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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市での日々

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買取と買い物

「では、ギルド内を案内いたします」


「よろしくお願いします」


 不用品を買い取ってもらったあと、商人ギルドで売っているものを見せてもらうことに。


「ところでどのようなものをお探しでしょうか?」


「う~ん。できたら魔石が見たいんですけど…」


「魔石ですか…お嬢様には申し訳ありませんが少々難しいかと」


「どうしてなんだい?」


「護衛の方はご存じかもしれませんが、ダンジョンの魔物というのは基本的に画一的な強さなのです。勿論、深い階層ではスキル持ちや魔力が高いなど個性を持ったものもおりますが。ですが、野生の魔物であれば生き残るために知恵や魔力など多くの経験を得ます。それがレアドロップにつながったりするのですが…」


「ダンジョンに出る魔物はそういう経験がないから魔石関連は出にくいと?」


「そうです。現に低階層で魔石を得て帰ってくる冒険者はあまりおりません。まあ、その辺の魔物の魔石は良いものも少ないのですが。そのため、この都市では武具の買取は少々安く、魔石の買取や販売は高くなる傾向にあります。もしお探しの魔石があるのでしたら、こちらで武具を買い、別の場所で資金に変えた方が良いかもしれません」


「その手間がねぇ。こっちも日数が限られてるんだよ」


「ちなみにここにある魔石はなんですか?」


「そうですね。今お出しできる中で良いものになりますと…サイクラスの魔石ですね」


「いっ、いくらですか?」


「こちらは金貨40枚となっております。本来は35枚ほどですがそれでも質もよくお買い得です」


「サ、サイクラスの魔石ってそんなに高かったんだ。前に安く譲ってもらったのってほんとに破格だったんだなぁ」


 サイクラスの魔石とは上級の風魔法が込められる魔石だ。しかも、汎用というのだからその利用価値は計り知れない。結局貰ってからもこれというものを思いつかなかったので、まだ補完しっぱなしだったんだよね。


「2つになれば1つぐらい使ってもいいよね。でも、予算が…」


「アスカお嬢様。お金はお持ちのはずでは?」


「ジャネットさん、それが前に使ってから結構金欠が続いてて…」


「金欠?アスカ…様が?」


「ミスリルを仕入れた時です。あれで結構使っちゃったのに、その後も魔石とか色々買いましたからね。40枚だと所持金的にはギリギリです」


「この前の臨時収入のはどうだい?ですか」


「あれですか。確かに金貨35枚ぐらいになりましたからそれを入れたら大丈夫ですけど…」


「コホン。一応言っておきますと、サイクラスの魔石にまでなると中々普通のお店では売ってもらえませんよ。付き合いのある相手や貴族向けに出ていくのです。それに最近は風の魔石自体が人気で…」


「あっ、人気なのは知ってます」


「先程も申し上げましたが、魔石の方が手に入らないのに加えて魔道具も数がないんですよ。ダンジョン産の物はあるのですが、パーティーでの行動に必要なものとなると飛ぶように売れてしまって」


「一応聞きますけど、人気の魔道具はなんですか?」


「風の汎用魔石を使ったバリア付きテントに風の盾ですね」


「テントはどこでも人気なのは分かってましたけど、盾もですか?」


「はい。特に小さいものが人気ですね。風の盾なら発生時以外は小型にできますし、そうなると剣はもとより、槍でも斧でもあらゆる武器に対応しますから。ギルドの方では商店との兼ね合いもありますから、こうして取り扱いの品は少ないですが、周辺にある防具屋でも入荷即完売です」


「ちなみにおいくらなんですか?」


「本来は魔石と合わせて金貨15枚ほどの物ですが、最近は金貨20枚でも買えるかどうかですね。売買権すらお金になる始末で少しギルドとしても困っているのです。必要だから買うのであればよいのですが、使いもせずに買われてしまうと…。まあ、本来商人がそうなのですが、冒険者まで見せびらかすために買う人も出ておりまして」


「そいつは大変だね。店に働きかけて実力のないやつには売らないようにするしかないだろうけど」


「そうなのです。その対応に困っておりまして。かといっても流通量を増やしてもらうのも難しいのです。粗悪品も珍しくありませんから」


「粗悪品も売れるんですか?」


「一応は。オーガ、といっても通常の個体のみですが。それにオークやゴブリンなどの攻撃も防げるので、20Fまでの冒険者には人気だそうです。商人ギルドとしてはそんなものより30F以降まで行ける質の良いものが流通して欲しいところですが」


「そ、そうですね~」


「でも、ダンジョン都市でもバリアテントが人気だなんてすごいんですね」


「もちろんです。ダンジョンに潜られると分るのですが、ボスフロア以外に休む場所を見つけるのが大変なのです。そこでバリアテントを使えば、もし見張りに何かあっても準備をする時間が稼げます。何もできないほどの不意打ちを防げるという訳です。その他にもボスフロアで休んでいる時の防犯にもなるので人気ですよ」


「色々あるんですね。あっ、他の魔石も見せてくれませんか?」


「はい。珍しいところですとこちらもあります。こちらは特に高くはなっておりません」


 そう言ってお姉さんが見せてくれたのはハンドラーとバディクトの魔石だった。ハンドラーは貫通効果を持つ海魔の魔石で、バディクトは集中力を高めてくれる魔石だ。一見使い道がなさそうなバディクトの魔石だけど、気が散りやすい子どもや何か勉強をする時には役に立つので買っておこう。



「ありがとうございます」


「結局、サイクラスだけじゃなくてハンドラーもバディクトの魔石も買ったんだね」


「だって、ほんとに珍しい魔石なんだもん。ただ、お財布の中身が空っぽになっちゃった」


「それなら、トリニティの方を見てみたらどうだい?売り上げも入ってるだろ」


「そうですね。あっ、そういえば手紙が来てないか確認しないと。すみません!」


「はい。他にも何かございますか?」


「あの、トリニティ宛の手紙とか来てませんか?」


「手紙ですね。少々お待ちを」


 お姉さんが奥に行って手紙を探す。どうやらアルファベット順でそれぞれ分けられているみたいで、該当の場所を探しているようだ。


「ありました。先ほど売られる時に確認すればよかったですね。こちらになります」


「ありがとうございます。2通ですか?」


「はい。それぞれ宛名は違いますが、どちらもフェゼル王国からとなっております」


「分かりました」


「それと、片方の方からはこちらも一緒になっております」


「ありがとうございます」


 私は一緒に小包を受け取るとマジックバッグにしまう。


「後はどうするんだい?」


「う~ん。他の店も見て回りたいですけど、手紙を先に確認します」


「そうか。なら一度宿に戻ろう」


「あっ、もしよろしければ滞在先を確認してもよろしいですか?」


「はい」


 私は泊まっている宿を告げると、お姉さんが書き写すのが見えた。


「もし、お手紙などが届きましたら街にいる間は届けさせていただきます」


「ありがとうございます」


「街を出る時はあんたに言えばいいのかい?」


「はい。申し遅れました。私は受付のシャイナと申します。またご用がございましたら私までよろしくお願いします」


「分かりました。また来ますね!」


「はいっ!」


 元気に返事をしてくれたシャイナさんとは別れ、私たちは宿へと戻る。



「ふぅ~。優しい、いいお姉さんでしたね」


「アスカの金払いが良かったからね。それにあまり人気のない魔石も買っていっただろ?それなりの物を売りに来てくれるし、人気のないものを買ってくれる上客だと思われたんだよ」


「そんなつもりはないんですけど…買った魔石もいいものばかりですし」


「それはアスカが魔道具を作れるからだろう?一介のお嬢様がまさかそんなすごい人間だとは思わないだろう」


「一介のお嬢様はまずダンジョンに潜らないけどねぇ」


「魔物について知らないだろうけどって説明してたのが面白かったですよね」


「リュート、そんな風に言っちゃだめだよ。色々教えてもらったんだから」


「ごめん。でも、そう言われると結構丁寧に説明してくれたよね」


「ま、愛想よくして物も売れたんだから向こうとしては万々歳だね」


「それで、今後の予定はどうするつもりなんだ?」


「せっかくダンジョン都市にいるんですし、明日はまた潜りませんか?といっても20Fまでですけど」


「そうだね。30Fまでは結構時間もかかるし、週に一度にしておくかね」


「それじゃあ、1か月ぐらいはここにいるのか?」


「う~ん、ちょっと長い気もしますけど、それはまた決めましょう!」


「分かった。それじゃあ、今日はもう自由時間だな。ジャネット、少し外に出ないか?」


「なんであんたと…」


「いい店を紹介してやるよ。料理も酒も上手いんだ。そうそう、従魔が食事をできる店も捜

 しておいた。置いてかれてる間にな」


「ちっ、しょうがないねぇ。アスカ、昼は勝手に済ますから」


「分かりました。それじゃあ、夕食はどうします?」


 にゃ~~!


「キシャルはなんて?」


「私たちばっかりずるいって。夕食はどこかで食べたいみたい」


「まあ、この宿だと本当に簡単なものしか食べられてないしねぇ。リック、ついでにそこにも案内しな。先にこいつらが気にいるか確認してくるよ」


「決まりだな。そういうことだから、宿の方は任せたよ。リュート君」


「は、はい」


「アスカ、ちゃんと休憩は取りなよ」


「分かりました!2人とも気を付けて行ってきてくださいね」


「もちろん、エスコートには気を付けるよ」


「減らず口を叩くんじゃないよ。ほら行くよ。もちろん、リックのおごりでね」


「任せろ。この時のために街中の店は一通り回ったからな」


「言ったね?あんたの舌があたしたちに負けないか試してやるよ」


 そう言うと二人はお互いを見ながら部屋を出ていった。




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― 新着の感想 ―
[一言] >「言ったね?あんたの舌があたしたちに負けないか試してやるよ」 >そう言うと二人はお互いを見ながら部屋を出ていった。  ジャネットは楽しくなってますね、こりゃ。
[一言] 受付のお姉さん、トリニティがどんな商会か調べたら驚くだろうな。 開発元だと知った時の反応見てみたい
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