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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市での日々

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ボス部屋と未知の階層

「お邪魔しま~す」


 ポコッ


「こら、緊張感を持ちな」


「はい…」


 この間、何度も戦ったせいか少しまったりボス部屋に入るとジャネットさんに注意された。


 ガァ?


 中に入って数秒、私たちの前に現れたのは大きな亀さんだった。


「珍しいな。ビッグフライタートルか」


「知ってるのかい?あたしらはまだ見たことないね」


「ああ。タートル種でも大型に入る魔物で、甲羅に身を隠している時はまず攻撃は通らない。後は風魔法を使って飛んで突進してくるぞ」


「と、飛ぶんですか!?」


「そうよ。風魔法を使って飛んでるから、軌道には気を付けてね」


「分かりました!」


 初めての相手とは言え、敵はたったの1体。私たちはある程度距離を取って対峙する。


 ガァァァ


「ほんとに飛んだ!」


 リクターさんの言葉通り、ビッグフライタートルは空へとその巨体を浮かび上がらせた。


「気を付けろ!まずは避けることに徹するんだ」


「ん~?」


「アスカ、どうした?」


「いえ、ちょっと気になることがあって…」


「危ないわよ。戦闘中に考え事なんで」


「そうなんですけど。よっと」


 私はなんともなしに風の魔法をビッグフライタートルへ向けて放つ。


 ドスン


 ガァ?


 ドスンドスン


「何をやっているんだ奴は?」


「それより、チャンスだよ!」


 相手の意図は不明だけど、ここだと思ったジャネットさんが一気に跳び上がり、剣を振り落とす。


 スパッ


 ドンッ


 飛び上がれないことに精一杯だったビッグフライタートルが敵に気づいた時にはもう遅く、首を甲羅にしまう前に首を落とされた。


「ふぅ。厄介そうな敵だと思ったけど、大したことなかったねぇ」


「それにしてもどうして飛ばなかったのかしら?」


「そうだな。普通に戦えばそれなりに手間取る相手だぞ。甲羅は魔法も弾くし、巨体だから一撃が重たいしな」


「アスカ、なんかしただろ?」


「あっ、分かりました?上手くいくかは自信がなかったんですけど」


 私がやっていたのは簡単なことだ。風魔法で飛ぶというのは自分の全身に風をまとわせたり、空気の流れを調節することで可能になる。その気流を乱すことで飛べなくしていただけなのだ。だから、特殊な魔法も使っていないし、多分誰にでもできるだろう。


「…というわけで、誰にもできる攻略法ですよ!」


「ふ~ん。面白そうだし、役立ちそうね。フライ!」


「うわっ!?おい、リクター。何をしてるんだ」


「ちょっと実験。はいっ」


 ドン


 リクターさんが私の説明した通りに一度、ファイスさんを浮かせると気流を乱して地面に落とす。


「確かにできるわね」


「何俺で実験してるんだ、リクター」


「だって他の人じゃできないでしょ?はい、アスカちゃん」


「?」


 こぶしを握ってリクターさんが手を出してきたので、よくわからないまま私も手を出す。


「ほら、手のひらを上にして開いて開いて」


「こうですか?」


 私が言われた通りに手のひらを近づけるとこぶしを開くリクターさん。


 チャリン


「ん?」


 何か音がしたので手のひらを自分の方へと戻すと、そこには金貨が3枚置かれていた。


「ええっ!?どうしたんですかこれ?」


「そりゃあ、情報量よ。風魔法のいい使い方教えてもらったもの。ああいう魔物以外にも盗賊とか色々応用のし甲斐があるから、相場はそれぐらいよ」


「でも、合同パーティーですし」


「こういうのは別よ。ほら、昨日の見張りだって両方ともバリア魔石があったから見張りも半々だったけど、そうじゃなかったら割合も人数も変わったでしょ?分けるところはちゃんと分けるのよ」


「分かりました」


 有難く金貨をもらった私は自分の方のメモにも今回の事を書き留めておく。まだまだ先のことになるけど、知識としてまとめたいと思ってるからね。


「あっ、簡単だけどビッグフライタートルの絵も描いとこう」


 スケッチブックを取り出して消える前の姿を頭に留め、描いていく。


「あれは何をしているの?」


「魔物辞典を作ってるんだとよ。よくやるよ」


「でも、あれば役に立ちそうね」


「普通に買えると思わないことだな。今まとめられているのだけでも、かなりの情報量だ。貴族の持ち物にしかならんだろう」


「そんなにいい出来なの?」


「まあ、さっきも見てただろうけど、絵も付いてるし攻撃方法に始まって特徴やサイズまであるからねぇ」


「なるほど。実は冒険者じゃなくて学者なのかもね」


「学者ねぇ。掛け持ちの職業が多くて大変だね、アスカは」


「描けました!」


「もういいのかい?」


「はい。ここを出ないといけませんし、大体の特徴は描けましたから」


「それじゃあ、宝箱を開けようか」


「そうだね。せ~の」


 私はボス宝箱。リュートがフロア宝箱を開けてみる。


「さてさて、中から出てきたのは…ん?」


 私は中に入っていたそれを手に取る。ある意味びっくりした。まさか、こんなサイズなんて。


「アスカの方はどうだった?」


「ん~、これかな」


 私は出てきたものをリュートに見せる。


「小さい甲羅?」


「そうなの。あんなに大きい亀さんだったのに宝箱の中に入ってたのはこんなに小さい甲羅だったんだ~」


「なんに使うんだろうこれ?」


「一応載せてみるね」


 私はバッグから本を取り出すと、その上に小さい甲羅を載せてみる。


「反応なし。いいものではあるみたい」


「う~ん、そういう風には見えないけどなぁ。でも、Cランクはあるみたいだから鑑定行きだね」


「うん。そっちは?」


「一応良さそうなものだけど、うちだとどうかな?」


 リュートが慎重に取り出したのは刃渡りが長い剣だった。剣というよりはちょっと刀に似てるかも?


「2人とも、どうだったんだい?」


「ん~、私の方はよくわからないものでした。それなりに価値はあるものみたいですけど」


「リュート君の方は?」


「こっちは使えそうですね。リックさんはどうですか?」


「これはまた長い剣だな。ファイスは何かわかるか?」


「それか。恐らくディープエッジだな。刃渡りは1.7mほどで幅が狭いからな。長さの割に軽量で刺突性能が高い。特徴的な分、使いにくいが人によっては扱いやすいだろう」


「ちなみに市場だとどのぐらいだ?」


「買取で金貨3枚だな。確かCランクの武器だったはずだ。ただ、素材が分からんから鑑定した方がいいかもな。鉄に見えて魔鉄製だったりとまぎれていることもあるからな」


「こっちのは見たことないですか?」


「どれだ?甲羅?悪いがこれは見たことがないな。俺たちはそんなに飾り物は見ないんだ。後は売るだけでこういう置物のようなものは知らないんだ」


「そうよね。私も見たことがないわね。リクターは?」


「私もないわ。魔道具でもないようだし、お手上げね」


「大体、ビッグフライタートル自体珍しいボスだからな。この下で出るという話も聞いたことがない。もしかしたら、50F以降なら生息しているのかもしれんが…」


「こんな大きい亀さんがうようよいるのは嫌ですね」


「そうね。ここまで大きいと重戦士でも防げないでしょうし」


「それじゃあ、宝も回収したし進むか」


「分かりました」


 手に入れたアイテムは一度、マジックバッグにしまって、いよいよ未知の31Fへと降りていった。



「ふっ!」


「うわっ!」


「こっちに!」


 リュートの言葉でそっちへと移動する。31Fに降りた途端、私たちはガーキャットの群れに襲われていた。数も7匹近くいるみたいで一度、体勢を立て直すために陣形を変更する。


「行けっ!魔槍よ」


 リュートが目の前にいるガーキャットに魔槍を投げつける。私はその間に周囲の状況を把握して魔法を使う。


「そこなら!ストーム」


 人を巻き込まない場所にいるガーキャットに向けて魔法を放つ。


 キャン


 数体のガーキャットにダメージを与えると、そこを狙ってリックさんが攻撃していく。


「上手いぞ!」


「後方は任せな!」


 こっちを狙ってくる魔物はジャネットさんが倒していく。しかし、私は新たな反応を見つけた。


「ジャネットさん、左奥!」


「了解!」


 赤銅色の鎧をまとったジャネットさんが、左手から小さいバリアを発生させながら私の指示した方を向く。


「こいつらかい!はぁっ!」


 ギャン


 新たに現れたのはウルフ種のようだ。31Fで出るということは恐らくソードウルフだろう。


「リュートもあっちに行って!ここは私が倒しとくから」


「分かった。気を付けてね」


「そっちも」


 足音でリュートが離れたことを確認した私はそのままガーキャット討伐に意識を向ける。


「木がないからみんな散らばってる…それなら!ファイアーウォール」


 私はリックさんたちとの間を遮るように炎の壁を作り出す。当然、それに驚いたガーキャットたちはこっち側に集まる。


「この密集度合いならいける!せやっ!」


 私は杖を弓に持ち替えて連続で射る。


 トスットスッ


「これで2匹!残りは?」


「アクアスプラッシュ!」


「こっちはもう終わるわね。私も向こうに行くわ」


「頼んだ!」


 残り1匹のガーキャットをジャネットさんに任せてリリアナさんもソードウルフの元へと向かって行く。


「はあっ!アスカ、他にはいないかい?」


「…いません」


「よしっ!こっちも移動するよ」


 ガーキャットたちを殲滅した私たちは追加の敵がいないことを確認し、そのままソードウルフを倒すため、戦場を移動したのだった。






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