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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市での日々

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お料理教室!?

「アスカ、朝だよ」


「ん~。もう朝?」


 翌日、リュートに起こされて食事を取ると、いよいよリックさんのシェルレーネ様の神像づくりだ。



「まずデザインなんだが、俺が持ち歩くものだから教会のイメージに近いもので頼む」


「分かりました。法衣のデザインですね。作った回数も多いですからそれはすぐにできます」


「後は少し大きいものを一つ。こちらは実家の方に送るからデザインは自由で構わない」


「了解です。じゃあ、まずは法衣の方をサクッと作りますね」


 持ち歩くので私は杖を持たない祈りのポーズをしたシェルレーネ様の神像を作る。


「えっと、このオーク材を使ってと。参考にするのはこのポーズで」


 私はオーク材を細工道具で削っていく。


「ん?魔道具じゃないんだな?」


「そっちの方が早く終わりますけど、早く終わりすぎると意見を聞く間もありませんからね。ここはこうした方がいいとかあったら言ってください。あっ、祈りのポーズでいいですか?」


「ああ。その方が欠けも起きないだろうから頼む」


「じゃあ、法衣はどうします?簡単な服に上から着る感じですか?それとも、最初から着るだけですか?」


「うん?どう違うんだ」


「えっと、こんな感じですね」


 私はスケッチブックを出して2つの違いを見せる。


「う~ん、上着のデザインだと強度は大丈夫か?」


「どっちもそんなに変わりませんよ。別に作って被せるわけじゃないですから」


「そうか。ならそっちで頼む」


「分かりました」


 私は少し工程が進むたびにリックさんに聞き取りをして作業を進める。



「あっ、私は細工してて大丈夫ですけど、リックさんは暇じゃないですか?」


「俺か?大丈夫だ。騎士も野営で暇な時は細工物を作るやつもいるしな。まあ、アスカの細工とは天と地の差があるが」


「そんな。騎士さんが作るものだって十分価値がありますよ。きっと、誰かを思って彫ったものでしょうし」


「ふっ、本当にアスカは…」


 それからもお昼まで軽く会話をしながら細工を続けた。



「ん~、ちょっと休憩しましょう」


「アスカ、休憩というかお昼だよ」


「ええっ!?もうそんなに経ったの?そこまで集中してなかったのになぁ」


「何を言ってるの。途中からリックさんの話、あんまり聞いてなかったでしょ?」


「そ、そんなことありませんよね?」


 私は控えめにリックさんの方を向く。


「ちゃんと俺の意見を聞き入れて作ってくれたぞ」


「ほっ」


「それ以外の話をほとんど聞いていなかったのも事実だが」


「うぐっ!」


 リュートの話は大体合っていたみたいだ。


「まあ、それよりご飯ですよ。今日はどうするんですか?」


「ジャネットが帰ってきてからでいいか?それなりに安くていい店があるんだ」


「私はいいですよ」


「僕も構いません。というか、探すのも手間なので案内してもらえると助かります」


「それじゃあ、帰ってくるまで少し待つか」


 その後、少し待つとジャネットさんが帰ってきた。


「うん?みんな揃ってどうしたんだい?」


「ジャネットさんを待ってたんです。リックさんがいい場所を知ってるって」


「ふ~ん。別に先に食べてても良かったのに。ま、これ以上待たせても悪いし行くか」


 にゃ~


「おっと、お前は留守番だよ。ちゃんと飯は買ってきてやるからな」


 ピィ


「アルナも今日はお留守番だよ。毎回、受け入れられるか分からないからね」


 ピィ…


 寂しそうに鳴くアルナ。心苦しいけどこればっかりはね。アルバみたいに慣れた町じゃないし。私たちはキシャルたちと別れて一路、リックさんの案内で店へと向かう。



「それで、何がうまい店なんだい?」


「メインはオーク系のステーキだが、最近は少し凝ったものも扱っていてな。ロールカツやから揚げもあるぞ」


「ほんとですか!?楽しみです」


 わくわくしながら私たちは店に向かう。


「ん?臨時休業」


「げっ!この店か…」


「ジャネットさん、この店知ってるんですか?」


「あ、いや、ちょっとね」


 ははは、とジャネットさんにしては歯切れの悪い返事が返ってきた。


「誰だい?しばらくうちは…あんた!」


「あちゃあ」


「頼む!今日だけでいいからあんたの知ってる味を俺に教えてくれ!!」


「ジャネットさん、なに言ったんですか?」


「いや、ちょっと鳥の巣で出てたのと味が違うなって言っただけだよ」


「あれはそんなものではなかった…。もっとこう、全く別物だろう?という顔をしていたのだ!」


「ジャネットさん…」


「そんな顔で見るんじゃないよ、リュート。あたしだってそこそこあそこで食べてたんだから味の違いが気になっただけだって」


「でも、相当参ってるみたいですし、話を聞いてあげたらどうですか?」


「ほ、本当ですか?お嬢様は救世主です!」


「あたしは別に構わないけど、本当にいいのかねぇ…」


 何かジャネットさんがぼそっと言った気がするけど、私は久しぶりにから揚げが食べられると思って上機嫌で店に入っていった。



「とりあえず、まずは皆さんの意見も聞きたいので一口サイズで作ってきました」


「ありがとうございます!じゃあ、早速…うん?」


「アスカどうしたの?」


「リュートも食べてみてよ」


「分かった」


 私は不思議そうにこっちを見ているリュートにも食べるように促す。一口食べれば私の言いたいことが分かるはずだ。


「これ…は。味付けがかなり違うね」


「でしょ?醤油が苦手なリュートでもから揚げは大丈夫だったでしょ?でもこれはちょっとね」


「ああ、お2人もそうですか」


「いや、決してあなたの腕が悪いんじゃないですよ。僕らはこれが広まった国から来たんです。そこで食べたのと味付けが違ったので」


 必死にリュートが言いわけをするも、料理人のおじさんはがっくりと肩を下ろす。


「まあ、この味で街の人間に受けてるならいいんじゃないか?」


「みんな言うことが厳しいな」


「まあ、それなりに食べてますからね」


「一応レシピも持っているのですが、調理風景を見てもらえませんか?」


「いいんですか?厨房にはこだわりがあるんじゃ…」


「いえ、上手く行けばこの店に名物が生まれるかもしれませんから」


 というわけで私とリュートは厨房にお邪魔した。私は発案者の知り合いという体で、リュートは実際に料理ができるためだ。



「まずは肉の方ですけどどうしてますか?」


「この作り方の通りにやってます」


 リュートが料理人さんと話をして手順を聞いている。


「これ、少し水っぽいですね。粘り気が出るぐらいでないとだめですよ」


「む、そうか。肉に馴染むようにと書いてあったのだが」


「それは時間経過でできますから、油で揚げる時に衣がしっかりつく方が大事ですよ」


「そうなのか。次は?」


「後は少し待てば大丈夫です。ただ、味の配合までは何とも。この地方の好みもありますし。ただ、ロールカツは丁寧に巻くのと中に具を入れてもいいですよ」


「巻き方はこうか?」


「もう少し丁寧に。これをサボったら揚げた後の食感まで変わりますから」


「結構、繊細な料理なんだな」


「ですから、毎日出すのは大変ですよ。から揚げはさっきの衣さえ作っておけば色々な食材に使えますから便利ですよ」


「それはありがたいな。うちの店は俺しか料理人がいないからよ」


「では、実際に揚げていきましょう」


「それじゃあ、温度を上げてと…」


 料理人のおじさんが火をつけて鍋に入れた油の温度が上がっていく。


「そろそろか?」


「ちょっと待ってくださいね。もうちょっと高い温度ですね」


 リュートが串を油に付けて温度を測る。前にお箸を使ったら掴むのも簡単だって言ったことがあるんだけど、難易度が高いって言われた。リュートは洋食派なのか醤油も苦手だし、天ぷらとかおそばを作ってもらうのも無理だろうなぁ。


「どうしたの?」


「ううん。ちょっと考えごと」


 それからしばらくの間、揚げ加減や衣の量の調整などを指導して、ようやく食べられるころには1時間が経っていた。


「お腹空いた…」


「もうちょっとでできるからね」


「おい、まだ食べられれないのかい?」


「ジャネットさん、もうちょっとです」


「早くしてくれよ。別にあたしたちは既存のメニューでいいんだからさぁ」


「すみません。もうすぐ出来上がりますから」


「全く。代わりに飲み物くれ」


「あっ、私が入れますね」


 給仕の店員は休業日のため、今日は出てきていない。そこでさっきからジャネットさんやリックさんへの飲み物は私が運んでいるのだ。


「お待たせしました~」


「はいよ。ん~、これで料理があればいいんだけどねぇ」


「それにしても、アスカの給仕は様になっているな」


「へへっ、これでもフェゼル王国にいる間はよくやってましたから」


「社会勉強か?」


「ちっ、違いますよ。ちゃんとした店員です」


「給仕にメニュー開発、果ては大工仕事までね」


「大工仕事?とても木材を持てそうにないが…」


「魔法があるだろ?丸太だってすぐに加工しちまうんだから、本職は困ったもんだよ」


「でも、レンガを焼くのは苦手です!」


「試しにでも一般人はやらないけどねぇ」


 そんな思い出話をしていると、どうやら料理が出来たようでリュートと料理人のおじさんが出来上がったものを運んできたのだった。




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