表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/572

アンデッドダンジョンにて

 ペース良く進み、ダンジョンの四階層まで私たちはやって来た。


「四階層まで来たけど大して変わりがないね」


「そうですね。敵も同じだし、どこまで潜りましょうか?」


「一応、五階層に中ボスの間があるらしいから、そこまでだね。倒すと地上か更に下か選べるらしい」


「中ボスですか、強いんですか?」


「まぁ、この調子なら楽勝だろ。ここからならその方が早いだろうし」


 もはや勝手知ったる相手しかいないので、どんどん進んでいく。


「あの……」


「どうしたのアスカ?」


「この辺に生えてるのって薬草だと思うんだけど、採れるのかな?」


「あ、多分採れたと思うよ。あたしは普段採らないからうろ覚えだけど」


「本当ですか! アルナ用の薬草ジュースの材料も切れかかってたので助かります」


 私は嬉々として薬草採取に励むのだけど……。


「あれ? 消えちゃった」


 採取したはずの薬草が消えてしまう。ひょっとしてこれも?


 パァァァ


 小さい光と共に出てきたのはポーションだった。


「えっ!? さっきのがリラ草だからなのかな」


「あ~そういや、薬草の状態で手に入らなかったね。しかも、出てくるのも採る人間の腕によるから興味がなかったんだったよ」


「逆にアスカが取れば良いものが手に入るってことですか?」


「多分ね。だけど、そこまでになるかねぇ」


「なぁんだ。薬草じゃないならいらないや」


 ポーションが手に入るのは良いけど、今欲しいのは薬草だからね。薬草はスルーして再びダンジョンを進んでいく私たち。


「はっ! やっ!」


「ウィンド!」


 階段を求めて私たちは魔物を倒しつつ辺りを見回す。ダンジョンに入ってそこそこ経っているはずなので、頑張らないとね。


「階段ありました!」


 リュートからの報告を受けて私たちはそっちに向かう。


「ジャネットさん、中ボスのいるフロアって……」


「そこまでは知らないんだ。悪いね」


 それならと準備を整えて五階層へ下りる。


「普通のフロアですね。魔物も見当たりませんし」


 探知をしてみても大きな反応はない。でも、人らしき大きさの反応があった。


「どうした?」


「魔物はいないですが人はいるみたいです」


 ちょっと近くに行くと、大きな扉の近くに四人のパーティーがいた。装備的にDランクだろうか? チラッと見ると向こうも気がついたようで声をかけてきた。


「あんたらもここのボスに挑むのか?」


「まぁね。そっちは何で休憩してるんだい?」


「別に休憩してるわけじゃ……そうだ! 合同でボスを倒さないか?」


「なるほどねぇ~」


「なっ、良いだろ?」


 あのジャネットさんのなるほどはよくない方だ。前に酔っぱらいに絡まれた時もあんな返事だった。でも、別に一緒に受けても良いと思うけどなぁ。


「お断りだね。こっちにメリットがない。実力差のある相手と組むのはしんどいんでね」


「なっ! ここのボスは強敵だぞ! 知らないからな」


「ふ~ん。強敵って何がいるんだい? あたしらは生憎知らなくてね」


「一緒に入ったら教えてやるぜ!」


 それって意味ないよね? そう言おうと思ったけど、さっさとジャネットさんが扉を開けて入ろうとしたのでそれに続く。


「おっと、一緒に入ってきたら安全は保証しないよ。ボス部屋の先に次の階段があるんだろ?」


「くっ!」


 ボスの間に入るとそこには竜の頭を持ったスケルトンがいた。というよりは二足歩行する竜だろうか?

 カタカタと口の骨を鳴らし、両手で持った剣で斬りかかってくる。


「ウィンド!」


 すかさず風魔法で弾くも、魔法耐性があるようで思ったよりは飛ばなかった。


「リュート、サポートお願い」


「わかったよ」


 リュートに控えてもらって私は火の魔法を放つ。


「フレイムブラスト!」


 火線のガイドが魔物に到達したところでそこに向けて一気に炎が襲いかかる。このボスにならこれで十分だろう。

 火が収まるとそこにはボロボロの魔物がいた。そしてその姿がかき消えると、二つの宝箱が出現した。


「宝箱だ! それも二つ、何でしょうね?」


「わかったからちょっとは落ち着きなよ。リュート、どうだい?」


「見た感じ何もありません。開けても良さそうです」


「それじゃ、まずはこの小さい方からだね。なんだこりゃ!? カード?」


 小さい方の宝箱にはカードが入っていた。表にはダンジョンの名前と到達階層、裏にはパーティーが記載されている。


「どんな仕組みか知らないけどただの記念品だね。ん? 表は押すと他のダンジョンの名前が出るのか……でも、知らないやつはでないね。そこそこ役に立つかもね」


「こっちはなんでしょうねぇ~」


 私が宝箱を揺すっているとOKが出たので開けてみる。


「なんだろこれ? 赤い宝石?」


 中には赤い宝石らしきものが入っていた。魔石かな?


「なんだったの?」


「ん~、魔石っぽいけどよくわからないや。ティタに聞くか鑑定だね」


 ポイッとキープに放り込む。そして、部屋を出るところで気になったので聞いてみた。


「ジャネットさん、どうして彼らと一緒に倒さなかったんですか? 別にあれくらいなら問題なかったですよね?」


「ああ、こっちはね。アスカはあいつらが怪我なしに突破できたと思うかい?」


 もう一度、彼らを思い出す。口調は強かったけど装備は悪いし、かなり手こずるんじゃないかと思う。何より魔法使い系の人がいなかったんだよね。


「難しいんじゃないでしょうか? 魔法が得意そうな人もいなかったですし」


 私たちのパーティーなら、近接でも楽だっただろう。それこそ、リュートでもジャネットさんでも一人で倒せると思う。


「そんな奴らを次の階層に連れていったら、その場で死んじまうよ。他の奴らもそれがわかってるから連れていってないのさ」


「でも、それならなんで彼らは残っているのでしょう?」


「入る時に一人銀貨二枚払ったろ?あたしらにとっちゃはした金だけど、あいつらには大金なのさ。大方、ここまでの実入りが悪くて、どうしてもここを突破したかったんだろうね」


「なるほど! じゃあ、助けなくてよかったですね」


「そう言うことさ。今後も付き合う相手じゃないし、責任も持てないからね」


 それよりさっさと地上に戻るよとジャネットさんは奥の扉を開く。ちなみに、私たちが戦っている間、入ってきたドアを開けようとしたけど開かなかった。これは注意が必要そうだ。


「右が階段、左が地上に帰る道。こっち一直線の登り階段みたいだね」


「うぇえ、歩くんですか……」


 テレポーターじゃないんだ。がっかり。


「せめて何かないかな~」


 登り階段にしてはボス部屋のところは天井が高いのでブーツをはきかえて飛び上がる。


「おい、気を付けなよ!」


「わかってますよ!でも、魔物もいませんしへ~きですよ」


「はぁ、全く……」


「まぁまぁ、この前まで外に出られませんでしたし」


「そうだけどさ」


 ん~、特に変なところは……。


「ん? これなんだろ」


 変な色のブロックを発見したのでグイッと押してみる。


 ゴゴゴゴ


「な、なに!?」


 ブロックを押すとちょっと下に小部屋が現れた。


「すご~い! これって隠し部屋だよね! ジャネットさん、見てください! 隠し部屋ですよ!!」


「あ~、わかったからリュートを待ちな」


「はい! リュート、早く早く!」


「はいはい。フォローするんじゃなかったよ……」


 飛んできたリュートと小部屋に入るつもりだったけど本当に狭くて、通れなさそうだ。


「どうやらそこにある小さい箱だけみたいだね。取ってみるよ」


 リュートが手を伸ばして箱を手に取る。


「私が開けて良い?」


「いいよ。他にはもう何もないみたいだし」


「じゃあ、開けま~す!……はこ?」


 何と! 箱の中にはまた箱が入っていた。ただ、最初の箱と違って飾りもあるし、これが中身なのは間違いなさそうだ。


「何だったんだい?」


「これなんですけど……」


 困惑したままジャネットさんに箱を見せる。


「箱だねぇ。小さいでっぱりがあるだけの」


「でっぱり?」


 どうやらリュート側にあったみたいで、私には見えていなかった。よく見るとそこはカバーのような作りになっていたので、外してみる。


「つまみ?」


 そこにはつまみのようなものがあった。試しに回そうとするが回らない。


「箱の真ん中に鍵穴があるし、開けないと無理じゃないの?」


「鍵なんてあったっけ?」


「ちょっと見てくる」


 リュートが再び小部屋に行くもなにもなく、すこし後には部屋も消えてしまった。


「でも、変わった形の鍵だねぇ。あたしはこんな形の見たことないよ」


 確かに変わった鍵穴だ。鍵を回すと言うよりはめ込むみたいな……。


「あ!?ひょっとして!」


「どうしたのアスカ?」


「わかっちゃったかも。私って名探偵?」


 私は外したカバーの向きを確認すると、鍵の部分にはめ込む。


 カチャ


「開いた!」


「なるほどねぇ~。こういう仕組みかい。外したものも使うから失くさないし無駄のない良い作りだね」


「はい。つまみも小さいですし、かなりの技術だと思います」


 発想力もさることながら、細工の細やかさも含めると、上質だと思う。


「で、肝心の中身は?」


「えっと……歯車とか金属の棒がたくさんありますね」


「つまみを回してみたらどう?」


「そうだね。よいしょ」


 つまみを回すと歯車も回り出す。でも、不思議なことに棒は動かないし、なにも起きない。


「壊れてるのかなぁこれ?」


「でもきちんとつまみを回すと動くんだろ? 鑑定行きだね」


 結局、よくわからないものと言うことで、キープのマジックバッグに入れて階段を上った。


「一番上に来ましたけど、ここからどうするんですか?」


「見事に行き止まりだね。何かないか……」


 ジャネットさんが壁に手をつこうとした瞬間、壁が崩れて奥に進む道ができた。


「こういうことらしいね」


 そのまま進むと、入ってきた入り口近くに出た。


「それじゃ出るよ」


「はい」


「おや、帰ってきたのか? 早かったが大丈夫か?」


「ああ。今日は試しだからね」


「そうか。また来てくれよ」


 ダンジョンの見張りの人と話をして宿に戻る。


「しっかし、急に壁が崩れたりと不思議だねぇ、ダンジョンってやつは」


「ジャネットさんも初めてだったんですか?」


「言ったろ? 本当に試しに入っただけだって。当時は弱かったしね」


「後は鑑定ですね」


「ああ、買い付けに行ったリュートが帰ってきたらだね」


 思ったよりも早く帰って来たので、リュートには買い付けに行ってもらった。その間に私たちは戦利品の整理だ。落ち着いて見れば、引き取りに出さなくて済むかもしれないしね。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
地上層までテレポートではなく地道に歩きは嫌がらせに見えて実はそれ自体が隠し部屋の構成要素の1つだったって感じですかね これ作った存在はダンジョンあるあるをよく理解してるタイプとみた
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ