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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市での日々

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こぼれ話 おまけ アルトゥールの3人

こちらの話は本編より先の話を含んでおります。

気になる方は未読のままスキップして頂きますようお願いします。

 あれから幾星霜…ではなく数年。私たちはいまだにシルキーズとして活動していた。


「はぁ~、今日も収穫なしか」


「あら、フェリニア。収穫はあったでしょ?今日は珍しい退魔の宝玉が手に入ったじゃない」


「そんなのは全部副産物よ。私たちが何のために来たのか忘れたんじゃないでしょうね!」


「それは覚えてるわよ。でも、それとは別にこうして普通には手に入らないものを見つけるのも楽しいじゃない」


「はぁ~、あんたって根本的なところでお嬢様よね」


「まあまあ、焦っても変なやつにつかまるだけよ?フェリニアも宿に戻るわよ。先に行きましょう、ヴェイル」


「…」


 フェリニアが文句を言っている間に私はヴェイルの手を取って宿に帰る。まあ、もちろん部屋は別だけどね。もう何年も一緒なんだし、こういうのは慣れよ。



「はぁ~、今日もダンジョン探索にいそしんだわ。明日もあるからもう寝ないと」


「もう寝るの?ちょっとは夜更かしでも…ってもう寝てる。相変わらず寝つきが早いんだから」


 すぅ~




「ん?何…」


「こんにちは~!」


「あれ?アラシェルちゃん様。どうされました?」


 この方はアラシェル様。私の信仰する女神さまだ。今は小さい人形の姿をしていて、性格的にも違うので便宜上、アラシェルちゃん様と呼んでいる。


「久しぶり、エリクア」


「今日はどうされたのですか?私は明日、冒険に出るんですけれど…」


「もう~。冷たいな~、エリクアは。アスカは優しいのに」


「それはしょうがないでしょう。アラシェル様は私に会う時は私のMPを消費してこうして会うじゃないですか。でも、アスカちゃんと会う時は御自分の御力で会っておられるのですよね?」


「当たり前だよ。信徒はアスカのために、私もアスカのために。これが教義だからね!」


「いつかアスカちゃんに被害が出ないか心配です」


「大丈夫。他の巫女もアスカのために動くから!」


 全然全く良くない。それって教団の私物化ではないか。と思うのだが、肝心の主神がこうなのだから問題ないらしい。この数年の間に私も立派なアラシェル教の信徒になり、こうして神託めいたことも受けるようになっている。ただし、『巫女にしたら他の人の力が減るから、エリクアは自分で頑張って!』とのことだ。別に困らないからいいのだけど、真正面から言わなくてもいいと思う。


「それで、今回は何ですか?」


「話が早くて助かるよ。エリクアってアスカから定期的に私の像をもらってるよね?」


「はい。ありがたく、1,2年に一度ほどもらっておりますが…」


「でも、全然ま~~~ったく生かせてないよね?」


「い、生かせてないとは?」


「だって、結婚してないじゃん!それじゃあ、この大陸にアスカの良さが広まらないじゃない!」


 ピクピク


 私は顔を引きつらせ、何とか心を落ち着けて返答する。


「お言葉ですが、出会いがないのではしょうがないではありませんか。本当に加護があるんですか?」


「エリクアこそ失礼な。ちゃんと効果はあるんだから」


「じゃあ、それを見せてくださいよ。私もフェリニアもずっと捜しているのですよ!」


「む~、多少でも力は温存しておきたいのにな~。でも、アスカに協力的だし、しょうがないか。じゃあ、今から言うことをちゃんと覚えておくんだよ」


「は、はい!」


 人のMPを吸い取って面倒ごとを押し付けてくるだけかと思ったら、流石は運命の女神様だ。ちゃんと役に立つではないか。


「当たり前でしょ!それではエリクアに神託を授けます」


「はいっ!」


「明日、冒険に行く前に準備が出来たら必ず最後に鏡を見に行くこと!いい?」


「それだけですか?」


「うん。そこに映る人の姿があなたの運命の人だから」


「なるほど。水鏡のようにそこに映し出してくれる訳ですね。フェリニアに気づかれないようにしないと…」


「じゃあ、私はこれで。本当にちゃんと運命を受け入れてよ」


「当たり前です!これで数年間の苦労が報われるのです」


「そう。じゃあ、頑張ってね~。あっ、ちゃんとMPはダンジョンに行く前に回復できるよう寝た瞬間にここを使わせてもらってるからね~」


「ありがとうございます!」


 流石は女神様だ。流石でいいのよね?



「お~い、エリクア~。もう朝よ~」


「うん…朝?」


「そうよ。うんうんうなってたけど、どうかしたの?」


「ああ、またアラシェルちゃん様よ」


「あのちびっこ女神からまた何か言われたの?」


「まあね。でも、今回は珍しく良いことだったわ」


「へぇ~、珍しいこともあるものね。なんだったの?」


「秘密」


「教えなさいよ~」


「それより、今日組むのはまた新しいパーティーでしょ?早く行きましょう」


「それなら、さっさと食事してきなさいよ」


「分かったわ」



 さあ、食事も済ませていよいよ出発だ。


「おっと、その前に…」


 宿の出口まで行ったところで大事なことを思い出した。何なら今日のダンジョン探索より大事だ。


「どうしたの?」


「ちょっと、忘れたことがあったから戻るわ。すぐに戻ってくるから!」


「怪しい…私たちも行くわよ!ヴェイル」


「俺が部屋に?」


「なぁ~に言ってんのよ。今更でしょ?別に着替えを(のぞ)く訳でもないんだし。さっ、行くわよ」


 怪しい動きをするエリクアを見張るため、ヴェイルの手を取って部屋に戻る。



「さて、誰もいないわね。鏡を見て…あら?何も変化がないわね。アラシェルちゃん様はちゃんと運命の相手を映し出すって言ってたのに」


(私はそんなこと言ってないよ~。まあ、聞こえないと思うけど)


「エリクア!何を内緒でやってるの!!」


「わっ!?フェリニアにヴェイルまで!えっ!?そんな、2人が鏡に…噓でしょ」


 私はもう一度鏡を見た瞬間、愕然(がくぜん)とした。そこにはフェリニアとヴェイルが映っていたのだ。


「ま、まさか。2人がそうなの?じゃあ、私のこれまでの活動っていったい…大体それならもっと早くに言いなさいよ~~!!あの女神!」


「もう、何を訳の分からないことを言っているのよ。待ち合わせに遅れるわよ。私たち、先に行ってるからね」


「聞こえてないようだが?」


「放っておいたら気づいて後をついてくるわよ。さっ、行きましょうか」


 なぜか鏡を見たまま放心しているエリクアを置いて、私とヴェイルは他のパーティーとの待ち合わせ場所に向かったのだった。



 ENDE?


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― 新着の感想 ―
[一言] 運命とは、得てしてそういうモノですね。 身近すぎて見えないのが幸せ。
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