表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
560/572

新大陸のお食事

 リックさんが連れてきてくれた店は防具を取り扱う店だった。まあ、さっきが武器屋だったし、妥当といえば妥当かも?


「それで、この店は何が売りなんだい?」


「俺的にはツケが利くところか。一式をまとめ買いすることもあるからな」


「他には?」


「他か……耐魔処理を施されたものが多いところだな。効果は微妙ではあるが」


「やれやれ、入る意味があるのかねぇ」


 リックさんの説明に微妙な顔をするジャネットさん。だけど、やっぱり気にはなるようで一番に店に入って行った。


「いらっしゃいませ~」


「各部位のやつはどこだい?」


「それならこちらです。お連れ様はどうしますか?」


「そうだねぇ。リックはともかく、アスカもリュートも全身タイプは不要だろうからあんたたちもこっちだね。じゃあ後でね、リック」


「あ、ああ」


 ジャネットさんの素早い口撃にリックさんも相槌を打つのが精一杯だった。私たちは早速、二手に分かれて物色を始める。


「とは言っても、私もハイロックリザードの防具だから、更新できる部分が少ないんだよね~」


《ピィ!》


 私の言葉にアルナも賛同してくれる。見るとしたら腰アーマーなんだけど、動く時に足が当たるから苦手なんだよね。


「強敵と戦う時にはそんなこと言ってられないかもしれないけど、できればつけたくないなぁ」


「どうしたの?」


「あっ、リュート。私が見るとしたら腰アーマーぐらいだなって思って」


「今でも装備は良いもんね。僕もほとんど見る物がなくて」


 リュートの今の装備も私が魔力を込めた金属鎧だ。半分ぐらいはミスリルが使ってある高級品で、内側にはワイバーンの革が使用されていて、耐魔力もばっちりなのだ。

この鎧を買い替えるなら、相当な出来の物じゃないと意味がない。それこそミスリルのみで作られた鎧とかだろう。


「でも、それっていくらぐらいなんだろう?」


 肩部分はないとはいえ必要な金属量が多い分、金貨二桁では足りないだろう。売ってくれる店を見つけるのもしんどそうだ。


「何を考えてたの?」


「私の装備よりリュートの鎧の方が替えが見つから無さそうだなって」


「まあね。アスカが魔力を込めてくれた物だし、全身でバランスが考えられてるから、一部を入れ替えても動きにくくなるだけだしね」


「そういう部分もあるんだね」


「お二人さん。喋るだけじゃなくて見ていきなよ。別に鎧以外もあるよ」


「あっ、は~い」


 ジャネットさんの言葉通り、ネックレスや小型の盾など動きを阻害しないようなものも売っていたので、そっちを中心に見てみる。


「あっ、これ可愛い~」


「アスカ。これはアクセサリーじゃなくて、実用品だから」


「そ、そうだった。効果を確認しなきゃね」


《にゃ~》


 珍しく私についているキシャルが呆れた顔で鳴き声を上げる。


「こういうこともたまにはあるよ。それで効果は何かな?」


 改めて効果を確認してみると、水属性専用の魔石が使われていた。


「残念だけど私には使えないなぁ。あっ、でも……」


 もう一度、このネックレスの値段を確認すると、店員さんに言って包んでもらう。


「あれ? アスカそれ買うんだ」


「うん。いいお土産になるかなって」


その後も三人で色々と見て回ったものの、やっぱり小物類だけではそこまで良い物がなかった。なかったというよりも値段を見ると、自分で魔石を用意して作った方が良い物になるのだ。


「そう考えると、職人さんの部分が占める割合も大きいよね」


 魔道具への加工だけじゃなくてデザイン料も本来はかかるんだろうし。そう考えると自分でできる私はお得だ。改めてこれだけの才能をくれたアラシェル様には感謝だ。


「アスカ、もう見る物はないかい?」


「はい、大丈夫です。リックさんの方は?」


「俺の方も大丈夫だ。前金は必要だったが良い物が買えたよ」


「リックさんっていい装備を付けてる割りに、剣とか防具とか買ってますよね?  そんなに多くのお土産がいるんですか?」


「まあ、あるだけあればって感じだな」


 にやりと笑みを浮かべながら答えるリックさん。ちょっと気障ったらしいかも。


「次は昼飯だろ。どこへ行くんだい?」


「おっと、そうだったな。今日は予約が間に合わなかったから通りの店じゃないぞ」


 そう言うとリックさんは大通りから外れて、小路を進んでいった。


「ここがそうだ」


「肉の店ミーティア。肉とナイフとフォークが看板なんですね」


「そうだ。野菜メニューはなくて思い切った店だぞ」


《ピィ?》


「アルナには私がご飯出してあげる」


 母親のミネルは美味しければ何でも食べる小鳥だったけど、アルナはどちらかと言うと野菜好きだからね。美味しいお肉の日でもあまり興味がない日もあるぐらいだし。


「それじゃあ、入るぞ」


 店に入るとレンガ造りの内装がお目見えだ。テーブルやイスとかも茶系や赤茶系で統一された趣のあるレストランだ。


「ここって高いんですか?」


 これだけの店構えだとお値段もそれなりにするのではないだろうかと思い、リックさんに尋ねてみた。


「アスカが思っているほどではない。安いかといえば安くはないが」


「えらく濁すじゃないか」


「気のせいだ」


 ジャネットさんの指摘にも軽く流すリックさんだけど、メニューを見ても値段が載っていない。値段を気にするのは野暮だということなんだろうけど、ちょっと怖い。


「そう構えないでくれ。今日のところは俺が支払うから」


「良いんですか? さっきの防具屋さんでも結構買われてましたけど……」


「ああ。あれなら大丈夫だ。最終的には支払った前金も俺に返ってくるからな」


「そういうことなら、僕も一枚肉を頼もうかな?」


「リュートってば食べ切れるの? 説明にも通常より大きいって書いてあるけど」


「大丈夫だよ。夕食まで時間もあるし、多少なら食べ過ぎても平気だから」


「だったらいいけど……」


 こうしてみんなメニューを決めたら注文をする。注文も店員さんを呼ぶのはベルで本格的だ。


「お待たせいたしました」


 十数分後、店員さんがカートに乗せて料理を運んできた。


「こちらのBIGステーキは?」


「それはあたしとリュート……そっちのやつだ」


「かしこまりました。ジュムーアとヒュージクックのツインステーキの方は?」


「あっ、それは私です」


「最後にこちらがジュムーア詰め合わせでございます。まだ片面しか焼けておりませんので、お好みの焼き加減でお楽しみください」


「ありがとう」


「では、お飲み物はこちらに置いておきますので、どうぞごゆっくり」


 店員さんが下がると早速みんなで食べ始める。


「「「「いただきます」」」」


「それにしてもリック。そんなメニューがあったんだね。メニューを見ても分からなかったよ」


「ああ。肉料理専門ということで、BIGステーキ系に目が行きがちだが、タンから内臓まで多くの種類を食べられるこっちも人気なんだ」


「そういう説明は店に入る前にしなよ」


「なんだ、ジャネットはお気に入りの部位でもあったのか?」


「そういうわけじゃないけど、そっちの方が面白そうだろ?」


「気に入った物があれば言うといい。別に一枚ずつでもないしな」


 リックさんの言葉通り、熱い鉄板には様々な部位が複数枚ずつ並んでいる。厚切りにすることで焼き加減を調節しているんだと思ったけど、それ以外にも枚数を並べてお得感を出しているみたいだ。


「じゃあ、焼けたら言ってくれよ」


「了解した」


《ピィ》


「はいはい。アルナにはこっちがあるから」


 どうやらお気に召す肉がなかったようで、アルナには特製のハーブご飯をあげる。


「美味しい? お代わりが欲しかったら言ってね」


 私はアルナにそう伝えると、自分の分を切り分けて小さいお皿に移す。


「はい、キシャル。熱いから気を付けてね」


《にゃ~》


 全体の三分の一をお皿に盛って置くと、キシャルは早速氷魔法で冷まして食べ始めた。味付けも気に入ったみたいでどんどん食べ進めている。


「私も食べよう!」


 まずはヒュージクックの肉から口に含む。こっちは卵を食べたことはあったけど、肉はほとんど食べてないから新鮮味がある。前に食べた時はリュートに作ってもらったから、店で食べるのは初めてかも?


「ん、ん~! 思っていたより柔らかくて美味しい!!」


 ヒュージクックは大きい鶏みたいな鳥だから、もっと筋肉質で硬い肉を想像していたけど、脂もそれなりにあって美味しい。味も濃いし、これは部位の差かな?


「アスカ、美味しいかい?」


「とっても美味しいですよ! ジャネットさんの方はどうですか?」


「こっちも美味いよ。量もあるしねぇ」


 そういうジャネットさんとリュートのお皿には500gはありそうな巨大な肉がどどんと乗っていた。厚みもさることながら野菜がないせいか、本当に多そうだ。


「こんなに厚切りなのにちゃんと火も通ってますし、良い肉ですね」


「人に紹介できるぐらいにはな。気に入ってもらえて何よりだ。ジャネット、大体は焼けたぞ」


「本当かい? なら、適当につまませてもらうよ」


「ああ」



 こうして街行き一日目は大成功?の内に終わった。さすがに私たちだけ良い物を食べるのは悪いので、帰った後でティタにも魔石をあげた。


「そうだ。ティタ、これあげるよ」


「こちらは?」


「今日は買い物に行ってきたからお土産。ディソシルスっていう魔物の魔石が付いたネックレスだよ」


「ありがとうございます」


「それでね、ティタにお願いがあるんだけど……」


「どうかされましたか、ご主人様?」


「今日行った武器屋で見慣れない魔石があったんだけど、使えるかどうか分からなかったんだ。だから、明日一緒に行ってくれない?」


「私は構いませんよ。では、時間になりましたら声をかけて下さいませ」


「は~い」


 ティタにも話せたことだし、私は明日に向けて準備を整えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>「こんなに厚切りなのにちゃんと火も通ってますし、良い肉ですね」 >「人に紹介できるぐらいにはな。気に入ってもらえて何よりだ。ジャネット、大体は焼けたぞ」  電子レンジみたいな、入れたものの中心から…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ