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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・変化が無い事が一番楽だよね?

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第106話 予定は未定に置換と。

 本来なら到着直後に話し合いを行う予定だったが、


「もう、こんな時間か……」

「時間も時間ですから流石に休みますか。御母様に叱られてしまいますし」

「う、うむ。そうだな」


 あれこれと間に事案が入った関係で翌日に先延ばしされたよ。

 応接椅子から立ち上がった御爺様と伯父がルゥちゃんに近づき、家族間で用いる念話で話し合っていた。私達からは聞こえない念話帯域、それは王家専用なのだろう。

 私達はルゥちゃんの表情から察する事しか出来ないけれど。


「この感じは貴賓室で寝泊まりかな?」

「どうだろう? 翌朝から忙しくなると仮定すると、そうなりそうだけど」

「私は帰って迷宮に魔物を放出したいのですが?」

「ああ、私もだよ。それが最優先だった!」


 実依(マイ)達はそのつもりでこちらに上がっていたもんね。

 叔母さんの世界で狩れるだけ狩って一泊したのち、王宮へ来た。

 それはルゥちゃんへの報告と前日の不敬事案の対応だったが。

 不敬事案と思ったけど、どちらが不敬なのか微妙な感じだよ。


「そうなると私は? 世界の案内も終わったし、どうすれば?」

「そうそう。ティルは私達に付いてくる事になったよ」

「ええ。知識神の研修も兼ねるから、構わないよね?」

「マ?」

「「うん」」


 ティルは実依(マイ)達と管理世界へ帰るつもりでいたようだが、帰すと思う?

 今回の緊急案件は裏側に邪神の親玉が控えているため更新後の浄化も必要だしね。

 深愛(ミア)と同様に潜在能力の高いティルが居なくなるのは私としても困る。

 各管理神器更新は私の仕事だ。その仕事に追加の浄化までは含まれていなかった。


「それに先ほどの会話にもある通り、神器更新を行っている際に、一割未満の神力制御を並行して行うのは、流石の私でも厳しいからね」

「え? 厳しいの? 得意そうに見えるけど」

「得意でも厳しいのよ。それは微調整ってレベルで放出しないといけないから。少しでも手元が狂うと、更新中の管理神器に影響を及ぼして、世界を壊しかねないもの」

「せ、世界を!?」

「神力は増えすぎたら増えすぎたで放出量の微調整が難しくなるんだよ」

「かといって神力を極限まで制限した状態で更新なんて出来ないしね?」

「世界を丸ごと造り変える。再起動まで稼働状態で行うから影響を残さず実施するのは結構大変なのよ。何度か行っているうちに慣れてきたけど、慣れが一番恐いから」

「慣れが油断の元とも言うもんね」

「そういう訳で、私と一緒に邪神共を浄めましょうね?」

「そ、それ、私に拒否権は無いよね?」

「「「無いでーす!」」」

「やっぱりぃ?!」


 元々は通信神器での遠隔操作を行う前提で、世界を構成する管理神器の更新を実施する事になった。予定していたのは浄化無し。

 各世界の神達へと通信神器を分け与え、希望者のみに遠隔操作が可能となる対応を行うだけだった。ところが出自不明の議長が創造者と知らされ、議長の親が邪神の親玉と判明した今、追加の世界浄化案件が大量発生した。


「神力制御の練習にもなるし、丁度良かったじゃない?」

「うぅ……で、でも、今から更新済み世界以外の扉を巡るのでしょ?」


 更新済み世界。私達と両親、叔母さんの世界以外だね。

 最初はルゥちゃんの管理神器を更新する予定だけども。


「あー、今からというか、明日からかな? 早ければ、の話だけど」

「はや、けれ、ば?」

「各世界へと通知して準備が出来た世界から開始する流れかもね?」


 当然ながら、更新を拒絶する世界神も現れるだろう⦅議長派?⦆うん。

 そういった世界神へは『邪神が現れても知らないから』と返すだけだ。

 そんな神に限って『現れるものか』と甘く見て、後悔する未来が見えるけど。


「私達も準備があるから、合間合間で自分達の世界へ帰るけどね」

「学校で新学期の単位を取得したり、フウコ達の戸籍を取ったり」

「あー、それもあったね。完全に忘れていたよ……過去に遡って用意しないと」

「この遅れ、誰かさんの未確認召喚が原因なんだけど……ねぇ?」

「うっ」


 深愛(ミア)を連れて来たのは助手の意味合いもあったけど、本格的な浄化が必要と分かると母さんの先見の明には驚かされる⦅本業だもの⦆未来を見ていると。

 そんな母さんでも議長の裏までは見えなかったようだ⦅善神の弱味よね⦆反省か。

 善神だから、誰もが旧管理神器を信用して、危険神器と思ってもいなかったと。

 私達が入口前で話し合っていると部屋付き侍女が私達の元へと訪れて、


「貴賓室を用意致しました。時間が時間ですので、皆様もお泊まり下さい」


 転移を用いて私達を王宮貴賓室へと案内してくれた。

 転移前にルゥちゃんから⦅おやすみ⦆と言われたので、そういう事なのだろう。


「結局、お泊まり決定か」

「丁度、夜中だもんね……今から扉に向かうのは危ないかな?」

「ですね。明日にしますか。急ぎでもないですし」

「今日はもう寝ましょうか。ティルもいい?」

「あー、私は実家に帰らせていただきますぅ」

「は? ティルも泊まろうよ? この際だから女子会しよう?」

「いや、ごめん。私のお迎えが……」

『リン御嬢様、お迎えにあがりました』


 怯えた表情のティルは貴賓室の扉を開いて廊下で待つ女性と去って行った。


「今の女性は誰なので?」

「どうも侍女っぽいね。ティルも一応、令嬢だから」

「ポンコツだけど!」

「ポンコツ伯爵令嬢、ティンティル・リン・ムツキ」

「「そ、そんな名前だったのぉ!?」」

「「名前、知らなかったの?」」


 普通に神名の略称で呼んでいたもんね。

 愛称はリン。侍女はそちらの名で呼んでいたね。

 ムツキは伯爵家の家名、漢字では〈夢月〉と記す。


「ティルは帰って説教でもされるかな」

「それか研修成果を問われるかもね?」

「酷な話ですね」

「仕方ない。年齢超過の新神だし」


 それはともかく、寝間着に着替えた私達は今回の事案を改めて話し合った。

 今回は人族の考え方に染まった変わり種女神の私達が居たから判明した事案だが、


「「「か、変わり種、女神」」」


 私達が居なかったらどうなっていたか?


「変態の父から生まれた女神ともいう」

「姉さん? その例えは流石にどうなの?」

「そこだけ聞くと私達も変態って聞こえるのですが?」

「変態は父さんだけでいいわ。父さんと同列視しないで!」

「分かる。自分で言ってて何を言ってるんだってなったし」


 父さんには悪いけど変態の称号は父さんに差し上げます⦅要らん!⦆載ったよ?


「父さん。変態の称号で悶絶してそうね?」

「でも、遅かれ早かれ載っていたと思いますよ? 実際に変態ですし」

「あの件よね? でも、成長過程を記録されたのは私達よりも、分割前の実菜(ミナ)亜衣(アイ)だけ何じゃ? 私達が直接被害に遭ったとは思えないわ」

「あっ。そういえば、そうですね?」

「失念していたかも。辱めは姉さんと亜衣(アイ)だけだよ」

「……」


 そ、それを言われると例のブツは私と亜衣(アイ)の二種類だけだよ。

 赤子から今の神体になるまでの全記録を石像という形で残されていたから。

 これを亜衣(アイ)が知ると⦅今すぐ灰燼に帰してやるぅ!⦆私のもお願い!

 直後、私達の念話帯域に父さんの絶叫が響き、〈遠視〉すると凄まじかった。


「あらら。亜衣(アイ)が父さんから羽交い締めにされてる」

「娘のおっぱいに触れたとか言って、母さんを呼んでいますね」

「母さんが代表して消したよ。ま、母さんのお尻事案もあったもんね」

「あー、今度生まれてくる双子でも創ったら許さないって言ってるし」

「被害者の私から言える事は、父さんはしばらく反省が必要だと思う」

「「「うんうん」」」


 父さん、反省してね⦅お、思い出の記録が⦆娘の裸を残すのは流石にダメでしょ。

 思い出なんて母さんの⦅裸婦像も消そうかしら⦆そこは住人が居るから止めて!


「父さんの世界の住人だけでなく、姉さんの思い出の品も沢山あるからでは?」

「こういう点は似たもの親子だよね。姉さんの場合は部分的な石膏だけど……」

「「せ、石膏?」」

「何でもないよ。実依(マイ)ちゃんも告げ口したらダメだって」

「いやいやいやいや。姉さんも父さんの事、言えないよ?」

「うっ」


 えっと、それは……まぁ、衣類を創る際に使うトルソーとして、だから、ね?

 父さんのように全身では無い⦅父から変態の娘の称号を捧げよう!⦆要らんて!

 まぁ用途に応じて細かく創っている部位もあるけ……深愛(ミア)恐いって!


「ほぉ? どういう意味なのか説明してくれる?」

「説明を求めます。教えて下さらないなら、私が直接消してきますので!」

「それは止めて! あ、でも、裸で採寸させてくれるなら消してもいいかな?」

「は、裸で採寸?!」

「それなら残そう! 消したらダメよ!」

「なんでやねん!」


 トルソー用途だって最初から言っているのに。

 全て消すなら採寸ってなるのは仕方ないと思うな。

 変態の娘の称号は消し去ったけど⦅何だとぉ?!⦆経験は父さんよりも上だから!

 伊達に時間加速下で数億年も過ごしていないよ⦅私の娘だわ⦆母さんの娘ですが?


「大体、私の姉妹の場合は私の神魔体で済ませるけど、二人の場合は、ね?」

「あっ! そっか、亜衣(アイ)の姉妹の場合は採寸が必要と?」

「そうだよ。勝手に神魔体を創る訳にもいかないし。というか告げ口しなければ」

「仕方ないじゃん。最初からトルソーと姉さんが教えてくれても良かったんだよ?」

「いやいや。あの時はサプライズ品を創るつもりで置いていたからさ」

「サプライズ品って。あんな精緻な置物を見たら誰だって疑うからね?」

「そ、それは……ごめんなさい」


 サプライズ品。

 それは文化祭の後、私だけ父さんの神界へ篭もってあれこれ創っていた時の事。

 実依(マイ)が「ご飯だよ」って呼びに来て目撃してしまった事案だった。


「結局、あの石膏は何だったの? サプライズ品って?」


 これは当日まで黙っていようと思ったけど、仕方ないか。


「水着だよ」

「「「水着!」」」

「個々に着る水着を用意していたの。身体が育ったから作り直しだけど」

「それって、サーフィン時の『姉さん達だけズルい!』がきっかけ?」

「そうそう。私達だけだと可哀想だしね」


 結局、話が脱線したし。




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