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成果無く

「アスカ、ここにするか?」


「そうですね。これ以上見ても変わらない気がします」


時刻はお昼過ぎ。私たちは宿をいくつか見ていったが、どこも外観は変わらなかった。ミルカリス王国の首都といっても街の規模はアルバより少し広いぐらい。あとは、そこに王宮などがくっついているだけなので貴族街がある分、狭く感じるかも。そんなわけで宿のグレードも似たりよったりなのだ。


「じゃあ、ここにするよ」


ジャネットさんも面倒くさくなったのか、リックさんの指差したところに決めたようだ。


「はい。お昼も過ぎてますし、荷物だけ置いたらすぐに出ましょう」


この時間なら宿泊客用の分は置いてないから、どうせならレストランで食べたい。そう思ってチェックインを済ませた。


「いらっしゃいませ、宿泊ですか?」


「ああ、一泊だけ。飯は付いてるか知らないけどいらないよ。何人部屋まであるんだい?」


「うちでは四人部屋までとなっております。一部屋銀貨一枚になります。おひとり様ですと大銅貨三枚、お二人の部屋ですと大銅貨6枚です」


「う~ん、どうしようかねぇ…アウロラは一人がいいか?アスカと一緒がいいかい?」


「私?一人でいい」


「そうか。なら、四人部屋一つと一人部屋一つで」


「かしこまりました。カギはこちらです」


「ありがとよ」


私たちはカギを受け取るとすぐに部屋に荷物大きに行く。


「ん~、広くも狭くもなく。当たり障りのない部屋だねぇ」


「まあ、外れじゃなくてよかったじゃないか」


「リックさんの言う通りですよ。もう支払いも済ませちゃいましたし」


「ま、そういうことにしておくか。荷物は…悪いけどティタ見といてくれ」


「かしこまりました」


「じゃあ、ここにご飯は置いておくね。食べてるところだけ見られないように注意して」


「分かりました、ご主人様」


いつものようにティタに荷物の見張りを頼み、私たちは部屋を出る。


「あっ、アウロラちゃん! もう準備できてたんだ」


「私は荷物を置くだけですから」


「それにしてもあんたどうしてあたしらの部屋が?カギ番号は見てないだろ?」


「アスカさんの魔力をたどってきました」


「ウルフ種みたいなやつだな」


「失礼です」


ジャネットさんの意見にムッとして答えるアウロラちゃん。よかった、私もちょっとだけ思ったけど口にしなくて。


「それじゃあ、飯にするんだが当てはあるか?」


「全く。来る時に何か目に入った店はあるかい?」


ジャネットさんから声を掛けられたのでちらっと目に入ったところを言ってみる。


「それなら、ここに来る途中にあった”レグミナ”って店はどうですか?」


「レグミナ? そんな店あったかい?」


「大通りから少しだけ小道に入ったところです」


「へぇ~、アスカ。よく見てたね」


「凄いでしょ、リュート!」


「なら、一度そこに行ってみよう」


他に店の当てもないので、ひとまずレグミナへと向かう私たち。



「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」


「五人だ。テーブルはあるか?」


「すみません。4人掛けまでしかなくて」


「それなら分かれるか。後、従魔も大丈夫か?」


「えっと、中型以上の従魔はご遠慮いただいております」


「この子たちです」


私はアルナとキシャルを店員さんに見せる。


「わっ、小さくてかわいいですね。この子たちなら大丈夫ですよ。でも、できれば奥へお願いします」


「分かりました」


店員さんは小型の従魔を可愛がってくれそうだけど、他のお客さんは苦手かもしれないので奥に通される。大体はどこの店でもこういう扱いだ。人の連れてる魔物だからしょうがないよね。


「じゃあ、私たちは奥の二人掛けの席に行きますね」


「それならアウロラと一緒に行ってきなよ」


「はい!」


私とアウロラちゃんはアルナとキシャルを連れて奥の席に座る。ジャネットさんたちは中央辺りの席だ。お昼時だからある程度テーブルも埋まっているので、こればっかりはしょうがない。


「さぁ、何にしようかな~」


メニュー表を見ると、ここは野菜のメニューが多い店のようだ。ちらっとジャネットさんたちの方を見ると、苦い顔をしている。肉が多そうなメニューでも野菜炒めだもんね。他はハムを乗せたサラダなんかがあるぐらいだ。アウロラちゃんにはよかったけど、ままならないものだなぁ。


「私は旬の野菜セットと日替わりの果実ジュースかな? アルナたちはどうする?」


ピィ


にゃ~


アルナは少なめでいいとのことなので、ブロッコリーとパプリカをキシャルは肉がいいとのことだったので、宿に帰ったらあげることにした。


キシャルは少しでも何か食べないの?


にゃ!


断固拒否。本当に肉好きだなぁ。


「私たちは決まったけど、アウロラちゃんはどうするの?」


「私はこれとこれとこれ。あとはこれに旬の野菜セットにします。あ、飲み物は同じものを」


「そ、そう…結構食べるんだね」


「はい。まだまだ、魔法について知らないことが多いので、朝から色々試してましたから」


「そうだったんだ。研究熱心だね!」


「ええ、本当に感謝しています」


なぜか私を見るアウロラちゃん。う~ん、私に感謝するようなことは何も無いはずなんだけどなぁ。そんなことを考えていると店員さんがやってきた。


「ご注文はお決まりですか?」


「はい。私は旬の野菜セットと日替わりジュースを。従魔には小さくていいのでブロッコリーとパプリカをお願いします。こっちの子は…」


「ここからここまでと旬の野菜セットに日替わりジュース」


「えっと、こちらのテーブルだけでですか?」


私たちを案内してくれたお姉さんはジャネットさんたちの方を見る。


「あ、はい。こっちのテーブルの分だけです」


「そうですか。順番にお持ちしますね」


やや面食らったものの、そこは客商売。お姉さんは平静を取り戻すと注文を取って奥へと戻った。そして、メインが野菜だからか思ったより早く注文が届く。


「こちらは旬の野菜セットと二人分の日替わりジュースです。後はこちらが大根とほうれん草とニンジンのサラダ。それに三種の煎り豆になります。こちらお好きなドレッシングをかけてお召し上がりください。従魔の食事は端に寄せておきますね」


「ありがとうございます」


お姉さんが去っていくとさっそく食事だ。


「いただきま~す」


「いただきます」


ピィ!


意外にもアウロラちゃんも手を合わせていただきますをしてくれる。うんうん、食材や作ってくれる人に感謝するのは良いことだよね! そして食べ始めようとしたのだけど…。


「アウロラちゃん、ドレッシングは?」


「いりません。生のままが一番です。あっ、豆は食感が変わるのでこっちも好きですが」


「そうなんだ。私も濃い味のものと一緒だとそのまま食べるけど、今日は肉がないからかけてるんだ」


「本人が一番美味しく食べられるのが一番だと思います」


「そうだよね。それじゃあ…」


私はドレッシングを味見して回しかける。野菜中心の店だからか、ドレッシングも気持ち薄味だ。私がドレッシングをかける間にアウロラちゃんは料理を口に運ぶ。


「うん、おいしいです」


「良かったね」


良かったんだけど、アウロラちゃんは絶え間なく野菜を口に運んでいる。頼んだ品数も旬の野菜セットを含めれば五品だ。それが、お姉さんが料理を持って来るたびに消えてゆく。その横ではアルナが静かに食事をしている。アルナも食べてる時は静かなんだよね。


「ふぅ、少し休憩です」


既に三品を食べ終わったアウロラちゃんは休憩といいながらジュースを飲む。それにしても…。


「アウロラちゃんって食べ方きれいだよね」


「そうですか?昔は意識したことはなかったので、そう見えたならよかったです」


確かにハイペースで料理は消えていくんだけど、食べ方はきれいなのだ。でも、この食べ方ってどこかで見たんだけどなぁ。


「どこで見たんだっけ?」


「何がですか?」


「あっ、ううん。ちょっとひとりごと。アウロラちゃんの食べ方ってどこかで見た気がしたんだけど、気のせいだよね」


「多分…」


自信なさげに言うアウロラちゃん。でも、この子の外見なら目立つだろうし、どこかで会ったことはないはずだ。私たちはそのあとも楽しく食事を楽しみ、気づけばアウロラちゃんのお皿も一つだけになっていた。そのころジャネットさんたちは…。




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― 新着の感想 ―
[一言] >「じゃあ、ここにご飯は置いておくね。食べられるところだけ見られないように注意して」  これじゃあティタがご飯(魔石)に食べられる、ある意味ショッキングな描写の文章になっちゃうので、誤字報…
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