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第2中継都市

「ふぅ~ん、ここがゴッツォねぇ~」


あれからは特に何事もなく町に着いた私たち。町ではあるものの、賑わいはそこまでではない。ここから1日の距離には大河があり、そこには宿場町もあるのだが、その町は王都-ラスツィア間の中間地でそこからわき道にそれるこの町にはあまり商隊も来ないらしい。中央神殿に行くにも王都に戻ってからの方が良い道もあるので、それも影響しているのだ。


「まずは宿だね。従魔の泊まれる宿を探すか」


「そうですね。ちょっと高くてもいいですけど、ちゃんとしたところがいいです」


しかし、そもそも他の都市からの人の流入が少ない街だけあって、そういう宿は中々見つからない。何とか、1人大銅貨3枚で1室借りることが出来た。


「ふ~、疲れましたねぇ」


「そうだね。全く、大したサイズでもないのに警戒心だけ強いんだから」


「僕もびっくりしましたよ」


キシャルは40cmぐらいの魔物だ。ティタよりちょっと大きいだけだけど、鋭い爪と牙で3か所は断られた。


「こんなにかわいいのに。ね~」


んにゃ~


とりあえず、部屋番にティタを置いて街中を見学する。


「通りは結構なんでもあるみたいだ。鍛冶屋に武器屋に果物屋、雑多だね」


「商人もそんなに来るわけじゃないみたいだし、町で完結できるようになってるんだろうね。村がそのまま大きくなった感じだね」


そんな話をしながらちょっと食料を買い付けたり、ギルドで解体した素材を売ったりした。ここは中継で来ただけなのでまた明日の朝には出発するからだ。


「そういえば、アスカ。本屋に行きたいって言ってなかったっけ?」


「そうだった!のぞかないと」


買い物がひと段落して本屋に向かう。


「いらっしゃいませ」


「こんにちわ~。ペット用の本とかありますか?」


「ペット?鳥とか?」


「あっ、いえ…」


うう~ん。知り合いの本屋さんじゃないし、本は奥にしまわれてるから伝えにくいなぁ。特にこういう一見の場合だと高い本はまず見せてもらえない。一番私が困るところかもしれない。


「あっ、じゃあ、奥を見てみますか?」


「えっと、良いんですか?」


「はい。この店も父がやっていたんですが、私は店を継いだばかりでよくわからないんです。一応値段はリストがあるので、わかるんですけど…」


ありがたい申し出だけど、大丈夫かなこの店。まあ、せっかくなので奥に入れてもらう。


「ん~、これかな?後は…ん?古い本だなぁこれ」


「あっ、それですか?私じゃ何書いてあるかわからないんです。値札は読めるんですけどね!」


まあ、値札はこの人のお父さんが書いたものだろうしね。よく見るとこの本はガザル帝国の本のようだ。


「ええっと、帝国貴族の構え方」


マナーというか貴族のあり方について書かれた本らしい。庶民の生活を知るためにもちょっとあった方がいい、当時を知る資料になりそうだな。


「こっちの本はいくらですか?」


「これですか?銀貨1枚ですけど、あなた読めるの?」


「ちょっとだけですけど」


「へ~、学者さんなの?小さいのにすごいわね」


合わせて2冊の本を買って銀貨1枚と大銅貨4枚だった。


「後はこれを元に材料をそろえるだけだ」


店で薬剤とキシャルが好きそうなハーブを買って帰る。後はこれを希釈してスプレーするだけだ。お風呂も嫌がらなかったし、定期的に入れてあげよう。適当に食事もとって就寝する。


「みんなおやすみ~」


「おやすみ、アスカ」


そして翌日。


「さあ、出発するよ。今日は東に進んでアサルセナに向かうからね」


朝一、町を出るとひたすら東に進んでいく。途中で南側の山に当たったので、そこを北上して再び東へ。南北にある森の間を縫うように整備された道を進んでいくとアサルセナだ。


「うん、まあそうだよね。知ってた。アルバでもそうだったもん」


当然、南北の森には大量に魔物が住んでいる訳で…。


「昨日、ゴッツォでも聞いただろ?アサルセナ行の街道はまず魔物に出会うって」


そうなのだ。だから、今日は討伐依頼も受けている。それぐらいには魔物との遭遇率の高いルートなんだ。これもあって、ゴッツォは人気がない。これさえなければゴッツォからアサルセナを経由して、中央神殿に行くことも簡単に出来るんだけど、魔物に遭うせいで護衛費用がかさむのためみんな利用しないのだ。


「アスカ、あまり言いたくないのだけど両方から来ている?」


「うん。南はオーガ、北はオークだね。数は5体と7体どうします、ジャネットさん?」


「あたしがオーガって言いたいところだけど、ちょっと面倒だね。オークは引き受けたから、ティタをその木の上においてくれ。んで、援護頼む。あたしは横から切り込んで乱戦に持ち込むから」


ジャネットさん曰く、これだけいれば1体ぐらいはどっちにも弓使いがいるだろうとのこと。それも考えて、オークの方は乱戦で使えなくして、オーガの方は盾持ちリュートと魔法が使える私が対応するということになった。


「それじゃあ、ティタ。ジャネットさんをお願いね」


「わかった」


「リュート、私が的になるからその木の陰に」


「OK。でも、注意してよ」


「もちろん!」


私は直ぐに隠れられるように腰ぐらいまでの高さのアースウォールを作り、そこから身を乗り出す。さらに、ウィンドバリアを張って、待ち構える。


「よしっ!来なさい!」


オーガを待ち構えたところにとうとうやって来た。


ガアァァァァー


数は探知の通り5体だ。そして、ジャネットさんの予想通り、オーガの中にもアーチャーがいた。


キンッ


バリアに矢が当たって弾かれる。


「うわっ、もう嫌だなぁ~。ウィンドカッター!」


向こうに気づかせたので、低い壁を高くした後は魔法で攻撃する。倒すことよりも私に意識を集中させることが目的だ。ウィンドカッターで木を倒しながら攻撃するも、受けた傷をものともせずオーガたちはこっちへ向かってくる。


「ここまで接近されればいいかな?」


壁の向こうから退避してちょっと距離を置く。多分このままだとアースウォールを破ってくるからね。一気に向かって来た4体がすぐに壁を壊す。


「今だよ!」


合図を送るとリュートが奥にいるアーチャーに向かっていく。作戦は2通りあって、アーチャーがいる時はひきつけた私が近接職を相手にして、リュートがアーチャーを。いない時はリュートが側面を突き、混乱した相手を私が倒す作戦だ。


「気を付けて!」


「リュートも」


一瞬、後ろを向いたオーガに私は容赦なく魔法を撃つ。さらに、こちらに向かおうとしたところで、アルナの魔法が空から襲う。


「この位置なら!」


普段森近くでは火の魔法は危険すぎて使わないけど、街道まで出てきている今ならいける。そう思って近寄ってきた魔物に火の玉をぶつけていく。


「よしっ、こっちは大丈夫だね。奥は…」


当然、弓兵との接近戦だったのでリュートは難なく倒し、残りのオーガを後方から倒している。私はアルナとキシャルに見張りを頼んでジャネットさんの方に向かう。


「流石はジャネットさん」


こっちは危なげないと思っていたけど、1対7だった(ティタも居るけど)のにもう決着だ。遠距離がないから全部の敵と切り結んだにしてはかなり早い。


「おや、こっちに来るなんて余裕だねぇ。もう一人は?」


「リュートはとどめと確認です。大丈夫でした?」


「ああ。時たまティタが魔法を使ってくれたし、問題ないよ」


そして、今日も解体タイムだ。まずはオークの処理からだ。それが終わったらオーガに移る。オーガの方はわざと街道沿いに臭いが漏れるように埋める。この辺で一番強い魔物なので、こうすればしばらくは近寄らないだろう。


「しかし、中々の数だったね」


「それにタイミングもばっちりでしたし。まさか両方向からとは…」


「ほんとだよね~。でも、みんなも居たし助かったよ」


ピィ


んにゃ~


作業も終わって再び歩き始める。この森だといい薬草も生えていそうだけど流石に寄る余裕はない。


「ああ~、もったいない」


「どうしたのアスカ?」


「ううん。この辺の森だと薬草多そうだなって」


「ああ。それはそうかもね。簡単には採りに行けそうにないけど」


「そうですね~。見張りどころか森に入るのも難しそうです」


さっきみたいにいつ何時襲われるか分からない危険を冒してまで、薬草を採りに入るってこと自体が難しそうだ。もし、やっているパーティーがあるとしたらかなり、採ること自体が上手い人たちだろう。そこからしばらく歩いて何とか、日が暮れるまでにはアサルセナに着いたのだった。


「こっちはゴッツォよりにぎわってますね」


「まあここから中央神殿までは魔物も少ないし、そこから北上する時に通る大草原で魔物に出会わないとそこそこ安全だからね」


「へ~、流石ジャネットさん!物知りですね」


「そ、そうかい?まあ、冒険者の常識ってやつさ」


とはいえ、このアサルセナにも泊まるのは一日だけ。明日には出発だ。目的地の中央神殿までの道でなければ数日滞在したいんだけどね。


「マディーナさんへの手紙にも到着日を書いたし、しょうがない」


それに早くムルムルにも会いたいしね。ギルドに行って、肉とか素材とかを売って食事だけ取る。宿は飛び込みで安宿だ。


「私、こんなに安い宿初めてですよ」


「そうかい?あたしはそこそこ使ったね」


「僕は昔住んでいたよ」


何と泊まりで1室、大銅貨2枚半。しかも従魔の料金も無しだ。まあ、ベッドも毛布もないんだけどね。


「こうやって室内でテントを張るなんて新鮮かも」


サンダーバードたちを迎えた時ぐらいだったかな?


こうして予定通り、中継都市2つ目での日々を終えて私たちは眠りについたのだった。




超絶進むの早くないですか?(当社比)これが秘められた力という奴ですかね?


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