけは例外だからな」
「あの子は何処に居るのやら?」
こちらから探せど見つかる気配はない。
こればかりは果菜の幸運値に期待するしかないだろう。
果菜の幸運だけは半端ないが玲奈のマイナス方面の幸運値と相殺されてしまうから見つけ出すのは至難の業だった。
◇ ◇ ◇
Side:果菜
〈異世界時間:七月二十三日・午後十五時〉
あてもなく玲奈を探し回った。
けれど、
「火山地帯には居ない?」
玲奈の気配すら感じられなかった。
「何処に行ったのよ?」
探せど見つからず期日は刻々と迫るばかり。
私はドワーフ王国内にも侵入し探し回った。
しかし、国内にも居なかった。
「こうなると探し人の魔具を創るしかないか」
私は渋々と不慣れな創造を行使する。
「風魔法で探索する魔具。神器になってしまったから、姉さんに差し上げよう」
魔具と思ったら神器になったし。
スキルの選択を誤ったかも。
一先ず、それを用いて失せ物ならぬ探し人を見つける。
形状は手のひらサイズのコンパス。
目的の人物が居る方角を針が指し示す。
「この方角は……草原かぁ」
まさか明後日の方角に居ようとは。
私は転移を用いて草原へと向かう。
そうして転移した先には、
「あら?」
「あらら」
優羽を連れた吹有と風結が居た。
「果菜、どうしたの?」
「どうしたのって目的の人捜し?」
「ああ、それで見つかったの?」
「あー、うん。なんとか」
肝心の玲奈は優羽の背後にふよふよと取り憑いていた。
私と同じ髪色に結凪と同じ色合いの緑の瞳をした小柄な少女。
何故そこに居るのか不明だが、これ幸いと私は背後に移動し玲奈のお尻を揉む。お尻を揉みつつ封印解放も同時に行った。
『ひゃわ!?』
「「「は?」」」
おや? 三人共が気づいていなかった?
霊体から神体に変化した玲奈。
対でしか見えない何かがあるのかもね。
「あ、玲奈?」
『優羽姉!』
ん〜? これはもしかするともしかする?
どうも玲奈は優羽にべったりなお姉ちゃん子なのかもしれない。
(無意識に優羽へと取り憑いていたのは大好きな姉に惹かれたから、なのかもね)
私の姉妹で言うところの姉さんに対する結依のような関係だろうか?
結依も姉さんへのシスコンが酷いから。
私は驚いたままお尻を隠す玲奈を手招きする。
「とりあえず憑依体を創ったから宿ってね」
『う、うん。え? 大きい』
大きいよね、特に胸が。
私と同じ感想を持ったのは優羽だった。
「大きいよね。誰が育てたんだか?」
「それは仁菜ちゃんでしょ?」
「『仁菜!』」
あの中で一番大きな胸の持ち主はそうかも。
「とりあえず、当初の目的は完了したかな?」
「説明というながーい補足が残っているけど」
「あ、それがあった」
「ま、姉さんに任せたらいいでしょ」
「ああ、吹有もそのつもりで?」
「まだ行っていないわ」
なるほどね。説明だけは姉さんに丸投げでいいね。
つらつらと勝手に行ってくれるしさ。
「一体、何が起きているの?」
「さぁ? とりあえず、服だけでも着たら?」
「まだ裸だった……育ち過ぎでしょ。私」
「考えることは姉妹揃って同じと」
平面おっぱいなドワーフ姿からすれば育ち過ぎだろうね。
それでも追々慣れると思う。
(私も慣れたしね。大きなおっぱいの重量感)
但し、あちらに戻った時の言い訳を考える事が一苦労だけど。
何て言い訳したらいいのだろうか?




