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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
連合国家アダマス

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再会の飛竜

「こっちは終わったぞ」


「結構早いんだねぇ」


「こういうのは慣れさ」


 コールドウェンさんとリックさんの話し合いも終わったので、ここから明日まではのんびりタイムだ。


「それじゃあ、私はワグナーに会って来ますね」


「リュートも行ってきなよ」


「ジャネットさんたちは?」


「ん?前はそんなに見学できなかったから、その辺を見てくるよ」


「分かりました」


 そんなわけで、私とリュートはアルナたちを連れてワグナーのところに向かった。



「ワグナー!お客さんだぞ」


 キィィ?


 ワグナー専用の小屋(大きいけど)に向かい、ドアを開けると休んでいたみたいでゆっくりこっちに首を動かす。


「こんにちわ!久し振りだね、私のこと覚えてる?」


 キィィ!


 バサッと翼を広げて覚えていることをアピールしてくれるワグナー。賢い子だ


「おい、ワグナー。あんまり暴れるな。外に出るか?」

 キィイ


 私に会えてよほどうれしいのか、直ぐに外に出るワグナー。これにはバルデルさんも困り顔だけど、ワグナーの方は全く気にしていないみたい。


「はいはい、すぐ行くよ~。バルデルさん、後はお願いします」


「…ああ」


 私たちもワグナーの後を追って外に出る。まだ、日は高くしばらくは遊べそうだ。


「どわっ!?ワグナー?お前、小屋に帰ったんじゃなかったのか?」


 キィィ


「ワグナー、待って!」


「君はさっきの…」


「アスカと言います。今からちょっとだけ、ワグナーと遊ばせてください」


「そ、それは構わないが」


「いいって、ワグナー」


 キィ


 兵隊さんの許可も貰ったし、さてどうしようか?やっぱり、ここは気兼ねなく話せる空かな?


「ワグナー、背中を借りてもいい?」


 キィ!


 ワグナーのお許しを得たので、私は風の魔法を使って背中に飛び乗る。


「キシャルもティタもおいで。アルナは…どうする?」


 ピィ!


 アルナって結構、飛ぶ従魔に対しては対抗心を燃やすんだよね。どうやら今回もワグナーと張り合うつもりらしい。


「ワグナーが簡単に背に乗せた?」


「それじゃあ、少し飛んできます!」


「あっ、おい!…行っちまった」


「ワグナー?あれ、アスカたちを知らないか?」


「隊長!今、空に飛んで行きました」


「全く、どっちが主なんだか。夕飯までには戻ってくるだろう。旗を持っておけ」


「はっ!」


 そんな下での会話もいざ知らず、私たちは空の遊泳を楽しんでいた。


「うわ~!風がす~って突き貫ける!やっぱり自分で飛ぶのとは全然違うね」


 キィ


 自分で飛ぶ時は風を身にまとって、前方の壁を厚くする。そうすることで、高速飛行が可能になるのだ。ただ、その弊害であまり風を全身に感じることはない。こんなに気持ちよく飛べるのは従魔ならではだね。


「ワグナー、みんなから聞いたよ。この前の魔物の襲撃の時は大活躍だったんだってね!」


 キィィィ


 私の言葉にワグナーは嬉しそうに咆哮を上げる。あっ、なんか光出た。


 キィ!?


「あはは、空だからよかったけど、コントロールは気を付けてね。それにしても、私と別れる時より色が濃くなったね」


 前はほぼ白い体色だったのが、今はクリーム色に近くなった。きっとそれだけ光の魔力が強くなったのだろう。ほんとに襲撃の時は頑張ったんだなぁと思い、背中をさすってあげる。


「そうだ!せっかくだから、魔力もついでに…」


 私はワグナーを撫でる手に光の魔力を込める。


「これがお空でよかった。従魔の背中に置いてる手が光ってるなんて見られたら騒ぎになっちゃう」


 などと言っていたら後日、『まずもって、主でもないワイバーンの背に乗ること自体が非常識だよ』とジャネットさんに一蹴されてしまった。


「ア、アスカ、待ってよ」


「リュート、追いついて来たの?」


「アスカが変なことしないようにね」


 リュートはそう言いながら、私の横に着こうとしたがワグナーのしっぽに阻まれる。


「ええっ!?ここでもこの扱いなのか…」


 そうつぶやくとリュートは諦めて、ワグナーの隣を並走する。そのまま上空を旋回しながら私たちは話を続ける。


「それでブレスにはもう慣れた?」


 キィ!


 割と慣れたと答えを返してくれる、ワグナー。でも、さっき普通に吐いてたしなぁ。そんな思いを汲み取ったのか、ほんとだよともう一度鳴いて見せるワグナー。


「はいはい。分かってるって。でも、無茶だけはしないでね。今、貴方のためにお嫁さんを連れてこれないか話してるところなんだよ?せっかく来たのにワグナーが怪我してたら相手にも迷惑掛けちゃうからね」


 キイィ!


 おおっ!ワグナーがひときわ大きく鳴いた。大人しくしてても男の子だもんね。そりゃあ、自分の相手になる子が来るかもしれないって聞いたらこうなるか。


「相手はね。強くて、すごく負けん気の強い子だけど、女の子なんだから優しくしないとだめだよ?」


 キィイ


 私の言葉にワグナーは嬉しそうに返事をする。そしてそのまま耳元に行ってこそっと話す。


「それと、相手の子はブレスの使い方を知らないから、教えてあげるんだよ?絶対、喜んでくれるから」


 マグナは気が強いし、戦うことも好きそうだからブレスが使えるようになると喜ぶだろう。後はどんな属性を選ぶかだけど…。


「まあ、順当に行ったら光属性かな?」


 ワグナー自身が光属性しか使えないし、さすがに他の従魔が教えたりはできないだろう。私は一人で納得して、その後は空中遊泳を楽しんだ。



「アスカ、ただいま戻りました!」


「うむ、楽しかったか?」


「はっ!隊長殿」


「アスカは何をやってるの?」


「えっ!?兵隊さんの物まね。やってみたい時ない?」


「僕はないかなぁ」


「リュートにはやっぱりロマンが分からないんだね」


「アスカは本当にその言葉にこだわるね」


「そりゃあ、私の生きがいだもん!」


「それは良かったな。だが、そろそろ飯の時間だ。ロマンより今は腹ごしらえだろう?」


「もう食べられるんですか?」


「ああ、案内する。ワグナーは戻っていろ」


 キィ


 私と一緒に空を飛んだからか、満足してワグナーは大きな小屋に戻っていく。


「そうだ!ワグナ~」


 キィ?


 呼び止められこっちに首だけを向ける、ワグナー。うっ、かわいい。このまま一緒に居たい位だ。目立つからできないんだけどね。


「はい、これどうぞ」


 私はアルナ用に確保していた薬草入りのご飯をワグナーの前に置く。


「ワグナーの体だとちょっとにしかならないけど、疲れが取れると思うから食べてみてね」


「済まないな」


「いいえ、私も一緒に空を飛んで楽しかったですから。じゃあね」


 ワグナーと別れて、私たちは部屋に戻る。当然、砦だから食堂もあるんだけど、大隊長さんと知り合いということもあり、部屋でということになったのだ。


「今日の飯はなんなんだい?」


「ちょうどこの前に襲撃してきた魔物の肉の乾燥が終わったところだ」


「ということは…」


「ウッズオークの肉だ。この辺りのは美味いぞ」


「何か理由があるんですか?」


「ああ、もちろんだ。レザリークの森を少し北に行った林にいる種類なんだが、森から漏れ出る魔力や、質のいい薬草を食べているからな」


「へ~、オークって肉中心に食べてるんだと思ってました」


「雑食性ではあるが、森の魔物に実力が及ばないせいか、はたまた安定的に食べられるせいか、あいつらはほとんど肉に手を付けない」


「それで、美味しいんですね。これは楽しみです!」


 思わぬところで、いい食材に会った。あとで魔物辞典にもメモしておこう。そしていよいよ待ちに待った料理の到着だ。



「ふわ~、いい匂いですね!」


「ああ。肉食の臭みもないし、やわらかいぞ。軽く干したことで焼きあがりの味が濃くなるんだ。身も締まって食感も良くなっている」


「今回は食べやすさも考えて薄めに切ってあるけれど、厚切りもおいしいのよ」


「では、行きます。パクッ」


 一切れ肉を口に入れてみる。保存用に塩を使っているからか、少し塩気はきついけど、噛めば噛むほど味が口の中にしみわたってきて芳醇な香りが広がる。


「ううっ。他の地域で食べられないのが悲しいです。こんなにおいしいなんて…」


「まあ、この砦の数少ない楽しみだな。ただ、あまり食べられないが」


「えっ!?でも、この辺に生息しているんですよね?」


 食べながらも意外な言葉に興味が湧いたので聞いてみる。


「そりゃあ、それだけ美味いんだからな。貴族への献上にも使われるさ」


「それじゃあ、子爵家に?」


「ああ。そこからも他の貴族に配るそうだ。珍しくてうまいから人気でな。貴族間の外交の道具って訳さ」


「へぇ~。まあ、これだけ美味しければしょうがないですよね」


 再び、口に肉を放り込み納得する。そして、単品を堪能したあとはお目当ての食べ方だ。


「あとはこうして切り開いたパンに肉と野菜を挟んで、たれをかけてと…」


 この塩気のある肉を野菜とパンで食べることにより、バランスのいい味になる。そこに薄めのたれをかけて仕上げだ。これが、この砦の名物料理らしい。料理好きの兵士がせめてみんなに満足してもらえるように考案して、もう60年以上も使われているレシピなんだとか。


「んん~!固いパンが、たれでふにゃっとして食べやすい!それにそれぞれの食材が合わさった、ハーモニーがこの肉をさらに美味しくしてますね」


「そう言ってもらえると嬉しいぞ」


「でも、もう少しパンが柔らかかったらなぁ」


「まあねぇ。味はいいんだが、ちょっと固いね」


 ジャネットさんも隣で食べながら感想を述べる。私たちは行く先々で柔らかめのパンを食べているので特にそう思うのだろう。


「ま、その辺はな」


「最近、町の方で流行っている柔らかめのパンを導入してみてはどうだ?確かにこういうパンの方が保存性もいいが、砦内で消費するならあっちでもいいだろう」


「そんなものがあるのか?どうにも俺たちは外部の情報に疎くてな」


「今度調べてみるといい」


 そんな会話をしながら楽しい食事は終わり、あとは寝るだけだ。


「明日は久しぶりの護衛依頼、緊張しますね!」


「そうかい?なんだかんだダンジョンでもやっただろ?」


「ええ~!?あれとは違いますよ、やっぱり」


「まあ、ダンジョンだと相手も多少は戦えたしね」


「そうそう、商人さん相手だと勝手が違うよね!」


「ちっ、リュートに一本取られたか。ほら、もう寝るよ」


「は~い。アルナたちもお休み」


 ピィ


 にゃ


「おやすみなさいませ、ご主人様」


 こうして、久しぶりの護衛依頼を前に緊張しながら眠るのだった…。


 スピー


「相変わらず、寝るのが早いねぇ」




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― 新着の感想 ―
[一言] >「ああ、もちろんだ。レザリークの森を少し北に行った林にいる種類なんだが、森から漏れ出る魔力や、質のいい薬草を食べているからな」 >「へ~、オークって肉中心に食べてるんだと思ってました」 …
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