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セリアレアへの道

「アルナ~、キシャル~お待たせ!」


 食事も済ませて、お土産の食事を買って帰った。さあ、二人はどうしてるかな?


 ピィ!


 にゃ~!


 二人とも待っててくれたみたいだ。


「じゃあ、このテーブルに置いていくから食べてね。ティタ、いない間はどうだった?」


「何ごともありませんでした」


「ありがとう」


 ティタはテレパシーのようなことができるから、大丈夫だったとは思うけど確認はしておく。ティタといえば……。


「そうそう、ついでに魔石みたいなのが売ってたからこれ食べる?」


「いただきます」


 私の言葉を聞き終わるとすぐにティタは石を手に取る。そして眺めたあとはいつもと同じように口に運んだ。


「どう、おいしい?」


「……」


 返事がない。どうやらおいしいようだ。ティタはまだ気づいていないみたいだけど、好みの石を食べてる時は無言なんだよね。本人に言ったら気にすると思うから言わないけどね。


「ジャネットさん、明日は早くに出ますか?」


「う~ん、そのことなんだけどねぇ。早くに出たら昼過ぎには着いちまうだろ?」


「そうですね。残りの距離は半日ぐらいですし、余裕がありますね」


「だから、ちょっと出てる間にリックとも話したんだけど、遅めに出ようかって思ってね」


「遅めに?」


 どうしてそんなことするんだろう? 早く出て早く着いた方が休めると思うけど……。


「ほら、アウロラの目的が結局まだ分かってないだろ?動くんなら夜だと思ってね」


「あっ、そっちですか。ジャネットさんも気にかけてくれてたんですね。ありがとうございます」


 私は嬉しくなってジャネットさんに抱き着く。


「こらっ。全くもうこの子は……。変なことされたらあたしらにも迷惑がかかるからだよ」


「は~い」


「後は到着する目安の時間をどうするかだ。あまりに遅いと俺たちも入場で手間取る」


「そうですね。一七時を目途にしますか?」


「そのくらいかねぇ」


 明日の予定が決まっていく。なんだかんだみんなアウロラちゃんのことを心配してくれてて嬉しいな。


「あっ、でも町に着いたあとでもし見失っちゃったらどうしましょう?」


「そんなのティタに任せりゃ…」


「すみません。私ではアウロラを探知できません」


「この間、行動を一緒にしてたけど難しそうかい?」


「はい。どうにも魔力の扱いに関しては私では敵いそうにもなく……」


「ティタが敵わないなんて相当だね」


「うるさいわね」


 リュートの指摘にティタはお怒りだ。でも、ティタが敵わないっていうのは本当に初めてかも。それにちょっと会っただけじゃなくて、もうかなり一緒にいる相手なのに。


「ですが、ご主人様ならいけるかもしれません」


「私?」


「はい。どうもアウロラはご主人様の動きに敏感なようです。色々話を聞いていましたが扉の前まで来るとすでにいるのですよね?」


「あっ、うん。何度かそういうことがあったよ」


「では、向こうは探知できる訳ですから、その魔力を捉えることが出来ればご主人様なら探知できると思われます。魔力では上ですし」


 ティタのその言葉で一斉にみんなの視線がこっちに向く。


「ううっ、その期待のまなざしがつらい」


「でも、ティタの言う通り、この中で探知できそうなのってアスカ以外いないんだし、頑張んなよ」


「……はい」


 自信はないけど、やらないといけなくなるかもしれない。私はそう心に刻んでその日を過ごした。



「おはよう」


「おはようアスカ。今日はのんびりしてていいのに……」


「あっ、そういえば出発の時間遅いんだった。じゃあ、もう一度……」


 朝起きるという日課は達成したので私はそのまま眠りにつく。



「アスカ本当に寝ちゃいましたね。いいんですか?」


「ちょうどだろ? アスカが気持ちよさそうに寝てて出発が遅れたって言う方がアウロラのやつも納得するさ」


 遅く出発する理由を探すのも面倒だったしちょうどいいと思って、あたしはリュートに返事をする。


「そうだな。その間、少し手入れでもしておくか。何ごともなければいいが」


「変なこと言うなよ、リック。本当にどうにかなったら責任とれるんだろうね?」


 水の巫女様と一緒の時も色々巻き込まれたし、あんまり騒動になるのは御免だよ。


「相手によるな。それより、本当に目的が分からないのが気になるな。船にも乗らないのだろう? 港町に何があるのか」


「港町ねぇ」


 港町でパッと思いつくのは交易品なんかだけど、飾りっ気もないアウロラには不要だろうし、誰か相手がいるのかね? 私は周辺の地理を確認するために地図を開く。


「この辺りは……へぇ~、重要な港町だけあって伯爵様の領地なんだねぇ」


「ん? ああ。港町なら妥当だな。それにアダマスは一国当たりの面積が小さいから、結構な爵位だな。街の賑わいもあるし、統治に問題はないと思うのだが…」


「あれ? リックさんってセリアレアへ行ったことあるんですか?」


「行ったというか、俺の国からこの大陸へは最寄りの港だ。だから、着いたことがあるというのが正しいな。その時はそのまま帰る予定だったから他の町は見れなかったが」


「貴族のボンボンは違うねぇ」


「ははは、しがない騎士だがね」


「どうだか」


 リックもアスカほどじゃないだろうけど、神官騎士達のような育ちの良さを感じる。あっちも騎士家の出身者だけじゃなくて、男爵とか子爵の人間もいたからそっち側の気がするんだよねぇ。


「ま、いつか言うだろ」


「そうだな。本人が言うのが一番だな」


 何か勘違いをしているリックは置いといて、あたし達はアスカが起きるまでゆっくり過ごした。




「アスカ、そろそろ起きな~」


「うん? ジャネットさん」


「そうだよ。そろそろ流石に起きてくれないと、今日中にセリアレアに着かないからねぇ」


「起きます」


 私はまだ重たい瞼をこすりながら体を起こす。


「リュートたちは?」


「先にもう下で待ってるよ。着替えたら合流して広場でなんか食いもん買って出発だ」


「は~い」


 私は会話の内容を半分ほど頭に入れつつ着替える。


「あっ、キシャル。テーブルで寝てたら置いてかれちゃうよ」


 にゃ~


 私と同様にまだ眠そうなキシャルを頭に乗せて下に降りる。待合テーブルには既にアウロラちゃんを含め全員が揃っていた。


「お待たせしました」


「ああ、もう大丈夫か?」


「まだちょっと眠たいけど大丈夫です」


「疲れていたんですね。もう少し寝ていても……」


「心配してくれてありがとう、アウロラちゃん。でも、今日中にセリアレアに着きたいし、大丈夫だよ」


 ということで、出発前の確認を済ませたら町を出る。



「せっかくですし、海に出てから港町に行きます?」


 まだ暑い時期だし、涼みながらと思って提案してみる。


「別に構わないが手前は森だぞ?」


「あっ、本当ですね。これじゃあ、ちょっと難しいですね」


 海沿いを電車から眺めるなんて贅沢な風景だったんだなと思いながら、私たちは仕方なく街道を進んでいく。


「ん? この反応は」


「アスカ、どうしたんだい?」


「魔物ですね。数は五体でオーガとウォーオーガのようです」


「そりゃあ、ちょっと面倒だね。気を抜かずに行くよ!」


「はいっ!」


 まずは私が魔力をあえて流して、オーガたちの注意を引きつける。その反対側にジャネットさんとリックさんが回り込む。こっちはリュートが先頭でその後ろに私とアウロラちゃんだ。キシャルは私の頭の上(寝てる)ティタは探知要因としてジャネットさんの方について行った。アルナは私の肩に乗っていて、いつでも追加で攻撃できる布陣だ。


 ガァァァァ


 一帯にオーガの咆哮が響き渡る。どうやらこちらを見つけてくれたようだ。


「リュート、どう?」


「前方に姿が見えたよ。気を付けて」


「分かった。アウロラちゃん、準備はいい?」


「はい。一瞬で凍らせてやります」


 アウロラちゃんもやる気のようだ。あとはオーガたちが姿を現すのを待つだけ。


 ガァ!


「来たっ! 行くよ!!」


「はいっ!」


「嵐よ、敵の動きを止めて! ストーム」


「凍れる風よ、全てを包み込みなさい」


 ウォーオーガを先頭に左右とさらにその後ろを固めて来たオーガたちの動きを止めるため、まずは私が風の魔法を放つ。そうして相手が風に立ち向かっている間に、アウロラちゃんが魔法でオーガたちを凍らせていく。


「貰った!」


 動きが止まればいくら力自慢のオーガといっても容易い。左側から回り込んでいたジャネットさんとリックさんがすかさず斬り捨てていく。


「僕も!」


 最後に残ったウォーオーガ目がけてリュートが魔槍を投げて戦いは終わった。


「ん~、角の大きい個体ですね。この辺りを荒らしていたんでしょうか?」


「多分ね。角と牙だけ獲ったら埋めるよ」


「はい」


 ウォーオーガはこの辺でも強い魔物だけど、埋めていく。オーガ種は強い相手にもひるまないから、血の匂いに寄ってくるためだ。これが他の魔物だったら近づいてこないんだけどね。


「街道近くで出た以上は埋めないとねぇ。おっと、そろそろ昼にするか」


「そうですね」


 町を出る前に屋台で買っておいたご飯を取り出してみんなで昼食を食べる。やっぱり青空の元での食事はいつでも美味しいなぁ。





ウォーオーガたちの戦闘陣形はアマゾンストライクを思い浮かべて頂ければと思います。

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