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新従魔降臨

「さあ、美味しいカレーも食べたし、細工頑張んないとな」


午後からは打って変わって雪の結晶の細工だ。午前はどれも簡単な作業ばっかりだったから気を引き締めないとね。


「っていっても明日は冒険する日だし、ほどほどに納めないとね」


まずは絵の通りに型を作っていく。ちなみにイヤリングの分は流石に簡単なのでわざわざ作らなかったのだ。


「一番難しかったのはサインかも」


小さいものに自分のサインをするのは思いのほか大変なのだ。デザインを崩さないように小さくだけど、消されたり別のサインを描かれたりしないようにしないといけないのもネックだ。


「そうそう、結晶を作るにあたって何種類か作っておかないとね。ネックレスみたいに下げるのに穴がいるのか、髪飾りみたいに裏加工で済ませられるのかで違うしね」


ネックレスも裏加工でやりたいんだけど、厚みとかバランスの関係で中々採用が難しそうだ。最悪、チェーンを付けたところを隠すようにデザインを入れれば何とかなるだろうし。ほかには月とセットにしたようなデザインかな?やっぱり月明かりに雪って言うのは神秘的だし。


「いくつか見本を作ってそれから選んでもらおう」


私が1つ1つあれこれ考えるよりは、店の人に選んでもらった方がいいと思うし。


「私じゃ、この街の流行なんて分かんないしね」


気を取り直して細工に打ち込んでいく。旅に出てからというものアルナたちは部屋にいる時は数時間置きに私にかまってとやってくるようになった。やっぱり両親、それにエミールという兄妹と離れて寂しいんだろうな。


※アスカは夢中になってすぐに時間を忘れるので、小休止を入れるべくしょうがないなぁの精神でやっています。


「アスカ、そろそろご飯の時間だよ」


「は~い」


試作品が3つ程できたところで時間になったので夕食だ。何と昼の残ったカレーを薄めて夜はスープとして出るらしい。スパイス自体が高いから、ちょっと余っただけでも使い切りたいそうだ。従業員への賄いにしては高いし、当分は提供日を張り出し残らないようにしていくらしい。


「リュートもその恰好だと立派な料理人だね」


見るとリュートはエプロンをしていた。厨房を借りる変わりに働いているみたいだ。


「そうかな?そんなでもないと思うけど…」


そんな感じでその日も終わり、明日は冒険の日だ。



ーーー


「今日はいい依頼日和だね」


「ですね~、依頼は何を受けましょう?」


「実はもう決まってるんだ」


ジャネットさんに説明されたのは町を東に出てそこから反時計回りに半円状に回っていくルートだ。前回向かった街の北東のノースコアウルフの生息地周りも確認できるし、普段商隊は南しか通らないから、こういう時に体験しておくといいんだって。


「それじゃあ、門を出ますか!」


ギルドで依頼を受けると早速東門に向かおうとしたのだけど…。


「アスカそっちはダメだよ。東門は王都との交易入り口だから混むよ。北から出て東に出た方が早い」


その言葉通り進んで、南に抜けると東門の前には行列ができていた。


「なんでみんなあそこを使うんですか?」


「商用入り口があそこって決まってるのさ。旅人も事情を知らなきゃ、その列に加わるだろ?だから、いつも混んでるんだよ」


「行ったことのない都市の情報まで詳しいなんて流石はジャネットさんですね」


「そ、そうかい」


ジャネットは照れながらも、旅の出発前に冒険者たちを捕まえてはメモに各都市の情報を書き込んでいてよかったと思った。やはり、年長者として先輩冒険者として見栄を張りたかったのだ。


「街から少し離れましたけど、結構整備されてますね」


「王都からの街道沿いだからね。それに中間にある大河の手前から東に行くとカラルの町がある。物資の移動が多いから、この周辺も手入れしてるって訳だ。まあ、魔物避けの一環だね」


しかし、そこから北の草原に向かって歩いていくと一気に自然の光景が広がる。


「この辺は手入れもされてませんし、のどかですね~」


「あれだけ大きい城塞都市だからね。外に出なくてもかなり生活はできるし」


「今日は草原にも入りませんし、そのまま北側に抜けましょう」


「そうだ!リュート久しぶりに先頭歩く?」


「いきなりだね。どうかしたの?」


「何となく。たまにはいいんじゃない?」


「まあ、この辺は強い魔物もいないし、いいんじゃないかい?なら、あたしが最後尾だね。任せたよリュート」


「分かりました。頑張ります!」


リュートは良くノヴァとペアになっていたので、サポートの中衛か槍や投擲も出来る後衛に就くことが多かった。私を守れるように最後尾に行くこともあったけど、逆に初見の敵や厄介な敵に急襲されない様に先頭はほぼジャネットさん固定だったのだ。


「ふふっ」


「どうしたの、アスカ?」


「ちょっとリュートがやるぞって感じでうれしいなって」


「もう、警戒の妨げになるよ」


そんなことを話しながら草原の北を越えてしばらく進んでいると、反応があった。


「ちょっとアスカ。魔物がいるからってじっと見てこないでよ」


「えっ!?気付いてた?」


「さっきからいつ気付くかなって視線が痛いよ。もう…」


何と!気付かれているとは…。


「くだらないことやってないでさっさと構えな。リュート、数と種類は?」


「えっと、この感じだとオークですね。見晴らしがいいからもうすぐ見えると思います。数は4体です」


「分かった。アスカ、準備は良いね?」


「弓の調子はばっちりですよ」


来る方向に弓を構えて待つ。強敵ならここでウルフの矢を放っておいたり、ウィンドカッターを空にためておいたりするんだけど、オーク程度なら大丈夫だ。今回は見晴らしのいい地形なのでリュートを先頭に位置が被らないようにする。


ブヒィ


構えているところにオークが見えてきた。


「アーチャー確認。すぐに対処します!」


リュートが駆けていき、一気にオークの集団に迫る。ジャネットさんも反対側からそれに続き、私はというと弓で援護だ。当たらないように山なりの軌道で矢を射る。


ヒュンヒュン


「もう一射!」


両者相対したことで動きが止まった後ろのオークに狙いを定めて矢を放つ。そのまま矢は脳天に突き刺さりオークを倒す。リュートは接近する時に左手で投擲したナイフでアーチャーを倒し、そのまま正面に出てきたオークを槍で倒した。ジャネットさんは横から追撃が入らないように割って入り、もう1体を倒し戦闘は終了だ。


「まあ、こんなもんだね」


「解体しましょう」


直ぐに解体に入る。この辺は適当に穴も掘れるし終わったら次に向かおう。


「それにしても今日は暑いですね」


「まあ、秋だしね。ここまで北に来てこう暑いとは思わなかったけどね」


※1月から3ヶ月刻みで季節はめぐります


それからは魔物と出会わずに街と河との間ぐらいに進んだところで一時休憩だ。


「もう駄目~」


暑いのが我慢できないので私はコールドボックスを出して、そこから氷漬けのジュースを取り出す。ちょっと熱を加えたら冷たい飲み物で、頑張ればシャーベットにもなるのだ!


ガサゴソ


もう冷たいものを食べたいだけの私は近くに来ていた存在に気付かなかった。


ンニャ


「わわっ!?何っ!?」


突然、草むらから何かが飛びだしてきた。


横を見ると小さな猫が私から奪った、凍ったジュースを舐め始めている。


「なんだこいつ?」


「氷食べてますし、ノースコアキャットでしょうか?」


「この子がそうなの?かわいいね~」


ンニャ


20cmぐらいの小さい子猫だ。ただし、尻尾が長くて同じぐらいあるので、全長は40cmくらいだろうか?私から奪った氷を一心不乱に舐めている。さ、触ってもいいかな?


「ねえ、ティタ。この子に触れていいか聞いてみて?」


「わかった」


ティタに交渉してもらい氷をあげている間は触ってもいいと言ってくれた。それから小休止を済ませると私たちは歩き出す。


「アスカ、あの子付いて来ているよ」


「ほんとだね。何とかしなよ」


「何で私に言うんですか?」


「何でってアスカがコールドボックス出すからついて来たんだろ?ちゃんと言い聞かせなよ」


再びティタの通訳を入れて話をするも、氷をあげている間は触っていいよと返事をするのみだ。


「付いてきちゃっていいの?お母さんとかは?」


そういうと首を振る子猫。うう~、このままさよならするのは可哀想だね。


「ねぇ、ついてくる?街中とかで大人しく出来るならだけど」


んなぁ~


猫ちゃんが光って従魔契約完了だ。というか名前つけなくても出来るんだね。光自体はそこまで大きくなかったのであまり魔力がある種族ではないみたいだ。


「名前は何にしようかな?キシャルはどう?」


んな!


どうやら気に入ってくれたみたいだ。じゃあ、ノースコアキャット改めキシャル、これからよろしくね!


「とりあえず、その辺の魔物と間違われないようにしないとね。これつけてあげるからね」


ガンドンの皮を薄く、軽くしたものにピンクの着色をしたものを付けてあげる。実はソニア用に作ったんだけど、あんまり気に入ってくれなかったんだよね。白斑の模様に薄ピンクが映えてきれいだ。


んにゃ


「わっ!?もう、しょうがないなぁ」


肩にいるアルナたちを飛び越えて頭に乗るキシャル。まだ小さいから頭に乗ってもそれほど重みがないのでしばらくは我慢してあげようかな?


「さて、そろそろ川に向かうよ。それが終われば街に戻れるんだ」


ジャネットさんの言葉を合図に進んでいく。川沿いでは薬草も生えていたので丁寧に摘んでいく。


んにゃ


「ど、どうしたの?」


その時いきなり川に向かってキシャルが飛び出した。


「アスカ、敵だ!」


「アクアボール」


すかさずティタが水面に魔法を放つ。


「ど、どこから?」


「ブルースライムだ。よく見ろ!」


ジャネットさんの言葉で水面を見る。よく見ると黒っぽい核のようなものに水色の水に見える塊がくっついている。


「これがスライムなの?よしっ!」


ウィンドカッターを放って効果を確かめる。しかし、切り刻まれた体は直ぐに再生した。


「むっ!ならっ…」


続けて攻撃しようとすると何かを飛ばしてきた。


ピィ


とっさにアルナが風で吹き飛ばしてくれる。横に飛び散った雑草を見ると草が溶けていた。


「ひょっとしてこれが溶解液?びっくりした~」


「アスカ、魔法で何とか出来る?」


「やってみる。確か…スライムは核だけにするんだったよね」


初心者向けの冒険者手帳に書いてあったはずだ。再びウィンドカッターを放ち、スライムを核周辺だけにする。


「ここだ!ウィンド!」


切断され小さくなったスライムに風をぶつけて核のみにする。


「やった!」


「リュートも真似して!」


「無理に決まっているでしょ!」


そう言いつつもリュートは私の戦法をアレンジして、ブレスレットのバリアをそのままスライムにぶつけてその後、ウィンドで核を残す技を見せた。


「すごい!」


「それは良いからこっちも頼むよ」


ジャネットさんの方を見ると剣を振りながらスライムの相手をしていた。


「倒さないんですか?」


「素材無くなるだろ?」


「そうでした、すぐやります」


もう1体も魔法で倒すとようやく一息付けた。


「ふぃ~、大変でした」


「いや、こっちが一番大変だから」


「そういえば、ジャネットさんはずっと回避してましたね」


「酸は剣にも良くないし、防具にも良くないからね」


んにゃぁ


「キシャルもありがとね」


ピィ


「もちろんアルナも。みんな優秀で助かるよ」


皆にお礼を言うと私たちは町に戻ったのだった。




次回、キシャルのステータスが判明します。まあ、だからといって本編上そこまで影響はない訳ですが…。

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