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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・変化が無い事が一番楽だよね?

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第103話 ド忘れは程々に。

 Side:実菜(ミナ)


 いやはや、どうして?

 ルゥちゃんの愚弟が嫁探しで母さんの世界へ降りていたとはね。

 おかしな参拝客と思っていたのだけど、そんな理由だったとは。


深愛(ミア)に求婚した相手が愚弟君かぁ」

「そ、そうなの? 全然、記憶に無いのだけど?」

「それで、聞かされた手前、どうなの?」

「どう、とは?」

「求婚に応じるのか、断「当然、断るわよ!」」

「「「食い気味って」」」


 そうだよね。

 今の深愛(ミア)は男に忌避感を持っているから。

 それが身内……直系の男神であっても受け入れるのは無理だろう。


「どちらにせよ、ロゥを受け入れる事は無理であろうな」

「ええ、祭事の最中に求婚ですからね。アスティが知ると拒絶しますよ」

「いや、真っ先にエインスが激怒するだろう。彼奴は娘への愛が極端故」

「あっ。そ、そうでしたね」


 そうね。父さんなら絶対に激怒するね。

 父さんが祝詞を唱えている間に愛娘へと求婚をする。

 先ずは祭事後の父親に挨拶をするのが道理だろうと叱りつけるね。

 自分の行いはともかく⦅ア、明日華(アスカ)さん、もう無理⦆何をやっているのやら?


(あらら。これは次男が来るか、二十女が来るか……いや、両方か)


 気になって〈遠視〉すると干からびた父さんに母さんが乗って腰を振っていた。

 両親の致している姿を見ると複雑な気分になるが……若い母さんはエロい!

 気づかれる前に退散する⦅喜びなさい! 双子が妊娠したわ!⦆マジか?


「御爺様?」

「どうかしたか?」

「えっとですね、御母様が、年甲斐もなく……痛っ!」

「「い、芋?」」

「「「母さんか」」」

「芋が頭上から?」


 頭上から芋が落ちてきたしぃ!⦅余計な一言が多いわよ!⦆ごめんなさい。


「あら? まだ現役なのね?」


 ルゥちゃんは察したように〈遠視〉して把握していたよ。


「状況的に喜んでいいのか微妙で……おっと。また芋を落としてきたし」

「率直に伝えてあげたら? 御爺様達にとっては慶事みたいなものだし」

「「慶事?」」

「そうだね」


 確かに慶事だね。

 母さんが自身の腹へ子を宿すとか。

 私達とは産まれ方が異なる末っ子達。

 神の妊娠は人のそれとは異なるから直ぐに結果が出るというね。


「御母様がつい先ほど妊娠しました」

「「……」」


 あら? 固まった? 伯父まで?


「それは目出度い!」「確かに慶事だな!」


 同時に発言されると何を言ったのってなるけど、まぁいいか。

 深愛(ミア)達姉妹は驚愕と共に帰る準備を始めていた。


「母さんが妊娠!?」

「それは戻らないと!」

「いやいや、私達が行っても意味無いよ?」

「「どうして!?」」


 どうしてって。

 ああ、そうか……直ぐに生まれるものと思っているからか。


「うーん、とね。お腹に子を宿す場合、十ヶ月以上経たないと産まれないのよ。私達の産まれは少々特殊だから、妊娠と聞いて直ぐに産まれると思ったみたいだけどさ」

「「そうなのぉ!?」」


 やっぱり驚いたし。

 仮に間に合っても事後の様子を見るだけだ。

 深愛(ミア)の黒歴史を刺激するような光景⦅黒歴史……あっ⦆見ちゃった。


「「……」」


 母さん達の事後を見て固まった深愛(ミア)仁菜(ニナ)であった。


「この反応。この子達って実菜(ミナ)達と同じ産まれ方なのね?」

「うん。産まれについてはティルも同じかな?」

「私も?」

「いやいや。ティルは叔母さんのお腹から産まれた訳ではないからね?」

「そうなの?」

「「……」」

「「「無知が多過ぎて辛い」」」

「「分かる」」


 終いには御爺様と伯父まで同意を示したし。

 神の出産は母親のお腹と神器の二通りが存在するから。

 母さんがお腹から産んだ子は夏音(カノン)姉さんと兄さんだけになる。

 幹菜(マキナ)ちゃんは夏音(カノン)姉さんがお腹から産んだ子だね。

 芽依(メイ)達が産んだ若結(モユ)達と違って父さんの子種だから、


「双子との話ですし、どちらかの性質を引き継いで産まれてくるでしょうね」


 時空神と創造神、その性質をガチで引き継いで産まれると予測出来るよ。


「「双子!」」


 私の発した予測を聞いた御爺様と伯父はお祭り騒ぎになってしまった。


「今年から結凪(ユナ)も常勤になるし、出産は任せたらいいかな?」

「そういえば常勤だったね。間が良いのか悪いのか?」

「医術神が待機しているし、任せるしかないでしょ?」

「だね……驚いているけど」


 特に芽依(メイ)が⦅当たってしまったわ。あら? 双子?⦆想定外もあるか。


「しかし、双子かぁ。そうなると複製神核の管理神器上限ギリギリになるよね?」

「ギリギリかもね。現状が二十三個だから、残り二個で一杯だよ」

「今後、母さんが増やすか……私達の誰かが子供を産むとなると」

「頭打ちするから、改良しようか?」

「それがいいね!」


 お祭り騒ぎと真っ赤な顔で沈黙する妹達。


「良し! 明日は祭りだ!」

「直ぐに予算編成します!」

「「……」」


 呆れ顔で菓子を食す部屋の主こと従姉とポカンの従妹。


「あーあ、始まった……あら? 美味しいわね。珍しい甘味だわ」

「私って母さんの娘ではないの?」

「娘で合っているわよ。産まれ方が違うだけだし」

「そうなの?」

「最初から教えてあげるわ。教えない母親が悪いだけだし」

「お願いします」


 我関せずで複製神核の管理神器を創造して改良する私達。


「知識としてある原形はこれ。そこから変遷してこの術陣……穴?」

「穴? あ、本当だ。もしかして防衛中に固まったのは、これが?」

「そうかもね。この穴は埋めないとね? 母さんが恥ずか死するし」

「埋めた方がいいね。母さんの痴態が末っ子達に知られてしまうし」


 穴をまたもや発見して⦅何ですってぇ!?⦆徹底して埋めた私達だった。

 なお、この時の執務室内の空気はしっちゃかめっちゃかとなった。

 まさに混沌としているよね。いや、本当に混沌だわ。


「上限が男女各二十五個から五十個まで増えたね」

「穴も埋まったし末っ子達が産まれたら交換しようか」

「それがいいね。その前にルゥちゃんが手招きしてる」

「手招き? あっ!」


 そうでした。まだ本命が残っていたよ。

 母さんの妊娠発覚で吹っ飛んでいたね。

 手招きされて応接椅子に戻ると、


「神生成神器」


 ティルが真相を知って知識を紐解いて愕然としていた。

 十六才の神体に育つまで神器の中。ティル自身にその記憶は無い。

 私は薄らと記憶にあるね。裸で水の中に浮いている記憶だけども。


「これは復活するまでしばらくかかる?」

「私達は理解すればあっという間だよ。理解して受け入れるまでの経験差もあるから時間が掛かりそうだけど」

「流石は年の功ね」

「「……」」


 ルゥちゃんと私達の年の差って一年だけじゃん!


「私の年の事を言わないでよ!」

「「言ったのはそっちが先でしょ?」」


 それはともかく、


「本題を求めているんだよね?」

「ええ。先ずは通信神器、次は管理神器の更新、最後が魔導書ね」

「順番で言えば魔導書が先だと思う。更新は世界を知る必要があるからね」

「そうなのね」


 私はルゥちゃんの世界、管理神器更新の段取りを語ったのだった。


「魔導書と通信神器は御爺様と伯父様にも手渡さないといけないし」


 私はそう言いつつテーブル上に神魔体の魔導書を置き、右横へと通信神器を生成する魔導書も置いた⦅生成は丸投げするんだ?⦆基本構成は同じだからね。


「現状は親族限定で禁書となっているから……いや、親族だから全員いけるね」

「それは助かるわ。誰でも彼でも欲しがると困るし」

「通信神器については好みの色を指定して、神力を与えるだけで生成されるから」

「それだけでいいのね。遠隔操作は?」

「神器が更新されたら登録陣が自動で用意されるから、それを……えっと、このレンズで読み取ると自動で生成されるのよ」


 自身のスマホを取り出した私は別途用意した登録陣へとカメラを翳し、


「こうやって写して、しばらくすると……」

「あっ! 何も無かったのに丸が出来たわ」


 砂時計と碧瞳を記した不可解な絵柄のアプリが出現した。

 すると実依(マイ)がきょとんとしつつ質問してきた。


「姉さん? これは何のアプリ? 初めて見たけど?」

「撮影した場所や人の過去と未来を見せてくれるアプリ」

「「ふぁ?」」


 実はこのアプリ。

 深愛(ミア)との旅路で構想を練って帰ってから速攻で創ったアプリだ。

 旅路では過去視と未来視を頻発して眼が疲れたからね。

 それならばアプリとした方が楽と思って用意したのだ。


「過去視と未来視? でも、それって世界神の許可が?」

「普通は要るのだけど、それは大規模な利用だけで、小規模だと問題無かったの」

「それって私達が……あちらこちらで見ていた時と同じ?」

「そうそう。ルゥちゃんのおっぱいが急成長した五百年前の出来事とか」

「ルゥちゃんが果菜(カナ)可愛いよって、ベッドで寝転ぶ昨日の出来事とか?」

「ルゥちゃんが愚弟の尻を蹴飛ばす未来の出来事とか……痛そうだな」

「な、何でそれを知っているのよ!?」

「「見たから!」」

「勝手に見るな! って、蹴飛ばすのは確定か」


 という感じで、悪戯目的くらいなら普通に使えるアプリだった。

 当然、悪戯以上の悪事には使えないけどね。私達は基本善神だし。


「でもさ? これだと芽依(メイ)ちゃん達の存在意義が問われない?」

「いや、試しに見せたら揃ってインストールしたよ。権能があるのにね?」

「「あらら」」


 過去視と未来視アプリについては希望者のみのインストールになるかもね。

 権能持ち以外でも使えるから重宝するかもね諜報部門とか⦅寒い⦆ごめん。


「それなら、その登録陣も含めて献上してね?」

「「やっぱり?」」

「当たり前でしょ。それは管理して然るべき代物だもの」

「「ですよね」」


 結果、世界神となっている中位神以上から利用可能となった。

 下位神達には悪いけど世界運営で必要な代物だからね、これ。

 私はその際に忘れていた機能をルゥちゃんに報告した。


「そうそう。実はこれ、邪神の出現予測まで出来るんだよ!」

「「「「な、何だってぇ!?」」」」


 お祭り騒ぎだった御爺様と伯父まで驚いてる?


「実際に私の管理世界で試したら『こんにちは』してしまったからね?」


 即滅してあげたけど⦅アプリの報告しなさい!⦆母さんごめん!

 的中確率は必ず遭遇するレベル。これには私もびっくりしたよ。




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