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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市での日々

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怒れる従魔たち

「アスカ出来たよ」


「ほんと?もうお腹ペコペコだよ」


 ようやく出来上がった料理をリュートと料理人のおじさんが運んできてくれた。


「そちらの方々もどうぞ」


「ようやくかい」


「楽しみだな」


「それじゃあ、いただきま~す」


 出来上がったから揚げをまずは口に含む。


 もぐもぐ


「どう?」


「ん~、やっぱりリュートは洋食派だね」


「洋食派?たまにアスカが使うけどどういう意味なのそれ?」


「ステーキとか、こういう味付けがメインなところ?」


 食べたから揚げは確かにおいしかった。ただ、無意識なのかリュートが醤油を苦手な所為か分からないけど、味付けが違うんだよね。簡単に言うと衣の小麦粉に醤油とか塩こしょうを混ぜるんじゃなくて、デミグラスソースを混ぜる感じ。和食じゃなくて洋食の味付けになるんだよね。


「これってから揚げというより、チキンステーキだよね…。次はこっちのカツも食べてみよう」


 カツの方は元々ソースなのでそんなに違和感はない。ただ、今回はロールカツなので巻き方がどうなっているかだ。


 サクッ


「ん、揚げ方は良い感じ。肉の方は…」


 食べた限りではうまく巻いてあるみたいで、じゅわっと肉汁が口の中で広がった。それに薄く切られた肉のお陰でカツが柔らかい。


「おや?味付けに関してはまあ好みがあるけど、揚げ加減とかはいい感じだねぇ。アスカもそう思うだろ?」


「そうですね。から揚げだけはもう少しオリジナルに近づけて欲しかったですけど」


「ま、それは店の自由だからねぇ。リックはどうだい?」


「ああ、正直初めて食べるが美味いな。それに、真新しい味だ」


「そいつは良かったね。ロールカツの方は言うことなしかねぇ。丁寧に巻かれてるし」


「でも、毎日は難しそうですね」


「エレンが手伝ってるのを見てたけど、めんどくさそうだったしねぇ」


 ようやくの食事に私たちは満足しつつ感想を言い合う。おじさんも今日のことで自信が少しは付いたようで、休業をやめるみたいだ。



「本日は本当にありがとうございました」


「いや、ただ飯になって悪かったね」


「いいえ!これでこの店もにぎわうこと間違いなしですよ!」


「それじゃあ、また!」


 おじさんと別れてお腹も一杯になった私たちは宿へと足を向ける。


「おっと、あたしはちょっと用事があるから後で帰るよ」


「そうですか?じゃあ、私たちは先に帰ってますね」


 そうして先に宿に戻ったのだが…。


 ピィ!


 にゃ~!


 宿に戻るとアルナとキシャルが私に飛びついて来た。


「もう~、2人ともそんなに寂しかったの?」


 ピィピィ!!


 にゃ~~~~!


「えっ、ご飯?しまった!そういえば、帰ってきてからあげるつもりだったんだ」


 私がすぐにご飯を用意しようとするも、その間もなんでもっと早く帰って来ないんだと主張する2人。まあ、確かに食事に出かけたのが12時前で、おじさんにつかまって料理をしていたのが1時間と少し。それから食事の時間も入れると、もう14時だもんね。


「ティ、ティタ、なんとかなだめられない?」


「ご主人様…」


「ティタ…」


「申し上げにくいことではありますが、これほど遅くなるのでしたら一報いただければと思います。私が多少の食事は持っておりますし、この子たちにも言い聞かせられます。まさか、念話を忘れていた訳ではありませんよね?確かに、我々は毎日魔力を頂いて活力を得ております。しかし、食事もそれとは別で必要なものなのです。主であるご主人様にも一度、そのことを解っていただければと思います」


「ティタ、さん?」


 この場での味方だと思っていたティタに説教をされた私はしょんぼりしたまま食事の用意を続けた。ちなみにティタの言ったことを要約すると、我々がお腹を空かせている思いを主も味わってみたらどうだということだ。


「でも、明日はダンジョンに潜るから今日のご飯は…」


「でしたら明後日は問題ないということですね?」


「いや、それはその~」


「ただいま~」


「ジャネット。帰ってきたのか?」


「ああ。ん?どうしたんだい」


「アルナたちがご飯が遅いって怒っちゃったんです」


「やっぱりかい。キシャル、ほら」


 にゃ?


 がさがさと袋からジャネットさんが手を取り出すと、そこには肉串があった。


「ちゃんと出かける前に言っただろ?ちょっと遅くなっちまったけど、飯だよ」


 にゃ~!


「こら、熱いから飛びつくなよ。皿出してやるから」


 ジャネットさんが串から肉を外してお皿に置くと、すぐにキシャルはブレスで凍らせて食べ始める。


 じゃりじゃり


 ピィ


 その光景を羨ましそうに見ているのがアルナだ。


「ア、アルナちょっと待ってね。直ぐに用意するから!」


「アルナ、これ食べられるか?」


 その時、ジャネットさんが袋から小さい物体を取り出した。


 パカッ


 木でつくられた器に入っていたのはトマトのような野菜だった。


 ピィ!


 同じくお皿に置かれるとアルナは私の元から飛び立ちそちらへまっしぐら。まあ、双子のエミールも食べてたし、問題ないとは思うけど寂しいなぁ。


「サラダが売ってなくて、簡単に市場で見て来たもんで悪いねぇ」


 ピィ!


 気にしないでとアルナはトマトをついばむ。


「あの~、御二方。こちらもいかがでしょうか?」


 ようやく食事の用意を終えた私は恐る恐る話しかけてみる。


 にゃ


 ピィ


 残念ながら後でと一蹴されてしまう。まあでも、用意できたのはドライフーズと干し肉だから保存も効くししょうがない。この宿に泊まってからは今出されているような新鮮な食事はあまりなかったし。


「ところでご主人様。私の分は?」


「へ?」


「待った分は補填して頂きませんと」


「あっ、はい」


 こうして、今日の遅いお昼はアルナには薬草を混ぜたご飯を、キシャルには試しに作ってみたジュムーアの肉を使った干し肉を、そしてティタには魔石をあげたのだった。



「アスカ、神像の出来はどうだ?」


「もうすぐ完成です。…できた!」


「おおっ!?見せてもらってもいいか?」


「いいですよ。はい」


 私は完成したばかりのシェルレーネ様の神像をリックさんに手渡す。


「これが…ジャネットがやけに褒めるものだと思っていたが、本当にすごいな。木彫りということは本来、1年や2年で取り換えるものだろう。それをこんな品質で作ってしまうとは…」


「私にとっては確かに2年で取り換えられるものですけど、買う人にとってはその間、信仰をささげる対象ですからね!手は抜けませんよ」


「素晴らしい細工師だ。実家向けの物も頼む」


「ええ。大切にしてもらえるように頑張ります。さてと、細工もひと段落したことですし…」


 まだ、夕方になる前なのでちょっと遊ぼうと思ったのだが。


「アルナ、遊ばない?」


 ピィ


 アルナはまだ機嫌が直らないのか、お家にこもっている。ちらりとキシャルを見てもさっきからジャネットさんとリックさんの間を行き来している。ティタは窓の外を眺めて完全に我関せずだ。


「ううっ、リュート。遊んで~」


「アスカ、遊ぶのはいいけど何をするの?」


「えっと、そうだなぁ。手持ちにあるのは…」


 私はイリス様からもらった遊び道具を出していく。この中で私にもわかりそうなのは…トランプぐらいかな?


「2人でトランプか…う~ん、それもなぁ」


「ここで話するんなら街にでも行ってきたらどうだい?夕飯前にちょっとした買い物とかさ」


「そうします!行こう、リュート」


「うん」


 というわけで、従魔たちの関心を買うことができなかった私は夕飯までの時間をリュートと2人で街の散策に費やした。そして、翌日のダンジョン探索日…。




 ピィ


 に”ゃ~


「アクアスプラッシュ!」


 今私たちはダンジョンの19Fにいる。今日の探索には従魔たちが全員付いてきているのだけど、今まで私はおろかジャネットさんやリックさんでさえ出番がない状態だ。というのも、周囲の探知をティタが前方の探知をアルナが行い、行く先に敵を発見したら即キシャルがブレスをお見舞いする見敵必殺の布陣を組んでいるのだ。


「撃ち漏らしや範囲外の敵もすぐにああやってアルナとティタが倒すから本当にやることがないね」


「よっぽど昨日のことがストレスなんじゃないかい?」


「うっ!」


「それにしても、普段はベッドの上やアスカの肩にいるが、十分な強さを持っているんだな」


「まあね。ただ、もう少しこっちに回してくれてもねぇ」


「順調に進めているのはいいんですけどね。予想より早く進めてますよ」


「それはありがたいけどね。おっ!階段を発見したみたいだよ」


 ジャネットさんの言葉に前を向いてみると、確かにアルナが階段を発見していた。ちなみにアルナが階段を発見しているのは空を飛んでいるからではない。風属性の探知魔法を前方に飛ばして、階段による気流の変化を読み取っているのだ。だから、ティタは代わりに周囲の探知に専念している。


「こうしてみると見事なコンビネーションだね」


「普段は結構みんな勝手してるから、新たな一面かもね」


 リュートもみんながここまで協力していることにびっくりしているようだ。


「あっ、ボス部屋もそのまま入っちゃうの?」


 ピィ!


 20Fに降りると、休憩を取らずにさっさとボス部屋へと向かうみんな。今日はほんとにやる気だなぁ。


 バタン


 ドアを開けると、いよいよボスのご登場だ。


「今回のボスはと…あれはベアー種」


 出てきたのはベアー種の中でも巨大な腕を持つビッグクローベアーだった。その大きな腕は体とは不釣り合いで、鉄の鎧すら引き裂く危険な相手だ。


 に”ゃ


「キシャル!?」


 しかし、ひるむことなくキシャルがビッグクローベアーに向かって行く。そして…。


 シュン


「キシャルが少し大きくなったぞ!?」


「あれは縮小化を解いたんです。キシャルは普段、小さくなっているので」


「そ、そうか」


 縮小化を解いて本来の大きさに戻ったキシャルはしっぽを含めると普段の1.5倍近くになった。そして、それに戸惑ったビッグクローベアーの死角に入ると、首に爪の一撃を繰り出す。


 ピィ!


 それに続いてアルナが頭に風の衝撃波を放った。


 ゴトン


 見るも無残。ビッグクローベアーは戦闘開始5秒で断頭台の露と消えてしまった。




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