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賢者様はすべてご存じです!  作者: 筒居誠壱
第七章 続編の世界へ
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第四百九十七話 ロード追跡

「すぐに王都へ向かいましょう! まだ間に合うかもしれません」


 ヨランがララティーにそう進言すると、彼女は我に返ったように、


「そうよ。すぐに王都へ向かわなきゃ! ジャーヴィー! 早くドラゴンに戻って!」


 あの時、俺はしばらくダメだったのだが、ララティーの立ち直りは早かった。


 この辺は主人公(メインキャラ)脇役(サブキャラ)の違いだろう。

 いや、俺の人間性の問題か。


「ロードと競って勝てるとは思えぬがな」


 ジャーヴィーは気乗りしないって様子だ。

 パーヴィーも同じようなことを言っていたから、ロードは飛行速度も群を抜いているのだろう。


「諦めるわけにはいかないの。早く!」


 それでもジャーヴィーはララティーの要請に応じて、またドラゴンの姿に戻ってくれた。


 周辺にいた人々が蜘蛛の子を散らすように逃げ去って行ったが。


「じゃあ、行くか」


「ええ。しゅっぱーつ!」


 俺が『レビテーション』で皆をドラゴンの背中へ押し上げると、ララティーが敢えてそうしたのだろう、軽い感じでジャーヴィーに出発を命じた。


 それに応えてジャーヴィーが一気に上昇する。


 俺はまた奴の鱗にしがみついていた。



「ロードの背中も見えぬな。追いつくのは無理であろう」


 上空を西へと向かいながらジャーヴィーが誰に聞かせるともなく口にした。


「王都を滅ぼすのにどのくらいの時間が掛かるのでしょう?」


 ヨランが心配そうに聞くと、ジャーヴィーが間髪入れずに答える。


「ほんの瞬く間であろう。我らが王に掛かれば人間の町など紙屑同然。吐く息ひとつで火の海と化すわ」


 もう少し言い方があると思うのだが、そういうのをドラゴンに期待するのは無理なのだろう。


「奴より先に王都へ着かないと一巻の終わりってことね。ジャーヴィー! 死ぬ気で急いで!」


 ララティーの要望に奴は慌てて、


「いや。死ぬ気で急いでも無理なのだ。ロードに追いつけるとはとても思えぬ」


 そんな答えを返す。

 その間、俺はみんな余裕あるなって思いながら、ずっと奴の鱗をがっちりと握り続けていた。


「アマン。何とかならないの?」


 アグナユディテが俺に聞いてきたが、おそらく行き先を間違えた時点でシナリオ的には詰んでいるのだ。

 それをどうにかするなんて、ゲームの域を超えた存在にでもお願いするしか……、それって俺のことじゃないか!


「何とかするしかないな。ユディ。風を起こすから、皆にしっかり掴まっているように伝えてくれ」


 彼女は一瞬、息を呑んだような気がしたが、すぐに皆に向かって、


「風が来るわ! みんなしっかりと掴まって!」


 なんて伝えてくれた。

 エルフの彼女が「風が来る」とか言うと、しっくりくるよな。


 このままバッドエンドを迎えるのは御免なのだ。

 俺はそう考えてちょっとだけ自分の力を使うことにした。


(トーネード・マールニュ!!)


 竜巻系の最大呪文が凶悪と言ってよいほどの風の流れを起こし、ジャーヴィーに後方から吹きつける。


「ぐわっ! 何だこれは?」


 強風に押されたジャーヴィーは慌てて逃れようとするが、俺の作り出した風の流れは巨大なエンシェント・ドラゴンである奴をすっぽりと包んであまりあるスケールだ。

 そう簡単に逃れられるはずがない。


「ちょっとこれ。すごい速さじゃないのかい?」


 アデーレが気がついて皆に告げたとおり、風に乗った、と言うよりも流されるジャーヴィーは、これまでの奴の速度をはるかに越えるスピードで飛んでいた。


「むっ。そうか。上手く風に乗れば……」


 ジャーヴィーもそれに気がついて、バランスを取ってこれまでより遥かに速く空を進んで行く。


 揺れが激しくて竜巻の魔法を止めたくなったが、目を瞑って我慢した。


「あそこに見えるのはドラゴン・ロードじゃない?」


 目の良いアグナユディテが空を行くロードの姿を認めたらしく、皆に教えてくれた。


「あっという間に追いついたね」


 アデーレもロードを見つけられたようだ。

 王都へ着く前に、俺たちは奴を追い抜いた。


 後は王都で待ち受けて奴にとどめを刺すだけだ。


(でもどうやって?)


 最大の問題が解決していないことに俺は今さらながら気がついた。


 無限の生命力をララティーにどうイメージさせればいいのかって問題だ。


 彼女は俺みたいなゲーマーじゃないからHPゲージなんて知らない。

 そもそもこの世界にゲーマーがいるはずもないのだが。


 そんな彼女にどうやってあのイメージを持たせればよいのだろう?


(こういう時こそ、イベリアノの出番じゃないか)


 俺は彼がこの場にいないことが歯痒(はがゆ)かった。

 彼は『ドラゴン・クレスタⅡ』のキャラクターのはずなのに、この世界ではお目にかかっていない。


 元の世界では俺にロードを倒す方法のヒントをくれたのに。


「王都が見えたぞ!」


 リズがそう言って、俺は慌てて竜巻の魔法を止めた。


「うおっ!」


 急に乗っていた風が無くなってジャーヴィーがバランスを崩し、俺は心臓が止まるかと思った。


 いや『レビテーション』は使えるんだけどね。


「王都のすぐ側ね。ジャーヴィー。でかしたわ」


 ララティーが偉そうにジャーヴィーを褒めて、もうほとんど下僕扱いだ。


 実際に皆をここまで運んだのは俺の竜巻の魔法の力だから、俺こそ彼女の下僕なのかもしれない。


「アマン。さすがね」


 アグナユディテだけは俺がしたことを分かってくれていて、そう言ってくれた。


 風の進む方向を調整するのは大変だったが、思ったより上手くいった。


 それにしても『ドラゴン・クレスタ』のフィールドマップ上なら、俺は目を瞑っていたって目的地に向かえることが実証されたな。



「王宮の中庭に降りて!」


 ララティーが無茶な命令をしていたが、ジャーヴィーは素直に従っていた。


 いや、奴にとっては無茶でもなんでもなく、王都に住む人々にとって無茶な命令だったのだが。


「うわー!」「ドラゴン?」「きゃー!」「逃げろ!」


 俺たちの下に広がる王都の辻々から、そんな声が聞こえる。

 王都はパニックに陥っているようだ。


 おかげで俺たちがしたように避難命令を出すまでもなく人々は我先にと町の外へと逃げ出していた。



「ララティー。どうするんだ?」


 リズがララティーに尋ねる。


 ララティーは今日はもうドラゴンになることはできない。

 それでどうやってロードと戦うのかと彼女も考えているのだろう。


「私が何とかあのドラゴンの王を説得してみる。遠くまで見渡せる王宮のベランダへ行きましょう」


 やっぱりあそこなのかと俺は思ったが、中庭に降りたからベランダは目と鼻の先だ。

 王宮は小高い丘の上にあるから、空を飛んで来る奴を見つけるにはベランダが最適ではある。


 姿を変えたジャーヴィーも含め、俺たちは全員でベランダに立った。


「ララティー様。突然、どうされたのですか?」


 空にロードの姿を探していると、背後から背の高い赤い髪の男性が声を掛けてきた。


「ルジェーナ卿! ドラゴンが王都を襲おうとしているのです。そのドラゴンがやって来るのを見張っているのです」


 ララティーが危機を告げると、彼は両肩をすぼめ、理解できないって顔をした。


「空にドラゴンが現れて、王宮に姿を消したと言っている者がいましたが、まさかあなたの仕業ですか?」


 もう一人、ルジェーナ卿と呼ばれた男の後ろから屈強そうな男が現れ、ララティーを詰問するような態度をみせる。

 言ってることは実は間違っていないのだが、これから王都を襲うのは、それとは別のドラゴンなのだ。


「ラディアン卿も聞いてください! 時間がないのです。間もなくドラゴンが王都に……」


 その男もララティーの言葉に首を振り、


「あなたは資格停止処分中の身。とにかく国王陛下に申し開きを」


 そう言って俺たちをベランダから退去させようとする姿勢を見せた。


 やっぱり俺たちがディヤルミアへ向かった時点でバッドエンド確定で、ゲームの強制力が働いて、俺たちは王都を救えずに終わるのだろうか?


 そう思った時だった。


「その必要はない」


 二人の男性の背後から幾人かの集団が現れ、その先頭にいた男性が、皆にそう呼び掛けた。


「こ、これは国王陛下。まさかおいでになるとは……」


 ルジェーナ卿が慌てて場所を譲ると、国王陛下が奥の廊下からベランダへと歩みを進めて来た。


 暗い廊下でよく見えなかった王の様子が明らかになる。


「父上! 聞いてください。ドラゴンが王都に……」


「ララティー。おかえり。相変わらずだね」


 ララティーの父王はにこやかな態度で彼女に対していた。


 だが、俺はその見覚えのある姿に衝撃を受けていた。


「ハイラディン……」


 年齢は元の世界のハイラディン王より高そうだが、その姿はどう見てもそうだ。


 日に輝いて少し赤くも見える金色の髪も、落ち着いた雰囲気のなかなかの美男子であることも、元の世界の彼そのものだ。


「アマン。国王陛下に対して不敬では……」


 リズが困惑した様子で俺を見ていたが、呼び捨てはまずかったのかもしれなかった。


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新連載、『アリスの異世界転生録〜幼女として女神からチートな魔法の力を授かり転生した先は女性しかいない完全な世界でした』の投稿を始めました。
本作同様、そちらもお読みいただけたら、嬉しいです。
よろしくお願します。
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