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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市での日々

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こぼれ話 アルトゥールに向かう2人 2

「もうあれから1か月よ。全く!一人も!パーティーメンバーに加わらないじゃない!」


「しょうがないじゃない。誰でもいいって訳じゃないのよ?最悪、私たちの相手じゃなくても一緒に冒険することになる訳だし」


「私のイケメン・シブメンハーレム計画が…」


「ちょ、ちょっと!フェリニアはそんなことを考えていたの?」


「や~ね、もちろん出来たらな~って願望よ?別にそれ狙いって訳じゃないわよ」


「はぁ~、そんなだから未だにつかまらないのよ」


「それはエリクアも一緒でしょ。さあ、今日も行くわよ!」


「はいはい」


「ところで今日はなんてパーティーと合同だっけ?」


「ファングだったかしら?」


「全く聞いたことがないパーティーね」


「そりゃあ、ここに来てから組んだ新規のパーティーだもの」


「ちょっと!そんなパーティーで大丈夫なの?」


「あのねぇ、前に一緒になった結成4年のパーティーの時に『あいつらたかが4年一緒だからって見せつけてくれちゃって!いい、エリクア!次に捜すパーティーは絶対新規よ!!』っていうから頑張って捜してきたのよ!」


「あはは、そういえばそういうことも言ったような…」


「とにかく!集合時間に遅れるなんて幸先悪いからもう行くわよ」


「は~い」


 こうして私たちがダンジョンの入り口に到着すると、すでに3人組が待っていた。


「あんたたちがシルキーズの2人か?」


「そうよ。そっちは?」


「ああ、俺はファングのリーダーをやってる、ベオだ」


「俺はシャンク。2人とも美人だね~、よろしく!」


「ヴェイル」


「私はシルキーズのリーダー、フェリニアよ。こっちはエリクア。よろしくね、3人とも」


「よろしく」


 私たちはお互いに自己紹介をする。見た感じは最初の2人はまあまあ。ただ、2人目はちょっと軽薄そう。最後の男は寡黙で背も高くてちょっと怖い感じ。まあ、この人には実力以外を求めないでおこう。ちらりとフェリニアの方を見ると、あっちもそんなに変わらない評価のようだ。これは時間が勝負ね!



「じゃあ、時間ももったいないし中に入りましょうか。今日は30Fまで行くのよね?」


「ああ。でも、心配はいらないぜ!俺たちが魔物を切り開いていくからさ!」


「そうそう。30Fまでなら何度も行ってるし、任せてくれ!」


 頼もしい言葉だけど、ちょっと心配だわ。騎士団にいる人もこういう人って頼りにならないことが多いのよね。あっちはまだ装備がいいから何とかなるだろうけど。


「どうしたの、エリクア?」


「ううん。格好いい装備だなって思って」


「そうだろ?銀で統一した鎧なんだぜ!魔法にも強くて高かったんだ」


「それは頼もしいですね」


 そう言いながら、相手の体格を確認する。この人の筋肉量じゃ、総銀製の鎧は重すぎないかしら?つなぎ部分まで金属みたいだし。隣の剣士も鎧の装飾が豪華だ。あれは傷がついた時の修理費が大変そう。大男の方はと…。


「何か?」


「い、いえ。ごめんなさい。鎧はそれ以外ないの?」


「ああ。他は不要だ」


 短く返事をする大男の装備を改めて見てみる。重戦士と見られる大男の鎧は外装は金属なものの、何かの魔物の革を使っているのか、歩いている時に大きな音はしない。また、盾も大型ではあるものの、下は突起があり防壁効果の高いものだ。前述の2人と違ってかなり実用的な装備に仕上がっている。


「どうしたのよ、エリクア。あなたそういう趣味だったっけ?」


「違うわよ。ちょっと、2人とは装備が違うなって思って…」


「ああ、そいつは口数も少ないし、重戦士で人気がないから入れてやったんだよ。結構、役に立つぜ!守るのは上手いしな」


「ふ~ん」


 リーダーの男の言葉に私はちょっとだけこのヴェイルという大男に興味が沸いた。


「じゃあ、まずは20Fまで行きましょう。そこで一度、軽く清算してから本番ね」


「いいぜ!まあ、俺たちは全部後でもいいんだけどな」



 清算を20Fで一度行うのはこの一か月で分かったことだ。30Fまで楽勝と言っているパーティーの中にも実力的に微妙なのがいる。それに性格の悪い連中に付き合う気がない時も、そこを区切りにして清算する。私たちだけで20Fでも構わないのだけど、流石に少し危険だからね。


「さてと、今回はどうかしら?」


 こうして私たちはダンジョンに潜った。




「おい!そっちだ」


「分かった」


 ズバッ



「ふぅん。ま、悪くはないんじゃないかしら?」


「そうね。即席パーティーである程度、連携もできているし」


「でもねぇ…」


「そうなのよね」


 あれから、勢いよく進んだ私たちは順調に20Fのボスを倒した。残念ながら大したものは手に入らなかったが、それでもひとり金貨1枚はある。20Fまでで数日の滞在費になるなら十分と言えた。今、問題なのは剣士の2人だ。さっきから自由に敵を倒している。それ自体は問題ないのだが、私たちの方を一切見ていない。ヴェイルが守ってくれていなかったら私たちも常に気を配っていないと援護できなかっただろう。


「もうちょっとこうねぇ…」


「そうよね。イイオトコとは呼べないわよね」


 私とフェリニアは心の中でペケを作って2人に追いつく。


「どうだ!俺たちは強いだろ?」


「ええ、そうね。どうせだしこの勢いのまま30Fのボスを倒しちゃいましょ!」


「そうだな!」


「…」



 彼らと早く別れたい私たちは焚きつけてどんどん進んでいく。そして、26 Fの階段近くに来たところで…。


「うわぁぁぁぁ!」


「に、逃げるぞ!こんなのまでここにいるのかよ!」


「ちょっと待ちなさい!」


「無駄よ。逃げ足だけは速いわね。それより、2体だけでも連れて行ってくれたことを感謝しないとね」


「うっ、そうね」


 時は遡ること2分前。26Fまで到達した私たちは、下に降りる階段を探すため歩いていた。


「階段見つからね~な」


「おい、そんなに闇雲に歩くなよ」


「大丈夫だって。このパターンは魔物も弱いし」


「でも、数が多く来たら危険じゃないの?」


「そん時は俺らが守ってやるって!」


 よく言うわね。ここまでも私たちの動きを見ていたのはヴェイルだけだっていうのに。


 ガァァァァァーーー


 その時、前方から咆哮が聞こえて来た。


「ん?なんだこの声」


「草原にこんな声を出す魔物いたか?」


「レアな魔物かもしれないぜ。行くか?」


「ああ!」


「ちょっと…」


「止める間もなく行っちゃったわね。どうする?」


「しょうがないわ。行きましょう」


 こうして私たちも2人について行ったのだが。


「オ、オーガバトラーが6体も…」


「嘘だろ。ボスフロアだってこんなに並ばないぞ!」


「勝てっこない!うわぁぁぁ」


「置いてくなよ!」



 こうして、オーガバトラーと壁役もいない状態で戦わないといけない私たちだったが…。


「いったん距離を取りましょう!」


「そうね」


 あっちに注意が向いた一瞬のスキをついて木の裏に隠れ距離を取る。しかし、こういう時には悪運に見舞われるもので…。


「お~い、こっちに階段がありそうだぞ!」


「げっ!他のパーティーが来るわよ」


「なすり付けにはならないと思うけれど、ちょっと不味いわね」


「しょうがないわねぇ」


 見えて来た新しいパーティーも私たちと同じく、前衛は剣士のパーティーだ。急襲を受ければたちまち崩壊するだろう。


「あんたたち!」


「わっ!?他の冒険者か…」


「そこはオーガバトラーがいるからすぐに一度下がるのよ」


「本当か!不味いな…」


 私たちの言葉を聞いてすぐに斥候役は下がる。


「あたしらも下がらないとね」


「あなた。私たちも協力するわ」


「済まない」


 ガァ?


 下がる時にはどうしても音が鳴る。どうやら私たちの移動音を察知して奴らもこっちに向かってきた。


「クライン!どうしたの?」


「不味いぞ、オーガ―バトラーが4体だ。直ぐに迎撃する!」


「わ、分かった。そっちの三人は?」


「私たちも戦うところだったの。協力するわ!」


「そういう訳だからよろしく。私は水魔法であいつらの足元を狙うから、剣士の人は注意して!ん、3人?」


「了解よ!」


 剣士2人と魔法使い1人に斥候役の弓使いが1人のパーティーは連携もよく、私の水魔法でバランスを崩したオーガバトラーを1体、すぐに片づけた。


「この調子で…」


「エリクア、危ない!」


「えっ?」


 フェリニアが声をかけ、周囲を確認した時にはもう遅く、私の左からオーガバトラーが剣を振るうのが視界に入った。


「防御が間に合わない!」


「はぁっ!」


 ガァン!


 もうだめだと思って目を瞑る。しかし、大きい金属音がして一向に攻撃は私に届かなかった。


「大丈夫か?」


「えっ!?ヴェイル!!どうして…」


「同じパーティーだ」


 ヴェイルはそれだけ言うと、オーガバトラーの攻撃を2撃、3撃盾で防ぐ。だけど、最初の攻撃は鎧で防いだのか、地面には血が流れていた。


「すっ、すぐに治療するわ!」


 私は回復魔法を唱え、ヴェイルの傷を治すとすぐにみんなの援護に戻り、なんとかオーガバトラーたちを撃退した。



「みんな大丈夫か?」


「ええ、そっちの3人も大丈夫?」


「なんとかね~。ヴェイルも大丈夫なの?」


「問題ない」


「さっきはありがとう、ヴェイル」


「仕事だ」


「あっ、そう」


 本当にヴェイルは無愛想で考えが読めない。でも、さっきのことは一生感謝してあげよう。


「それにしてもあなた達は3人だけなの?ここを抜けるのには危険よ?」


「色々あって、今が三人なだけよ。元はちゃんと5人いたわ」


「う~ん、この際仕方ないわね。悪いけど、一緒に行ってくれないかしら?お金は払うわ」


「俺たちも特に急ぎではないし構わないが、2人もいいのか?」


「しょうがないわね。あいつらに後で払わせるか」


 ヴェイルもコクンとうなずく。こうして、ボスも協力して倒して私たちはなんとか帰ることができた。そして、報告のためギルドに向かうと…。



「あら?大人数でどうしたんですか?」


「ちょっとあってな。今、報告用の部屋は空いてるか?」


「小さい方しか空いて無いですね」


「あら?どこか使ってるの?」


「それが、ファングっていうパーティーがダンジョンでなすり付けをしたってもめてるの。私たちもダンジョン内の事だから手を出しにくくってね。ほら、目撃者とか他のパーティーの証言も取りにくいでしょ?」


「そうか。3人とも少し待つが構わないか?」


「いえ、手間が省けたわ。行くわよ、エリクア」


「そうね」


 ドォン!


「ちょ、ちょっと、何するんですか!」


「な、何だ!?」


「あんた達!私たちを見捨てて逃げたと思ったら、他のパーティーにまで迷惑かけてたのね!」


「げっ!どうしてここに」


「ちゃんとあそこを切り抜けたからに決まってるでしょ!」


「そうよ!全く、逃げた先でも迷惑をかけるなんて最低ね」


「ちょっと待て、お前らこいつらと同じパーティーか?」


「私たちは違うわよ。合同パーティーではあるけどね」


「話を聞かせてくれ。お前たちの思いを汲んでやれるかもしれん」


「乗ったわ!」


 こうして、顛末を洗いざらい話した私たちの手によって名前も忘れた2人は罰金と1年間のダンジョンに入場禁止という割合厳しい措置が取られた。珍しく、目撃者がいたからだそうだ。いないと中々措置はできないらしい。そして、ヴェイルは…。


「ほら、今日もシルキーズの目的達成のため、行くわよ!」


「いいのか?」


「何を言っているの、ヴェイル。私たち3人は仲間じゃない!私たちは旦那を、あなたは嫁を捜すのよ!」


 こうして私たちは新生シルキーズとして再出発し、大活躍の日々を送ることとなる。




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― 新着の感想 ―
ヴェイルいい男だと思うんだが、金持ちイケメン狙いな婚活女子二人にはわからんのだねぇ
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