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お買い物一軒目

「今日は晴れてて良かったですね」


「ああ、それで最初は武器屋からだっけ?」


「はいっ!」


 私は元気よく返事をすると部屋を出て先頭を行く。


「アスカはご機嫌だね」


「リュート、久し振りに落ち着いて買い物が出来るんだよ? セリアレアじゃ色々あったから結局ろくに買い物もできなかったし」


 妖精誘拐事件の後は町全体の調査もそうだけど、安全のためと言われてほぼ邸生活だったしね。今度こそ港町の空気とか交易品を見て回らないと!


「ところでアスカは地図を持っているのか?」


「持っていませんけど、どうしたんですか?」


 リックさんも行きたいところがあるのかな?


「いや、店の位置などがアスカに分かるのかと思ってな。初めての町だろう?」


「あっ⁉」


 リックさんに言われて気づいた私は先頭をリックさんに譲る。うんうん、やっぱり町案内は詳しい人に任せるべきだよね。


「アスカ……」


「あんたって子は」


《ピィ》


 みんなの視線を感じつつ、後ろに下がって道案内をして貰う。


「私の味方はキシャルだけだよ。ね~」


《にゃ?》


 私の言うことを聞く気があるのか、キシャルは首をかしげ軽く返事をする。これが四面楚歌というやつだろうか?


「ほら、考えごともいいけど遅れちまうよ」


「あっ、待ってくださいよ!」


 みんなに置いて行かれないように小走りで合流する。とりあえず、今日は買い物を楽しもう!



「んで、こんな通りを外れた武器屋に来たわけかい?」


「まあそう言うな。ここはここでいい場所だぞ」


 着いた先はいきなりの大通りを外れた武器屋だった。ジャネットさんの言う通り、こういう場所は大通りのメジャーな武器屋を見た後で来るところな気がする。


「でも、この槍とかいい感じですよ? いてっ!」


「リュートったら馬鹿だなぁ。他の槍を褒めたら魔槍が怒るだけなのに」


 リュートが持ってる魔槍は自我が強い武器だからそう簡単には他の武器を使わせてくれない。今までに認めたのは自分と被らないナギナタと、サブウェポンとして投げナイフぐらいだ。どうやらここに置いてある槍も魔槍のお眼鏡にはかなわなかったみたいだ。


「私は魔石でも見ようかな~」


 私は私で今使っている杖にも弓にも変わるものはないので、早々に魔石が置いてあるエリアへと向かう。


「何かいい魔石はないかな~」


 新天地ということで期待を込めて魔石を見ていく。ちょっと店も小さいし、どうかなと思っていたけど結構ラインナップは豊富だ。ただ、ここでも海魔の魔石はほとんどなかった。


「やっぱり相手が海の中にいると手に入りにくいんだろうなぁ」


 と、そこまで考えてふと思う。ひょっとしたら海底には大量の海魔の魔石が落ちていたりするんだろうか?


「ひょっとしたら大金持ちになれるかも?」


「何が大金持ちなの?」


「あっ、何でもないよ。リュートはもう見る物ないの?」


「うん。投擲用のナイフもそんなに良い物はなかったし、アスカは何見てるのかなって思って。良いのはあった?」


「うん。この魔石とか良さそうなんだ」


 そう言って私が指さしたのはハイティアーウィングの魔石だ。名前の通り風系統の魔物らしく、主な攻撃方法は硬くて鋭い翼での切り裂き攻撃と書いてある。魔石の効果はもちろん体当たりではなく、高速で空中を飛べるというものだ。ただ、ひとつだけ気になる点がある。


「高速で空が飛べるし、汎用魔石なのに価格が金貨三枚なんだよね。リュートも飛べるなら分かると思うけど、便利なはずなんだよ」


 普通に考えれば安くとも金貨五枚が妥当だと思う。この大陸ではメジャーな魔物で数が出るとかかな?


「何かお探しですか?」


「あっ、この魔石なんですけど、値段が安いのが気になってまして……」


 リュートと話しているとちょうど店員さんが話しかけてきてくれたので、魔石のことを聞いてみる。


「こちらですね。この魔石はここから北に行った平原に住む鳥の魔物の物です。価格が安いのは効果が少々使いづらいためです。使用者の魔力に応じた出力になるんですよ」


「使用者に応じた? じゃあ、魔力が高い人だと速いんですか?」


「はい。似たような魔石でファルバードという魔石があるのですが、あちらは魔石の大きさで調整が効きますが、こちらは関係ないんですよ」


 なるほど、私もファルバードの魔石を使った魔道具を作ったことはあるけど、あれは魔石のサイズさえ合えば対の物も作れるけど、この魔石だとそういう調整が効かないのか。


「ん?」


「どうしたの、アスカ?」


 そこまで考えて私はふと疑問に思った。じゃあ、このハイティアーウィングの魔石って大きさは関係ないのでは?


「えっと、じゃあこの魔石の大きさって何でもいいんですか?」


「それがですね。大きいものほど高出力に耐えられるのはもちろんのこと、使える回数にも影響してきまして……」


「えっ、じゃあこのサイズの魔石だとどれぐらい使えますか?」


 私は飾られていた魔石を指差す。見た感じでは普通より少し小ぶりな魔石だ。


「こちらですと十回程度ですね。魔力限界は100に届かないぐらいでしょうか?」


「少ないですね」


 つい本音が漏れてしまう。繰り返し使える魔石も多い中、効果が限定的な上に回数制限まであるなんてさすがに私も買えないかな。


「アスカどうするの?」


「う~ん、さすがにこの効果じゃね。他には何かありますか?」


「お勧めはこちらの棚になります。どの属性が欲しいなどのご希望はありますか?」


「一番は風と火の属性なんですけど、他にも水とか光の魔石はありますか?」


「少々お待ちください」


 店員さんは一度席を外すと、鍵を持って来て棚の中に飾られている魔石をいくつか取り出してくれた。こちらの棚には説明書きもないから直接見せてくれるのは助かる。


「まずは火の魔石からご説明いたします。こちらはマグマロックの魔石です。メルテート帝国を代表するメルテート火山に住む魔物の魔石となっており、効果も特殊です」


「特殊?」


「はい。こちらの魔石は魔法を込めることができない代わりに魔力陣を形成し、次に使う魔法をブーストしてくれるのです」


「おおっ、それはすごいですね! ちなみにおいくらですか?」


 火の魔石は水の魔石と並んで高額常連だけど、これなら買いたいかも。希望を胸に私は店員さんに値段を聞いてみる。


「こちらは金貨三十枚となっております」


「さ、三十枚……。それぐらいしますよね」


「申し訳ございません。この魔物自体、メルテート火山固有の魔物でして、魔石の取引にも制限があるのです。これでもお安くなっているんです」


「確かにそう言われると安いですね」


 火の魔石でも汎用魔石は金貨十枚ぐらいからだ。この魔石は火の魔力を高める魔力陣を作り出すから、実質専用魔石だろう。効果も火の魔法を使う人なら欲しがるに違いない。


「アスカ、買うの?」


「う~ん、欲しいんだけど効果がどれぐらいあるか分からないからなぁ」


 ここにティタ先生がいれば教えてくれたんだろうけど、今日も宿でお留守番中だし。私が色々と考えを巡らせていると、小声でリュートが話しかけてきた。


「明日にでもこっそりティタを連れて来てみる?」


「そうしようっかな。効果的には良さそうだし。この魔石はちょっと考えてみます。他の魔石をお願いします」


「かしこまりました。こちらが風属性の魔石になります」


 そう言ってお姉さんが見せてくれたのはファモーゼルの魔石だった。風専用とはいえ高位の魔石を買えるなんて。


「この魔石の在庫はいくつありますか?」


「申し訳ございません。こちら最近人気でして、個数制限をしております」


「分かりました」


 こっちの大陸でもバリアの魔道具が流行っていて、高位魔石でもそれなりに安いこの魔石の人気が上がっているのだという。店として売れるのは嬉しいけど、買い占めや在庫不足にならないようにどの店も調整しているのだとか。

 とりあえず一つ買っておく。他にも色々買いたい物が出るだろうし、最初だから我慢しないとね。私はファモーゼルの魔石を始め、いくつかの魔石を買うとジャネットさんたちと合流した。



「そんで、いい魔石はあったのかい?」


 次の店を目指しながらジャネットさんと武器屋での話をする。


「そうですね。ただ、私じゃ良く分からない魔石もあったので、明日にでもティタと一緒に来てみます」


「分からない? 店のやつに説明してもらわなかったのかい?」


「説明は受けたんですけど、踏ん切りがつかなくて」


 私はマグマロックの魔石についてジャネットさんにも説明する。


「ふ~ん、効果だけなら良さそうだね。ティタを連れて行くならあたしも行って良いかい?」


「もちろんです! ジャネットさんも気になるものがあったんですか?」


「ああ。ただ、付与されている魔法が分からなくてね。もしかしたらってね」


 なるほど、ティタは魔石だけでなく魔法自体にも詳しいから聞きたいんだ。う~ん、これは町にいる間は連れ歩いた方が良いのかも?


「アスカ、次の店に着いたぞ」


「あっ、は~い」


 考えごとをしているうちに目的地へ着いたみたいで、私たちはリックさんお勧めの次なる店へと辿り着いた。




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― 新着の感想 ―
>「アスカはご機嫌だね」 >「リュート、久し振りに落ち着いてかい斧が出来るんだよ?  久し振りに落ち着いてかい斧が出来る で悩んで、アスカがでかい斧を鍛冶屋に発注したのかな? なんて変な方向に飛んで…
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