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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
連合国家アダマス

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出発!アスパルテス砦

「うう~、ちょっと緊張してきました」


 夜が明けて、朝食も取った私たちはいよいよ護衛対象の商人さん達と会うことになった。今はレザリークの森に行くタイミングの話し中だ。もう1組の商隊が到着していないので仮だけどね。


「何をいまさら。まあ、依頼自体久し振りだってのは分かるけどさ」


「そういえば、ワグナーは残念だったね」


「うん。昨日哨戒任務をしたから今日はお留守番なんだって。毎日、飛んでもらうわけにもいかないからしょうがないよね」


 ワグナーの哨戒は週に3度までと決められているみたいで、連日の哨戒は相応の理由が必要とのこと。魔物の襲撃も少し前に遭って、逆に森は安全だから一緒に行けないんだよね。


「はぁ~、一緒にお空飛びたかったなぁ」


「昨日、十分飛んだんだろう?兵士が噂をしていたぞ」


「それはそうなんですけど、中々従魔の背に乗って飛ぶ機会はありませんからね」


「人を乗せて飛べる従魔は限られるからな。ワイバーンかグリフォンか、後はストロングイーグルとかだな」


「ストロングイーグル?」


「ああ、羽根から筋肉まで全体的に発達した種族で、物理攻撃に強い魔物だ。翼長まで含めると5mから6mまでと大きい。その足に掴まるか、肩を掴んでもらえれば飛べるだろうな」


「ん~。でも、私はまだ見たことがないですね」


「寒い地域に生息することが多いからな。海岸や湖などを住処にしているからそういう地域に行けば、そこまで珍しいことではない」


「ちょっとリック!あんまり変なことを教えるんじゃないよ」


「別にこのぐらい構わないだろう?」


「あんたねぇ、ここにそいつが増えたらどうなる?目立つどころじゃないよ。大体、町にいる間はどうするんだい?」


「えっ!?一緒に入っちゃだめですか?」


「そんなでかい鳥が街にいたらみんな警戒しちまうよ。イーグルってことは歩けないだろ?」


「あっ、そういうことなんですね」


 確かに、6mある鳥が街中で羽ばたいたら凄そう。風とかも勢いが凄いだろうし。


「でもほら、キシャルみたいに小型化できるスキルがあれば大丈夫かもしれませんよ?」


「それで、その地方のストロングイーグルを片っ端から当たるのかい?」


「い、いや、そこまではしませんよ。多分…」


 そう言いながら、ちらりとこっちを見てくるリュート。失礼な、いくら私でもそこまでは…。


「でも、小さい鷲かぁ。キシャルより少し大きい位だったら、一緒に旅ができるよね?」


「あ~あ、また変な考えを持っちまった。万が一、出会ったら責任取るんだよ?」


「「はい」」


「みなさんお待たせしました」


 リュートとリックさんがジャネットさんに頭を下げていると、カーディさんがやってきた。


「商人の方、もう大丈夫なのかい?」


「はい。先ほどもう一組も到着しまして、少し休憩したのちに出発します」


「だってさ、助かったね。あんたら」


 ジャネットさんのお許しをもらった二人はほっとした顔で胸をなでおろしている。


「では、案内します」


 出発準備を終えていた私たちはそのまま商人さんとの面会に向かう。



 コンコン


「はい」


「護衛依頼を受けたパーティーを連れて来た」


「入っていただいて大丈夫です」


 中にいる商人さんの了解を取って大部屋に入る。ここはレザリークの森を抜ける商人と砦側で話し合うための場所らしい。元は予備の作戦本部だったので、ある程度人数が入っても話し合いがやりやすいようになっている。


「失礼しま~す」


 カーディさんに続いて私が声出しをして入っていく。これもリーダーの務めだ。


「あなたたちが今回護衛をしてくださるパーティーの方ですね。マルカス商会のセルダール・マルカスと申します」


「あっ、フロートのアスカです。それとこちらから、ジャネットさん、リックさん、リュートです」


「ご丁寧にありがとうございます。打ち合わせ自体は終ったので、何かありましたら森を抜けるまでにご相談ください」


「分かりました!でも、どうして森を抜けるまでなんですか?」


「森を出るまではこちらの兵士さんもいらっしゃいますし、もう1組の商人の護衛もいますからね」


「そういうことなんですね。じゃあ、出発したらお聞きします」


「それにしても、可愛らしい方ですね。あなたがリーダーでよろしいですか?」


「はい。まだまだ未熟ものですけど、お願いします」


「いえいえ、頼りにしております。それでは、外に向かいましょうか」


 そろそろ、休んでいるもう一組の一団も休憩を終えるとのことで、荷馬車の確認をするために外に出る。こうやって事前に確認をする辺り、商人さんって感じがする。


「オーダン、どうだい馬の調子は?」


「セルダールさん、調子は問題ありません。昨日も十分休んでいますし」


「それは良かった。ああ、こちらが今回護衛を務めるフロートの皆さんだ」


「よろしくお願いします!」


「こちらこそ頼りにしていますね」


 御者のオーダンさんを紹介してもらったものの、オーダンさんは馬の調子以外にも馬車の状態の確認や、荷物のチェックなどまだやることがあるみたいで直ぐに作業に戻っていった。


「すみませんね、出発が近くて」


「いえ、当然だと思います」


「おや、セルダールさん。もうそちらはいいんですか?」


「ああ、もう大丈夫ですよ。コービーさんの方はもう少しかかりそうですか?」


「そうですな。ですが、そこまで長くお待たせしないですよ。では…」


 コービーと呼ばれたもう一組の商人さんはそういうとすぐに自分の馬車の方へと向かって行った。あっちはあっちで着いてからそこまで時間も経っていないのに大変だ。


「さて、必要ないと思うけど、あたしらも簡単にチェックするかね」


「おっ、そうだな。じゃあ、俺が確認してやろう」


「…リュート、アスカの方を頼んだよ」


「はい」


 今は4人パーティーなのでこうやって装備の確認は2人ずつに分かれてやる。でも。


「次こそは私がジャネットさんの…」


「アスカ?次はアスカの番だよ」


「あっ、ごめん。ちょっと考え事してた。直ぐにやるね」


 気を取り直して私はリュートの装備を見ていく。新調した鎧はまだまだ綺麗で、ちらっと見ても傷はない。このまま傷がつかないといいなぁと思いながら回り込んで背中にも目をやる。


「あれ?今回はなぎなたにしてるんだ?」


「うん。襲撃もあって魔物も大人しいって話だし、ちゃんとこっちも使わないと感覚が鈍るからね」


「そっか。よしっ!おしまい。大丈夫だったよ」


「ありがとう。あっちも終わったみたいだし、後は向こうを待つだけだね」


 それから10分ほどで向こうも準備ができたみたいで、いよいよアスパルテス砦を出発する時が来た。


「それじゃあ、コールドウェンさん。お世話になりました」


「こっちこそ。手紙の件は悪かったな」


「任せて下さい!とは言えませんけど、一生懸命書いたので何とかなることを祈ってます」


 キィィ


 出発のあいさつをしていると、小屋の方からワグナーが姿を見せに来た。


「ワグナーも元気でね。次に会う時はお父さんになってるかもしれないね」


 キィィィ


 私の言葉にワグナーは喜んで頭を振る。


「ふふっ、それじゃあね」


 私はワグナーの頭を撫でて揚げる。あとはと…。


 ばれないように撫でてる手のひらに光の魔力を集めて流してあげる。


「バイバイ」


「もういいのかい?」


「はい、また会いにくればいいことですから!」


 まだまだ冒険は続くんだから。その思いを胸に私はワグナーから離れてみんなと合流した。



「それじゃあ、今から出発する。出発前に今回の商隊の配置の確認だ。先頭はジャネットとリックのフロート組。その左右を俺たち砦の兵士で埋める。その後ろはマルカス商会の馬車だ。馬車の後方左右をアスカとリュート。ここまでが前半分だ。問題はないな?」


「ありません」


 パーティーを代表して私が返事をする。


「うむ。では、後ろ半分に移る。まず、先頭を砦の兵士が2名。その後方左右にパルタイル商会の荷馬車。その後ろを…そっちの護衛は3人か。なら、馬車の真後ろに付け。最後に後方左右にまた砦の兵士が2名だ。大丈夫か?」


 今度はもう一組の護衛パーティーに向かってバルデルさんが確認を取る。


「こちらも問題ありません。待たせたみたいだし、出発しましょうか」


「ああ、そうだな。お前たち、配置に付け!」


「「「はっ!」」」


 2名ずつに分かれた砦の兵士さんたちも配置についていよいよ出発だ。




「ん~、いよいよ出発か~。どんなところだろうね、レザリークの森って」


 ピィ!


 森に入るのが楽しみなのかアルナは楽しそうに鳴く。


「ダメだよ。今日は護衛だから遠くに行けないからね~」


 ピィ~


 しょんぼりとしながらも森を通ること自体には期待を膨らませるアルナ。アルナとは違い、今日も朝から頭の上で眠るキシャルとは大違いだ。そして、ティタはいつものように左肩で置物に徹してくれている。


「アスカさん」


「はい?」


 皆に合わせて歩いていると、御者さんの隣に座っているセルダールさんが話しかけて来た。


「お疲れではないですか?皆さんと歩調も違いますし」


「あっ、心配無用です。遅れそうになったらこれを使うので」


 私はブーツのホバーを使って見せて、行軍速度には問題ないことを見せる。


「おおっ!土系の魔法使いでしたか。それなら問題ありませんね」


「心配してくださってありがとうございます。あっ、それと…」


 せっかく向こうから話しかけてくれたんだし、これはチャンスだと思って私は昨日疑問に思っていたことを質問することにした。




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