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巫女と巫女

「2人とも~、連れてきたわよ」


「アスカ様、お久しぶりですね」


「は、初めましてカレンです」


「あ、テルンさん。お久しぶりです。カレンさんも初めまして」


巫女専用の部屋に入った私は、以前にもアルバに来たことがあるテルンさんと、いつも神殿で留守を預かっているカレンさんに会った。


「あら、ティタ様とアルナ様以外にも見慣れない方がいらっしゃいますね」


「キシャルって言うんです。ちょっと前に北のラスツィアで付いてきちゃったんですよ」


「ラスツィアで、ですか?ひょっとしてこの子…」


「はい。ノースコアキャットです」


「えっ、あの魔物って懐かないことで有名なんだけど」


「そうなの?普通について来たけど。ねっ、キシャル?」


んにゃ


「かわいい~」


「カレンはキシャルが気に入ったのね。アスカ、触れるの?」


「大丈夫だよ。でも、キシャルは暑いのが苦手だから氷があると喜ぶよ」


「それなら私、氷出せます。アイス」


カレンさんが氷を出すとすぐにキシャルは飛びつく。チロチロと舐めると気に入ったみたいでカレンさんの膝に座りながら氷を舐め続けている。


「もう~、キシャルったら」


「でも、本当に皆さん聞き分けがいいのですね。この町にいる魔物使いでもうまく扱えない人もおりますのよ」


「どうなんでしょう?構って欲しかったりするんですかね?」


「それで、旅はどうなの?」


「うん。思っていたよりは楽というか問題がないかな?今はキシャルが泊まる宿を探すのが大変なぐらい」


「宿探しってそんなに大変なの?まあ、私たちは自分で探すことないけど」


「従魔用の宿自体が少ないの。人気のない職っていうのもあるんだろうけど。それに、従魔って言っても色んな従魔がいるでしょ?指定が難しいから、キシャルみたいに小さい子でも大きい従魔でもかかる金額は一緒の所もあるんだ」


「へ~、それは大変ね。というかキシャルでもお金かかっちゃうの?」


「うん。魔物には違いないし、町の人には脅威だから」


「言われるとそうかなって思うけど、大変なのね」


「値段も大銅貨4枚ぐらいが相場みたいで1泊の料金が結構変わって来ちゃうんだ」


「それで、魔物使いの人は少ないのですね」


「それもあると思います。食事代だってかかりますし」


「パーティーならその分位見てもらえないの?」


「どうかな?例えば剣士の人の剣を研ぐ料金をパーティー持ちに出来るかって話だと思う。結構、人によって判断は違うと思うよ」


「そう言われると大変そうね」


「あなたも大変なのね~」


んにゃ~


従魔の話をしていると3羽の鳥がやって来た。


「あら、ラネー達じゃない。アスカが来たのが分かったの?」


チュン


「ラネー、久しぶりだね。そっちの小さい子は?」


「ハーテル。むすこだって」


「ティタ、通訳ありがとう。そっか、良かったね。元気に育って」


ハーテルと呼ばれたラネーの息子のバーナン鳥は自分以外の若い小鳥のアルナに興味があるようで、じーっと眺めている。


ピィ


「子ども同士で話してきたら?」


アルナも気になるようで部屋の隅に行って話をしている。ラネーもしばらくは私のところにいたけど、気になるようでそっちに行ってしまった。


「ふふっ、アスカ様はラネー様とも仲がいいんですね」


「元々、アスカが面倒見てたものね」


「あの頃はまだ小さかったけど、大きくなったんだね」


「ええ。神殿で大切にされてましたから。一時期はそれもストレスだったようですけど」


「あ~、確かにアルバにいた時は割と気が向いたら窓から出て行ってたもんね」


「そうなのですか?」


「はい。ミネルって言うヴィルン鳥とお兄さんのレダと一緒に自分たちで鍵も開けて飛び立ってました」


「それでは神殿に来た頃は退屈だったでしょう。町に出られるようになったのも少し後でしたから」


「そうなんですか?意外です」


「レーネ湖から少し離れているので街にはバーナン鳥が少ないんです。神殿に住むものもまれで、巫女に慣れているバーナン鳥は本当に珍しくて司教様たちも気を使ってしまって…」


「大変だったんですね。でも、元気そうでよかったです」


「最近はレーネ湖に住む他のバーナン鳥も呼んでくれたみたいで、もう1家族居るんですよ」


「それはよかったですね。アルバの方でもお嫁さんとかお婿さん探しが大変で…」


私は残してきた従魔たちの相手探しの大変さを話す。


「アスカ様はやはり素晴らしいですわ。従魔の将来を思っていらっしゃるなんて」


「いえ、その分負担を強いてますから」


「いいえ、大変すばらしい取り組みだと思います。命の尊さを考えているなんて。今度、新しい教会をアルバで考えておりますし、よろしくお願いします」


「アルバにですか?」


「はい。シェルレーネ様の神託によりアルバ所属の巫女、セティ様のことも考えて教会もそれにふさわしいものを建てるのです。それに、ここまでは海を渡った信徒さんには遠いですからね」


「港町の方は?」


「そこだと物流の拠点になってしまって、巡礼の人がずっといるのはと言われまして…」


「でも、アラシェル教と同じ場所に拠点があるんだからアスカもそこを使うといいわよ」


「良いんですか?」


嬉しいけど、一応テルンさんにも確認する。


「大丈夫ですよ。規模的にも神殿扱いの場所になる予定ですし、これまでも神像や神具などの作成に関わっておられる方の祭る聖霊様ですもの。問題ありません」


「ありがとうございます!でも、神具なんて作った覚えは…」


「これですよ」


カレンさんが腕に付けているブレスレットを見せる。あれは前に私がムルムルに頼まれて作ったやつだ。ユニコーンの泪を中央に配したお揃いのものだ。一応、セティちゃんとラーナちゃんはレプリカモデルで同じデザインのものを持っている。


「ムルムルが笑顔で持ち帰ったのを司教様たちが見て、これはデザイン的にもうちにぴったりだと言われてしまって」


「おかげでこの部屋から持ち出す時に許可が必要になったのよ。面倒なんだから…」


「それはなんというか…」


「アスカ、ここはおみやげできげんとる」


「そっか、きちんと用意してあったんだった」


私は旅の途中で作ったものを見せる。


「これは?」


「水の波紋のブレスレットです。ブルーバードの魔石を使ってあってアクアスプラッシュまで使えます。水使いには攻撃が苦手な人も結構いると聞いたので」


「え!?アクアスプラッシュまで使えるの?」


「普通はこの魔石だとアクアボールまでですけれど…」


「そうなんですか?ティタにやってもらってるので私は分からないんです」


「コツがある」


「お、教えて頂いても?」


「ませきくれたら」


「分かりました。すぐに用意しますわ」


テルンさんは直ぐにドアのところまで向かって何か話をする。ティタのやってることって大事なのかな?


「ティタ難しいことなの?」


「わかんない。でも、まものはだいたいやってる」


「でも、広まらないようにはするわ。ティタには簡単でもあの魔石にアクアスプラッシュを込められるのはかなり高名な魔道具師って聞いたことあるもの」


「そうなの?」


「それも、実験か何かでやっただけで大き目の魔石だったんだって。これぐらいで出来るなら神殿には大きいことだわ」


ムルムルの話によるとやはりシェルレーネ教は水使いが多数派なので、こういうものはかなり助かるのだという。


「アスカの読み通りというか、結構攻撃魔法が苦手な人もいるのよね。回復系は治療院にも派遣できるぐらいにいるんだけど、冒険者でいうCランク以上になると特に攻撃が苦手な人が多くなるの。この魔道具は護衛に巫女から貸し出しって形で数を絞って調整するわ」


「そうだ!代わりと言っては何なんだけど…」


「何かあるの?」


「キシャルが氷好きなんだけど、私たちの中に氷を使える人がいないの。魔石に氷の魔法を込めてくれないかな?」


「それならカレンに頼めばいいわ。魔石は持ってるの?」


「うん。ブルースライムの魔石があるの」


「分かりました。キシャルちゃんのためにも頑張りますね」


「こ、氷が作れるぐらいでいいですから」


「頑張るわね」


にゃ~


キシャルは氷が今より楽しめると思ってすでにご機嫌だ。まあ、自分でも出せるように頑張って今の練習も続けて欲しいけどね。


「そうそう。前に持ち帰ったアラシェル様の像だけど全部売れちゃってもうないのよ。次の分をお願いね」


「本当?どんな人が買っていったの?」


「流石に私は立ち会ってないけど、難産になりそうな女性とか新しい信仰を探している人がいたらしいわ」


「そうなんだ。分かった、持ってきてる分はまた渡すね」


「良かったら、時間のある時に祭壇で舞ってあげてくれるかしら。ここも指定場所になっているし、新しく信徒になった人も喜ぶと思うわ」


「分かりました。予定といえば、人と会うんですけど…」


「さっきの冒険仲間?」


「ううん。マディーナさんっていって冒険者の人だよ」


「ひょっとして水使いでAランクの?」


「テルンさんも知ってるんですか?」


「ええ、まあ有名人ですから。シェルレーネ教徒の方でもありますし」


「そうですよね。それで、マディーナさんからも呼ばれていて会うことになってるんです」


「その席にお邪魔してもよろしいですか?」


「大丈夫だと思いますが…」


「良かった。以前より寄付もいただいていて一度会ってみたかったのです」


「そうなんですね。わかりました」


「にしてもアスカの知り合いは豪華よね。その内貴族の知り合いも作りそうだわ」


「あはは…そんなことないわよ」


「何で変な口調になってるのよ」


もう知り合いだなんて言えない。あれから1度だけ会う機会もあったけど、元気かなぁ。フィアルさんも小麦の仕入れ自体は前向きだったし、柔らかいパンが早くみんな食べられるといいな。


「そういえばエスリンさんは元気?」


「エスリン?ああ、そう言えば最初に会ってるんだったわね。夕食の時にでも紹介するわね」


「エスリンってパンを作ってる?」


「そうよ、カレン。アスカに連れられて行った店で学んできたのよ。この前、土産話で言ったパンとかもアスカのお陰で食べられたんだから」


「まあ、それは本当ですか?新しいアイデアをお願いします」


「は、はい」


「ねぇ、ムルムル。カレンさん、なんであんなに食い気味なの?」


私は小声で聞いてみる。


「あの子、甘いのとか好きなのよ。菓子パンって言うの?ああいうのが欲しいらしいの。今は総菜パンが限界だしね」


ああ~、お砂糖高いもんね。後でリュートを呼んで…ここじゃ呼べないか。何か考えないとな。そんなことを考えているとお昼になったので、食堂に向かう。祈りの時間も兼ねているので巫女も見習いと一緒に取るらしい。私、目立ちそうなんだけど。


「アスカ、あきらめる」


「は~い」


ティタに励まされながら私たちは食堂に向かった。



この話を描き終えた瞬間の感想。この章は長くなる…。

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