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ポンコツ女神達の多忙なる日常!〜勇者ではないので、お構いなく〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・変化が無い事が一番楽だよね?

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第102話 間男は反応に困る。

 Side:実依(マイ)


 姉さんの大規模更新事業が決定した日。

 私と仁菜(ニナ)とティルは姉さん達が訪れるまで、


「やはり、アスティの世界がどの世界より発展しているのだな」

「そうですね。私達の管理世界も一定水準までは育ちましたけど、どうしても」

「ええ。ある時期を境に停滞していますね。お母様に事情を聞くと……」


 御爺様から根掘り葉掘り管理世界について問われた。

 場所はルゥちゃんのこぢんまりとした⦅悪かったわね?⦆執務室である。


「召喚か。他世界の技術を取り入れようにも理解出来る頭が育つまでに死亡すると」

「長命種ならどうにか導入まで辿り着きますが、それを欲する人族との争いが起き」

「結果的に両国間の死者多数で一度衰退します。文明はそこからリセットですから」

「進むと思えば進まなくなるか。他世界から受け入れていないアスティの世界は?」「主に民達の自主性でしょうか? 考える力を国家を挙げて養わせておりますから」

「現状は私達の領域まで到達しつつあります。但し、禁忌に手を出すと罰しますが」

「「それはそうだろうな」」

「とんでもないわね?」

「「ですね」」

「……」


 私達が管理を始めたのはつい最近だが、分割体達の記憶もあるからある程度は語る事が出来た。それでも司令塔である姉さんに比べると詳細が欠けてしまうんだよね。

 母さんの世界なら学生として学んでいる関係で大まかに語れるけれど。


「次はティル……明覚華(アザカ)の世界はどうなのだ?」

「え? あー、えっと、わ、私は、監視しか、しておりません、ので……」


 問われたティルは場違い感が凄まじいからかガチガチにあがっていた。

 この場に居る下位神はティルだけだもんな。

 御爺様は言うに及ばず、上位神の伯父とルゥちゃん。

 中位神の私と仁菜(ニナ)。これは仕方ないね?


「監視している側の意見で構わないよ。明覚華(アザカ)は詳細報告しないから」

「そ、そうなので?」

「報告書が簡潔過ぎて、何を伝えたいのか理解出来ない事の方が多い。困った妹だ」


 伯父を困らせる叔母さん……父親と兄にまで超絶ドSを発揮するとはね?


「で、では……監視している側の意見ですが」


 ティルは語る……自身が語れる知識の中から、世界に蔓延る問題点を。

 一つは叔母さんが教皇として指示を出している事。

 一つは神官が神の御意志と言って寄進を求める事。


「ア、明覚華(アザカ)の奴。直接干渉は止めろと、再三忠告したのに……」

「一部の特権階級、神官のみが寄進を求め続けていると、困ったものだな」


 最悪なのは指示を出している割に神官達から相手にされていなかった。

 教皇(中身)の御名だけ利用して金を集める事に尽力しているからやりきれない。

 それは神託を利用する結依(ユイ)ちゃんの狂信者と似ているかもね?


「い、以上が私から言える……管理世界の実情です」


 ここで必要以上に問題点を語ると後が恐いと思っているティル。

 その思っている事は御爺様達には筒抜けだからね⦅マ?⦆うん。


「肝心の指示内容は治療院の建設はどうなっているか……だけか」


 建設には金がかかる。故に寄進を求める。建設についての会談は部下に丸投げ。

 ただ、建設状況だけ部下に問えば、中抜きされていても気づけるものではない。

 決裁もせず問うだけ。同じ事しか問わなければバカにされても仕方ないね。


「これは放置し過ぎた弊害でしょうか? 御父様」

「そうだな。アスティは出来が良かっただけ教育も早かったが」

「あ、あの? 御母様は不出来だったので?」

「不出来ではないが、遅咲きだったのだ」

「お、遅咲き?」

「アスティは最速だったのだ。神力制御が」

「「「おぅ」」」


 それを聞いた瞬間「親の子」の言葉が頭に浮かんだ。

 しかも黙って聞いていたルゥちゃんと仁菜(ニナ)も同意見だった件。

 ティルはきょとんのままだけど。


「な、何?」

「あー、だからなのね。今の年齢で神力の制御が出来ないのは」

「ルゥちゃん、本当の事でも、それは黙っておこうよ?」

「本当の事ぉ?!」

実依(マイ)の方が酷いわよ?」

「こういうところはアスティに似ているな」

「ですね。アスティも棘のある言葉を無自覚に使っていましたから」


 似ているって? 娘だもん!

 そこでふと、私は疑問に思った。

 私達の耳に聞こえる各自の名、叔母さんの場合は名前だけだった。

 母さんだけが、何故か神名のままだったのだ。

 叔母さんは明覚華(アザカ)、母さんはアスティ。

 家での呼び名は明日華(アスカ)なのだけど。

 そんな私の疑問に答えてくれたのは伯父だった。


明日華(アスカ)はミドルネームだよ。愛称とも言うが」

「「ミドルネーム!?」」

「アスティは神名、明日華(アスカ)は母が付けた愛称、本来なら末尾に世界名が付く。今はカヅキ侯爵家の姓になっているが、アスティが君達の母の本名だな」


 という事は〈アスティ・明日華(アスカ)・カヅキ〉が正式名称なの?


(いや、違う……発音しやすい呼び名でアスティだよ。本当は滅茶苦茶長い!)


 寿限無寿限無くらい長い名前だったはず⦅ちょっと!⦆五劫のすりきれ?


「アスティは本名と言いつつとても長いからな。結局、略して呼ぶようになった」

「あれは確か……御爺様が付けた名前でしたっけ?」

「そうだ。だからアスティもあまり呼ばれたくない本名になっているな」

「それなら明覚華(アザカ)叔母さんは?」

「一応あるが、明覚華(アザカ)は更に長いのだ。だから私が名付けた愛称で呼ぶようになった。明覚華(アザカ)の本名を呼ぶ時は式典くらいだろう」

「「「そ、それで」」」


 一応、私達にも本名を長くした神名があるもんね。

 私達の場合は愛称兼用で⦅実依(マイ)は小宇宙って意味の神名よ⦆そうだったの!?


(は? お腹の中が無限の小宇宙? なんでやねん!)


 私が内心でツッコミを入れていると仁菜(ニナ)が苦笑しつつ棘を刺してきた。


「ふふっ。それは本当の事ではないですか? ティルさんの事、言えませんね?」

「うぐぅ」


 いや、まぁ……食欲だけは自慢だから。

 それで先日は太ったけども、うん。

 母さんの芋を食べ過ぎた弊害だけど。


「アスティは未だに芋を育てているのか?」

「本当に芋が好きなのだな。私も好きだが」

「そこは御父様譲りでしょうね。甘味好きでもありますし」

「そ、そうだな。うむ」


 そうして芋な話に発展しようとした瞬間、扉をノックする音が響いた。


「入れ」


 扉が開くと衛兵ゴーレムではない下位神の衛兵が顔を出した。


「はっ! 失礼します……お客様がお越しになりました」

「通せ」

「はっ! どうぞ、こちらへ」

「「どうもどうも」」


 衛兵の案内で通されたのは着飾った姉さんと深愛(ミア)だった。

 御爺様にお会いする前提だからか似合わ⦅何だって?⦆似合っているドレスを着て訪れたよ。普通に神装だけでも良かったと思うけど王宮だから空気を読んだのかな?


⦅元々、来客として訪れたけど衛兵から夜会の客と間違われただけ!⦆

⦅ドレスコードの所為でドレスを着ないと王宮へ入れなかったのよ!⦆

⦅夜会? 夜会なんてあったの?⦆


 夜会? この時間帯に……あっ、既に夜会の時間帯だったん。

 主催者は誰だろうか? 御爺様と伯父はこちらに居るけれど。


⦅あんちくしょう! また勝手な事を!⦆


 ルゥちゃんが憤っている?

 これはどういう事なのだろうか?


「御父様、愚息が申し訳ありません!」

「いや、気にするな。今回もいつもの嫁探しであろうな」

「あの愚弟。嫁は自分で探すと言って結局は見つからなかったのね!」

「早々、格のある者は発見出来ぬよ」


 なるほど。あの愚弟君が嫁探しで失敗したのね。

 それで今度はこちらに居る令嬢達を呼んで嫁を探していると。

 そこに姉さん達が訪れて、巻き込まれてしまったと。

 姉さん達は部屋付き侍女へと福袋と書かれた紙袋を手渡し、


「これ、陛下へのお土産ね」

「毒味させていただきます」

「「よろしく」」


 疑問気ながら応接椅子まで歩いてきた。

 毒味の必要は無いけど一応、行う決まりなのね。


「ところで愚弟って? 実菜(ミナ)、どういう事?」

「えっとね。ルゥちゃんには放浪癖のある弟が居てね?」


 疑問気なのは深愛(ミア)だけだったね。

 ルゥちゃんとの面識はあっても愚弟は無かったか。

 それは仁菜(ニナ)も同じなのだけど。

 深愛(ミア)へと語りながら応接椅子に腰掛けた姉さん。


「そこそこいい年齢だから、嫁を得て定住につけと御爺様から命じられたようでね」

「こちらで用意しようとしたら『自分で探す』と言って旅立ったのよ。でも定期的に帰って夜会を開いて、変わり映えの無い令嬢を呼び出して嫁探しを継続しているの」


 言葉尻を継いだのは姉として困らせられているルゥちゃんだった。


「「「よ、嫁探し?」」」


 事情を聞いた深愛(ミア)仁菜(ニナ)

 ティルが困惑気に顔を見合わせ首を傾げている。

 ルゥちゃんの毒舌は引き続き吐き出され、姉さんが苦笑気味に応じていた。


「大体、あの子の条件に合う格持ちなんて、早々居ないわよ」

「その条件って?」

「愚弟に見合う外見、潜在的な神聖力持ち。そんな子、実菜(ミナ)達以外で見つかる訳が無いわ」

「そ、そうね」

「身内はどうかって伝えたら、それは嫌だって答えるし。本当に困った愚弟よ」

「なるほど」

「産まれて千年ちょっとでしょ。尻に敷くくらいの嫁じゃないと無理ね。あの愚弟」

「……」


 その愚弟は継嗣ではなく婿入りが決定されている少々可哀想な男児だ。

 これは愚弟が産まれた日にルゥちゃんが継嗣となり必然的に決定した。

 継嗣については神力制御が叶った者より選ばれるので仕方ないけれど。

 そこでふと、仁菜(ニナ)深愛(ミア)を一瞥して昨日の件を問いかけた。


「そういえば深愛(ミア)も求婚されていたよね?」


 私は知らなかったけど仁菜(ニナ)が目撃していた事案だね。


「そう、だったかしら? 記憶に無いわね?」

「即答していたけど?『忙しいのでお帰り下さい』って」

「忙しい? まぁ、忙しかったのは確かね。参拝客がごった返していたし」


 素の仁菜(ニナ)に問われた深愛(ミア)には記憶が無い。

 すると苦笑気味の姉さんがきょとんの仁菜(ニナ)に応じた。


「あーはいはい。大声で『結婚して下さい!』だったね。おかしな参拝客が居るなって思ったけど……良く考えると見覚えのある外見だったような?」

「それが愚弟よ!」

「「「「「えっ?」」」」」

「「なっ!」」


 身内は嫌なのに身内に求婚?




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