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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市アルトゥール

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草原の奴ら

「うわぁ、一面の草原ですね。でも、この前の魔物が大量に階段近くに固まってる感じでもないです」


「そうだねぇ。ここからボスフロアまでがこういう造りなんだろうね」


「これまでは10F区切りで変わってましたけど、ここからは5Fで変化するみたいですね」


「まあ、変わったといっても見た目はそこまで違わないがな。魔物はどうか分からないが…」


「そうですよね。そこまで急に強くなったりはしないでしょうけど」


 10Fごとに強くはなるものの、5Fごとにはさほど強くならない。せいぜい、これまで亜種の中でも少し強い種類が出るかどうかというところだ。


「魔物も…あまり変わらないみたいですね」


 少し歩くとガーキャットたちに出くわした。数は6体。どうやら、魔物の種類が増えたという感じではなく、数や連携の面で変わったみたいだ。


「戦い方に気を付けるようにしな!行くよ!」


「はいっ!頑張ろうね、ガンドン」


 フ~


 私はガンドンに乗ったままガーキャットたちの前に躍り出る。


「まずは先制のストーム!」


 嵐を手のひらから放ち、相手の動きをけん制する。散らばった相手をみんなが各個撃破する間、私が魔法でけん制していれば戦闘はすぐに終わるのだ。


 キャン


 フシャー


「そうそう、こっちに意識を持って来ると良いよ。後ろの君もね」


 私の後ろに回り込んで一匹のガーキャットが背中に一撃を放ってくる。


 ドン


「残念。私はバリアを張ってるからね。そのぐらいの攻撃じゃ、びくともしないよ!」


 いくらガンドンに乗っていても、魔物たちは私が一番か弱い存在だということは理解している。だから、本能的に私を狙ってくるのだ。目標が私だからその下にいるガンドンにも簡単なけん制しかしてこない。


「そろそろ、みんな倒し終わったかな?ウィンドカッター」


 私は風の刃を3本作り出して、一体を集中して狙う。他の2体に関しては倒し終わった誰かが相手をしてくれるだろう。


「ふぅ~、終わりっと」


「アスカ、そっちも終わったね」


「はい!援護ありがとうございます」


「それにしても、ガーキャットぐらい攻撃方法が少ないとアスカには通じないね」


「はい。ただ、少しだけ動きの早かった個体がいましたけど」


「そういえば、ウィンドカッターで倒してたやつ、結構粘ってたね」


「うん。ひょっとしたら、リンネみたいに固有でスキルを持っているのかも」


 リンネ…私の従魔だったグレーンウルフも、切断とかいくつかスキルを持っていた。ただ、のちに出会った個体はそこまで強くなかったし、そんなスキルは持っていない感じだったから、今回のガーキャットも回避系の固有スキル持ちだったのかもしれない。


「魔物が変わらない代わりにスキル持ちか。そっちの方が面倒だな」


「そうですね。気を引き締めていかないと」


 同じ姿で追加の能力持ちは厄介だ。こっちのイメージと違う動きをしてくるからね。


「あれ?この先から反応…ん?この大きさってオーガ?」


「どうしたの、アスカ?」


「いえ、この先からオーガの反応があるんです。まさかとは思いますが…」


「まあ、少数だけど草原にいるからねぇ」


「どうする、戦うか?」


「放っておいても気づかれたら来ますし、倒しましょう!っと、人もいるみたいですね」


「なんだいそりゃ、面倒だし避けるか」


「あ~、こっちに向かってきます。これは逃げてるのかも…」


「さらに面倒だな。まあ、気づかれることは確定したし倒すか」


「しょうがないねぇ」


 私たちはオーガが迫っている方へと足早に急ぐ。


「ひぃぃぃ~~、あんな数がいるなんて聞いてないぞ!」


「大体、草原にオーガなんて卑怯よ!」


「お二人とも、話をせずに走って!」


「そうは言うけど、これ追いつかれるぞ」


「なんで斥候のあなたが一番後ろなんですか?」


「いや、体力ないし…」


「あの~~~~!」


「なんだ?」


「前から人の声よ!助かるかも」


「ちょっと待って。あれ、ガンドンですよ!」


「畜生、ここまでかぁ」


「大丈夫ですか~?」


「ガンドンがしゃべった!?」


「上です。上!」


 私が呼びかけると、みんな顔をこっちに向ける。


「ガ、ガンドンにまたがって何をしてるんだ?」


「何って、乗せてもらってるんです。それより、オーガの方は大丈夫ですか?」


「そうだったわ!お嬢さん、直ぐにオーガが来るから逃げて!!」


「う~んと、弓使いはいます?」


 私はあわてている冒険者の人に落ち着いて話しかける。こういう時、無駄に急かすとよくないんだよね。


「え、ええ。斧とか剣は持っているけど、弓はいなかったはず…」


「ありがとうございます!みんな、行くよ!」


「はいよ」


「うむ」


「分かった!」


 逃げてきた4人組のパーティーと位置を入れ替わるように私たちは前に出る。


 ガァァァァーーーー!


「結構大きい…」


「ウォーオーガにオーガバトラーみたいだね。この辺じゃ、かなりの強敵だ」


「しかし、5体も居るのか?ガーキャットの強さを考えればもう少し数が少なくてもいいはずだが…」


「そ、それは…」


「んな事より、今はせん滅が最優先だ。だろ?」


「そうだな。行くぞ!」


 リックさんとジャネットさんが左右二手に分かれて、オーガの戦闘と相対する。私とリュートは正面中央からだ。この陣形にも意味はあって、オーガといえばその力だ。殴られたら痛いなんてものじゃないけど、それより厄介なのが武器を投げられること。大きい斧や槍をすごいスピードで投げてくる可能性があるから、相手の姿は常に確認しておきたいのだ。


「皆さんはそこに固まっていてください。多分大丈夫ですから」


「た、多分って…」


「そうしましょう。今戦いに戻っても邪魔だわ」


「そうだな」


「オーガバトラーには心もとないけど…ウィンドバリア!」


 私は固まってくれた冒険者にバリア魔法をかけて再び、前に集中する。


「ジャネットさんの相手は槍。長引きそうだな。リックさんの方は剣か。こっちも時間がかかるかも。私たちにはウォーオーガ2体と斧持ち、ここはひとつ…リュート!」


「うん?」


「私が斧持ちを相手するから、リュートはウォーオーガを!」


「了解!」


「大丈夫?怖くない?」


 フ~


 完全に上位の魔物に対して、ガンドンも少しおびえているものの、なんとか踏ん張ってくれている。この状態が保てているうちに勝負を決めないと!


「まずは相手の戦意を少しでも削がないと。ファイアブレイズ!」


 私は火の弾丸を大量に作り出して放つ。狙うは腰より下だ。もちろん頭部に近い方がダメージは大きいんだけど、さっきの戦闘のように足元に火をつける方が真の狙いだ。


 ボッ


 ガァ!?


「ふふっ、慌ててる。それじゃあ、これで!フレイムブラスト」


 私はより火に忌避感を覚えているウォーオーガに魔法を放つ。火に注意が行っていたため、難なく当てることができた。


「やった!あっ…」


 しかし、火が体中に回る前に隣のウォーオーガが殴りつけて地面に転がした。


「火が回る前に消されちゃった。やるね!」


 やっぱりこの26Fからは魔物のスキルというか行動が少し洗練されている。オーガならあのまま仲間をやられたと思って突撃するはずなのに…。


「やっぱりまとめて倒すしかない。ストーム!」


 仲間を助ける姿勢を見せたので、今度は倒れたままのオーガに向けて嵐の魔法を放つ。それを先程のように手を差し伸べ立たせようとするウォーオーガ。


「ごめんね。その動きを待ってたの!」


 私は魔力操作で手を差し伸べたウォーオーガの方に嵐を向ける。引っ張られた方も引っ張った方もあの姿勢では動けないだろう。


 ザシュザシュ


 そのまま、2体のウォーオーガは嵐の中に消えていった。


「やった!残りは3体。みんなは?」


 戦況を確認すると、一番手間取っているのは意外にもリックさんだった。


「アスカ、こっちに頼む」


「分かりました!フレイムブラスト」


 私は剣を持ったオーガバトラーの足元に向けて魔法を放つ。その攻撃に合わせるようにリックさんが飛びのくと、火柱がオーガバトラーを包み込んだ。


 グアァァァーー


 火に包まれたオーガバトラーだったが、さすがに上位種。一撃とはならなかった。


「これで終わりだな」


 スパッ


 焼け焦げ、固い皮膚も焼け落ちたオーガバトラーに対してリックさんが剣を振るい、勝負はついた。


「ふっ、助かったよ。アスカ」


「いえ。でも、珍しいですね。リックさんが苦戦するなんて」


「ああ、実はだな…」


「リック!行ったよ!!」


「む?」


 カァン


 ジャネットさんの声に反応してリックさんが剣を振って槍を弾く。どうやら、勝てないと思った槍を持ったオーガバトラーが最後のあがきに武器を投げてきたようだ。


「危ないな」


「よそ見すんなってことだ。よっと」


 武器を持たなくなったオーガバトラーをジャネットさんが屠り、そのすぐあとにリュートも斧持ちのオーガバトラーを倒した。


「す、すげぇ!あれだけ居たオーガたちを…」


「た、助かったぁ」


「んで、あんたらどうしてあんなオーガの集団と戦ってたんだい?」


 戦いが終わったので私はバリアを解き、オーガから逃げていたパーティーに話を聞くことにした。


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― 新着の感想 ―
[一言] >少し歩くとガーキャットたちに出くわした >いくらガンドンに乗っていても、魔物たちは私が一番か弱い存在だということは理解している。だから、本能的に私を狙ってくるのだ ガーキャット「感じ取れ…
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