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招待状

翌朝、研究組を除いたみんなで朝食を食べていると来客があると知らせがあった。


「やっほ~、アスカ。来たわよ」


「ムルムル!やっぱり来たんだね」


「あれ?びっくりさせようと思ったのに…」


「昨日みんなで話してたんだよ。朝にでも来るんじゃないかって」


「ちぇ。じゃあ、馬車で待ってるから食事が終わったら来なさいよね」


「は~い」


「本当に来たね」


「それじゃあ、ご飯食べたらまた行ってきます」


「今度はちゃんと行く時は言うんだよ」


「分かったよ、リュート」


「それと、アスカが向こうに行ってる間に手紙が届いてたよ」


「手紙?」


「うん。神殿に着いたら読んでみたら?」


「分かった。そうするよ」


リュートから手紙を受け取り馬車に乗って神殿に向かう。


「それで、あの後大丈夫だったの?」


「もちろん!みんなで楽しくおしゃべりしたよ。私は先に寝ちゃったけど…」


「ま、心配はしてなかったけどね。それじゃ、戻りましょうか」


「は~い」


「それじゃあ、ジャネットさん。リュート、行ってきます」


「はいよ。今度はちゃんと連絡入れるんだよ」


「分かりました」


「何かあったら呼んでよ。僕じゃ力不足かもしれないけれど」


「そんなことないよ。頼りにしてるからね」


私たちは馬車に乗り込み私たちは神殿を目指す。


「ふ~ん、それで取り合いになったのね」


「取り合いなどではありません。どちらが優先的にアスカを所有するか決めただけです」


「私、ものじゃないよ、お姉ちゃん。でも、それでいうと昨日はジャネットさんだよね?よかったの?」


「良いも何も、愛する妹が連絡なしに危険なところに行って帰ってこなかったんだぞ?流石に譲りもする」


「はぅ。そ、そう言えばムルムルはテルンさんに会っていかなくてもよかったの?」


「いいの。研究が終わったら戻ってくると思うし」


「ムルムル様、アスカのように覚悟を決めた方がよろしいかと」


「ラフィネの言うことも分かるけど、流石に今回はね…。自分でもよく相談なしにあの場で決めたと思ったもの」


「では、お馬鹿な妹を反面教師にして、絶対に早期収束に繋がったとは言わないことです。自身を省みていないことが明確になりますから」


「お姉ちゃんひどいよ…」


「そうね。ジャネットが怒鳴るなんて私も内心びっくりしたわ。あの人、普段は甘いのに」


「そういえばゼス枢機卿様とはどうだったの?神殿で会ったんでしょ」


「ゼ、ゼス!?それはそのぅ~」


婚約者の名前をあげると途端にムルムルの顔が真っ赤に染まる。何かいいことあったのかな?


「あの方もムルムル様を溺愛していますからね。部隊を送るなど手は回してくださいましたが、気が気ではなかったでしょうから…」


「それは!婚約者だし!!」


「婚約者というだけでなく、毎日のように会ってらっしゃいますし、国内であれば巡礼について行くこともありますから」


「そ、それって大丈夫なの?偉い人なんじゃ…」


「だって、ついてくるって聞かないんだもん。しょうがないじゃない」


そういう間もムルムルの顔は真っ赤だ。2人が一緒にいるところを見たいなぁ。とそんな話をしていると馬車が神殿に着いた。


「ムルムル様、到着いたしました」


「ありがとう。それじゃ、降りましょうか」


「うん」


神殿に降りると最初に入ってきたのと同じようにというか、前回よりも厚く迎えられる。私、何かしたっけ?


「ほら、行くわよ。どうしたの?そんな変な顔して」


「いやなんか、前よりもみんな好意的だなって…」


「当たり前よ!自分がしたことをもう少し自覚しなさいよ。当然ここにもコルタの出身者はいるし、アスカのしたことは今後の疫病対策に生かされるのよ。感謝されて当然なの」


その時、1人の出迎えの人が近づいて来た。


「ア、アスカ様!この度は母を救っていただいてありがとうございます!」


「は、はい!お母さん!?」


「母は宿を経営してたんです」


ああ、あの人かぁ。病み上がりなのに催し物をしている時は、スタッフの人にテキパキ指示をして会場をきれいに保ってた人だ。


「元気なお母さんだったね。催し物の時はとっても会場がきれいだったのも、あなたのお母さんのお陰だよ」


「ア、アスカ様…ありがどうごじゃいます~」


「ど、どうしたの?大丈夫?」


私がかけよって背中をさすってあげると、今度は拝まれ出した。うう~ん、神殿の人って実は結構変わった人が多いのかな?その後、彼女は他の人に両脇を抱えられて運ばれて行った。


「さ、ちょっとあったけど入りましょう」


「うん」


再び、巫女の生活するエリアに入るとここでも歓迎された。


「アスカ様!再び会えてうれしいですわ。何でも新しい医療の形を示されたとか」


「ケイティ様、その話は後で…」


「すみません。ムルムル様もこちらに」


食堂に全員集まったと思ったらみんな着席し出した。


「では、今日はムルムル様とアスカ様に先日訪問されたコルタの町の報告をしていただきます」


「ええっ!?私もその話は聞いてないわよ」


「ムルムル、流石に今回のは私だけじゃなくてみんなも心配したんだよ。当然だと思う」


そうカレンさんに言われてはムルムルも反論できず、町であったことを話していく。


「~だからあなたたちも今後はアスカのことをコルタの舞姫か舞姫アスカと呼ぶのよ」


「「はい、ムルムル様!」」


みんないい返事だけど大袈裟過ぎるよ。大体、テルンさんの舞を見てるんだし、そっちの方が舞姫って感じだと思うけどなぁ。


「新しい体制の病院か…」


「どうかしたんですか?」


「いえ、私の家って元々町医者のようなことをしていて、こうやって巫女見習いになる前までは漠然と跡を継ぐのかなって思っていたので、ちょっと懐かしくなったんです」


「それなら、新しい病院のスタッフの募集が入ったらどうですか?兼任できるか私は知りませんけど」


「私みたいな中途半端な知識のものでもよいのですか?」


「はい。新しい病院はお医者さんの所属する医局とその補助の看護師さんの補助局に、薬局と緊急時などのけがの手当ての治癒局。最後に出来れば洗濯や浄化を行う衛生局の4つの組織を軸に運営する予定なんです。ここに居る皆さんは治癒も浄化も得意な方が多いので、いてくれれば助かります」


「ム、ムルムル様、私…」


「あ~、もう!わかったわよ!ただし、行く時はこっそりと。病院が出来てもしばらくは裏方で顔を出さないようにしなさいよ。あ・く・ま・で噂を聞きつけて力に成りたいと無理を言って、神殿を抜けて来たって話にするように!」


「ありがとうございます!」


そういうと彼女は走って行ってしまった。早速手続きに行くようだ。


「だ、大丈夫なのかな、色々と」


「アスカがそれを言うの?もう決めちゃったんだから無理よ。本当にあんたは人を動かすのが上手いわ」


「そんなことないよ。指示とか苦手だし…」


「そういうんじゃないわ。まあ、今の話はみんなにも関係することよ。他の国や地域から来ている子の中で、新しいことに挑戦…いえ、未知を既知にする手助けがしたいのなら、私やカレンに言ってちょうだい。巫女としてはよくないかもしれないけど、きっと未来の子につながることだと思うの」


ムルムルの言葉で数名から手が上がり、その後に何やら手続きをすることになった。自分が言い出したことがきっかけとはいえ、ほんとにいいのだろうか?


「ムルムル様。私はテルン様の陰に隠れて諸国を自由に回る貴方を小さく見ていたようですわ。あなたもまた歴代の巫女様に劣らぬ素晴らしい巫女様です」


「ケイティ様…では、人も少なくなることですし今後は一層頑張ってくださいね。私、テルン様の引退後を考えると本当に憂鬱になるのよ。バックアップしてくれる人は大歓迎よ!」


「巫女に選ばれても選ばれなくてもご助力致します」


何だかよくわからないけど巫女のみんなの結束力も強まったし、良かったのかな?


「さあ、一応報告はこれで終わったし、中に入るわよ」


そういうと、私たちは巫女専用の部屋に入る。なんだかこの部屋に入るのも久しぶりだ。


ピィ


んにゃ~


部屋に入るとアルナとキシャルが直ぐに飛び込んできた。


「あっ…2人ともどうしたの?あら、巫女様方。お話は終わられたのですか?」


「ええ。あなたには長い間、世話を一任してしまってごめんね」


「いいえ。どちらの子もいい子で楽しかったです!キシャルちゃんなんて、お昼になると私の膝に乗ってくれるんです」


彼女が言うようにどちらも私に飛び込んだ後は交互に肩を行き来したりと、懐いた様子だ。ご飯の時間も過ぎているので、彼女はそれでは失礼いたしますと言って部屋を出た。元々は巫女専用の部屋だからみたいだ。


「それじゃ、ひとまず手紙を読んでみなさいよ」


「そうだね。差出人はと…ジョーンズ・エクセラス。誰だろ?」


「案内している時に来ていた貴族の方よ。今度神殿にまた来ますって言われていたから、その日程じゃないの?」


ガサガサと手紙を読んで内容を確認してみると、明日に一度神殿に来るということが書かれていた。手紙の日付は私たちが神殿を出発した翌日となっていた。


「明日また来るんだって」


「それじゃ、お迎えの用意をしないとね」


「お迎え?」


「そうよ。ある意味、コルタの舞姫のお披露目ができるいい機会じゃないの!」


「ちょっと、それは…」


「ですが、ムルムルの言う通りしっかりお迎えするにも舞はいいかもしれません。神殿の教会でもたまに披露しますが、今月はまだでしたから」


「でもほら、向こうでも言ったけど私、まだ自信がないし。特に2の舞とか」


「あら、なら練習すればいいのよ。私も一緒に舞うからカレンに見てもらいましょう」


こうして神殿に戻ってきた私が舞姫としてふさわしくなるため、練習が始まったのだった。



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