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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市での日々

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魔道具の使い方

 鑑定屋ジュターユの裏庭で魔道具の実験をする私たち。


「じゃあ、今度は守りの首飾りの方ね。こっちは自動で発動ってことだったけど、任意でも発動できるのかしら?」


「ああ。だが、やはりメインの効果は自動でバリアが発動することだ」


「むむ~、それは気になりますね。試してみてもいいですか?」


「いいわよ」


 私はこの機会を逃すと二度と使えないかもしれないので、しっかりどういうものなのか確認する。


「発動!」


 ブゥン ブゥン


「ん?今何か…」


 実際に効果を発動させてすぐに違和感を覚えた。


「ひょっとして…」


 私はもう一度バリアを張り直す。


「やっぱり!」


「何か分かったかい?」


「はいっ!この守りの首飾りのバリアの発動は2段階に分かれているみたいですね。多分、バリアを張るための魔石か何かが前面にあるためだと思います」


「それって危なくない?」


「まあ、確かに危険かもしれませんけど、2回に分けなかったらこのバリアの強度が保てないんだと思います。もろいバリアが周囲を守るよりも、攻撃された方向への強いバリアというのがコンセプトの魔道具じゃないかと」


「ほう?そう聞くと確かにその方がいいな。ひとりとはいえ、全体を飲み込むような攻撃は少ないし、さらにその攻撃が不意を突いたものというのはそこまで考慮する事項ではないだろう」


「そうなんです!だから、これって身に付ける人によってつけ方を変えたらいいんじゃないかと思うんですよ」


「つけ方を変える?」


「はい。例えばリリアナさんは前衛ですよね?だから、きっと正面切っての危険も増えると思うんです。もちろん、後方からの攻撃もあり得ると思いますけど、先頭を歩いていて、可能性として高いのは樹上からの攻撃とか、遠距離からの弓だと思うんですよね」


「確かにどっちも経験があるわ」


「でも、リクターさんだとそもそも先頭を歩くなんてことはないと思いますから、そういう経験はないと思うんです。後衛のリクターさんがあるとしたら、パーティーが通り過ぎた後に矢を射かけられるとか、前衛が抜かれてさらに後ろに回り込まれるとかだと思うんです」


「そうやって後方から攻撃されたことは合同パーティーで経験があるわね」


「だから、リリアナさんなら普通に首飾りを身に付けて、リクターさんなら後ろ方向につければそれぞれの気になる点を守ってくれますよ」


「ふむ、なるほどな。それぞれの役割に合わせた使い方か。やはり自分でも魔道具を作るからか冴えているな」


「えへへ、そうですか?」


 リックさんにそう褒められてうれしくなる。やっぱり騎士の人の評価は大事だもんね。


「後はどっちに渡すかね。ここじゃ、フロートの目にもつくから帰ってからでいいわよ」


「そうね。楽しみにしておきましょうか」


 ホークスの面々がそんな風に発言する中、ジャネットさんが席を外す。


「ジャネットさん?」


「ちょっと出てくる」


「どうしたんだろ?」


「さてな。それより、守りの首飾りは参考になったか?」


「はいっ!新しいアイデアも思いつきました」


「今日は休みだぞ。明日は出発日なんだからな。おっと、依頼ももう探してあるんだ」


「あっ、そうだったんですね。どうなってるのかと思ってたんですけど」



 その頃、少し席を外したジャネットは…。


「ふぅ、これで良しと。あいつに残せるものが一つ増えたな」


「そうそう、おっさん。アスカの思いついた使い方メモしてただろ?そういうのは感心しないねぇ」


「おわっ!?びっくりさせるなよ。庭の使用料だ」


「それなら、さっきのメモの代金も頂かないとね。まさか、場所の提供と魔道具の活用法が相殺だなんて思ってないよねぇ」


「…いくらだ?」


「こっちも抜け出してきてるんでね。金貨1枚でいいよ」


「ほらよ!」


「んで、誰用のメモだったんだい?」


「娘だ。俺に似なくてよかったのに鑑定持ちでな。俺は店を畳む気だったが、自分が継ぐと言い出したんだよ」


「そいつは大変だね」


「お父さん、珍しく裏を貸してるの?あっ、お客さんかしら。こんにちは」


「ああ、世話になってるよ。魔道具の使用方法で気になることがあってね」


「そうだったんですね。よければまた聞かせて下さいね」


「機会があったらね」


 用事は済んだのでアスカの元へと戻る。


「さて、これで街を出る前になんかうまいもんでも買ってやるかね」


 そんなことを思い夕方にアスカに買ったものを見せると。


「アスカ、この肉なんだけど…」


「あっ、ジャネットさんもヒュージクックのお肉買ったんですね!私も最後にと思って店を眺めてたら売ってたんですよ!これからリュートに焼いてもらうところなんです」


「そ、そうかい。あっ、しまった。リックと飯の約束してたんだ。これはコールドボックスに入れとくよ」


「はい。それじゃあ、行ってらっしゃい!」


「いいのか?」


「うるさいねぇ。怪しまれないようにさっさと出てく!」


 ガンッとリックの足を蹴りながら肉をコールドボックスに放り込むと、あたしは街に繰り出した。




「戻ったよ」


「ジャネットさん、何だったんですか?」


「ちょっとね。それより、魔道具の方はもう大丈夫かい?」


「はい!構造も何となくでしたけど分かりました。ただ、発動するのに使われているのがどんな魔石なのか、そもそも魔石じゃないのかは分かりませんでしたけど…」


「ティタでも分からなかったのかい?」


「はい。食べてみれば分かるのですが…」


「ちょ、ちょっとティタ!怖いこと言わないでよ」


「本当にそのしゃべるゴーレム可愛いわよね。どこで買えるのかしら?」


「売ってません。あれ?ティタが話せることってどこかで言いましたっけ?」


「えっ!?ガーゴイルとの戦闘中に普通に話してたわよ」


「焦っていたのでつい…」


「あはは。まあ、ちょっと不思議な子なんですよ」


「分かってるわよ。心配しないで。でも、話すなんて本当に珍しいわね。食事とかも普通のゴーレムと一緒なの?」


「食事は普通ですよ。魔力のこもった石とか輝石とか魔石ですね」


「えっ!?それって高くない?」


「う~ん、どうでしょう?でも、従魔が食べたいものですからそんな風に考えたことはなかったですね」


「へぇ~、色々な魔物使いがいるのね」


「リクターさんたちが見て来た魔物使いの人はどんな方でした?」


 その言葉に私も興味が出てきたのでたずねる。


「そうねぇ。冒険に出る前はそれなりに安いものが多かったわね。その代わり、その時に活躍したらご褒美に良い食事が出る感じのところが多かったかしら?多いといっても魔物使いと組むこと自体少ないから3組ほどだけど」


「むむむっ、それはいけませんね。私たちは食事の管理などはご主人様にお任せする形になります。ですから、自分でベストコンディションを作るのが難しいのです。普段の食事こそよくなければ、肝心な時に全力を発揮できません!」


「ということみたいです。ぜひ今度、他の魔物使いの人にあったら伝えてあげてください」


「そうね。彼らも従魔の扱いには手を焼くことも多いみたいだからアドバイスしておくわ」


「ティタ、それ本当だろうねぇ。あんた、MP供給は受けてるんだろ?」


「ジャ、ジャネット様!疑いになるのですか?…本当ですよ」


「ははは、ティタ焦ってる」


「リュート、黙りなさい!」


「あら、ティタちゃんはリュートには厳しいのね」


「こいつは敵ですから」


「ティタったらまた…。なぜか、リュートとは従魔になってから仲が良くないんですよね」


「あ~、う~ん。まあ、それはしょうがないかもね。でも、本当にかわいいわね。ゴーレムなのに小さいし、頭は働くし」


「そうなんです!こう見えて200歳以上ですからね!」


「ほう?そんなに長生きするのか。だが、それならゴーレム使いは自分が引退した後どうしているんだろうな。もっと騒ぎになってもおかしくなさそうだが…」


「う~ん。ティタも大人しいですし、引退してものんびり暮らしてるんじゃないでしょうか?私が出会った時も敵対したことはなかったですから」


「それなら一家の守り神になってくれるかもね。いい経験が出来たわ。私もご飯を上げていいかしら?」


「大丈夫ですよ。魔力のこもっているものなら大体食べられますから」


「それじゃあ、何かいいものはと…あっ!これがいいわね。昔商人に騙されて買ったレッドワイバーンの魔石よ。かけらでも金貨5枚もしたんだから!」


「えっ、あなたまだそれ持っていたの?もう3年ぐらい前のよね」


「いいでしょ。悔しかったんだから!別に火の魔法を込められる訳でもないし」


「ん?それは…」


「ティタ、どうしたの?」


「いえ、いただきます!」


 スッと素早くリクターさんから魔石のかけらをもらうとすぐに口に含むティタ。


「うう~ん。この動き、どこかで見たような…」


「気、気のせいですよ!別に他の鉱石だとか分かりませんから!」


「でも確かに以前見たんだけどなぁ」


「え?このゴーレムって食べたものが何か分かったりするの?」


「まあ、経験則なので食べないと分からないんですけどね」


「それで、結局あの魔石はなんだったの?別に欲しいなんて言わないから教えて、ティタちゃん!」


「り、竜眼石…」


 ちょっとバツが悪そうにティタが答える。


「え!?竜眼石?あれが?」


「か、かけらだから。あの中心の赤かった部分だけ。他はルビー」


「それじゃあ、昔魔道具にできなかったのって…」


「元々魔石じゃないからだったのね。あの商人も竜眼石のかけらならそれなりに良い値段で売れたのに」


「でも、よく食べられたわね。あの石って硬いって話なのに」


「竜眼石は硬くておいしい」


 そう言いながら、ちらりと私の杖を見るティタ。まさか、まだ狙ってるんじゃないよね?


「魔力に大きく作用する石だから美味しいのかしら?それにしても、もったいなかったわね」


「しょうがないわ。食べてもらわないと分からないんだもの」


「ん、お礼にもう少し魔石をくれたら鑑定する」


「本当?アスカちゃん、ちょっとティタちゃん借りるわね」


「どうぞ」


 久し振りに従魔モードからゴーレムモードにティタもなっているし、私はティタを貸し出すことにした。


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